ZOIDS ~Inside Story~   作:砂鴉

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第112話:鉄竜騎兵団(アイゼンドラグーン)VS終焉の使者(デススティンガー)

 巨体による威圧感から来るものか、ヴォルフは一瞬で圧倒された。

 元となった海蠍という生物の異質性も影響があったかもしれない。ともかく、初めて見る『デススティンガー』という名の脅威に圧倒されたのは確かだ。

 

 だが、ヴォルフには言葉を失っている時間はない。すぐに自分が操る機体のモニターに視線をやり、損傷具合をチェックする。

 

「……頭部シールドは正常に作動。システムの方も、問題はないな。――ふっ、流石だ、ザルカ」

 

 ヴォルフを乗せるゾイドは、アイアンコングではなかった。

 元々ヴォルフのために制作されていた鉄竜騎兵団(アイゼンドラグーン)の旗艦ゾイド。その初号機となる機体がアクシデントから信頼する部下の一人の機体となり、ヴォルフ専用機となるはずだったそれは開発を大きく遅らせることとなった。

 だが、それも好意的に捉えることが出来る。実験的とはいえ、ある伝説のゾイドに搭載されたシステムを反映させた、新たなヴォルフ専用機の開発に繋がったのだから。

 

 バーサークフューラーZ(ゼネバス)

 

 鉄竜騎兵団(アイゼンドラグーン)の紅き疾風、カール・ウィンザーのバーサークフューラーから得られた実戦データと暗黒大陸でヴォルフ自身が乗りこなした機体の残骸から得られたデータ。その二つを参考とし、実験的に作り上げられた機体だ。

 その性能は申し分なく、デススティンガーの荷電粒子砲を真っ向から受け、逸らすことに成功した。エネルギーの消耗は激しいが、もう数分、戦闘行為を続ける分は残されている。

 

 ――いけるな。時間稼ぎなら、保ち堪えられる!

 

 操縦桿から伝わってくる愛機(フューラー)の鼓動を強く感じながら、ヴォルフは叫ぶ。

 

「全機攻撃を開始せよ! 帝国軍が戦線を離脱するまで、奴に攻撃の隙を与えるな!」

 

 ヴォルフの号令に従い、付近に潜んでいたゾイドたちが一斉に雄叫びを上げる。ガンタイガーやディロフォースと言った、鉄竜騎兵団(アイゼンドラグーン)が誇る、へリックガイロスのものよりも高性能な小型ゾイドたちだ。尖らせた能力だけを見れば、中型クラスのゾイドにも匹敵する力を秘めている。

 だが、デススティンガーは強大だ。その程度では動きを止めることも叶わず、放たれた火砲やレーザーは全て強靭なEシールドに弾かれた。

 無論、ヴォルフの策はそれも織り込み済みだ。

 

「アンナ! 奴のEシールドを叩き斬れ!」

「了解!」

 

 一瞬、弾幕の止んだ隙をついてアンナとジェノリッターが突撃する。その勢いもプラスした大剣、ドラグーンシュタールを大上段から振り下ろす。

 空気を断ち切り、豪快な風切り音を立てた剛刃がデススティンガーのEシールドとぶつかり、淡いピンク色の光を飛び散らせた。ジェノリッターの大剣は、刃の腹にシールドを発生させる機能を有している。刃全体にシールドを纏わせることにより、シールド同士の衝突でシールド発生機能をショートさせる狙いだ。シールドライガーのそれで可能だったことが、より強力な後発機であるジェノリッターのシールドで出来ないはずがない。

 シールドを封じたジェノリッターはそのまま、もう片方の大剣をデススティンガーの腕の付け根に振り下ろした。シールドを失ったデススティンガーの装甲に、鋭く厚い刃が叩きつけられる。が、当然ながら一撃では断ち切れるはずもない。

 

 シールドを打ち消したジェノリッターを待っていたのは、巨大な鋏による殴打だった。爪部分を振ってジェノリッターの機体が打ちのめされ、大きく後退させられる。小型、中型のゾイドであればこの衝撃だけで機体がひしゃげ、当たり所が良くてもシステムフリーズに陥っていただろう。どうにか耐えきったものの、ダメージは大きい。

