5月に飲むラミンーある少女の挑戦―   作:飛龍瑞鶴

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お久しぶりです。
何とか、書けるまで体力が回復しました。



ぶらり、大洗探索

 翌日、私は起床すると、朝飯・朝風呂を堪能し舞耶に

 「定年退職した社会人のオジサンですか?」

 とあきれられた。

 

 -言い返せないのが辛いー

 

 ともあれ、私服に着替えて最初の目的地「大洗磯前神社」に向かう。

 目的は、対大洗必勝を祈願しに行くのと、大洗に潜入できることを祈りに行くのだ。

 と、言うのは建前で商店の開店時間までの行けそうな所を回る計画である。

 「そういえば早苗、あなた英国国教会の信徒だけど大丈夫?」

 神社に向かう道中、菖蒲が早苗に尋ねる。それはからかう意図はなく真剣な顔と声で訪ねていた。信仰的に参拝して大丈夫?と暗に尋ねている。

 菖蒲のこういう部分は好ましい、本人は機械の神―デウス・エクス・マキナ―を信仰していると言うくせに他人の信仰をちゃんと尊重できる。しかし、今聞くのはタイミング的は遅いような気がする。行く前に聞く事だと思う。

 「八百万の神の中にも主は居られるでしょう」

 早苗は澄ました顔で答える。

 「要は解釈しだいと」

 菖蒲が面白そうに尋ねる。この二人、示し合わせて話題作りか?

 「そうゆうこと。それに神社に行くなとは言われてないし」

 自称:不真面目なキリスト教徒はそういって、ウインクをする。それを見て確信する。示し合わせた暇つぶし用の話題だ。

 

 ―良いのかなぁ。一神教徒がそれで―

 

 などと思ったが、まぁ原理主義者だったらイロイロと困るので。本人の意思を尊重しよう。

 

 ―まぁ、日本人らしい宗教観なのかもしれない―

 

 神社に到着して、石段を登りながら参拝の手順を確認し、参拝。

 本殿参拝後、軍艦那珂の慰霊碑でも祈る。防人には敬意をはらうべきだ。

 

 その後の、書店を見つけ、探索しようとしたら、桐花に猫掴みで止められた。こういう地方の書店には掘り出し物があったりするのに…

 菖蒲も電気店に入ろうとして、舞耶に止められている。

 ―どうやら、考える事は同じらしい―

 早苗はその光景を見ながら苦笑していた。

 

 そんなやりとりをしながら、商店街で食べ歩きをしつつ。まいわい市場までやってきた。

 「食べ歩きなんて、聖グロじゃ中々できないよね」

 桐花が串カツを頬張りながらしみじみと言う。

 「まぁ、そんな空気と雰囲気はしてますけど…食べ歩きしてる生徒もいますよ。フィッシュ&チップスとか…」

 舞耶が同意しながら補足する様に言う。彼女が聖グロリアーナ女学院について、裏も表も私達の中では一番詳しい。私と桐花と菖蒲は高校からだが、彼女は中学からあの学園艦で生活している。

 「一応、はしたない行為とたしなめられますけど、隠れてする事を密かな愉しみにしてる生徒もいますね」

 早苗が補足する様に言う。禁止されればしたくなるのは何処も同じかと思う。そう言う早苗もイカらしき乾物を咥えている。皆、聖グロリアーナ女学院から離れて少しハメを外している。

 

 ―気分転換は成功かな?―

 

 私は皆を気づかれない様に観察しながらそう思う。このメンバーが集結して以来ずっと、結構ハードな日々だった。帰ったらまだハードな日々は続くけど、皆、羽を伸ばして英気を養って新鮮な気持ちで臨めそうだ。

 それだけでもこの小旅行は成功だろう。

 

 歩き疲れたので、ショッピングモールの広場で休憩するために座れる場所を探していたら。広場の中央では何らかのイベントが催されていた。

 「大洗のみんな~、こんにちはだモン」

 熊本から県を代表するゆるキャラが来ている様だ。

 

 ―あのキャラの中の人は県の職員だっけ?プロのスーツアクターだっけ?―

 

 と、つらつら考えてると。ステージにもう一体の熊の着ぐるみが現れた。

 「おぅおぅ。大洗で熊のマスコットがオイラに挨拶無いとかどう言うつもりだ!」

 このキャラも知っている。マイナーメジャーで知名度が低いが、確か『ボコられグマのボコ』だ。あの、三下というかチンピラと例えるべきか悩む口調は間違えようがない。

 全身包帯だけの熊の着ぐるみが、洋梨を連想させる熊の着ぐるみに詰め寄っていた。

 「そんな事、急に言われても困るモン」

 「ハァ?おめーの都合なんざ知ったこっちゃねぇ」

 チンピラの絡み方だなと思いながら。何故このキャラクターにある一定の人気とカルト的なファンが居るのか考えてしまう。

 「梨汁ブシャー」

 黄色を基調にした新たな着ぐるみが割り込み、ボコを押し倒す。もう、最初の台詞で正体は判っている。非公式ゆるキャラでフリーダムな奴だ。

 「うゎ、てめぇ何しやがる。退きやがれ」

 「三下が吠えるなしー」

 「け、ケンカはやめるモン」

 「て、めえ。どさくさに紛れて蹴ってくるんじゃねぇ」

 

 ―なに?このカオス―

 

 私達は目の前で展開される地獄絵図じみた光景を唖然と眺めていた。

 「頑張れ!ガンバレ!ボコ!」

 ボコを必死に応援する聞き覚えのある声が耳に届いたのは、その時だった。

 

 私はその声をここ数日厭きるほど聞いている。

 

 私はその声の主を知っている。

 

 私はその人物を知っている。

 

 映像でなら厭きるほど見た人物で、詳細な個人情報も知っている。

 

 ゆっくりと、視線を声の方へ向ける。

 そこには一人の少女が居た。年は私より一つ上だが、真剣に舞台上のボコを応援する姿は、童女の様に真剣そのものだ。

 

 彼女が、彼女こそ大洗を廃校から救った名将

 

 無名の大洗女子を優勝校に押し上げた軍神

 

 西住みほとの初遭遇であった。

 




今回はここまでです。
ボコとゆるキャラとの絡みは、以前夢でみたまんまを書いています。

次回もベストを尽くして書きますので、よろしくお願いいたします。

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