「――機器に反応有り! クロード博士、通信の逆探知に成功しました!」
「! 上出来だ! それで、対象の座標は?」
「はっ、座標算出結果は……え?」
「……どうした?」
「これは……故障? いや、機器は全て正常値……そんな馬鹿な……!」
※※※
【毎週月曜は】アダム・ベイリアル専用板 2524スレ目【定例会】
1名無しのマッドサイエンティスト:2599/6/** ID:AdamX
というわけで、世界各地のアダム・ベイリアルの皆! 早速新スレを立てたよ!
この板のルール↓
・安価は絶対
・900を踏んだ人が次スレを立てること。
・面白いと思ったことがあれば、とりあえず発言
・荒らしは厳禁。荒らすなら一般スレで!
じゃ、僕は前スレ>>10000をちょろっとやってくるw
2名無しのマッドサイエンティスト:2599/6/** ID:AdamI
立て乙
ヒャッハー、新スレだァ!
3名無しのマッドサイエンティスト:2599/6/** ID:AdamC
2げと
4名無しのマッドサイエンティスト:2599/6/** ID: AdamS
立て乙&2げとー!
5名無しのマッドサイエンティスト:2599/6/** ID: AdamJ
>>3 >>4
とれてないぞ
とりあえず、>>1は立て乙。あと前スレ>>10000 お前は鬼か
6名無しのマッドサイエンティスト:2599/6/** ID: AdamC
くっ、まさか2をとれないとは、このアダム・ベイリアル・カーターの目をもってしてもry
7名無しのマッドサイエンティスト:2599/6/** ID: AdamA
>>1さんいつもお疲れ様です。
それはそうと、以前>>1から貰ったウイルスの散布作業がひと段落ついたので報告します。
8名無しのマッドサイエンティスト:2599/6/** ID: AdamI
おおおおおおおおおマジかあああああああ!
9名無しのマッドサイエンティスト:2599/6/** ID: AdamJ
前スレ>>873のアダム・ベイリアル・アブラモヴィッチか。とりあえず準備乙
それで、進捗はどんな感じだ?
10名無しのマッドサイエンティスト:2599/6/** ID: AdamC
っひゃあー! 待ってたぜ、ビッチー!
11名無しのマッドサイエンティスト:2599/6/** ID: AdamK
ビッチが散布したウイルスだって!?(難聴)
12名無しのマッドサイエンティスト:2599/6/** ID: AdamH
報告はまだか、ビッチ。さっきから下半身が寒いんだが(ロシア在住のアダム感)
13名無しのマッドサイエンティスト:2599/6/** ID: AdamS
>>12 何で脱いでるんすかwww
とりあえず、報告は期待。
14名無しのマッドサイエンティスト:2599/6/** ID: AdamK
で、真面目な話、>>7は何やってたの? 来たの久しぶりだから、最近の展開を知らんのよね。
15名無しのマッドサイエンティスト:2599/6/** ID: AdamA
>>10 ~12 ビッチじゃなくアブラモヴィッチです。あと>>12はそのまま凍死してください
では報告の前に、>>14のためにも三行で今までの経緯説明をお願いします、
安価下 アダム・ベイリアル・スミス。
16名無しのマッドサイエンティスト:2599/6/** ID: AdamS
ちょw名指しで無茶振りとかw
・バグズ2号が地球に火星産のウイルスを持って帰り、徐々に感染者が出始める
・>>1「どうせ未知のウイルスが流行るなら、せっかくだしもう一種ばら撒いとこう」
・安価でビッチが実行犯に決定、散布を終えて帰還した←今ここ
17名無しのマッドサイエンティスト:2599/6/** ID: AdamK
把握。これは期待www
18名無しのマッドサイエンティスト:2599/6/** ID: AdamA
よくできました、アダム・ベイリアル・豚・スミス。では、報告を。
つい先日>>1から送られてきた新型ウイルス(以後、バグズ2号が持ち込んだものと私がばら撒いたものは、見た目の問題で前者を『♀型』後者を『♂型』と区別します)ですが、とりあえずU-NASA加盟国の首都を巡って、適当にばら撒いてきました。
♀型同様♂型の方も遅効性ですが、何年かすれば感染者は一斉に発症するはずです。
19名無しのマッドサイエンティスト:2599/6/** ID: AdamJ
なるほど
20名無しのマッドサイエンティスト:2599/6/** ID: AdamC
さらっと首都圏でやりやがったぞこのビッチw
そして豚スミスwww
21名無しのマッドサイエンティスト:2599/6/** ID: AdamK
ビッチウイルスで、何年かすれば世界中が一斉に発情……胸が熱くなるな
22名無しのマッドサイエンティスト:2599/6/** ID: AdamS
ぶひぃ!?
