ZOIDS ~Inside Story~   作:砂鴉

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前回、ジェノリッターから辛くも撤退することができたパリスたちのお話です。


第20話:別れ、そして……

「あいつ、死ぬ気だろうね」

 

 一団が山道に入ったところで、ヴィオーラはポツリとつぶやいた。

 

「ヴィオーラ」

 

 咎めるようにロッソが言う。

 

「ごめん。言う事じゃなかったわね。でも……情けないったらないわ、アタシたち」

「まったくだ。ルドルフのことはバンたちに託し、死にぞこないの身体でアイツに助けられたわけだ」

「ほんとね」

 

 それからしばし、無言だった。もっとも、グスタフの中ではフェイトが戻ろうと躍起になっているらしく通信越しにその暴れっぷりが聞こえてくる。

 

「パリス中尉。周囲の様子はどうだ?」

「今のところ問題ない。帝国軍の追手も、さっきのジェノリッターが追いかけてくる気配もない。……あいつが、うまく足止めしてくれてんだろうな」

 

 計器の反応を確認し、パリスはもう一度振り返った。戦闘がまだ続いているのだろう。爆音が連続して轟く。次いで、再び荷電粒子のきらめきが空に立ち上った。

 

「降ろして! ロージのとこに戻るの!」

「無理だってお嬢ちゃん! このグスタフじゃあ生き残れるわけがない」

「じゃあ盾になって! グスタフは装甲が厚いんでしょ!」

「無茶言わないでよ!? パリス中尉、この子なんとか――」

「悪いな。オレもそんな気分じゃない」

「中尉!!」

「オレは……また……」

 

 パリスは先ほどの光景を思い出す。荷電粒子砲の閃光と共に消えた強化型コマンドウルフに乗る同僚の二人。きっと、何が起こったかもわからずに消滅したのだろう。

 そしてベアファイターに乗っていた人物。彼も、パリスの同僚だった。それも、ジェノリッターの大剣であっさり切断され崩れ落ちた。

 

「中尉……」

「……お前さんが思いつめるのも仕方のないことだ。だが、、もう少ししっかりしてくれよ。俺達の中でまともに戦闘行為ができるのは、お前さんのコマンドウルフだけなんだ。パリス中尉、あんたが今の俺たちの要だ」

 

 片翼が破壊されたレドラーにグスタフ。両者ともまともな戦闘が行えず、全員を守りきれるのはパリスのコマンドウルフACだけだ。パリスもそれを自覚し直し、大きく息を吐いて、気持ちを改める。

 

「……ああ、そうだな。ここに居るメンバーを守りきれなかったら、ホントにあいつにも、ハルフォード中佐にも顔向けできねぇ」

 

 だが、パリスが気持ちを引き締め直した直後、背後から再び荷電粒子砲のきらめきが迸った。パリスたちの頭上を突きぬけて行ったそれは、これまでと段違いの出力で放たれた。直撃すれば、ゴジュラスであろうと耐えられそうもないエネルギー波だ。

 そして、最悪の結果を想起させるように背後から爆音が轟く。

 

「今のって……まさか!?」

「小僧……まったく、無茶してくれやがって……」

「……クッソがぁ!!」

 

 ヴィオーラとロッソが目を伏せながら呟き、パリスは握り拳を操縦桿に叩きつけた。二年前もローレンジに助けられ、そして今回も助けられ、その借りを返すことも出来なくなった。ぶつけようのない憤りが、パリスの心臓からあふれ出る。

 だが、今は己の心情に向き合っている余裕がなかった。

 

「ロージ!? ロージが――戻って!! 早くっ!!」

「お、落ち着いて!! 我々にできることはない、だから――」

「――そんなの……ロージは、私のお兄ちゃんだもん!! やっぱり一人置いて行くなんてできない!!」

 

 グスタフのコックピットが開く。フェイトが中で暴れたことで、偶然開閉スイッチが押されたのだろう。フェイトは中から飛び出し、一目散に来た道を戻る。

 

