贖罪のゼロ   作:KEROTA

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冒涜弔歌OLIVIER-6 墜落心理

 旧式のバグズ手術時代には30%だったその成功率を最初に45%まで押し上げたのは、科学界の頂に君臨する天才科学者が1人“レオ・ドラクロワ”だった。

 

 その後、U-NASAの科学部門を統括するクロード・ヴァレンシュタインがより効率的・簡易的な(正確に言えば凡百な科学者()でも扱える)術式を確立したことで、MO手術の成功率は45%として定着することになる。

 

 だがその二人ですら、U-NASAドイツ支局が誇る天才にして大罪人“ヨーゼフ・ベルトルト”が開発したαMO手術の成功率を上げることはできなかった。

 

 否――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()というのが正しい。

 

『有効なのは認めるとも。1000人に3人の成功率も、人口飽和のご時世じゃむしろ好都合なくらいだ。ただね――この技術はどうにも、そそられない』

 

 ヨーゼフと故郷を同じくし、しかしフランスへと亡命した天才は語る。

 

『僕の目的はただ1つ、それを実現するには既存のMO手術で十分なんだ。クライアントの希望があれば、それに合わせるのもやぶさかじゃあないが……ともかく、僕にとっては何の価値もない。だから、わざわざ手を付ける必要性も感じないね』

 

 

 

 

 

『αMO手術は失敗作じゃない、欠陥品だ。技術は大多数の人間が等しく使えなければ意味がない。この点、αMO手術という技術は根本的な問題を孕んでいてね……すでに完成品でありながら、欠落があるのさ』

 

 底知れぬ大統領を恐れ、フランスからアメリカへと渡ったダ・ヴィンチの再来は言った。

 

『おそらく私やベルトルト博士が本気で取り組めば、成功率の向上は可能だろう。だがその過程で死体の山を築くのは非合理的だ。そして何より……ベルトルト博士はそれを望んでいない。だから私がαMO手術に手を付けることはないだろう』

 

 

 

 

 

 

『……』

 

 αMO手術の生みの親は頑なに口を閉ざし、黙して語らなかった。

 

 

 

 

 

 三者三様、理由は各々あれども、科学の天才たちはαMO手術に手を付けようとしなかった。故にその成功率は未だに0.3%のままだ。

 

 煌びやかさばかりが取り沙汰されるMO手術の本質は、死の危険と隣り合わせの人体実験。こと試作技術試験(αテスト)としての意味合いを兼ね備えたαMO手術は、その傾向が顕著である。

 

 失敗=死。だから各国はこぞって成功率の向上に躍起になると同時に、よりリスクの少ない方法を求めた。

 

 ある国(アメリカ)は、死んでも損失とならない死刑囚を被験者とした。

 

 またある国は、ベース生物の限定と被験者への負荷と引き換えに成功率を向上させた。

 

 そして――ある国は、母数を増加させることで相対的に成功例を量産しようと考えた。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 手術台の上に拘束されていたのは、1人の少女だった。ロシア人であることを加味してもその華奢な体は青白く、見る者に手折った花の枝のように儚い印象を与える。

 

 

 

「ぐ、ぎ、あああああああああああアアアあああ!?」

 

 

 

 そんな彼女の口から飛び出したのは、この世のものとは思えない凄惨な断末魔。か細い喉のどこから出るのかというような悲鳴を上げ、少女は目や口から血を噴き出しながらもだえ苦しむ。全身麻酔は正常に作用しているはずだが、それも気休めにすらなっていないようだった。

 

 明らかな被験者の異常。通常なら被験者の容体を安定させるため、手術室の中は俄かに慌ただしく、騒がしくなるだろう。

 

 だが手術衣に身を包み、マスクとゴム手袋つけ、手にメスを持った科学者たちの反応は、どこまでも淡白なものだった。

 

「こりゃ駄目だ、αMOが拒絶反応を起こしてる……これ以上の手術は無駄だな。施術失敗! それは廃棄しろ、室内を簡易洗浄したら次の手術に移るぞ」

 

「あーあ、また失敗ですか。今のところ、成功例は3726番だけ……正直、時間の無駄なんじゃ?」

 

「言うな言うな、金は出すってスミレス大統領からのお達しだ。給料のためと思って、さっさと片付けろ」

 

 そんな他愛もない雑談をしながら、科学者たちはろくに閉腹作業もしないまま、少女の体を廃棄ダクトへと放り込んだ。冷たい金属の床を滑り落ち、やがて少女の体は深い闇の底へと落下する。

 

