ZOIDS ~Inside Story~   作:砂鴉

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 今回はフィーネの戦闘シーンあります。もっと言えばそれだけです。


第124話:好きと好き 中編

「私、バン君とは士官学校の同期なんです」

 

 GF入隊挨拶の時、バンとトーマが所用で席を外して二人きりになった時、リーリエ・クルーガーはフィーネに向かってそう言い放った。

 

「だからって訳じゃないですけど、バン君とのコンビで動くなら、他の誰にも負けない自信があります」

 

 知っている。

 他ならぬバン自身から、彼女のことは聞いていた。共和国の知将クルーガーの養娘。士官学校時代、バンと最も親しかった女性で、彼女と組んでの訓練戦を行った時のバンは負けなしの強さを誇ったという。

 

「フィーネさん、負けませんから」

 

 強く、決意を宿した瞳でフィーネを射抜いてきた彼女に、フィーネは返す言葉を持たなかった。急にやってきたバンとの確執に戸惑い、彼女の決意を半分どころか欠片ほども理解しきれなかった。

 

 でも、今なら……。

 

 

 

 

 

「偵察隊あがりという話だったが、なかなかじゃないか」

 

 テストを終了し、格納庫に戻ってきたシャドーフォックスを管制室のモニター越しに見ながら、トーマは感心したように呟いた。

 

「ビークとはまた違ったパイロット補助システムを積んでいるそうだが、それだけではない。GFに配属されるだけのことはある」

 

 その言葉は、もちろんシャドーフォックスではなくそれを見事に乗りこなして見せたリーリエに対する評価だ。先の戦闘でも彼女は的確な指示でバンたちをサポートしてみせた。それも踏まえた上で、彼女のシャドーフォックスの適正は確かなものだったのだ。

 

「やけに褒めるな。トーマ」

「客観的に見た上での判断だ。お前と組んでいたというところで疑っていたが、期待以上じゃないか」

「なんだよそれ。……まぁ、リーリエもあれから腕を上げたってことだよな」

 

 トーマの野次を軽く流しながら、しかしバンは嬉しそうだった。その表情は、当然フィーネではなくリーリエに向けられたもの。少し、感情が波打った。

 

「よーし、リーリエごくろうさん。次はフィーネだな。準備はいいか」

「はい、いってきます」

 

 モニターを担当するパリスに名前を呼ばれてフィーネはぴしりと礼をする。バンを仲介になじみ深いメンバーで行われているテストだが、締めるとこは締めなければならない。きっちり上官に向ける敬礼を返すと、フィーネは踵を返して格納庫に向かった。

 途中、格納庫から管制室に向かうリーリエとすれ違う。お互いに、軽く視線を交わし、それぞれの向かう場所に向かった。

 

 シャドーフォックスのコックピットは、共和国正式採用機にしては珍しい装甲製だ。気密性は高く、視認性はキャノピー製と比べるて悪い。普段ブレードライガーの広い視野に見慣れていたフィーネにとっては、勝手が違う。

 乗機用通路を伝いシャドーフォックスの前にたどり着くと、背後から「フィーネさん」と呼ばれる。振り返って、後から追ってきたのだろうトーマの姿がそこにあった。

 バンは、いない。まだ気まずいのだろうか。

 

 少し、胸が苦しくなった。

 

「無理はしないようにしてください」

「大丈夫ですよトーマさん。私だっていろんなゾイドに乗った経験はありますから」

 

 それに、バンといつも一緒だったから、勝手は分かってます。

 続けるはずだった言葉は喉から出てこず。代わりに表情に張り付けた。

 なおも心配そうな顔で見送るトーマの顔をこれ以上見続けるのも気まずく、フィーネは滑り込むようにシャドーフォックスのコックピットに入ると蓋を閉じる。

 システムを立ち上げると、備え付けのヘルメットを被る。ゾイドとの精神リンク値を高め、操縦をサポートするコマンダーだ。ゾイドの感情が高ぶりパイロットに影響を及ぼしかねないほどになると自動的にリミッターが働いて強制解除される仕組みになっている。