「あんのバカ! 戻ってこい!」

 

 パリスがコマンドウルフで追いかける。人とゾイドの差は歴然であり、あっという間に追いつくことが出来た。

 コマンドウルフから飛び降り、フェイトを掴んで止める。フェイトは振りほどこうと必死になるが、軍人であるパリスの握力は10歳の少女を掴み止めるなど造作もない。

 

「放して! ロージが、ロージが!!」

「いい加減にしろ!!」

 

 パリスの大声で一括。フェイトも思わずびくりと体を震わせるほどの剣幕だった。

 

「あいつのことが心配だってのは分かる。この場の誰だってそうだ。だが、お前のその行動はオレたち全員を死に追いやることだ。勝手な真似は、オレが断じて許さねぇ。それに……」

 

 パリスは、先ほどまでの剣幕とは裏腹に、優しくフェイトを諭す。

 

「それに、あいつは簡単に死ぬような奴か? お前も知ってるだろ? ローレンジは元殺し屋だぜ? あいつは殺る側で、殺られる側じゃねぇ。そういう場面には慣れてる。あいつが、簡単に死ぬわけねぇ。断じてねぇッ!! だから、あいつが生きて戻って来るのを信じて待つほうがいいだろ?」

 

 最後の方は強い意志を籠め、パリスは断言する。その強い意志に、フェイトも小さく頷いた。

 

 だが、状況は一気に変わった。

 

「――しまった!? これは……」

 

 パリスたちの眼前から現れたのは真紅のアイアンコングPK。ガイロス帝国摂政、ギュンター・プロイツェンの私兵部隊プロイツェンナイツだ。

 

『お前たちか! 共和国の特殊部隊は!! うまく逃げていたようだがここまでだ。覚悟を決めるんだな』

「プロイツェンナイツ……こいつらが追手かよ」

 

 最初に現れたアイアンコングPKに加え、ぞろぞろと現れたのは小型のコング――ハンマーロック。対するパリスたちのまともな戦力はコマンドウルフACただ一機。絶望的だった。

 

「中尉、ここまでですか……」

 

 グスタフに乗る部下が力なく呟く。だがパリスは諦めてはいかなかった。どうにかコマンドウルフに乗り込み、この場を脱する。ローレンジに皆を託されたのだ。まだ、諦めることはできない。諦めるには、早すぎる。

 

「……まだ、終われねぇんだよッ!!」

 

 フェイトを抱え、パリスは走った。ハンマーロックがそれを阻もうとするが、横からの機銃がそれを防いだ。

 

「なかなか根性あるじゃねぇか、あの中尉」

「フン、あたしたちもこんな形で終わるなんて御免でねぇ。最後まで足掻かせてもらうよ!!」

「中尉! そこまでやるなら、自分も最後まで付き合います! いくぜグスタフ!」

 

 グスタフはおとなしくしてろ。

 そう心の中で毒吐きつつ、仲間たちの支援を受けパリスはコマンドウルフに乗り込む。

 

「フェイトちゃん、ちょっと狭いけどカンベンな。この場を切り抜けるまで我慢してくれよ」

「大丈夫です。ロージと旅した時も、昔はこんな感じだったから――パリスさん、右っ!」

「あいよ!」

 

 振り向きざまに、狙いをつけずロングレンジキャノンが発射される。それは、拳を振りかざしたハンマーロックの身体を撃ちのめす。

 

「次、真後ろ」

「りょ、了解!」

 

 その場から前に跳び、振り返って砲撃を叩きこむ。

 

「次は――」

 

 フェイトは逐一敵ゾイドの位置を伝え、パリスはそれを聞きながら冷静にハンマーロックを対処する。もちろん、グスタフとレドラーの援護も忘れない。独立高速戦闘隊の時の経験とハルフォード中佐からの教えをフルに活かし、絶望的な戦線をどうにか切り抜けるため奮闘した。