 落下した彼女を受け止めたのは意外にも柔らかい感触であった。混濁する意識の中で開いたその目に映ったのは、自分と同じ顔をした無数の少女たち。折り重なるその肉体は、塔の昔に息絶えて硬直していた。

 

 ――彼女達は、クローンだった。

 

 細胞の提供者はとある女性科学者。体が弱く御しやすい女性という本人の特徴に加え、非常に幅広い生物――特に『他生物を利用する生物』への適合率が異様に高いという特異体質から、彼女は遺伝子提供を国から求められたのである。

 

 それを元にして大量生産されたのが、1万を超すクローンの少女たち。彼女達は紆余曲折の末、非常に強力な特性を持ったある生物に適合したことから、手当たり次第にαMO手術を受けさせられていた。母数が増えれば自ずと成功例も増えるだろう、という科学者たちの見立てであった。

 

 ――もっとも、健康な人間でも成功率僅か0.3%のαMO手術である。

 

 並の人間よりも体力や病気への抵抗力で劣るクローンを相手にすれば、ただでさえ低い成功率がなお下降することなど想像に容易い。実際、既に数千のクローンたちに施術がなされたが、未だに容体が安定しているのは1人のみだ。

 

 そして幸運な成功例やサンプルとして押収された数人の個体を除き、多くの失敗例たちは科学者の手によって、この奈落へと放り落とされるのだ。

 

「うぐ、うぅぅ……」

 

「い、たい……!」

 

「み……ん、な……」

 

 落下の衝撃で死ねた者は幸運なのだろう。折り重なる無数の姉妹たちの中には未だ息がある者がいて、闇の中で苦悶と嘆きの声を上げる。極寒の寒気の中、先程息絶えた姉妹の屍の上に横たわりながら、7005番の番号を割り振られた少女は思考する。

 

 ――あの苦しみを感じていない分、自分はまだ幾分マシなのだろうか。

 

 7005番は手術を受けたクローンの中でも、比較的経過が順調だった個体だった――なにしろ、αモザイクオーガンの定着には成功したのだから。残念ながら肝心の生物を埋め込む段階まで体力が持ちそうもないと打ち捨てられてしまったのだが、臓器自体に拒否反応を起こして地獄の苦痛を味わっている姉妹たちに比べれば恵まれている方だろう。

 

 彼女に施された麻酔の効果がまだ切れないうちに、彼女の感覚が死に始めたことも大きい。死体の廃棄孔内に暖房などあるはずもなく、この空間は極寒の冷気で満たされている。壊死し始めた細胞は皮肉なことに、彼女から苦痛という恐怖を取り除いていた。

 

「けほっ……」

 

 もっとも、痛みを感じていようといまいとこれから彼女が迎える結末には関係がない。彼女はここで、もう何分と経たないうちに死ぬのだから。

 

 ――いつの間にか、周囲は静寂で満たされていた。苦しんでいた姉妹たちにも、安らぎが訪れたらしい。ならば自分も、と7005番は重くなった瞼を閉じる。吸い込んだ冷気が肺を刺すが、鈍った彼女の感覚にはいっそ心地よくさえ感じる。その胸中に占める感情は、不安よりも安堵の方が大きかった。やっと死ねる……これで自分は、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 けれど同時に、彼女は思い描かずにはいられない――もしかしたら迎えられていたかもしれない、ありえたかもしれない未来の自分の姿を。

 

 贅沢を言うつもりはない。だけど、普通の女の子になりたかった。施設の窓ガラス越しに見かけた子供たちのように自由に外を駆け回って、日が暮れるまで遊んで、屈託なくみんなと笑って。そんな当たり前を、たった一回でもいいから体験してみたかった。

 

 

 

 ――そして。

 

 

 

 かつて7005番と呼ばれ、現在はワルキューレの一員“ヒルド”と呼ばれている少女は、当時のことを思い出す度に、何度だって思い知らされるのだ。

 

 その願いはきっと、自分の身の丈に合わない、過ぎたモノだったのだと。

 

 

 

「あらまァ、これは素晴らしいザマス! アヴァターラ卿へのお土産を探しに遥々ロシアへ着てみれば、アタクシの玩具にできそうなのもあるじゃないザマス!」

 

 

 

 ――だからこれは、出過ぎた夢を見た自分への神様が与えた罰なんだと。

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 ――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ、アタクシのワルキューレ達! 死に損ないの小娘にとどめを刺すザンス!」

 

 ブリュンヒルデの号令に従い、ワルキューレ達が一斉に飛び掛かる。鳥類の発達した筋力で振るわれた凶器の初撃を、ミッシェルはその場を跳び退くことで躱し。

 

「ぐ――ッ!!」

 