とりあえず、呼称については訴訟も辞さない
23名無しのマッドサイエンティスト:2599/6/** ID: AdamA
>>20、>>21少し黙ってください
ちなみにこの>>1自作の♂型AEウイルス、他の細菌に寄生して繁殖するのですが、『苗床の細菌の遺伝子と自分の遺伝子を合体させ、DNA情報を組み直しながら繁殖』するように改造しました。
よって、万が一培養に成功すればワクチン製造もワンチャンある♀型と違って、♂型は火星にある原種サンプルを直接確保、変化パターンの観測ができない限り、食い止めるのは困難です。
24名無しのマッドサイエンティスト:2599/6/** ID: AdamK
ふぁーwwwwwwwwww
25名無しのマッドサイエンティスト:2599/6/** ID: AdamH
さすがは俺達のビッチだな(下半身霜焼け)
26名無しのマッドサイエンティスト:2599/6/** ID: AdamS
>>25 いいからお前はパンツ穿けwww
とりあえず、ビッチGJ!! だが豚呼ばわりは許゛さ゛ん゛
27名無しのマッドサイエンティスト:2599/6/** ID: AdamI
やwりwやwがwっwたw これは人類滅亡待ったなしwww
28名無しのマッドサイエンティスト:2599/6/** ID: AdamC
これは俺も負けてられないなw
よっしゃ、ついこの間完成した『死体にMO手術を施す技術』で作り出したMOゾンビ軍団使って、ユーラシアでバイオハザードしてやるぜ!
29名無しのマッドサイエンティスト:2599/6/** ID: AdamK
>>28 何それ超面白そうw
俺もそろそろ『脳味噌を人格ごと他の体に移植する手術』に手をつけるか……
というか、そろそろどっかのリカバリーゾーンを焼き討ちしたい。焼き討ちして百姓と国のどっちも泣かせたい
30名無しのマッドサイエンティスト:2599/6/** ID: AdamX
僕もそろそろ『ペガサスをベースにしたMO手術』を開発しようかな
31名無しのマッドサイエンティスト:2599/6/** ID: AdamS
>>1が帰って来たぞぉ!
32名無しのマッドサイエンティスト:2599/6/** ID: AdamI
>>1ィ!
33名無しのマッドサイエンティスト:2599/6/** ID: AdamK
>>1ペガサスてwww
34名無しのマッドサイエンティスト:2599/6/** ID: AdamA
おかえりなさいませ、>>1。 新型ウイルスの件、つつがなく完了いたしました
ぺ、ペガサスですか……(困惑)
35名無しのマッドサイエンティスト:2599/6/** ID: AdamJ
安価乙だ、>>1
それとさっき、他のアダムから俺のとこに連絡が入ったぞ。どうやら、MOデザイニングの開発に成功したらしい。
36名無しのマッドサイエンティスト:2599/6/** ID: AdamH
>>1か 新型ウイルスの開発に、前スレ>>10000と大変だな。ペガサスとは……ついに頭が逝っちまったか? 大丈夫? 俺のパンツ穿く?(下半身凍結)
37名無しのマッドサイエンティスト:2599/6/** ID:AdamC
誰もペガサスを本気にしてなくて草w
38名無しのマッドサイエンティスト:2599/6/** ID:AdamS
>>36 いい加減にパンツは穿こうぜ?