 そんな中、パリスは内心舌を巻いていた。フェイトの指示の的確さに、だ。一人乗りのコマンドウルフに相乗りし窮屈な中、周囲に展開するハンマーロックの位置を的確に――しかも最優先に倒すべきハンマーロックを優先して教えてくれる。この感覚は、天性のものだろうか。これにローレンジ並みの操縦技術が加わったとしたら……一躍、凄腕のゾイド乗りへと成長するのではないか? そう、錯覚すら覚えた。

 

「パリスさん、あっちに!」

「今度はなんだ?」

 

 これならいける。そう強い自信を持った時、それが現れた。

 

「アイアンコングPK……二機目かよ……」

「中尉……」

 

 思わず目を疑いたくなった。だが現実だ。通常のものよりも三倍の戦闘力を得たというアイアンコングPKが二機。完全に、勝機を失った。パリスはそう思った。

 

『よく来てくれた。こいつらなかなかしぶとくてな……手を貸してくれ』

『………………』

 

 だが、新たに現れたアイアンコングPKから言葉はない。代わりに、機体のあちこちからスパークが走っていた。

 

『おい、どうした?』

 

 不安になって先のアイアンコングPKのパイロットがもう一度呼びかける。だが、やはり返事はない。そして、新たに現れたアイアンコングPKは急速に力を失って倒れ込んだ。

 その後ろには、もう一機のアイアンコングがいた。装備は同じ。だがPK仕様ではない。色が微妙に違い、左腕がもがれ、再生中なのか生々しい金属生命体の断面を見せている。

 アイアンコングPKは真紅の機体色をしている。新たに現れたアイアンコングもそれに近いが、その色は紅というより朱。アイアンコングPKの紅が血のような紅なら、そのアイアンコングの赤は燃え盛る炎の朱だった。

 

 アイアンコングはその場に佇み、そのパイロットの声が発せられる。

 

『……プロイツェンナイツか。……キサマらに恨みがある訳ではないが、知られると厄介だ。死んでもらう』

 

 若々しい男の声だった。恨みがないと言いつつ、その声には怒りが満ち溢れている。

 

『ちょうどよかったよ。この行き場の無い怒り、どこにぶつけるべきかと悩んでいた所だッ!!』

 

 朱のアイアンコングが走った。右の拳と短い足を駆使し、背中のマニューバスラスターを全開にして一気に駆ける。アイアンコングPKはそれを冷静に迎え撃ち、右肩のビームランチャーを放つ。至近距離。いかな高速ゾイドと言えど避けられる訳がない。

 

 それが避けられた。朱いアイアンコングはビームランチャーの狙撃を読んでいたかのごとく、微妙に機体をずらし、一気に肉薄する。剛腕が唸り、ビームランチャーが殴り潰された。アイアンコングPKも瞬時に対抗しようとするが、ビームランチャーを殴り飛ばした拳を返す形で側頭部を殴られる。バランスを崩し、機体は土ぼこりを上げて後退した。コックピットのある頭部が大きく下がる。

 

『さらばだ』

 

 男の言葉と共に、朱のアイアンコングのビームランチャーが火を噴き、アイアンコングPKのコックピットが吹き飛んだ。さらに背中の地対地ミサイルが撃ちだされ、生き残っていたハンマーロックを粉砕する。

 力を失い崩れ落ちるアイアンコングPK。その様を眺め、朱のアイアンコングはゆっくりとコックピットを開く。

 

「あいつは?」

「ヴォルフさん? ヴォルフさんだよね!?」

 

 パリスの後ろにいたフェイトが身を乗り出す。コックピットを開くと飛び出した。

 

「ん……フェイト? フェイトなのか!?」

 

 朱いアイアンコングに乗っていた金髪の男――ヴォルフもアイアンコングから腕を蔦って降り、駆け寄った。

 

「ヴォルフさん、ヴォルフさん!!」

「フェイト、よかった。お前は無事だったんだな!! ああ、本当に……」

 

 二人は駆け寄り、抱き合う。

 