 次の瞬間、背後に回り込んだ別のワルキューレに、その背を切り裂かれる。咄嗟に振るわれるパラポネラの剛腕をひらりと避け、天上の梁にぶら下がった彼女の手の爪からはポタポタと血が雫となって落ちていた。

 

 鳥界の嫌われ者、カラス。

 

 ゴミを散らかしたり人間を襲うこともあることから、人間社会ではしばしば害鳥扱いされることもあるこの生物は、実のところあらゆる鳥類の中で最も“成功した”鳥であるといっていいだろう。

 

 ヒトという霊長類が生態系の頂点に君臨して以来、その営みは多くの生物に牙を剥いてきた。森は拓かれ、川はせき止められ、大気は汚染され――その環境の変化についていけず、何十何百という生物たちが絶滅してきた。

 

 だが、カラスたちは違う。彼らの多くはヒトによる環境の変化に順応し――否、ただ順応するだけではなく変化とヒトの営みすらも利用することで、都市部での繁栄を我が物とした。

 

 そんなカラスたちの最たる特性といえば、6歳児に匹敵すると言われる高い学習能力だろうが――彼らが空中で猛禽類と互角に渡り合う程に高い飛翔能力を持つことは意外に知られていない。

 

 なるほど、空の王者たる猛禽類にスピードやパワーでは確かに及ぶまい。しかしカラスたちは、猛禽類よりも大きな翼と広い視野を持つ。これが意味するのは彼らが高い旋回能力を有し、その死角が非常に少ないということ。純粋な強さでは遠く及ばない相手に、彼らは器用さを持ち、()()()()()()()()()

 

 そしてそれは、渡り鳥であるワタリガラスならばより顕著である。その飛行能力は様々な文献や資料において『ハヤブサに匹敵する』と言われ、種々様々なカラスの中でも間違いなくトップクラス。

 

 如何に素体が華奢な少女とはいえ、その遺伝子をよりにもよってαMO手術で埋め込まれた人間の集団が相手では、さすがのミッシェルでも分が悪かった。

 

「ンン~! 侵入者が管制室に向かっているとルイス坊ちゃんに聞いた時は肝を冷やしたザンス。けれどいざ迎撃してみれば、思ったよりも大したことないザンスねぇ?」

 

 ねっとりと、嘲るように言うブリュンヒルデ。それを聞いたミッシェルは、血混じりの唾を吐き捨ててジロリと睨む。

 

「随分な言い草だな……自分は碌に戦ってもいないくせに」

 

「これだから、短絡的で野蛮なガキは嫌いなんザンス」

 

 不機嫌そうに眉をひそめたブリュンヒルデの眼鏡に、蛍光灯の明かりが反射する。

 

「アタクシ、本業は戦闘じゃなくて情報操作や工作活動ザンス。適材適所って言うザンショ? 戦闘なんて野蛮な行為はアタクシのように優雅で華麗な貴婦人でなく、そこの小娘(ワルキューレ)たちのような、底辺の奴隷に任せておけば良いザンスよ」

 

「……腐れ外道め」

 

 湧き上がる怒りを抑え、ミッシェルは務めて冷静に分析する。彼女はこの少女(ワルキューレ)たちを知っている――厳密には、彼女と同じ規格で製造された少女を知っている。

 

 

 

 エリシア・エリセーエフ――裏アネックス計画において、ロシア・北欧第三班をまとめ上げる裏の幹部。

 

 表の第三班を構成するのが軍内でも選び抜かれた精鋭なら、裏の第三班を構成するのは凶悪犯や軍内の問題児などの荒くれ者。

 

 その指揮官に選ばれたのが女性と聞いた時にはどれほどの女傑かと思ったものだが、暫定メンバーで幹部会を開いた際、現れたのが年端もいかない少女だった時には目を疑った。

 

 事実その身体能力は、同年代の少女すらも大幅に下回るものだった。走ればものの数分で息は切れ、腹筋をさせれば数回で筋肉痛を発症する……仮に直接攻撃型のベース生物で手術受けていれば、例えαMO手術でも戦力として数えられるか怪しいほどだった。

 

 だが、これはどういうことだ?

