『言霊使いと幻想郷』   作:零戦

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第六十四話

 

 

 

「……海だねぇ」

「これが海ねぇ」

 

 月の海岸で霊夢と霧雨が黄昏ていた。ちなみに俺は暇なんで釣りをしている。

 

「幻想郷にもこんな海があれば大分違うんだがな」

「海坊主とかクラーケンとかが出るだけでしょ」

「それは否定出来んな」

 

 もしいれば人里の被害は甚大だな。

 

「着いたばっかで何を黄昏ているのかしら?」

 

 後ろから咲夜が声をかけてきた。

 

「帰りの船(ロケット)は大破しちゃったしな」

 

 霧雨はそう呟いた。波が大破したロケットを波打ち際に上げていた。

 

「でも月に着いたから問題は無いわ」

「どうしてだ?」

「私達の目的は月に行く事であって月から帰る事ではないからね」

『………』

 

 まぁ……ある意味合ってはいるな。そして咲夜はレミリアの迎えに行った。

 

「はぁ……考えてもしょうがないわね。誠兄と釣りでも始めようかな」

「お、いい考えだな。海には大きな魚が棲んでいるというからな」

「道具はあるのかしら?」

「誠兄ちゃんから出してもらおうぜ」

「おいおい……」

 

 ん? 人の気配が……。

 

「残念ね。豊かの海には何も棲んでいないわ」

 

 振り返るとそこには月人らしき女性がいたが……歓迎ムードではないな。何せ女性は刀を構えていたからだ。

 霊夢のように黄色のリボンをしてポニーテールにしている。

 

「豊かの海だけではない。月の海には生き物は棲んでいない。生命の海は穢れの海なのです」

「お、おいおい。物騒だなその長物(ものほしざお)」

 

 霧雨が冗談のように言うが女性はそれを気にせず、切っ先は霊夢に向けた。

 

「住吉三神を呼び出していたのは――お前」

「……えぇ」

 

 霊夢はめんどくさそうに地面に座ったが、女性は地面に刀を刺した。

 

『ッ!?』

 

 すると地面から無数の刀が飛び出してきて、俺達を包囲する。

 ……ふむ、神の力があるな。そのせいで動けないという錯覚があるな。

 何とか動けるが俺の中にある神力と向こうの神力がお互いに交わろうとしないな。

 例えるなら磁石のS極同士をくっつけようとするがくっつかないみたいな。

 

「女神を閉じ込める祇園様の力。人間相手に祇園様の力を借りるまでもなかったか。住吉様を呼び出せるというからどれほどのものかと思ったけど」

「依姫様ッ!!」

 

 そこへうどんげと同じ月の兎がやってきて女性に何かを報告する。

 

「な、何ですってッ!? あんな小娘相手に貴女達は何をやってい――」

「誰が小娘よ。貴女……殺すわよ」

 

 そこへレミリア達がやってきた。おぉ、カリスマオーラが出まくっているな。

 

「月の兎達はどうしたのかしら?」

「全部のしてきたよ、後はお前だけだ」

 

 レミリアはそう言っているが女性は兎に真相を聞いた。すると草むらから複数の月の兎達が出てきた。

 

「……圧倒的に実戦経験不足……ねッ!!」

 

 女性はそう言ってレミリアに攻撃を仕掛ける……が、咲夜が時の力(ザ・ワールド)を使ったらしく、一瞬のうちに女性の後ろに回り込んで攻撃を阻止した。

 

「い、いつの間にッ!?」

「貴女……手癖が悪そうだったから」

 

 咲夜はそう言って地面に刺した刀を左足で抜こうとした。

 が、咲く夜はまさかの空振りをして慌ててもう一回して刀を抜くと俺達を包囲していた無数の刀は地面に消えた。

 

「……貴女達の目的は何かしら?」

 

 女性は先程の咲夜の失敗を見なかった事にするみたいで俺達に聞いてきた。

 

「目的って何だっけ?」

「月に行く事って言ってなかったっけ? つまりは知的好奇心だ」

「じゃあ達成されていたのね」

 

 感心するように言うなよ咲夜……。

 

「フフ。咲夜、忘れたのかしら?」

 

 レミリアは苦笑していた。

 

「私達の目的は月の都の乗っ取りよ。そして月は私の物よ」

 

 レミリアはカリスマオーラ全開だな。まぁ何処かで燃料切れを起こしそうだが。

 

「……八意様の言っていた通りね。増長した幼い妖怪が海に落ちてくると」

「何?」

「貴女、さっき私の手癖が悪いって言ったわね?」

 

 すると女性は炎を出したが……あれはもしかして……。

 

「そんなちんけな火に何も怖くないでしょ? 何怯んでいるのよ咲夜ッ!!」

「これは小さく見えても愛宕様の火。全てを焼き尽くす神の火なの。地上にはこれほど熱い火は殆どない」

「愛宕様の火……さっきは祇園様の剣って……もしかしてあんたも私と同じ――」

「そうよ。私は神々をその身に降ろして力を借りる事が出来る」

 

 霊夢の言葉に女性はそう答えたが、やはりそうだったか。

 

「……奇遇ね。私も最近その力の修行をしたばかりなの」

「分かっているわ。住吉三神が貴女に呼び出されていたんだからね。それに貴女が色々な神様を呼ぶと私が疑われるのよね。謀反を企んでるんじゃないかってね」

「そんなの知らないわよ。稽古はやらされてたんだもん」

 

 霊夢がそう言った刹那、女性は再び刀を地面に刺して俺達を包囲する。

 

「でも、その疑いも今日晴れる」

 

 女性はそう言い、兎達はドヤ顔をしながら小銃を俺達に突きつける。

 ……いやお前ら何もしてないだろ?

 

「どうした? 動いても構わないよ。祇園様の怒りに触れるけど」

 

 女性は勝ったという表情をしている。

 

「自力で月に来るなんて、どんな奴かと思っていたけど……面白くないわね」

「そうか、なら面白くしてやろう」

「何ですって?」

「『突風』」

『ッ!?』

 

 その瞬間、女性達が吹き飛ばされた。ついでに刀も地面から離れて包囲は解けた。

 

「さて……やるか」

 

 

 

 




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