 雛型になった白い狐に搭載されていたとされる装置で、共和国と帝国の技術部がそのシステムを解析。安全性を高めたうえで採用した、ゾイド操縦の補助システムといったところ。

 

 これまでオペレーターとして役割が主だったフィーネも、これによるサポートである程度マシになる。

 シャドーフォックスの実地試験には、この新システムのテストも含まれているのだ。

 

『フィーネ。無茶すんなよ』

 

 通信回線でバンからの声が届く。声を聴けた喜びより、直接言葉を交わせなかったむなしさが胸を突いた。

 

「バン……大丈夫。私だって、たまにはバンみたいに思いっきり走ってみたいから」

 

 本当の理由ではないが、今バンに言った言葉もあながち嘘ではない。

 バンと一緒にゾイドに乗っていると、感じられる。ブレードライガーの息遣いが、興奮が、そしてそれに同調してはしゃぐジークが。そんな相棒たちと共に、心の底から彼らとは知ることを楽しむバンが。

 それをバンのように、自分だって直に感じたい。その気持ちは、嘘じゃない。

 

 でも、今回の試験はそれを楽しむ場ではない。

 

 リーリエの初陣。彼女は窮地に陥ったバンに指示を出した。おそらくは士官学校の時に築いた連携なのだろう。バンはそれを自分の身体に浸み込むほどに馴らしており、咄嗟の時でも一瞬でそれを実践し、窮地を脱した。

 

 悔しかった。

 

 フィーネは現代に目覚め、それからずっとバンと一緒だった。ルドルフを送り届けるまでのおよそ半年間。それから暗黒大陸に渡るまでの一年間。そして、過酷だった暗黒大陸での激闘。

 けれど、それで得たものは、バンと離れて己を高めるという判断。

 それが間違っていたとは思わない。事実、GFに配属されてからの実績は、離れた間の経験をフルに活かし、十二分な成果を上げている。けれど、その間にバンは新しいパートナーと、新しい絆を築き上げ、そして今もそれを自身の中に持ち続けている。

 

 悔しいんだ。

 

 まるで、(フィーネ)と一緒にいた時間より、彼女(リーリエ)と一緒にいた時間の方が、濃厚で、充実していたかのように感じてしまう。そんなの、悲しくて悲しくて、心が痛くて痛くて、どうしようもない。

 最近のバンと私の距離感もそうだ。溝ができてしまって、(フィーネ)はそれを超えられずにいる。超えられないまま、彼女にバンを奪われたりしてしまったら。

 

 そして今日、シャドーフォックスのパイロットにリーリエが決まりそうになったその時、フィーネは声を上げた。

 このままではリーリエがバンのサポート役というポジションについてしまう。それは、今日までGFで築いてきたバンとフィーネの関係に、土足で踏み込まれ、あげく奪われそうになっていると同意義だ。

 

 我慢できなかった。そこは私の居場所なんだと、言いたかった。

 だから、だから……。

 

 

 

 

 

 

 テストの内容は簡単だ。指定されたコースを走ってくればいい。以前、ライトニングサイクスの最終テストの見学をしていた経験もあり、どんなものかの想像もしやすかった。

 すでにリーリエがテストを終えた後であり、それを見ることができたのもフィーネにはアドバンテージがあった。

 

『そんじゃフィーネ。準備はいいな』

「はい、いつでもいけます」

 

 オペレータの担当はトミー・パリス大尉。直接会ったのは今日が初めての相手だが、バンが話してくれる話題の中で名前を聞いたことがある。何度もシャドーフォックスに乗り、その経験を反映してきた男がモニターしてくれるのだから、心配はない。

 

「よろしくね、フォックス」

 

 操縦桿を握りながらフィーネはシャドーフォックスに向けて言葉を投げた。バンも偶ににだが、ブレードライガーを起動する前にこうやって話しかけている。

 ゾイドは生き物だ。戦闘マシンなどでは決してない。バンと共にヒルツに向けて放った、彼の思想を否定する言葉。それを実践する形で、今の自分で表す。

 

『そんじゃ、スタート!』

 