 

「チッ!」

 

 正面から突っ込んでくるワルキューレの一騎に、ミッシェルは拳を振るった。手加減はしない――いや、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 パラポネラの筋力で放たれるミッシェルの拳は、テラフォーマーの頑丈な甲皮すら一撃で粉砕する。防爆布製のコートで威力は殺せるといえど、ワタリガラスとツノゼミの強化しか施されていないワルキューレに、その一撃はあまりにも重い。

 

「か、はっ!?」

 

 鳩尾を捉えた。普通ならば、そのまま地面に崩れ落ちて終わりである。事実、彼女は手に持っていた武器を取り落とし、その目に浮かぶ意識の光が薄れた。

 

 だが――

 

「ヘリヤ! 誰が気絶していいと言ったザンス!? 『起きて殺せ』!」

 

「――ッ!」

 

 ブリュンヒルデの声で、少女は意識を取り戻す。密着したミッシェルに、ヘリヤと呼ばれた少女は鋭利な鉤爪を振るった。それをすんでのところでかわし、ミッシェルは後方へ跳び退いた。

 

(有言実行とかそう言うレベルじゃねえ、いくらなんでも頑丈すぎんだろうが――!)

 

 開戦から妙だった、ワルキューレ達の肉体強度はクローン人間の強度を明らかに超えている。攻撃が通じていないわけではない。だがどれほど打撃を打ち込もうと、どれだけダメージを受けようと、ワルキューレ達は決して倒れないのだ。

 

 彼女達はなぜ立ちあがる――否、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ンッホホホホホ! 無駄無駄、無駄ザンス! アタクシの特性は“コマユバチ”! 死すら操るこの特性の餌食になった者は、死にたくても死ねない体になるザンス!」

 

 手詰まりに陥ったミッシェルをブリュンヒルデは耳障りな声で嘲り笑う。その背後に、不気味な雰囲気を纏う一匹の蜂の幻影を揺らめかせながら。

 

 

 

 小繭蜂(コマユバチ)。蝶の幼虫――アオムシを宿主とする寄生蜂の一種である。

 

 この蜂の生活環は、多くの寄生蜂のそれから逸脱するものではない。即ち、寄生宿主となる昆虫類に毒を注入し、卵を産み付ける。卵から孵った嬰児たちは哀れな宿主の肉体を糧として成長し、やがて大人になると散々に食い荒らした我が家を捨てて飛び立っていく。

 

 宿主の体表に無数の繭を作るその光景こそ中々にショッキングだが、とり立ててその生活サイクルに異常があるわけではない。異常なのは寄生する側ではなく、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 通常、寄生蜂に卵を産み付けられたアオムシを待つのは、内臓を食い荒らされた挙句に打ち捨てられ、惨めに死ぬという陰鬱な結末である。だがコマユバチたちは、宿主に死すらも許さない。

 

 内臓を食い荒らされ体表を突き破られ――通常ならば死んでなければおかしい程の損傷を追ってなお、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。しかし、コマユバチの呪縛はそれで終わりではない。アオムシたちは生ける屍となりながら、よりにもよってその元凶であるコマユバチの蛹たちを守り続けるのである。

 

 繭を害そうと捕食者が近づけば、アオムシは全身を大きく振り回して外敵を追い払う。そこに、本来の温厚な彼らの気質は見る影もない。

 

 この死すらも統べる特性から、コマユバチはハイチを始めとする一部の地域において『ブードゥー・ワスプ』の異名で呼ばれ、しばしば崇拝されているという。

 

 

「頭を破壊されても死なない病人! 食道下神経節を破損してもお構いなしのテラフォーマー! そして、全身の骨が破砕されようと戦い続ける少女たち! 教えてほしいザンスねぇ! たかが蟻如きが、どうしてアタクシが仕立てた不死身の戦死者(エインヘリャル)たちを屈服させ得ると思うのか!」

 

 なるほど、ギルダンたちが未だに内部に突入できていないのはそれが原因か――。

 

 合点が言ったと、ミッシェルは心中で呟いた。通信が再ジャックされる前にスレヴィンからもたらされた情報によれば、陽動部隊の迎撃に赴いたのは百程度のクローンテラフォーマーと十人ばかりの少女たちだったという。

 

 手練れ揃いの第七特務が手こずる相手とは思えなかったが、もしも敵が全員、不死身に近い耐久を身に着けているのであれば話は別だ。苦戦は必至、少なくとも援軍は望めないだろう。

 

「精々足掻くがいいザンス、ファースト。最初から全てを与えられていたお前が、神に至ることはない……力尽きたら、アタクシがゆーっくりお人形さんに作り変えてあげるザンス」

 

 死を虜にする人形師(コマユバチ)は、瀕死の弾丸蟻にねっとりと笑いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 廃墟の中で目覚めた7005番が最初に見たものは、地獄だった。

 

 目の前に無数に積み重ねられているのは、千は下らない自分と同じ顔をした少女たち。ある者はカッと目を見開き、ある者はぐったりと目を閉じ、どれ一つとして同じ表情はないけれど、誰一人として生きてはいなかった。

 

 姉妹たちの屍で築かれた山に群がるのは、この世のものとは思えないおぞましい怪物だった。身近な生物に無理やり当てはめるのであれば、それはムカデに近い。しかしその体節は1()()1()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、地獄の七圏より這い出たかの如き異形の様相を呈している。

 

 自分は、悪い夢でも見ているのか?