 

「くっ……次だ! ハルトマン!」

 

 歯噛みしながらヴォルフが次の合図を送る。

 それに応えたのは、崩れた収容施設の瓦礫を踏み砕きながらデススティンガーに突撃をかける大型ゾイドだった。特徴的な長い鼻を振い、その先端から淡い光の刃(ビームソード)を現出させ、「プォオオ!」と水を噴き出すような雄たけびをあげ、紺色のゾイドはデススティンガーに体ごとぶつかった。

 

 デススティンガーはそれでも揺るがない、ジェノリッターを打ち払ったのとは反対側の鋏を振り上げ、巨体が売りだろう紺色のゾイドを挟みこもうとする。

 紺色のゾイドは背部に装備されたミサイルを一気に撃ちこんだ。十六発ものミサイル弾が、万力のような鋏の根元で続けざまに爆発する。さしものデススティンガーもこれには一瞬動きを止めた。

 至近距離からの爆発は紺色のゾイドをも巻き込むが、すぐさま後退した彼のゾイドは損傷らしい損傷を負っていない。

 

「流石はザルカ博士。良い調子ですよ、エレファンダーCM(コマンダータイプ)

 

 紺色のゾイド――エレファンダーのコックピットに座ったヒンター・ハルトマンは、小さく安堵の息を吐きながら溢した。その言葉を噛みしめつつ、ヴォルフは次の指示を出すべくマイクを掴み上げる。

 

「いいか、出来る限り戦いを引き延ばせ。少しでも攻撃を加え、奴のデータを集めるんだ。我々がここで奴を仕留める必要はない。時間を稼ぎ、犠牲は出すな!」

 

 無茶苦茶を言っている自覚はありつつ、しかし最後のセリフは外せない。ヴォルフ達鉄竜騎兵団(アイゼンドラグーン)の最終目標は、デススティンガーによる動乱に決着をつけることではない。それは、わき道からふっと現れた厄介者でしかないのだ。この程度で犠牲を強いるなど、到底納得できない。

 

 ヴォルフの指示に、鉄竜騎兵団(アイゼンドラグーン)のメンバーたちはそれぞれのゾイドの雄叫びと放火で応えた。放たれるビーム砲が、砲弾が、ミサイルが、次々とデススティンガーの巨体に突き刺さり、爆炎と轟音を噴きあげた。

 やったのではないか。そんな甘い予想が、鉄竜騎兵団(アイゼンドラグーン)メンバーの間に湧き上がる。だが、ヴォルフはもちろんのこと、ハルトマンやアンナは一切表情を緩めず、むしろ険しい顔つきでそれぞれのゾイドの操縦桿を握りしめた。

 

 果たして、黒煙の奥から健在なデススティンガーがぬっと顔を出す。

 

「散れ!」

 

 ヴォルフが指示を飛ばした瞬間、デススティンガーの尾が火を噴いた。荷電粒子砲ではない。その付近に装備されたハイパーレーザーガン、ハイパービームガンから断続的に光が打ちだされ、大地を穿ち、収容施設の残骸を砕き、森に灼熱をもたらす。

 とっさのヴォルフの指示があった御蔭か、鉄竜騎兵団(アイゼンドラグーン)のゾイドたちはどうにか回避しきれた。だが、反撃は強靭な装甲でことごとく弾かれてしまう。まるで遊んでいるかのようなデススティンガーのそれに、攻めあぐねて反撃の手が止まる。

 

「くっ……私が出る」

「ヴォルフ!?」

「アンナ、援護よろしくな」

「――ああもう! 了解よ!」

 

 半ばヤケになったであろうアンナの声音に苦笑を溢し、すぐに身を引き締め直すとヴォルフはデススティンガーを見据えた。

 

「頼むぞ。フューラー」

 

