『言霊使いと幻想郷』   作:零戦

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友人から旧作のデータを貰いました。何故か初代と二代目は出来ませんが。


第六十六話

 

 

 

「ガ……グ……」

「へぇ、まだやろうと言う気か」

 

 横からの圧力にも依姫は屈しようとせず、交差していた腕を戻そうとしていた。

 

「貴方は一体……何者……ですか……」

「なに、ただの霊夢の保護者だな」

「ちょ、それは酷いわね誠兄」

 

 五月蝿いぞ霊夢。

 

「ハァッ!!」

 

 そして依姫は圧力の呪縛を解いた。

 

「まだやる?」

「……私は負けません。月のリーダーとしてある限りッ!! 『火雷神』よ、七柱の兄弟を従え――」

「ショートカット『ガムテ』」

「むぐッ!?」

 

 俺はガムテをショートカットして依姫の口を塞いだ。

 

「『霧』」

 

 俺は一面霧を出して姿を隠した。

 

「ぷはァッ!! そんな子ども騙しの術で……」

 

 その時、依姫は後ろに気配を感じ一瞬で振り返って斬り掛かる。しかし、それは囮で案山子を切ったに過ぎなかった。

 

「何処へ――」

「正面だよ」

 

 俺は霧を出してずっと依姫の正面にいたに過ぎない。霧も濃かったので依姫の周りに案山子を大量に配置していた。

 そして俺はすかさず依姫が正面に振り返る前に、依姫の左ふくらはぎを思いっきり蹴った。

 

「ガァッ!?」

 

 蹴った瞬間、辺りにボキッとした音が二回聞こえた気がした。恐らく依姫の左の脛骨と腓骨が折れたんだろな。

 

(作者の弟がサッカーの授業中に事故で友人にこの二つの骨を折られた)

 

「『刀』」

 

 俺は刀の刃を依姫の首筋に当てた。

 

「負け……だな」

「はぁ……はぁ……グ……」

 

 依姫が痛みを堪えるように顔を歪めた。

 

「……私の負けね。穢れの人間に負けるなど……」

「敗因は俺を舐めすぎた事だな。あんたは俺を妖怪だと思ったろ? 確かに俺は妖怪だが半妖だ、そして半神でもある」

「半神半妖……ですって……確かに神力が少しだけどある……」

「そう言う事だ。それに俺は言霊を使える。詠唱のように神を呼び出しているのは俺にとっては格好の獲物だ」

 

 その時、俺の周りを何十もの光線が通り過ぎた。それは兎達が放ったものだな。

 

「依姫様を……よくもッ!!」

「おいこら、俺はもう戦う気は無いぞ」

 

 まさかの兎達の攻撃とか……。

 

「五月蝿いッ!! 依姫様を傷付けた罪は許さないぞッ!!」

 

 兎達が俺に小銃を向ける。……はぁ。

 

「死にたいのかウサ公?」

『ッ!?』

 

 俺は思いっきり殺気を出した。ある兎は気絶し、ある兎は一瞬のうちに草むらへ隠れた。殆どの兎は戦意を喪失していた。

 

「ちょっと誠兄ッ!! 止めてッ!!」

「い、いや霊夢。今のは正当防衛なんだけど……」

 

 霊夢が封魔針を装備して俺を警戒していた。ちょ、おま……。

 

「全く……ほら」

「……すみません」

 

 俺は依姫の肩を持つ。

 

「さて、医者のところに案内してくれ」

「は、はい……」

 

 そして此処で俺達の戦いは終わった。

 

「貴女達はもうすぐ地上に送り返します。ですが、巫女と貴方には暫く都に残ってもらいます」

「……俺?」

 

 そしてレミリア達は地上に返されたが、俺と霊夢は何故か残る事になった。

 

 

 

 

「ほら、もっとよく狙ってッ!!」

「は、はいッ!!」

 

 あれから一ヶ月ちょいが経過していた。俺は何故か兎達の訓練を教えていた。依姫曰く「負傷した私の代わりです」との有りがたい言葉だ。

 霊夢は月の人々に依姫の無実を証明するために神の召喚を毎日していた。

 

「誠さん、休憩しませんか?」

「さっき休憩したばかりだろ……」

 

 兎達のやる気の無さに俺は溜め息を吐いた。まぁやる時はやってほしいがな。

 

「じゃあ休憩な~」

 

 俺の言葉に兎達は喜んで散り散りに散ったが……。

 

「出てきていいぞ幽々子」

「ありがとう誠君」

 

 草むらから幽々子と妖夢が出てきた。

 

「本命は幽々子達か。紫さんもやるな、自分も囮にするなんてな」

「そこが紫の良いところよ。ブツはもうあるから後は帰るだけなの」

「そうか、まぁ気を付けてな」

「えぇ、ありがとう誠君」

 

 幽々子達はまた草むらに姿を消した。それと俺にはまだやる事がある。

 

「大丈夫か依姫?」

「えぇ、もうリハビリは順調よ」

 

 屋敷の中に入ると松葉杖を持つ依姫がいた。依姫はずっとリハビリをしていた。月の科学は地球の科学力は遥かに上のようで半年は掛かる完治も三日で完治出来るみたいだ。

 ただリハビリが掛かるだけのようだが。

 

「桃を切っとこか」

「貰うわ」

 

 俺は包丁で桃を切って皿に盛り付けて依姫に渡す。依姫は桃を見て嬉しそうに食べていく。

 

「明日くらいで巫女の召喚も終わるからその時に地上へ送るわ」

「そうか、長いようで短かったな」

「リハビリは長かったわ」

「ハハ、それもそうか」

 

 依姫の言葉に俺は苦笑した。

 

「さ、リハビリでもするわ」

「無茶はするな――」

「きゃッ!?」

 

 俺がそう言った時、依姫がよろけて立ち上がる寸前の俺に倒れた。

 

「おいッ!!」

 

 急な事で俺は支える事が出来ず、そのまま床に倒れたが……。

 

「大丈夫か依姫?」

「………」

 

 依姫は俺の胸に顔を当てて真っ赤にしていた。多分急な事で思考が追い付いていないな。

 

「こんなところを霊夢に見られたら――」

「はぁ、疲れたわぁ……」

「どうしたの霊夢? 立ち止まって……あらぁ」

 

 BADENDだな、勿論俺が。

 

「……今なら依姫は倒せるわね」

「愛のパワーかしら?」

「そんな事言ってないで助けて下さい」

「式は何時かしら?」

「駄目だこいつッ!?」

 

 そして俺と霊夢は月の都を後にするのだった。

 

 

 

 




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