 

 7005番がその現実離れした光景に浮かべたのは、恐怖ではなくそんな滑稽な感想だった。

 

「――お目覚めかな、お嬢さん?」

 

 虚ろな思考から7005番を引き上げたのは、場にそぐわぬ明るい声だった。振り向けばそこにいたのは、奇天烈な格好をした白人男性だった。

 

 開花しかけの蓮華を象った冠のような帽子、その身に纏うのは中国道教の道士達の祭礼服。煌びやかな装飾はどこか、神聖な孔雀を彷彿とさせた。

 

「ここは、あの世? あなたは閻魔、様……?」

 

「おやおや、私が閻魔大王とは! どうやら君は、何か勘違いをしているようだね」

 

 男性は穏やかに、周囲の状況を思わず忘れさせてしまう程に柔らかく笑んで7005番に語り掛ける。

 

()()()()()()()()()()。ほら、心臓に手を当ててご覧。命の鼓動が聞こえるだろう」

 

 言われて7005番は、思わず胸に手を当てた。トクン、トクン、と聞こえるのは小さな心臓の声。そして――

 

 

 

「~~~~ッ!?」

 

 

 

 その瞬間、彼女の精神は歪な音を立てて折れた。自分は死んでいない、ならば()()()()()()()()()()()()()()()()()。この世ならざるこの世の光景を見せつけられ、それを現実だと認識させられて正気を保てるほど、7005番の精神は強くなかった。

 

「あ、ああああああああああああ」

 

「おや」

 

 驚く男性を尻目に、7005番は近くに転がっていた廃材を拾い上げた。早く、速く、疾く! 今すぐにこの地獄から逃れなくては! 

 

「あ゛ぅう!」

 

 先端の尖ったそれを、彼女は迷うことなく自分の胸に突き立てる。心臓を貫く、冷たい鉄の感触。鈍く鋭い痛みが胸に走り、少女は血を吐きながら目から涙をボロボロと流した。

 

 痛かった。痛くて、痛くて、痛くて――

 

 

 

「な、んで……!?」

 

 

 

 ――ただ、痛いだけだった。

 

「いやだ、いやだいやだいやだ! 死なせて、死なせて! お願いだから、死なせて!」

 

 叫びながら、7005番は廃材を何度も己に突き立てる。傷は痛々しく広がってぽっかりと胸に穴が空き、とうに失血死を迎えてもおかしくない量の血を流し――それでも、彼女に死という安寧は訪れない。

 

「ああ、どうか許しておくれ」

 

 男は憐憫の目で、決して叶わぬ自殺を試みる少女に語り掛ける。

 

「痛いだろう、苦しいだろう。いずれ君も、私が救ってあげよう。けれど、より多くの救済を成すためには人手が必要だ。()()()使()()()()()()、だから――まだ救って上げられない」

 

「天、使……?」

 

 呆然と7005番が聞き返したその時、この異様な空間に新たな怪人が表れた。

 

「失礼するザマス、アヴァターラ猊下――おや、最後の1人が目覚めたザマスか?」

 

 極彩色の怪人――でっぷりと太った、中年の女性だった。華美なその装飾が施されたその衣類はアヴァターラと呼ばれた男性と同様だが、彼のような神聖な気配はなく、絢爛ながらもどこか下品にさえ思える。

 

「ああブリュンヒルデ、見ての通りだよ。可愛そうに、少し錯乱しているようでね……傷の手当てをしてやって」

 

 アヴァターラの言葉を受け、ブリュンヒルデは7005番を見やった。その目に浮かぶのは侮蔑の色、「面倒ごとを増やしやがって」と言わんばかりだ。

 

「他ならぬ猊下の頼みとあらば、断る理由はないザマスね。天使としての使命を果たすためにも、修復は必須ザマスか――ほら、『ついて来るザマス』」

 

 ブリュンヒルデが言うと同時、7005番の肉体は彼女の意志に反して勝手に動き出す。手を振るアヴァターラに見送られ、彼女が連れていかれた先。

 

「あ、え……?」

 

 そこにいたのは、やはり自分と同じ顔をした少女たち。しかし先程までと違い、彼女達は生きていた。ありえない……彼女達の体に刻まれた検体番号は自分よりも早く手術を受け、そして死んだはずの番号なのに。

 

 いや、そもそもの話。

 