とりあえず>>1、これだけは言っておきたい
ペwwwガwwwサwwwスwww
39名無しのマッドサイエンティスト:2599/6/** ID:AdamX
何だよ皆してペガサスをバカにしやがってw
まぁまじめな話、ペガサスはさすがにやらないよ。空想上の生物なんて出したら興ざめだからね。登場シーンで凄まじく萎える未来が見えるし。
けど、きちんと科学的にその特性の説明が付く架空生物とか未確認生物とかなら、僕としては造って手術しちゃってもいいと思うんだよねー
40名無しのマッドサイエンティスト:2599/6/** ID:AdamA
>>39 こうですかわかりません
♂
国籍:イスラエル
手術ベース: ペ ガ サ ス
『ゴキブリは高熱に弱い……つまり、俺の出番ってわけだ』ツバサフサァ…
41名無しのマッドサイエンティスト:2599/6/** ID:AdamS
>>40
なぜ数いるバグズ2号搭乗員の中でゴッド・リーのプロフィールを使ったしwww
そもそもペガサスに熱要素ないでしょwww
42名無しのマッドサイエンティスト:2599/6/** ID:AdamC
>>40
フサァやめろwww
43名無しのマッドサイエンティスト:2599/6/** ID:AdamX
>>40『――面白ェ!』ツバサフサァ…
それはともかく、前スレ>>10000をやってきたから、報k
44名無しのマッドサイエンティスト:2599/6/** ID:AdamK
? おい>>1? どうした?
45名無しのマッドサイエンティスト:2599/6/** ID:AdamI
何だ何だ?
46名無しのマッドサイエンティスト:2599/6/** ID:AdamH
まさか、アダム狩りの餌食になったか? >>1がやられたってことは俺達も解散か?
47名無しのマッドサイエンティスト:2599/6/** ID:AdamJ
惜しくもない奴を失ったものだ……
48名無しのマッドサイエンティスト:2599/6/** ID:AdamS
盛り上がってまいりましたwww
49名無しのマッドサイエンティスト:2599/6/** ID:AdamX
勝手に殺さないでw
けどごめん、ちょっとお客さんが来たから、一回席を外すね
とりあえず、皆はジェイソン君を中心に今週やること考えておいて!
ではノシ
50名無しのマッドサイエンティスト:2599/6/** ID:AdamS
何だ、そういうことか。いってらー
51名無しのマッドサイエンティスト:2599/6/** ID:AdamK
ノシ
52名無しのマッドサイエンティスト:2599/6/** ID:AdamJ
まとめ役、任された
報告待ってるぞ、>>1
53名無しのマッドサイエンティスト:2599/6/** ID:AdamH
とりあえず、俺の下半身が壊死するまでに帰ってきてくれ
54名無しのマッドサイエンティスト:2599/6/** ID:AdamA
いってらっしゃいませ
というか>>53、いつまで脱いでるんですか貴方は
※※※
「……さて」
そう呟くと、その少年は自らが座っていた椅子をクルリと回転させ、パソコンのモニターから『彼』へと向き直った。
一見して、これと言った特徴のない西洋人の少年だ。顔立ちは整いすぎず、されど崩れ過ぎず。幼すぎず、老いすぎず。強いて特徴らしい特徴を上げるとするならば、身に着けている衣服が白衣であることくらいだろうか。
至って普通の、何の変哲もない人間。それが、少年に対して『彼』が抱いた第一印象だった。
そんな『彼』に対し、少年は両手を大きく広げて見せると、わざとらしい口調で語り掛けた。
「これはこれは、珍しいお客さんだね! まさか君がここに来るとは思ってなかったよ、
口元にニッコリと笑みを浮かべる少年。その正面に立っていたのは、スキンヘッド型のテラフォーマー。その額には『・|・』の紋様が刻まれている。
「じ……」
彼は、バグズ2号の中で生まれた3匹の突然変異種のうちの一匹。艦内での戦闘では小町小吉と交戦した個体だ。進化型のテラフォーマー3匹の中では唯一生き残ったものの、その顔にはひび状の傷痕が刻まれ、彼との戦闘の熾烈さを物語っていた。
