『言霊使いと幻想郷』   作:零戦

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第六十七話

 

 

 

「霊夢達は先に紅魔館へ行っといてくれ。俺は少し用事がある」

「判ったわ誠兄」

 

 月から帰ってくると、文が待ち構えていて取材を受けていた。そしてレミリア達が神社に来て図書館に海作ったから来いと言われていた。

 行く前に俺はちょいと行くところがあるからな。

 

「じゃあ紅魔館でな」

 

 俺はそう言って飛んでいく。行く場所は幽々子がいる冥界だ。

 

 

 

――冥界、白玉楼――

 

「ごめん下さい」

「はいはい……あ、誠さん。お待ちしていましたよ。もう紫さん達もいますから」

「そうか、お邪魔するよ」

 

 部屋に通されるとそこには既に出来上がっている幽々子と紫さん、藍、蓮子がいた。

 

「あらぁ誠君、いらっしゃ~い」

「あら誠君」

「お邪魔するよ幽々子。お久しぶりですね紫さん」

 

 俺は四人に挨拶をする。すると幽々子がお猪口に何かの壺から液体を注いだ。

 

「私が月の屋敷から奪ってきた千年物の超々古酒よ」

「……酒?」

「そうよぅ、お酒よ♪」

「……まぁ幽々子のする事だからな」

「それで良いのよ誠君。敵が取り返しに来ない物を盗んだ方が良いのよ。どうせ呑んでしまうだろうし」

 

 紫さんはそう言って笑っている。

 

「あの綿月姉妹が悔しがっている姿が想像出来て愉快だわ」

「早速このお酒で勝利の祝いをしましょう? 第二次月面戦争の無血の勝利を」

『乾杯』

 

 そして俺はお猪口に注がれた酒を飲む。

 

「くぅ~腹に染み渡るな……」

「本当は勝利の美酒には月見酒が良かったんだけど、地上に生きる我々には雪見酒も捨てがたいわね」

「それもそうだな。そういや紫さん、第一次月面戦争の時は負けたのか?」

「えぇ。ボロボロにね」

「でもそれは戦術的には……だろ?」

「……どういう意味かしら?」

 

 お、紫さんも食いついたな。蓮子も興味津々のようだな。

 

「稗田の家で歴史書を読んだが、第一次月面戦争は増長する妖怪達を引き連れて月に行ったらしいな?」

「……そうね」

「本当は増長する妖怪達を始末するために月に行ったんじゃないか?」

「………」

「増長する妖怪が増えればやがては幻想郷では扱えきれなくなる。幻想郷の運営する紫さんにとって第一次月面戦争は増長する妖怪を減らすために月に行った。そうじゃないのか?」

「……さぁ、どうでしょうか?」

「ま、結果的に増長する妖怪は減り紫さんの目論みは達成された。戦術的には負けたが戦略的には勝った」

「……それは貴方の胸の中に仕舞って下さいな」

 

 紫さんはニヤリと笑って口元を扇子で隠した。

 

「……そうだな。俺の妄想にしておくか」

「宜しいですわ」

「ま、私はメリーと月に行けただけでも満足だけどね」

 

 既に酔っぱらっている蓮子はそう言った。

 

「紅魔館にでも行くか? 霊夢達にもこの酒を御馳走してやろう」

「それもそうね。ついでに月人も招待しましょうか。藍」

「お任せ下さい」

 

 藍は苦笑しながら竹林へと向かった。

 

「妖夢、片付けてね」

「判りました幽々子様」

 

 そして俺達は準備をして紅魔館へ向かった。

 

 

 

「ほんとにプールだな」

「あ、誠兄。何とかしてよ」

 

 紅魔館の図書館に行くと身体が震えている霊夢達がいた。

 

「はいはい、『温水』」

 

 言霊でプールに温水を追加した。ふむ……少し温いな、もう少し温水を増やして……これくらいだな。

 

「温水に変わらしたぞ」

「ありがとう誠兄」

「温水で飲む酒も良いわね~」

 

 そして図書館で宴会が始まり、藍が永琳と輝夜を連れて来た。

 

「ようこそ宴会へ。今日は美味しい酒があるので是非にと呼んだのですわ」

「そう、それは楽しみにね……ってそれはッ!?」

 

 紫さんと挨拶をした永琳が幽々子が持っている酒の壺を見て唖然としていた。

 

「そ、その酒は……」

「貴女達の月の都をイメージしたお酒ですわ。是非とも御賞味頂きたく思いますわ」

 

 明らかに永琳が動揺しているな。それを見て紫さんもニヤリと笑っているし……。

 

「……完敗ね。これが狙いだったのかしら?」

「あらあら、何の事かしら?」

 

 紫さんは終始御機嫌だった。

 

 

 

――綿月姉妹の屋敷――

 

「お、御姉様……」

「……無いわね依姫」

 

 月の都にある綿月姉妹の屋敷では置かれていた千年を越す酒の壺が無くなっていた。

 

「……私達はまんまと騙されたわけね」

「ぎゃふん」

 

 無くなった壺はまだ永琳が月の都にいた時に作った酒であった。

 

「あの味が飲めないのは……悔しいわね」

 

 依姫はそう悔しがっていたが、ふとある事を思い付いた。

 

「御姉様、地上に取り返しに行きますか?」

「……それは貴女の個人的用事じゃないかしら?」

「ち、違います御姉様ッ!! わ、私は別に八雲の事など……」

「誰も八雲君とは言ってないわ」

「~~~ッ!?」

 

 豊姫は依姫にそうからかうのであった。

 

 

 

 

 紅魔館では盛大に宴会が繰り広げられていた。

 

「もう……飲めないわぁ」

「おいこら幽々子」

 

 完全に酔っぱらっている幽々子が俺の左膝を枕にして寝だした。

 

「あ、誠兄に何してるのよ幽々子ッ!!」

「ちょ、霊夢ッ!?」

 

 今度は霊夢が右膝を枕にして寝転がる。勘弁してくれよ……。

 

「……私は背中ね」

「じゃあ私も」

 

 背中ではパチュリーと輝夜が寄り掛かってきて寝息をたて始めた。

 

「……動けん……」

 

 宴会が終わるまで動けなかった。

 

 

 

 

――紅魔館正門――

 

「ひ~ん。皆さんばかりずるいですよ~」

 

 正門では門番の美鈴が誠からマフラーをしながら警備しているのであった。

 

 

 

 




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