 トミー・パリス大尉の合図と同時に、シャドーフォックスは一声高く吠えた。そして、迷うことなく走り出す。途端に、体が宙を跳ね、次いで大地を蹴りつける重量を強く感じた。いつもはバンがブレードライガーとともにやっているそれを、今日はフィーネが一人でやる。

 自分でゾイドを動かすのは別に初めてではない。バンの代わりにブレードライガーを、他には主にプテラスなどを動かした。

 同じだ。ゾイドの意志を感じ、体をそれに委ねる。ゾイドの意識と自分の意識が混じり合う。その刹那で自分を意識する。ゾイドの意識を感じながらも、自分を見失わない。そうすれば、あとはゾイドが勝手に動いてくれる。こうしてほしいと頼めば、それをゾイドが反映してくれるのだ。

 

 本来ならば、今フィーネがやっているゾイドの操縦は非常に高度な技術と、危険が伴うものだった。ゾイドとの精神リンクを極限まで高める――限界共鳴(フルリンク)と呼ばれる乗り方だ。一歩間違えて自分を見失えば、共鳴突破(オーバーリンク)と呼ばれる域に達し、乗り手の意識はゾイドに飲まれる。

 ブレードライガーやジェノザウラー。共和国と帝国で少しずつ実戦配備が進んでいる二機のゾイドには、当所ゾイドのウイルスとも呼ぶべきシステムが組み込まれる予定だった。それはゾイドの意志を強く放出させ、いとも簡単に共鳴突破(オーバーリンク)してしまうものだった。

 かのシステムがなくとも、ゴジュラスなどの自我が強く凶暴なゾイドは、共鳴突破(オーバーリンク)の域に達しやすい。

 

 しかし、フィーネは限界共鳴(フルリンク)をやってのけた。額の刺青のような文様が淡く輝く。古代ゾイド人の力の一つだ。嘗てオーガノイドを介してゾイドと深くつながる乗り方が主流だった古代ゾイド人にとって、今は高難度とされるそれは、日常的に行われてきたもの。

 

「大丈夫よ。一緒に走りましょう」

 

 これまでのパイロットとは違うとフォックスも悟ったのだろう。フィーネの意識にシャドーフォックスの困惑が流れ込む。フィーネはそれをやさしく包むように諭し、大地を共に駆ける喜びに思考を移させる。

 

『いい感じじゃないか、フィーネ。オペレーターにしてたのがもったいないな』

「いえ、新しいリンクシステムのおかげです」

 

 パリスの言葉を謙遜して返す。シャドーフォックスに導入されたシステムはパイロットとゾイドの精神リンクを補助するもので、実際にこれがあるだけで従来の人がすべてを把握せねばならない操縦とは負担が大きく変わってくる。

 ゾイドに任せられるところは任せる。練度が足りない一般兵でも限界共鳴《フルリンク》に近い形に持っていきやすくなるのだ。

 ただ、フィーネが行使することのできる古代ゾイド人の力は、それを上回る効果をもたらす。

 

『じゃあトップスピードに移行だ』

「はい」

 

 フィーネはシャドーフォックスに意思を送る、同時に、自然と指がスロットルを開いた。シャドーフォックスの全身にエネルギーが行き渡り、フォックスの足が力強く大地を蹴る。

 眼前に迫るルートは岩場だ。隆起した岩がいくつも並び立ち、行く手を阻害する。

 

「フォックス、行きましょう!」

 

 シャドーフォックスがフィーネに応え、岩場に突入した。

 隆起する幾本もの岩山、その隙間を縫うようにシャドーフォックスは機体を滑り込ませた。大型の機体ならば勢いに乗った機体のスピードを殺しきれず、また機体の大きさが災いして岩に体をこすりつけてしまうかもしれない。

 しかしシャドーフォックスは機体が擦れる直前、刹那の隙間を駆使して岩の密林を駆け抜けた。

 従来のゾイドにはない身のこなしだ。ゾイド乗りとしての経験が拙いフィーネが乗ってこれなのだから、一流のゾイド乗りが乗りこなした時に発揮される底力は計り知れない。これでコマンドウルフと同サイズなのだから、その性能には目を見張る。

 いや、とフィーネは思う。

 

 ――流石ね。()()ミラージュフォックスを基にした機体だわ。

 

