ZOIDS ~Inside Story~   作:砂鴉

1 / 175
 初めまして。アニメZOIDSの二次小説を書いて行こうと思い至りました、砂鴉(スナガラス)と申します。小説家になろうで小説を書いていますが、ゾイドの二次作を書きたくなり、こちらにも顔を出すことにしました。
 大大好きなゾイドの作品、楽しんで書いて行きますので、よかったらお付き合い下さい。

 アドバイスや改善点、などなど教えて頂けると幸いです。


魔獣胎動編
プロローグ


 惑星Zi

 嘗ては高度の文明が発達し、栄華を築いた惑星。その文明が滅び、住人が消えたこの星は静かなものだった。

 

 しかし、その静寂は破られた。

 はるか遠くの惑星。地球からの移住民が惑星Ziにたどり着き、再びこの星は繁栄の道を歩み始める。

 移住民たちはいくつかの集落を築き、やがていくつかの国が生まれ――そして滅んでいった。最後に残った国は3つ

 

 へリック共和国。

 ガイロス帝国。

 そして、ゼネバス帝国。

 

 三つ巴の戦争は激化し、だがその一角――ゼネバス帝国が滅んだことで戦火は勢いを減じらせた。

 拮抗した戦力を持ち、いつ終わるとも知れ争いを続けたへリック共和国とガイロス帝国は停戦協定を結び、戦火の味を占めていた惑星Ziに束の間の平和が訪れる。

 もっとも、未だ熱く火花を散らす両国間には溝が深く、真の平和と呼ぶには程遠いものだったが。

 

 

 

 そして、停戦協定が結ばれてから幾数十年の時が経った。

 

 

 

 

 

 

 西方大陸エウロペ。

 惑星Ziにたどり着いた人類が最初に降り立った大陸だ。

 

 エウロペは主に四つの地域に分けられており、それぞれ方角から【西エウロペ】【南エウロペ】【北エウロペ】と呼称されている。

 

 そして、ここは北エウロペ。“エウロペの屋根”の異名を持つオリンポス山の麓。オリンポス山を囲むメルクリウス湖の湖畔に築かれた小さな集落だ。

 名を【フォレストコロニー】という。

 湖近くの森林を切り開いて作られた、隠れ里というにふさわしい、静かな村だ。

 

 南エウロペでは帝国と共和国の一触即発の空気にさらされ、穏やかとは無縁の暮らしが多い中、この集落は酷く牧歌的だった。住民はのんびりと釣りをたしなみ、豊かな森林からの恵みを受け、のびのびと暮らしていた。

 

 

 

 そんなフォレストコロニーは、この日――壊滅した。

 

 住民は何が起こったのかも理解できなかっただろう。

 集落から望むオリンポス山の山頂が突如光ったかと思うと、凄まじい爆音と熱線が村を突き抜け、その一撃で、フォレストコロニーは壊滅したのだ。

 住人達に思考など許されない、恐怖を感じる余裕もない。ほんの一瞬で、全てが消えたのだ。

 

 

 

 コロニーが見下ろせる高台。そこに一人の少年がいた。

 少年は背が低く、おそらく十にも満たない年だろう。

 

 少年は、何が起こったか理解できていなかった。いつものようにゾイド乗りの夢を見て、森の中を駆けまわっていただけだ。ただ違うのは、その日少年は一つの約束を破ったこと。

 

『絶対に父さんのゾイドに乗ってはいけない』

 

 少年が父と交わした約束だった。

 だが少年は、好奇心を抑えきれずに父のゾイドに乗った。その瞬間、父のゾイドは暴れ出した。少年を乗せたまま、明後日の方向に向かって走り出したのだ。父以外を受け入れなかったそのゾイドを少年が制御出来る筈もなく、丸一日、少年にとって未知の世界を彷徨い、父のゾイドの意向でやっと、少年が懐かしさすら感じる頃になって村に帰ってきた。

 そして目にしたのがこの有様だった。

 

「…………あ? …………え?」

 

 少年の口から呟きが漏れる。それは、意味をなしていない。当然だ。少年には、目の前の惨状が理解できていない。

 だが、ただ一つ分かることがあった。

 今、この瞬間に、少年は孤独になったのだ。

 頑固な父も、優しい母も、甘えんぼな弟も、なにもかも、この瞬間に失ったのだ。

 

「う……ああああああああああああ!!!!」

 

 少年の現実から、穏やかな暮らしは消え去った。

 そして、その時こそが少年――ローレンジ・コーヴの物語の始まりだった。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。