 と、7005番はここに至って初めて思う――なぜ、()()()()()()()()()()()()()()()。確かに自分は、手術に失敗したはずだ。手術の失敗は、死とイコール。それなのに……

 

「なん、で……」

 

「何でもクソもないザマス。お前達にはそれを知る必要も、権利もない……さ、そこに『横になるザマス』」

 

 こともなげにそう言ったブリュンヒルデに抗うことなどできるはずもなく。7005番は言われるがまま簡素な手術台の上に寝転び――そして彼女の、地獄のような奴隷生活が幕を開けた。

 

 

 

 ――全ては、後になって知ったことだった。

 

 7005番はブリュンヒルデが属する組織の『死者蘇生技術』の実験台に選ばれ、成功した結果この世に蘇ったことも。

 

 未完成の技術ゆえに不安定な蘇生を遂げた自分たちは、ブリュンヒルデの特性によって強引に生かされていることも。

 

 自分達がコマユバチの特性で疑似的な『不死』を獲得し――これにより、強制的に成功するαMO手術を施されたことも。

 

 

 

 ――ワタリガラスの力を得て、ワルキューレの名前を与えられた彼女達は、アポリエール家の天使としてブリュンヒルデの下で酷使された。

 

 敵対する人間の暗殺に駆り出され、裏切り者の粛清に引っ張りだされ、有望な神の卵への試練に押し出され。何度も殺し殺され、しかしその度に直されて、彼女達は何度でも戦場に送り込まれた。

 

 初めの頃、ワルキューレ達はおかれた現状に恐怖していた。そして恐怖が薄れると次に彼女達は己の悲運を呪い嘆き、次いで()()()()()()()()()()()()()()

 

 ――お願いします、どうか私たちを殺してください。

 

 懇願しながら敵に襲い掛かり、そして誰一人として殺されることなく、彼女達は敵対者を葬る。ああまた死ねなかったと、嘆きながら帰投する彼女達を待つのは、ブリュンヒルデの折檻だった。

 

 あのおぞましくも優し気なアヴァターラを頼ろうとも思ったが、不幸なことに彼女に二度まみえることなく、彼は他ならぬ身内に危険因子の烙印を押され、監禁されてしまった。自分達を呪縛から解き放つ者は、現れない。

 

 そして1人、また1人……ワルキューレ達の心は死に、正真正銘の人形へとなり果てていく。それは7005番――ヒルドも例外ではない。少しずつ己が虚ろに飲まれていくのを自覚しながらも、何度もブリュンヒルデに痛めつけられながらも、彼女は助けてと届かぬ叫びをあげ続けた。

 

 ――そうやって酷使されて、幾年が経過しただろうか。

 

『ふぅ、シャバの空気は上手いザンスねぇ。さあお前達、久しぶりの出番ザンスよ!』

 

 最初は恐怖だった彼女の声も、今となってはただの命令信号だった。ブリュンヒルデの号令を受け、ワルキューレ達は軍靴を鳴らして出陣する。そこには虚然と追従するヒルドの姿があった。

 

 

 

 ――私たちの叫びは、誰にも届かない。

 

 

 

 涙はとうに尽きている。諦観で心は枯れ果て、全てが嫌になっていた。きっと姉妹たちも同じだったんだろう、今まで必死だった自分が急に馬鹿らしく思えた。

 

 なのに、なぜだろうか――なぜ天は自分に、投げ出させてくれないのだろうか。

 

 侵入者の迎撃――聞き飽きたその指示に従い、ブリュンヒルデに付き添ったその先で、ヒルドは見た。見てしまったのだ。

 

 威風堂々と『極彩色の悪意』に挑む女性の姿を。自分達に無数の傷をつけられてなお膝を折らず立ち上がり続ける、正真正銘の大天使の姿を。

 

 この人ならばあるいは、と。枯れた心に、微かな希望が芽生える。

 

 もう一度だけ、もう一度だけ――枯れた声を振り絞って。

 

 戦乙女は虚ろな涙と共に、天使に言ったのだ。

 

 

 

 

 

 

『助けて』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 ――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あ……」

 

 ――そして、絶望は繰り返す。

 

 ヒルドはミッシェルが仰向けに倒れる様を呆然と見つめていた。駄目だった、大天使が如き彼女ですら――この怪人には勝てなかった。

 

「ンッフ、残念だったザンスねヒルド。目論見が外れて。お前には久しぶりに、たっっぷりとお仕置きをくれてやるザンス」

 

 でもまずは、とブリュンヒルデはピクリともしないミッシェルを見やる。

 

「新しい不死奴隷を完成させないと、ザンスね」

 