 ポンとコンソールを撫で、ヴォルフはバーサークフューラーZの操縦席の脇に備えられたレバーを引き上げた。瞬間、バーサークフューラーZのバックパック内部に備えられた機構がまばゆい光を放ち、各部のジョイントキャップが力をみなぎらせるように輝き出す。

 

「エナジーシステム起動。エネルギー変換、荷電粒子……フルチャージ!」

 

 見せつけるように咢を開き、喉の奥からせり出した砲塔に青白い光が収縮する。ジェノザウラーやガン・ギャラド、そしてデススティンガーにデスザウラーと言ったこれまでに現れた荷電粒子砲搭載ゾイドのそれとは色が違う。ある種の悍ましさすら感じられるそれが、デススティンガーと比べれば小柄としか言いようのないバーサークフューラーZの機体に溜め込まれていく。

 絶え間なく続く砲撃が止み、やっと息を吐けると言わんばかりに荷電粒子砲の発射準備を整えたデススティンガーの眼前に、ヴォルフとバーサークフューラーZはただ一機、立ちはだかった。

 

『……これは?』

 

 驚愕を含んだ声音だ。それを、ヒルツが発したのはおそらく、彼が表舞台に現れて初めてだっただろう。

 それを無視し、ヴォルフは訴えかける自らの頭痛を振り払って叫んだ。

 

「さぁ、我々の力を受けてみろ! デススティンガー!」

 

 青白い輝きが増し、青い火炎が噴き出される。

 瞬く間に空気を焼きつくし、しかし制御され束ねられた火炎――バーサークフューラーZの荷電粒子砲は、投げ放たれた槍のようにデススティンガーに迫る。

 一拍遅れ、デススティンガーの荷電粒子砲も火を噴いた。淡いピンクと桃色の鮮やかな、しかし禍々しさを纏った荷電粒子は幾本もの光を束ね、噴出された荷電粒子砲に真っ向からぶつかった。

 

 金とも銀とも形容しがたい光の残滓が飛び散り、戦場を不可思議な色の輝きで照らし出す。

 両者の荷電粒子砲は正面から衝突し、拮抗していた。

 考えられないことだ。デススティンガーは一般的な大型ゾイドの十倍はあろうかと言う巨体だ。その機体から放たれる攻撃の一撃一撃は、想像を絶するものだ。ゴジュラスやアイアンコングであろうと、一撃耐えるのがやっと。その最大火力を、バーサークフューラーZは真っ向から張り合って見せたのだ。

 その光景に、鉄竜騎兵団(アイゼンドラグーン)メンバーの一部は覚えがあった。一年と少し前、『惨禍』に立ち向かった彼らは、見たのだ。災厄をもたらす『惨禍』の数多の絶望を、たった一機で、体格差をものともせず凌ぎ切った赤い『獅子皇』の姿を。今のバーサークフューラーZは、獅子皇の残心を纏っているかのようだった。

 

 徐々に光が止み、両者の砲塔から放たれていた輝きが失せて行く。

 

「なにをしている! 攻撃を緩めるな!」

 

 ヴォルフが叫び、砲撃が再開される。デススティンガーからの無造作な遊びのような蹂躙劇を凌げることを確認すると、ヴォルフはレバーを引いた。バーサークフューラーの尾部の放熱フィンが開き、シューと溜まった熱が放出されていく。そして、ヴォルフ自身も大きく息を吐いた。

 

 ――長くは、保たんか。

 

 思い出すのは一年前の暗黒大陸での経験だ。惨禍の魔龍たち、古代ゾイドの三頂点(トライアングル)を倒すために作られたエナジーライガーを動かしたあと、ヴォルフは言いようのない疲労感に襲われた。それは、まさしく命を吸われているかのような感覚だった。寿命が十年は縮んだのではないか、そうも思った。

 ヴォルフの乗るバーサークフューラーZは、そのエナジーライガーの残骸から得たデータを、解析されたエナジーシステムを導入している。

 エナジーシステムの理屈はザルカでさえ満足に把握できていない。現状では、威力が()()()()()。下手をすれば、機体が内部崩壊を起こすだろう。本来ならばまだ実戦に導入すべきでないものだった。