 誰にも言わず、心の中にだけとどめる事実を、フィーネは噛み締めた。

 

 そしてテストは最終局面に移る。

 基地に帰還するコースに入ったフィーネとシャドーフォックスの前に三体の狼型ゾイドが現れる。キャノピーすらも薄いグレーに塗りつぶされたコマンドウルフ――訓練で使用される仮想敵、ダミーコマンドだ。

 ダミーコマンドは人工的に作られた簡易ゾイドコアを搭載した、通常のゾイドと比べれば数段性能が落ちる機体だ。その分通常のゾイドよりも安価で量産が可能であり、新型機のテストや訓練などの標的として用いられる。

 フィーネとシャドーフォックスは、最後にこのダミーコマンド三体を相手にしなければならない。

 

 横に広がり、並列しながら駆けてくるダミーコマンドに対し、フィーネはシャドーフォックスの機首を左に向けた。横っ腹に向けられるビーム砲の斉射を恵まれた運動性能でい躱し、そのままダミーコマンドたちの横につく。と同時に背中に装備した徹甲レーザーバルカンの砲身をコマンドたちに向けた。

 

「――っ!」

 

 小さな、ほんの小さな()()を切り捨て、トリガーを引く。一気に吐き出されたレーザー弾丸が方向転換するダミーコマンドたちに襲い掛かり、うち一機の頭部に直撃する。失速した機体を、追い打ちのごとくレーザー砲が撃ち抜き、いくつもの風穴を開ける。

 

 あ、とフィーネは息をのんだ。頭部を撃ち抜かれたダミーコマンドは急速に力を失い、突っ伏すようにして倒れた。その身からは、欠片ほどの生命力も感じられない。

 徹甲レーザーバルカンは、徹甲の名の通り貫通力の高い武装だ。バルカンであるため連射性にも優れる。その貫通力は、装甲の薄い高速ゾイドであり、さらに機体自体の性能も数段低いダミーコマンドでは防げるはずもない。おそらくは内臓された人工ゾイドコアも打ち抜いてしまったのだろう。

 

 ――ごめんなさい……。

 

 フィーネは心中で謝罪の言葉を呟いた。

 訓練用で、打ち倒されるためだった。そのために作られ、そのために散った。作られた命だ。いや、ダミーゾイドには、一般的には車と同じ程度の価値しかないのだろう。『命』ではない。ものとして扱われる。たったそれだけのもの。

 けれど、フィーネにとっては、ダミーゾイドといえど、ゾイドに変わりはなかった。命には、違いなかった。

 だから、その感情には、間違いはなかった。

 

「――え!?」

 

 その瞬間だった。コックピットが激しく揺れた。

 僅かに目を離した隙にダミーコマンドからの砲撃が当たったのかとも思ったが違う。その揺れは止まることなく、シャドーフォックスは頭を左右に、上下に激しく振り回した。

 

「どうしたの!?」

 

 フィーネには、その原因がすぐに分かった。

 シャドーフォックスだ。フォックスがパイロットの意を無視して――否、それすら煩わしそうに機体をめちゃくちゃに振ったのだ。

 

『お、おいフィーネ! どうした!』

「フォックスが――」

 

 それ以上の言葉を告げる前に別の揺れが機体を揺さぶった。今度はダミーコマンドからの砲撃だ。突然の事態にパリスからの操作も間に合わなかった。ダミーコマンドは当初のプログラム通り、テストを続行している。

 

 クウォオオオオオオッ!

 

 シャドーフォックスが吠えた。

 揺すられたことに対し激しい憤りを抱いたのか、反撃にされたことに怒ったのか。ギリリと牙を噛み鳴らし、爛々と金色に輝く瞳と同じ光を前脚の爪に宿し、砂地を強く蹴立てる。

 獰猛な金属生命体の本能を剥き出しにし、瞬く間に距離を詰めるとダミーコマンドの片方に躍りかかる。輝く爪を振り上げ、一息に叩きつけた。

 

 一閃。

 ダミーコマンドの頭部が飛んだ。首より上を失くしたダミーコマンドがゆっくりと横倒しになる。しかしシャドーフォックスは一瞥すらしない。それどころか、並行して次の動作に移っていた。

