『言霊使いと幻想郷』   作:零戦

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第七十七話

 

 

 

 

 

「……う……」

 

 目を覚ますと赤い天井だった。かなりの悪趣味なのは間違いないわね。

 

「というより何処よ此処?」

 

 布団も毛布も赤色なんだけど……。

 

「あら、目が覚めたのかしら」

 

 そこへメイド服を着た女性が部屋に入ってきた。

 

「此処は……?」

「此処は紅魔館よ。門番が倒れている貴女を見つけて此処まで運んだのよ」

「そうですか。ありがとうございます」

「暫く寝てるといいわ。はい、水」

「ありがとうございます。あの、何で赤色なんですか?」

「此処の当主の趣味よ」

「そうですか……」

 

 どんだけ赤色が好きなのよ……。

 

「貴女は外来人かしら?」

「外来人? 何ですかそれは?」

「幻想郷の人間は外の人間の事を外来人と言っているのよ」

「げ、幻想郷!?」

 

 メイドさんの言葉は私には衝撃的だった。あの八雲紫が言っていたように幻想郷はちゃんとあったのね。

 

「あ、あの此処に八雲誠か敷島孝之はいませんか!?」

「……残念だけれど、此処の館に外来人はいないわ。もしかすると人里にいるかもしれないわね」

「……そうですか……」

 

 メイドさんの言葉に私は落胆した。確かにそんな甘くはないわね。でも人里というところに行けばいる可能性はあるわ。

 

「そ、その人里は何処に……?」

「落ち着きなさい。そんな簡単に人里は無くならないわ。とりあえずは貴女は寝てなさい」

 

 私はメイドさんにそう言われた。

 

 

 

「……もしかしてあの子、以前に誠や孝之が言っていたことはかしら?」

 

 部屋を出た咲夜はそう呟いた。

 

「……孝之が買い物に行っていて良かったわ。直ぐに孝之を隠さないと……」

 

 これまでの言動からことはが二人を迎えに来たのは明白だった。孝之を帰すとなるとフランは怒り出すしレミリアもかなり不機嫌になる。

 

「それに仕事の負担で私はかなり助かっているから」

 

 多分それが一番の理由だろう。兎に角、咲夜はレミリアに事情を話して人里に買い物に出掛けている孝之の元へ能力を使って向かったのであった。

 

 

 

 

「ことはが幻想入り?」

「そうよ、外見は以前に貴方と誠が言っていたのを覚えていたから直ぐに判ったわ」

「うーん……まずいな」

「だから貴方は何処に身を隠すしか……」

「いや、俺は別に問題は無いんだよ」

「え?」

 

 あっけらかんに言う孝之に咲夜は唖然としてしまった。

 

「ことはが俺もと探しているが、ぶっちゃけあいつの探し人は十中八九誠だ」

「……えぇ?」

「ことはは小さい頃から常に誠といたからな。俺は所謂オマケだ」

「オ、オマケなのね……」

 

 孝之の言葉に咲夜は呆れた。

 

「そういうわけだから誠に言っておいてくれ。俺は帰る」

「判ったわ(大丈夫なのかしら?)」

 

 そう思う咲夜だったが、急いで神社に向かった。

 

 

 

「ん……ほいっと」

「んぅ~ありがとう誠兄」

 

 俺は神社の軒下で霊夢の耳掃除をしていた。普通は俺がされる側だが既にした後だ。

 半分寝かけていた霊夢は目を擦ってふわぁと欠伸をする。

 

「このまま寝たい気分なんだけど……嫌な予感がするのよね」

「何だよその嫌な予感って?」

「巫女の勘よ勘」

 

 さいですか……。

 

「こんにちわ」

「ん? どうした咲夜? 珍しいじゃないか」

 

 境内には咲夜が来ていた。

 

「……五十音ことはが幻想入りしたわ」

 

 ……………。

 

「何ィィィーーーッ!?」

 

 ……嘘だろ……何でことはが幻想入りをしてんだよ……。

 

「……誰よことはって?」

「……俺が幻想入りする前に外の世界にいた女の子だよ」

「……また女の子……」

 

 今霊夢が何か言ったような……。

 

「孝之は心配ないとは言っていたわ。むしろ貴方よ」

「俺か?」

「孝之から聞いたけど……五十音ことはは貴方に好意を抱いているわ。見つかった場合、ハッキリと言うべきね」

「……マジか……」

 

 何となくは思ってたけど、ことはもか……。

 

「……説明を聞きたいのだけれど誠兄?」

「と、とりあえずつねるのは止めてくれ霊夢。いた、いたたたたた!?」

 

 不機嫌顔の霊夢に思いっきりつねられた。

 

「……とりあえずことはには直接会って話をつける。それだけだ」

 

 全く……ほんとめんどくさい事になったものだな。俺は自分の部屋に戻る。

 

「……いるんだろ紫さん?」

「はぁい♪貴方のゆかりんよ」

 

 天井からスキマが開いて紫さんが現れた。

 

「紫さん、貴女ことはを幻想入りするよう仕組んだな?」

「バレちゃったかしら?」

「バレるに決まってるでしょ。どういうつもりですか?」

「勿論、五十音ことはが貴方の事を諦めてもらうためですわ」

「諦めてもらう?」

「そう、キッパリとね」

 

 俺は外の世界はキッパリと諦めているが……。

 

「ことはの事か?」

「その通りですわ。八雲誠は既に諦めている。ですが五十音ことはは諦めていない。その差ですわ、それに言霊使いの陰と陽がいては幻想郷は……崩壊するかもしれませんわ」

「……そうか」

 

 紫さんの言葉に俺は頷いて決断をした。

 

 

 

 

 




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