 だが、そうも言っていられないのだ。ヴォルフ達の相対する敵は、おそらく、今目の前に立つデススティンガーを凌駕する力を持って現れる筈だ。それに対抗できないようでは、準備にすらならない。

 そもそも、【たかだか】デススティンガー()()()に苦戦しているようでは、話にならないのだ。

 

「まだだ。フューラー!」

 

 放熱フィンが音を立てて閉じ、バックパック内部のエナジーチャージャーが黄金色の輝きを放つ。バックパックの左右と脚部に備えたブースターが火を噴き、バーサークフューラーZは正面からデススティンガーに突撃をかける。

 機体前面にEシールドを展開する。デススティンガーの荷電粒子砲を逸らすだけの力を秘めた強靭なEシールドだ。打突用の兵器としても、十分価値がある。

 狙うは正面。装甲の薄い箇所を狙う余裕は、今のヴォルフにはない。ただ今できる最大の火力を、全力でぶつけるだけだ。

 

 ギシャァアアアアアアッ!!!?

 

 デススティンガーが悲鳴を上げてのけ反った。両の鋏を引き、正面に立つバーサークフューラーZ目がけて叩きつける。だが、それより早くバーサークフューラーZは一歩下がった。

 鋏による圧殺を躱したバーサークフューラーZは、そのまま身を屈めてデススティンガーの顔面の懐まで潜り込む。そして、バチバチと電撃の走る牙を叩きこんだ。

 狙いはジェノリッターが大剣を叩きこんだ右腕の付け根だ。僅かながらも痛打を与えたそこに、エナジーチャージャーが生成するエネルギーを溜め込んだ牙を突き立て、そのエネルギーを直接流し込む。

 

『ふっ、アンビエント』

 

 ヒルツが小さく零すと、上空に待機していた赤いオーガノイドがデススティンガーに合体する。赤い輝きに包まれ、デススティンガーの傷は瞬く間に再生していった。そして、腕にかみついたバーサークフューラーZをもう片方の鋏で掴み、放り投げる。

 

「くっ……」

 

 咄嗟に機体のバランスを保ち、土煙を上げ、滑りながらも着地する。

 

「ヴォルフ!」

「ヴォルフ様!」

 

 アンナが、ハルトマンが口々に主の名を叫んだ。しかし、ヴォルフはそれに応えるよりも、デススティンガーを睨みつけ、怒声を吐き出す。

 

「うろたえるな! オーガノイドを合体させたのだ。我らが押している証拠だ!」

 

 ヴォルフの言葉に、隊の者たちがはっとなる。

 強大な相手が再生を果たしていることに絶望するよりも、それを使わざるを得ない状況に追い込んでいるという事実があった。ヴォルフの言葉は、デススティンガーと相対する者たちの心を奮い立たせた。

 オーガノイドを合体させ、再生を果たしたデススティンガーが甲高い声を上げた。自らを危機に追いやった者どもに対し苛立ちを覚え、全力で叩き潰してやると言わんばかりの殺気を放つ。

 しかし、それに臆する鉄竜騎兵団(アイゼンドラグーン)ではなかった。むしろ一層士気を高め、デススティンガーに対する包囲を崩さず攻撃を再開する。

 

 むろん、ヴォルフも愛機の操縦桿を握り直し、隊の最前線で味方を鼓舞すべく再び戦場に足を踏み出す。だが、

 

「――ぐっ……かはっ」

 

 唐突だった。胸の奥をかきむしられるような痛みが全身を駆け巡り、一瞬ヴォルフの意識が飛んだ。同時に、バーサークフューラーZが見に纏っていたエナジーチャージャーからの輝きが目に見えて減退する。

 バーサークフューラーZは、実戦配備はおろかテストすら行われていなかった機体だ。開発を任されていたザルカからも「何が起こるか分からない」「エナジーライガーに乗った時以上の反動を覚悟しておけ」と言われている。状況が状況だけにヴォルフは無理を押し通して自らそのコックピットに座ったが、その反動は予想をはるかに超えて大きい。

 