「さ、座って座って。歓迎するよ! 今、紅茶を入れるから待っててくれたまえ」
少年はにこやかに、空いていたパイプ椅子を指さすと、そのまま立ち上がった。
『・|・』のテラフォーマーはそんな少年の言葉を無視して、彼に近づき――
「ゴぱッ」
少年の口から滝のような血が溢れたのを見て、『・|・』のテラフォーマーは腕を引き抜いた。少年の胸にぽっかりと空いた穴は完全に貫通し、彼の背後が見えている。テラフォーマーの手中には、彼の心臓と思しき物が握られていた。
支えを失った少年の体はフラフラとよろめいてから倒れ込み、床の上に赤い池を広げていく。それを見届けた『・|・』のテラフォーマーは、興味なさげに心臓を放り捨てると、もはや物を言わなくなった彼の亡骸に背を向け歩き出した。
その口元に浮かぶのは、笑み。
彼の双眸は既に、自らが率いる軍勢が目指すべき、次なるヴィジョンを見据えていた。
「 ど こ 行 く の ♡ 」
瞬間、背後に得体の知れない悪寒を感じた『・|・』のテラフォーマーが、咄嗟に前方へと飛び退く。床を転がると彼は素早く身を反転、己の背後を見やった。
「イリュージョンッ! あはは、ハゲ頭君てばびっくりしてるー!」
――そこに立っていたのは、
「いやー、でも僕もびっくりしたよ! まさか、いきなりハートキャッチ(物理)されるとは思わなかっ――」
少年がケタケタと笑い声を上げた、次の瞬間。彼の頭に『・|・』のテラフォーマーの蹴りが直撃した。
「……じょう」
理由は不明。しかし、どうやら自分はこの人間を仕留め損ねたらしい。そう判断した『・|・』のテラフォーマーは即座に決断、再度の殺害を試みた。
人間大ともなれば、一歩目から時速320kmで走ることができるゴキブリの走力。その威力で蹴り飛ばされれば人体などひとたまりもなく、少年の首から上が千切れ飛ぶ。
頭部を失った彼の胴体は呆けたように硬直し、直後、思い出したように首から間欠泉のように血を噴き上げながら倒れ込んだ。
「おいおい、乱暴だなあ。最近の若いゴキブリはこれだから駄目なんだって」
「ッ!?」
――
その体に、外傷はない。『・|・』のテラフォーマーによって貫かれたはずの胸部の穴も、今しがた吹き飛ばされたはずの頭も、
「あ、僕ってこんな顔してるんだ。まじまじと実物を眺めるのは初めてかもしれないなー」
少年は思わず動きを止めた『・|・』のテラフォーマーの前を横切ると、床に転がっていた自らの生首を拾い上げた。頭蓋が砕かれていびつに歪んだ己の顔面を、少年は興味深げにいじくる。
「あはは、変な顔―! でも、ちゃんとしてれば割とカッコいいのかな……ってことは、君はイケメンな僕の顔を叩き潰したんだな! なんてひどい奴なんだ、許せない! 即刻針千本のんで死んで詫びるべきだよ!」
少年は『・|・』のテラフォーマーへと向き直ると、わざとらしく怒鳴り散らした。それを見た『・|・』のテラフォーマーは、我に返ったように構え直す。既にその顔に余裕の表情はなく、代わりに強い警戒の色を浮かべていた。
「……あ、そっか! ゴメンゴメン、配慮が足りなかったね!」
それを見た少年は自らの生首を放り投げ、何を勘違いしたのか手を合わせて『・|・』のテラフォーマーに謝る。それから彼は、ゆっくりと口を開いた。
『君のこと、許さないからな』
「!?」
『・|・』のテラフォーマーの顔に、動揺の色が走る。彼の頭脳は、テラフォーマーの中でも並外れて優秀。だからこそ彼は、瞬時に目の前の人間の異常性に気が付いた。
――馬鹿な、ありえない。
「
――この人間、
それを認識した『・|・』のテラフォーマーは、大きく一歩後ずさった。
――自分の立場に置き換えて、考えてみてほしい。
家の台所でゴキブリを見つけたあなたは、丸めた新聞紙で確かにゴキブリを叩き潰した。だが次の瞬間、ゴキブリは再び元気に動き出す。
何度叩き潰しても、そのたびに体液を飛び散らして潰れ、そしてそのたびに復活する。かと思えば突然、自分にもわかる言葉で「許さない」とまくしたててくる。
何の前置きもなくこのような状況に直面して、あなたは果たして平静でいられるだろうか?