 のしのしとミッシェルに向かって歩いていくブリュンヒルデの指は、寄生蜂の毒針へと変形している。ここから分泌される毒を注入されれば最後――ミッシェルは永遠にブリュンヒルデの操り人形となり果てるのだ。

 

「大口を叩いておいてこのザマとは……他愛ないザンスね、ザ・ファースト。アタクシの奴隷になったらたーっぷり、こき使って上げるザンスよ」

 

 気を失ったミッシェルの胸倉を掴み上げたブリュンヒルデは嫌味ったらしく言うと、毒針に変形した指を瞼の裏に差し込む。

 

 

 

 

 

「――やっと近づいてくれたな」

 

 

 

 

 

 ――いや、差し込もうとした。

 

「んびゃッ!?」

 

 顔面に衝撃。何か硬い物がぶつかって、彼女の歯をへし折った。カラフルな歯が宙を舞い、どしんとブリュンヒルデは尻もちをついた。頭突きをされたのだ、と彼女が気付いたのはその数秒後のこと。

 

「死んだふりなんてのは、プロレスじゃあ悪役(ヒール)のやることなんだがな」

 

「お、おばえ――!」

 

 鼻と口から血を流しながら、ブリュンヒルデが瞠目する。全身爪痕だらけ、筋肉はおそらくズタズタのはず。これ以上動けば、命にかかわりかねない出血量。

 

「なんで、立゛て――」

 

「……そんなもん、決まってるだろうが」

 

 目に流れ込みそうな汗と血をぬぐい、ミッシェルは慄くブリュンヒルデを見下ろした。

 

 

 

「私は軍人で、その子たちは『助けて』と言った。だから助ける――それだけのことだろうが」

 

「んっぐ……!」

 

 迸る覇気に気圧され、後ずさるブリュンヒルデ。それを見たミッシェルは、その無様を鼻で笑った。

 

「さっき私を他愛ない、と言ってたが……そういうお前は『口程にもない』奴だったな、テロリスト」

 

「黙って聞いてりゃ……! いい気になるんじゃないザンス、小娘ェ!」

 

 もしこの時、彼女がワルキューレ達に襲わせるという選択をしていれば、あるいは勝利の可能性もあったかもしれない。しかし、挑発まんまと乗せられたブリュンヒルデはミッシェルへと自ら飛び掛かり、みすみす勝利の出目を潰してしまうことになる。

 

 

 

「――」

 

「ゴッはァ!?」

 

 

 

 ミッシェルの拳は精密にブリュンヒルデの腹部に突き刺さり、()()1()()()()()()()()()()()()()

 

 バクダンオオアリの爆液――揮発の原理によって、対象を内部から炸裂させるその技は、人間に対しては殺傷力が強すぎる。故に平時であれば使わないその特性を目の前の敵に行使することを、ミッシェルは躊躇わなかった。

 

 

 

「あがッ! がっ! ん が っ !!」

 

 

 

 数秒後――ブリュンヒルデの全身が爆ぜ、彼女はピクピクと痙攣しながら地面に転がった。あまりにも呆気ない、外道の末路であった。

 

「悪かったな、お前ら。思ったよりも時間が……って、おい!?」

 

 驚くミッシェル。その前で1人、また1人とワルキューレ達は地に倒れていく。先程まで、どれほど攻撃を受けようと立ち上がってきていたのが嘘だったように。電池が切れたおもちゃのように、彼女達は崩れ落ちて動かなくなる。

 

「おい、しっかりしろ! 今救助を――」

 

「いいんです、お姉さん。それが、私たちのあるべき姿ですから」

 

 ミッシェルの耳に届いたのは、弱弱しい少女の声。振り向けばそこには、壁にもたれてか弱い呼吸をする戦乙女――自らに助けを求めた、ヒルドの姿があった。

 

「私たちの体内には、マスター――ブリュンヒルデの心臓と連動して、不死を維持する毒(蜂毒)を放出する装置が埋め込まれていました。ブリュンヒルデの心臓が止まったことで、それも停止して……私たちを縛る鎖が、今度こそ切れたんです。だから」

 

 

 

 ――もう、眠らせてください。みんな、とっても疲れてるんです。

 

 

 

 そう言って笑うヒルドに、ミッシェルは「何を馬鹿な」……とは言えなかった。彼女達がどういった経緯で生まれ、多くの彼女達がどういった末路を辿ったのかをミッシェルは知っている。それを捻じ曲げられ、この場に立たされていたワルキューレ達の苦痛は、きっと想像を絶するのだろう。ようやく手に入れた安寧を邪魔することなど、自分にはできない。

 