 ――過ぎたシステムを組み込まれ、フューラーが悲鳴を上げているのか……。

 

 ヴォルフには、その痛みの原因がなんとなく分かった。バーサークフューラーは従来のゾイドと違い、捕獲した野生体をそのまま素体として作られたゾイドだ。通常のゾイドよりもパイロットとの相性がものを言い、ゾイドの精神状態がそのままパイロットにも影響を与える。ゾイドとの精神リンクが、他のゾイドよりもずっと重要な要素となって来るのだ。

 エナジーシステムはそもそもエナジーライガーのために作られたものだ。古代の叡智の結晶であるそれを、現代のゾイドに形ばかり真似ても、本来のそれには遠く及ばない。むしろ、痛すぎる反動と言う形で返ってきたのだ。

 

「ヴォルフ!」

 

 その変化を真っ先に感じ取ったのは、アンナだった。

 共に部隊の最前線で力を振っていたジェノリッターは、バーサークフューラーZの相方と呼ぶべき地位にある。そしてなにより、アンナがヴォルフの異常を感じない訳がない。

 

 デススティンガーとの戦いで最重要となっているのはヴォルフとバーサークフューラーZだ。彼らが居なければ、鉄竜騎兵団(アイゼンドラグーン)の戦線は瞬く間に崩壊するだろう。

 そして、かろうじて保たれている戦線をさらに引き裂く影が、その場に現れた。

 

 闇夜に包まれたその場に、一体の白銀の影が現れた。影はブレードライガーに匹敵する――あるいは上回る機動力で鉄竜騎兵団(アイゼンドラグーン)の張った弾幕を掻い潜り、痛烈な格闘の一撃をバーサークフューラーZに見舞った。

 反射的にそれの接近を感じ取ったフューラーは後ろに跳び退る。しかし、躱しきれなかった光爪(レーザークロー)による一撃が、フューラーの額に三本傷を残した。

 

『やっほー、なんか大変そうだからさ、手伝いに来たよ。ヒ~ル~ツ?』

『……余計な真似を』

『いくらデススティンガーだって、エナジーライガーの力には苦戦するって。来て正解だろう?』

 

 現れた白銀のゾイド――ライガーゼロから無邪気な子供そのものの声が響く。ライガーゼロ・シロガネを操る神出鬼没の少年、コブラス・ヴァーグだ。

 ヴォルフも彼のことは存じていた。歪獣黒賊(ブラックキマイラ)の本拠地である獣の里(アルビレッジ)を単機で襲撃した犯人であり、レイヴンが一時的に行方を眩ますきっかけとなった事件の首謀者だ。言うなれば、デススティンガーの出現に至るまでの一連の騒動の根っこに潜んでいた者である。

 

「コブラス、だったな……。君は、何が目的だ……?」

「この惑星Ziの崩壊。そこに僕の望みがあるのさ」

 

 こともなげに、コブラスは言い放つ。

 

「そのためにはデススティンガーに暴れてもらわなきゃいけないんだ。そして、機が熟すのは、もう、すぐそこだよ」

「機、だと?」

 

 それはねぇ、と口を開いたコブラスだが、デススティンガーの爪が両者の間に叩きつけられた。そこまでだ、というヒルツの意志が言外に発せられ、コブラスは「はいはい」とやる気なさげに答える。

 

「とりあえず、君たち鉄竜騎兵団(アイゼンドラグーン)ももう邪魔でしかないんだ。せっかくの機会だし、この場で潰させてもらうよ。幸い、切り札(フューラー)はもう限界のようだし」

 

 ライガーゼロが猛々しく吠える。

 すると、付近に潜んでいたのだろうヒルツ配下の部隊が顔を出した。ヘルディガンナーにレブラプター、ステルスバイパーにガイサックといった、奇襲戦に長けたゾイドの姿が多く見える。数だけは多く、犠牲もなしに撤退するのは容易ではない。

 

「さぁて、そっちにとっての蹂躙劇、僕にとっての殺戮劇を始めようか」

 

 




バーサークフューラーZはゾイドサーガに登場したあれです。

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