「あー……なんつーか、ひとまず敵ではないみてぇだな」

「だな。まったく、何度九死に一生を経験するんだ? 俺達は」

「ええ。でも、生き延びれてよかったわ」

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

「つまり、あんたはプロイツェンが作った秘密組織のリーダーなのか」

「ああ。プロイツェンが作ったと言っても、奴への反抗組織に変わっているがな」

 

 それぞれの自己紹介を終え、互いの状況を確認し合った。

 ヴォルフ達、鉄竜騎兵団(アイゼンドラグーン)は壊滅。部隊員も散り散りになり、今はヴォルフも一人で逃亡生活だという。

 

「あの怪物の手でほとんどの者が死んでしまった。ザルカ博士の開発した新型Eシールドが無かったら、あの場で私たち全員が死んでいただろう」

 

 テラガイストに襲われ、さらに簡易デスザウラーと呼ぶべき化け物の大口径荷電粒子砲を浴びた時には、最期を覚悟した。だが、ザルカが有事に備え開発したEシールドを装備したいくつかの機体により難を逃れ、さらに簡易デスザウラーも機能不全を起こしたことでどうにか逃げ延びることが出来た。

 もっとも、テラガイストの追手は諦めておらず残党狩りに執心していた。ヴォルフも今日まで逃げの一手であり、ようやく追手を振り払ったのだった。

 

「プロイツェンナイツに鉄竜騎兵団(アイゼンドラグーン)、そしてテラガイストか。帝国の摂政様は私兵部隊をたくさんお持ちだねぇ」

「奴らと一緒にしてくれるな。あれはち――プロイツェンの狂信集団だ。我らは違う」

 

 苦々しくヴォルフは言った。その言葉に、ロッソが少し「おや?」といった表情になるが口には出さない。

 

「ロッソ? どうしたんだい?」

「……いや、なんでもない。それでヴォルフさんよ。これからどうするんだ?」

「私は……この辺りにドラグーンネストを持つ前の拠点がある。ひとまずそこに行こうと思っている。元々、私たちもプロイツェンの次の手に備えて拠点をそちらに移すつもりだったんだ。仲間たちが集まっている可能性も高い」

「だが内部に敵が潜んでいたんだろう? そいつらに先に抑えられている可能性を考慮すべきではないか?」

「いや、あの時反乱を起こした者はここ一~二年で入隊した者がほとんどだ。旧拠点の存在は伝えていないし、おそらく安全と思う。……内部の敵も考慮して、移動先の情報は信頼できる者にしか伝えていないからな」

「そうか……」

「そちらはどうする?」

 

 ロッソは顎に手を当て、考え込む。これからの動きを考えているのだ。

 ロッソたちは共和国領で盗賊行為を行っていた。このまま共和国軍に同行して、再び独房というのも考えたのだろう。だが、

 

「ロッソとヴィオーラはオレと一緒にレッドリバーに来てくれ。この先何があるか分からん。これからイセリナ山を越えるんだからな。噂のイセリナの魔物に襲われたら、オレとこいつじゃ正直心配だからな」

「なっ、パリス中尉それはないでしょ! 自分だって――」

「――待って」

 

 パリスの部下が反応し意義を言おうとするがそれを遮ってヴィオーラが声を上げた。

 

「イセリナ山って言ったかい?」

「ああ、そうだが」

「ならちょうどいい。アタシはあの山の出なんだ。道案内の役に立てるよ。ロッソも、それでいいかい?」

「……ああ。俺もイセリナ山には行ってみたかったからな。……ルドルフがいないのが残念だが」

「ロッソ……」

「決まりだな。なに、お前らのことは心配するな。あそこには確かロブの兄貴……ああ、ロブ・ハーマン大尉がいる。オレとは仲がいいから、うまく取り計らってやるよ」

 

 パンッ、とパリスが右の拳で左の掌を叩く。そして、「さて」と一つ言い置き、

 

「フェイトはどうする? 俺達とレッドリバーに行くか、そこのヴォルフさんと一緒に行くか。危険度はたぶんそっちのが高いだろうけど」

「ヴォルフさんと行きます。短い間でしたけど、ありがとうございます」

 