「ありがとうございます……ほんとは、いろいろお話したいんですけど、私も限界で……だから、私が知ってる、大事なことだけ、話しますね」

 

「……ああ」

 

 ミッシェルは頷くと膝を折り、ヒルドと視線を合わせた。

 

「ワクチンは部屋の中、一番左の机に。管制室に入ったら、すぐに警備システムを、再起動してください。管制室はテロのための大事な……ここをとられなければ、最悪の事態だけは……ルイス様と……様に、気を付けて」

 

 ミッシェルはヒルドの声に、耳を傾ける。次第に途切れ途切れになりうわ言のようになっても、一言一句を聞き逃さないように。

 

「ナターシャ、お姉ちゃ……わたしも、そっちに……エリシア、わたしたちのぶんまで、どうか、しあわせ、に……」

 

 ――その言葉を最後に、ヒルドは静かに眠りについた。

 

 ミッシェルは息を引き取った戦乙女の体を静かに横たえると、そっと髪を梳く。それから彼女は管制室へと入ると、言われたとおりに監視システムを再起動する。電子パネルにコンピュータ言語の羅列が並び、目まぐるしい速度でそれが書き換えられていく――第七特務のハッカーが、めちゃくちゃにされたコンピュータを正常化しているらしかった。

 

 ――本音を言えば、今すぐにでも道を引き返してシモンやダリウス、虎の子部隊の面々の救援に向かいたかった。だが、自分がこの場を離れてテロリストたちに再びこの管制室を占拠されることだけは避けなくてはならない。

 

『ルイス様と……様に、気を付けて』

 

 先ほどの少女の言葉に嘘はないだろう……ならばおそらくもう1人、この場所には強力な敵がいるはず。またそうでなくとも、いつこの場所にゾンビが現れないとも限らない。ともあれ、この場を空にすることなどできるはずもなかった。

 

「歯がゆいな……」

 

 煩悶とした焦燥に胸をかき乱されながら、ミッシェルは通信の回復を待った。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 

 

 ――愛しています。愛しています。心の底から、お慕いしております。会いたくて、会いたくて、夢にまで見た王子様。私は貴方の全てを、愛します。

 

 ふんわりとした貴方の赤毛が好きです。

 

 吸い込まれるような青い瞳が好きです。

 

 穏やかな笑顔が好きです。

 

 誰かに寄り添える優しさが好きです。

 

 怒った時にちょっと乱暴になるところも好きです。

 

 歌を歌っている貴方が好きです。

 

 料理を作っている貴方が好きです。

 

 そして――貴方を蝕む救いようのない狂気すら、好きで好きでしょうがないのです。

 

 

 

 きっとこれは、運命。遠い昔に哀れな人食いの少女と旅人が出会ったその時に、私たちの関係は決まったんです。貴方と私は、前世から赤い糸で結ばれていたんです。死すらも二人を分かつことはできなくて、生まれ変わってもまた私たちは巡り合う定めだったんです。

 

 

 

 だから――

 

 

 

「……ダリウス様」

 

「なんだい?」

 

 

 

 ねぇ――

 

 

 

「貴方は今、幸せですか?」

 

「勿論だよ」

 

 

 

 ――ダリウス様。

 

 

 

「俺の料理を喜んでくれる人がいて、俺の歌を楽しんでくれる人がいて、子供たちがいて――何よりエメラダ、()()()()()()()()()()()()()。これで幸せじゃないなんて言ったら、罰が当たるよ。君はどう?」

 

「勿論私も幸せです、ダリウス様っ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――私と貴方が結ばれるのは、絶対なんです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 仲睦まじく話す一組の男女。赤い瞳の女は男の言葉に嬉しそうに目を細め、男の胸に顔を埋めた。そんな彼女を抱き寄せると、青い瞳の男は静かに女の頭を優しく、愛おし気に撫でる。

 

 

 

()()()()()()()綿()()()()()()()()()()()()()()()()()()()――まるで気づいていないかのように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――狂愛の残穢(×××××××)破滅愛執(フォーリンラブ)

 

 

 




【オマケ】 他作品の出演キャラクター紹介

アヴァターラ・コギト・アポリエール(深緑の火星の物語コラボ編より)
 ド腐れ宗教一家アポリエールの枢機卿。変態時の姿を見てしまった人には1D6/1D20のSANチェックが待ち構えている。
 マジキチレベルの信仰心で同僚にドン引きされ長く監禁されていたが、エドガーへの対抗札としてオリヴィエがパリに召喚。地下で冒涜的なムカデ栽培をしていたが、最近我慢できなくなってパレードを開催した。
深緑側のコラボ編『Mind game』の紹介は次回以降のおまけにて。



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