あるいはそこで、冷静に対話を試みようとする気丈な方もいるのかもしれない。しれないが――少なくとも、『・|・』のテラフォーマーはそうではなかった。
「……ッ!」
踵を返した『・|・』のテラフォーマーは、出口へ向かって一目散に駆け出す。その肉体を動かすのは強い嫌悪感。恐怖もあったが、それ以上に
既に彼の脳内から、目の前の人間を殺すという選択肢は完全に消え去っている。一分一秒でも早く、この場から立ち去りたい。その一心で、『・|・』のテラフォーマーは床を蹴った。
「えー、もう帰っちゃうのー? もうちょっと遊んでいきなよー」
ピッ。
そんな電子音が響くと同時、『・|・』のテラフォーマーが今まさにくぐり抜けようとしていた出口が、無情にも頑強な防火扉によって閉ざされた。
「じッ、じょう……!」
駆け寄った『・|・』のテラフォーマーは扉に拳を叩きつけ、脚で蹴り飛ばし、何とか退路をこじ開けようとする。だが、開かない。テラフォーマーの筋力をもってしても、その扉はびくともしなかった。
「お楽しみは、まだまだこれからでしょ?」
耳元で少年が囁く。すかさず『・|・』のテラフォーマーが回し蹴りを放つ。それは避ける間もなく少年の脇腹を陥没させ、更に背骨を『く』の字に折り曲げた。勢いのまま宙を舞ったその体は、周囲の機材を巻き込んで床に叩きつけられる。
「うん、いい蹴りだ! 君、僕と一緒にキックボクシングの道に進んでみないかい!? 大丈夫、君なら世界を狙えるよ!」
「……ッ!」
口から大量に赤い体液を溢れさせながら、しかしまるで応えていない様子で、少年は立ち上がる。それを見た『・|・』のテラフォーマーはようやく――ここに至って、ようやく悟った。
目の前にいるモノは、明らかに異質な存在であることに。
あれは以前自分が戦った
近いものを上げるのならば、目の前の存在は『汚れ』。今自分が感じているのは、不潔そのものに対する嫌悪感に非常に似ていた。
「じ、じ……ッ!」
『・|・』のテラフォーマーは気が付いてしまった。目の前の存在が、
自分達も全体のために、個を犠牲にすることはある。だが、それは死が全体の利益に繋がるという合理の思考に従ってのもの。目の前にいる存在のやっていることは、完全にただの無駄死。何の意味もない行為だ。
「うん? どうしたの、もっと殴っていいんだよ?」
――まるで、生命の営みそのものを冒涜しているかのようなおぞましさ。
どうすればたかだか一生物が、ここまで退廃的で鬱屈とした雰囲気を纏えるのか。
「あ、ひょっとして僕に気を遣ってるのかな?」
仮に目の前の相手が、自分よりも格上の戦士であったのならば、『・|・』のテラフォーマーは逃走や撤退などを選びこそすれ、恐れることはなかっただろう。
おそらくは命惜しさに逃げながらも、虎視眈々と勝利の機会を狙っていたはずだ。
「だったら遠慮はいらない、君と僕の仲じゃないか!」
――だが、これはダメだ。
これは強者だとか格上だとか、
「君の気が済むまで、僕を殴るといい!」
一歩、また一歩と近づく彼から逃れるように、『・|・』のテラフォーマーは後ろへと下がっていく。だが、そこは狭い室内。数歩と動かないうちに、『・|・』のテラフォーマーは壁際へと追い詰められた。
「それで君の気が晴れるなら、僕は何度でも君の拳を受け止めるよ!」
少年は一点の曇りもない聖女の様な笑みを浮かべ、目の前で震える『・|・』のテラフォーマーに優しく、あやすようにそう告げた。
「さあ、
「キ、キィイィイィイイィィイイィイイイイィイィ!」
――半狂乱になった『・|・』のテラフォーマーが、少年へと躍りかかった。棒立ちになり、ただ笑みを浮かべているだけの少年。そんな彼に、『・|・』のテラフォーマーの拳が迫る。
そして、一方的な虐殺が始まった。
※※※
2599年6月22日、深夜3時00分。
本多を見送ったそのすぐあと、クロード・ヴァレンシュタインは、U-NASA局内で生き残っていた職員を集め、アダム・ベイリアルの通信の逆探知を試みていた。
国家レベルのサイバーセキュリティをこじ開けたとなれば、ネットワーク上に大きな痕跡が残る。それを辿り、アダムの居場所を割り出そうと考えたのだ。
(この機会を逃がすわけにはいかない――!)