 フェイトはそう告げ、頭を下げた。

 そう言う礼儀はしっかり教わってるんだな、とパリスは一人納得し、その頭を軽く撫でた。

 

「じゃあまたな。ほんのわずかな間だったし、いろいろあり過ぎたけどよ、今度会った時は再会の祝いでもしようぜ。なにせ、二年ぶりだからな」

「はい!」

 

 別れのあいさつを終えコマンドウルフACが、グスタフが、レドラーが去って行く。

 

「フェイト、私たちも行くとしようか。また見つかっては厄介だ」

「はい。……あ、その前に――」

 

 

 

 

 

 

 片腕のもがれたアイアンコングmk-2は来た道を戻った。その先には、戦場の痕が色濃く残った荒地が広がっている。ガリル高原の一角、凸凹な地形が広がっている遺跡にほど近い場所だ。

 

「ここか。……なにもない、な。…………ローレンジ、まさか、お前まで……」

「ロージ……」

 

 岩山が大きく凹み、その周囲は何かが暴れ回った痕跡があちこちに残されている。それを成したゾイドの姿はどこにもなかった。対峙したジェノリッターも、ヘルキャットも。

 

「……行こう。いつまでもここに居ては、追手に見つかるやもしれん。それに、……ここに長く居るのは、心に悪い」

「うん……」

 

 小さくフェイトも頷く。そして、ヴォルフはアイアンコングmk-2を起動した。片腕と脚で巨体を支えながらその場を去り――

 

「――ッ!? ヴォルフさん! 停めて!」

 

 ヴォルフはすぐにアイアンコングmk-2を停止する。コックピットがゆっくり開く。それすらもどかしく、フェイトは開いた隙間に体をすべり込ませ転がるようにして飛び出した。コングの巨体でそんなことをすれば真っ逆さまに落ちかねない。慌ててヴォルフが支える。それを振り払い、フェイトはほとんど飛び降りる勢いでコングから駆け下りた。そして、迷うことなく近くの茂みに駆け込んだ。

 ヴォルフもコングを下り、後を追う。そこには、

 

「ニュート! ニュートしっかりしてっ!」

 

 ニュートが居た。力なく倒れ、ピクリとも動かない。だが、フェイトが来たのに気付いてゆっくり、緩慢な動作で顔を起こす。

 

「キ……キェォオ……?」

「ニュート! ねぇ大丈夫!? あ、ロージ――ロージは!? ねぇっ!?」

「フェイト、あんまり揺するな。ニュートが壊れでもしたら……」

 

 追いついたヴォルフがフェイトの勢いに気づき、諌めようとする。そして、仰向けに転がっていたニュートが腹部を開いた瞬間「やってしまったか?」と思ったが、そこに居た人物に目を丸くする。

 

「ロージ!?」「ローレンジ!?」

 

 ニュートの腹部にすっぽり収まるようにして、ローレンジ・コーヴは生きていた。だが、額からは血が流れ、あちこちに強く打ちつけた痕があった。この様子だと、骨折もあり得るとヴォルフは予測する。

 ローレンジがニュートの腹から転がり落ちる。

 

「ロージ!? 生きてるよね、ねぇ!?」

 

 フェイトがローレンジの頭を覆うように抱きしめた。頬を口元に当てる。わずかに、ローレンジの口から吐息が漏れた。

 

 ――生きてる!?

 

 もう会えない。そう思っていた現実が嘘のように消えた。ローレンジは生きていた。その事実が、フェイトの心に溢れていく。

 

「フェイト、ローレンジは? 生きているのか?」

「良かった、よかったよぉ……ロージぃ……!!」

 

 もう、何でもよかった。生きていてくれた。それだけで、フェイトには十分だった。

 

「ロージ……お兄ちゃん……よかった」

 

 フェイトの頬に大粒の涙が伝った。

 




ヴォルフ様がまたなんか言われそうな……まぁ、仕方ない。
ローレンジの生存についての展開はほとんどアニメのを移植したような形です。
それではまた次回。

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