 大地に降り立つと同時に尻尾に仕込まれた武装を展開する。尾先が二つに分かれ、内部の砲塔が顔を覗かせる。砲塔から打ち出されたものは、一息に展開された。漁師が扱う投網のように大きく蜘蛛の巣状に拡がったそれは、残るダミーコマンドに覆い被さると眩い電光を発し、捕らえた獲物を嬲った。

 着地し踵を返したシャドーフォックスは、捕らえた獲物にとびかかるとその首筋にかみつき、引きちぎり、機能を停止したと確信すると腹を食い破る。

 

 圧倒的な力でダミーコマンドを圧倒したシャドーフォックス。相手がダミーではないコマンドウルフだったとしても、結果は変わらなかっただろう。

 本来ならば感心こそすれ脅威を感じることはないはずなのだが、フィーネが抱いたのは後者だった。

 

「あ……」

 

 自身が乗ったゾイドが、凄惨なまでに戦いつくした。その光景は、到底、見れたものではなかった。

 シャドーフォックスは自らの意志で戦い、ダミーコマンドたちを斃した。フィーネの操縦のもとで仕留めたのは最初の一機だけだ。だが、フィーネには自分が『殺した』としか思えない。

 

 その時、フィーネは初めて気づいた。

 シャドーフォックスは、呼んでいた。他ならぬフィーネを。

 フィーネにはゾイドの言葉を理解する力はない。けれど、他の人と比べれば、ゾイドの意志を理解しようとした。それが操縦にも表れていた。

 だから、シャドーフォックスは呼び掛けていたのだ。

 

 けれど……。

 

 シャドーフォックスは再び苛立たしく機体を振り回した。頭を大地に叩きつけ、振り上げて左右に振りまわし、上下に揺さぶる。まるで、フィーネを投げ捨てようとしているかのようだ。

 

『フィーネさん!』

『くそ、どうなってやがる!』

 

 トーマが、パリスが口々に叫んだ。けれど、どうすることもできない。シャドーフォックスの操縦はコックピットでしか行えない。けれど、それをするフィーネが、もはやそれを行える域にいなかった。

 

 

 

『フィーネ!』

 

 ふと、思考を手放しかけたフィーネの耳たぶを、懐かしい声が叩いた。

 もう、ずっと聞いていない気がした。

 遠くに行ってしまったような感覚だった。

 いつもそばにいるのに、毎日話すのに、なぜか、懐かしいと思えてしまった。

 

 彼の――バン・フライハイトの声が。

 

「――バン」

『ジーク! 頼む、時間を稼いでくれ!』

 

 バンの指示に応え、ジークが飛んだ。一直線にシャドーフォックスへと飛び込むと瞬時に合体し、シャドーフォックスの意志とせめぎ合った。

 その時だ、明確なシャドーフォックスの意志がフィーネに流れ込んだ。ジークはフィーネと対をなすオーガノイドだ。ジークが合体したことにより、より強くシャドーフォックスの意識がフィーネに伝えられたのだろう。

 そして、フィーネは自覚した。シャドーフォックスを怒らせてしまったのは――自分だ。

 

 

 

 視界に蒼いゾイドの姿が映った。携えた二本の刃を抜かず、先のジークに続くように躍り込んでくる獅子型のゾイド。

 ブレードライガー。

 

『一気に抑え込む! フィーネ、わりぃけど衝撃に備えてくれよ!』

「うん!」

 

 自身が負傷するかもしれない行動に、しかし迷いはない。フィーネにも恐怖はなかった。バンなら、信じるバンなら、きっと大丈夫。そう確信し、ジークと一緒にシャドーフォックスをその場から動かさないよう操縦桿を握りこんだ。

 

 思うように動けないシャドーフォックスの横腹にブレードライガーが体当たりをかます。多少の加減があったとはいえ、大型機と中型機の体格の差は歴然だ。押し倒される形になったシャドーフォックスの腹を踏みつけ、完全に機能が停止すると、ブレードライガーのコックピットが慌てて開かれるのだった。

 


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