クロードは自身もキーボードを叩きながら、思考する。
あの人を喰ったような喋り方、間違えようがない。先ほど自分達へと通信を仕掛けてきたのは、アダム・ベイリアルたちの統率者とも言える人物だ。
アダム・ベイリアルは、協調性のない人格破綻者の集団である。だが彼らには、協調性はなくとも指向性が存在する。提示された方針に反しないように各々の実験や研究を行うことを条件に、彼らは研究費や実験材料の支援を受けているためだ。
そして、その方針を伝える存在こそが『あの』アダム。彼こそがアダム達の生命線にして、心臓部。構成員たちが『アダム・ベイリアル』を名乗っているのは、統率者たる本来のアダムにとっての影武者になるためでもある。
彼を押さえることができれば、後ろ盾を失くした他のアダム達は、ただのマッドサイエンティストに成り下がる。
だから、絶対に逃すわけにはいかない。今この時こそ、アダム・ベイリアルを根絶やしにするための、千載一遇のチャンスなのだから。
「――機器に反応有り! クロード博士、通信の逆探知に成功しました!」
「! 上出来だ! それで、対象の座標は?」
局員の一人の報告に、クロードが声を張り上げた。すかさず、局員はモニターを操作して、対象の位置を特定しようとする。
「はっ、座標算出結果は……え?」
「……どうした?」
固まった局員をクロードが一瞥する。だが彼の問いかけに答えることなく、局員はじっとモニターを見つめていた。
「これは……故障? いや、機器は全て正常値……」
そんな馬鹿な、と局員が声を漏らす。いつまでも報告を始めない彼に業を煮やしたのか、クロードは席を立つ。彼はツカツカと彼の後ろに歩み寄った。
「何が起きたのかは分からないが、報告を。急がねば、奴にまた痕跡を消され――」
そこまで言いかけて、クロードは口を閉ざす。彼は見てしまったのだ。呆然とする局員の眼前、そこに映し出された異常な座標に。
モニターの中には、ホログラムでできた地球儀が映し出されている。この装置は通常ならば、この地球儀上で光が点滅することで、対象の居場所を示すのだ。
だがこの時、ユーラシア大陸、南北アメリカ大陸、アフリカ大陸、オーストラリア大陸、南極大陸、果ては日本に至るまで……
光が点滅していたのは、その更に上。成層圏をぬけ、大気圏を抜け――更にずっとその先。
「まさか、アダム・ベイリアル……!」
クロードの顔が、愕然の表情に彩られる。血の気の引いたその唇から――彼は震える声を絞り出した。
「貴様が……貴様が今いるのは……ッ!」
光の点滅が指し示していたのは、とある星だった。
白羊宮の支配星にして、天蠍宮の副支配星。
占星術においては「運動」「争い」「外科」を暗示しているとされる、凶星。
そして生物学においては、ただ二種類の生物しか存在しないとされる、
即ち――火星だった。
オマケ 前スレ10000
10000名無しのマッドサイエンティスト:2599/6/** ID:AdamI
>>10000なら
>>1はU-NASAにクラッキングを仕掛け、ニュートン博士と対談。煽れるだけ煽った後で世界の首脳陣にバグズデザイニングのデータをばら撒いてくる。