『言霊使いと幻想郷』 作:零戦
そしてそれから三年の月日が流れた。
俺は十六歳となり、霊夢は十二歳になっていた。
「ほらほら誠兄、茶碗片付けるわよ」
「はいはい」
「はいは一回よ」
「……はい」
性格が少しきつくなった霊夢でした。霊夢ちゃんと言われたらかなり睨まれたな……。
ちなみに霊夢の服は巫女服である。よし、よく分かっているな紫さんや。
「はぁい、霊夢いるかしら?」
「ん? 紫さんじゃないですか」
スキマから紫さんが現れた。いきなりどうしたんだ?
「霊夢なら茶碗を片付けていますけど」
「そう、なら待たせてもらうわ」
紫さんはそう言って座布団に座る。俺は紫さんにお茶を入れる。
「どうぞ」
「ありがとう誠君。どうかしら誠君? 幻想郷に来て三年になるわね」
「そうですね……一言で言えばのどかですかね」
「機械とか恋しくないんじゃないの?」
「最初はそうでしたけどね。ま、馴れですね馴れ」
俺はそう言ってお茶を飲む。ふぅ、苦みがいいな……。
「あら紫じゃないの」
そこへ食器を片付けた霊夢が炬燵に入る。入るというかあれだがな。布団は片付けてるし。
「霊夢、仕事よ」
霊夢が来た途端に紫さんの表情は真剣になる。かくいう俺と霊夢むだが……。
「宵闇の妖怪と言われているルーミアの人食いが激しいわ。既に五人が死亡して十二人が重軽傷を負っている」
「ルーミアが?」
俺は思わず驚いた。確かにルーミアは人を喰うらしいがボケェっとしているのが印象的なんだが……。
「そう、あのルーミアが思うけど本当よ。ただ……」
「ただ?」
「情報が少ないのだけれど、ルーミアと接触した人間の何人かはルーミアの目は虚ろでフラフラとしているらしいわ。恐らくだけどルーミアは操られている可能性があるわ」
「操られている可能性が?」
……これは厄介な事になってきたな。
「ルーミアを操っている人物は残念ながらまだ特定はしてないわ」
「妖怪の賢者でもある紫さんでも?」
「えぇ、意外にも犯人はすばしっこいかもね」
紫さんは扇子を拡げて口元を覆う。一見、笑っているように見えるけど多分怒ってそうだな。
「それでルーミアは始末するの?」
不意に霊夢はそう紫さんに聞いた。
「現状ではそうするしかないわ」
「……分かったわ。なら早速仕事の準備をするわ」
霊夢はそう言って立ち上がり部屋を後にした。
「誠君もお願いね」
「……分かりました」
俺がそう言うと紫さんはスキマに入った。
「貴女は食べれる人類?」
「……残念だけど食べれるないわね」
「そーなのかー」
深夜、霊夢とルーミアは対峙していた。俺は近くの木陰のところで見守っている。
「悪いけどルーミア、貴女は退治するわ」
「そう簡単にやられないよ」
「……確かに目は虚ろだな。だが、言葉はハッキリと言っているな」
念のために双眼鏡をショートカットで出してルーミアの目を見たけど確かに虚ろだ。
「行くわよッ!!」
霊夢は札を出してルーミアと戦闘を開始した。
「霊夢が負けると思うかしら?」
「……いきなり現れないで下さいよ紫さん」
いつの間にか紫さんは俺の後ろにスキマを開いて出てきていた。
「あらあらごめんなさいね」
紫さんはそう謝るが本気で謝ってないだろうなぁ。
「んで霊夢ですが、負けはしないですよ」
「それは確信かしら?」
「確信というより確定ですね。霊夢とは三年、暮らしていましたが技を出すタイミングや先を読む思考は自分よりありますよ」
「あら、よく分かるじゃないの」
「終わりよルーミア」
その時、霊夢とルーミアの決着がついたみたいだった。案外早いな。
「じゃあ、誠君は霊夢がこれからする行動は分かるかしら?」
「そんなもん簡単ですよ……」
俺は札を持つ霊夢を見る。
「直ぐに面倒くさくなってルーミアを殺すのは止めますよ」
「止めたわ。貴女を殺しても事件は解決しないしね」
俺がそう言うと向こうにいた霊夢もそう言って札を仕舞う。
「ほら誠兄、早くルーミアに縄で縛ってよ」
「はいはい。『縄』」
俺は言霊で縄を出して負傷しているルーミアを縛る。
「貴方は食べれる人類?」
「残念だが俺は食べれないな。代わりに飴ちゃんでもやるよ」
「わぁ、甘~い♪」
ルーミアにパイン味の飴をやるとルーミアは嬉しそうに飴を舐める。
ちなみに飴はたまに紫さんが外の世界から持ってきている。
恐らく猫ババしていると思うがな……。
「……洗脳は解けてるわ、恐らくルーミアが負けたから自動的に解けたみたいね」
「ルーミアは無理矢理やらされたと里の人間に言っても無理ですかね」
「恐らく無理よ。既にルーミアに喰われた人もいるわ。里の人間に説明しても信じないわね」
「ならルーミアはどうするのよ? まさか神社で世話をするの?」
「「それは名案だ(ね)」」
「はぁ?」
俺と紫さんの言葉に霊夢は驚く。てかこれしか方法はないだろ。
「ずっとじゃなくて、今回の犯人を捕らえるまでだ霊夢」
「でも……」
「私からも頼むわ霊夢」
「……分かったわ」
俺と紫さんの頼みに霊夢はゆっくりと頷いた。
「ルーミアもそれでいいか?」
「いいよー」
まだ飴を舐めているルーミアは俺にそう言った。
「………」
「どうしたんですか紫さん?」
紫さんは遠くを見ていた。
「……いえ、何でもないわ」
……何かあったのか?
「……危ないところでしたね魅魔様、もう少しで八雲紫にバレるところでしたね」
「何言ってんだい。魔理沙がバレるような場所で見ようとするからだよ」
「いたッ!?」
霊夢とルーミアが戦った場所から遠く離れた上空で一人の少女と悪霊の女性が喋っていた。
「兎に角、これで博麗の巫女には一応ながら布石はしておいた。私らも動くよ魔理沙」
「うふふふ、分かりました」
二人はそう言って夜の闇に消えるのであった。
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