『言霊使いと幻想郷』   作:零戦

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第六十一話

 

 

 

 それから数日後、霊夢は住吉さんを呼び出すための修行をしていた。

 境内に三本の松明を作って修行をしていると霧雨がやってきた。

 

「本気で修行をしているんだな霊夢。お前らしくもないぜ」

「住吉さんは三柱の神様だからね。通常の三倍で修行をしないとね」

「……赤いモビルスーツか……」

 

 霊夢の言葉に俺は某仮面の人を思い出した。多分早苗が話に加わって盛り上がりそうだな。

 

「神様も大変だな。巫女の身体を借りるとすると、三世帯住宅みたいなもんだろ?」

「まぁ神様の世界ではよくある話よ」

「世知辛いな。けど不思議だぜ、巫女が神様の力を借りるのはどういう仕組みなんだぜッ!!」

 

 霧雨が手にかけていた松明がぐらついて倒れた。霧雨は直ぐに起こし、霊夢が隣の松明から火が付いた薪を当てて火を起こす。

 

「魔理沙。日本の神様は他の神様より面白い性質があるのさ」

「魅魔様ッ!!」

 

 そこへ、萃香と宴会をしていた魅魔がひょろひょろとやってきた。

 

「日本の神様はね。何分割しようと元の神様と同じ力を持つ。神の宿る場所さえあれば無限に神を増やす事が出来るんだよ」

「つまり分身の術が得意なんですね魅魔様。でも何で日本の神様は物理法則に反した事が出来るんですか?」

「霧雨、日本の神は神様と言っても主に神霊の事だが神霊は精神を示すからだ。精神の字に神の字が含まれているだろ? 考え方は人に伝播しても減らないし無限に増やす事が出来るんだ。この松明のようにな」

 

 俺は桜新町の秋名の事務所の地下室で読んだのを思い出した。あの時はことはもいたな。

 

「てことは霊夢に神様が宿るのは……」

「その神様の性格を持つ……ってだけの話ね」

「三世帯住宅じゃなくて三重人格者になるだけか」

「でもね魔理沙。神様を宿らせ過ぎると神様同士が喧嘩を始めたりする大変なのよ」

「……人間くさいぜ」

「時には人間以上にね」

「神奈子とか見ていればよく判るけど、神奈子達はどうなんだ? アレも分身するのか?」

「肉体を持つかは自分の神霊を分霊させるのよ。神様の肉体と神霊の肉体は本体と生き霊みたいなもの。生き霊はいくつにでも分かれるけど本体は増えたりはしないわ」

「そーなのかー。分身しても面白かったんだがな。それで修行して本気で月に行くつもりなのか?」

「面白そうじゃないの」

 

 嬉しそうだな霊夢。

 

「霊夢、土産は月の石で良いからな」

「何を言っているのよ誠兄。誠兄も行くのよ?」

「……俺も?」

「当たり前じゃない。それに魔理沙は忍び込んでロケットに潜りそうだしね」

「……それは納得するな」

「しないでほしいぜ兄ちゃん」

 

 俺達は笑った。

 

 

 

 何処かの海。そこに紫と蓮子がいて烏の式神からの報告を聞いた。

 

「――道は爾きに在り。而るにこれを遠きに求む。吸血鬼も外の世界の魔法など頼らずども幻想郷だけで全て完結すると言うのに」

 

 紫はそう言って式神を放ち、スキマに消えていったのである。

 

 

 

 そして季節は冬となり、雪もチラホラと降るようになっていた。

 パチュリー達が神社に来て、霊夢にロケットに行程を教えていたが霊夢がめんどくさいので俺がする事になった。

 パチュリーも俺だと安心するとの事だ。

 

「そろそろ行くぜ兄ちゃん」

「あいよ」

 

 俺達は紅魔館でのパーティに参加するために行く準備をしていた。

 

「普通に紅魔館にお呼ばれされるのは珍しいわね」

「ロケットの完成が嬉しかったんだろ」

「普段は退屈そうにしてるからねぇ……無駄に長く生きているから楽しみが無いんじゃない? 念願のロケットが完成してはしゃいでいるのよ」

「走尸行肉」

「ん? 幽々子じゃないか」

「久しぶりね誠君。毎日はしゃいでいるのも良いけど、どうでも良い事ばっかりしてるなら走る屍動く肉と何の違いもないの」

 

 境内に幽々子と妖夢が現れた。二人とも可愛く着こんでいて可愛いな。特に幽々子。

 

「動く屍のお前が言うな」

「珍しいじゃないの。二人お揃いで」

 

 幽々子は神社で宴会しようと言ったが、時間は無かったためそのまま紅魔館へ向かった。

 

 

 

「久しぶりなのか誠ぉ」

「久しぶりだなルーミア」

 

 俺は寄ってきたルーミアの頭を撫でる。紅魔館には大勢の妖怪達がきていた。

 

「それにしてもあの吸血鬼が月に行く時代が来るなんて思ってもいなかったわ。ほんと困った動く肉ねぇ」

「………」

「なぁに妖夢?」

「いえ……」

 

 幽々子の言動に妖夢が幽々子に視線を向けていた。

 

「でもロケットは妖夢のヒントがあったからでしょ? 私はてっきりあんたが吹き込んだと思ったけど」

「とんでもないわ。私が何でそんな事をしなきゃいけないのかしら?」

 

 そこへ十六夜がやってきた。

 

「もう来ないかと思ったわ。てっきり神社で宴会するのかと……」

「料理が出るパーティと神社のどっちが良いって言ったらねぇ?」

「特に突っ込まないぜ」

「それなら幽々子は神社での宴会は無しな」

「あぁん、ごめんなさい誠君~」

 

 幽々子が慌てて俺に言ってきた。そしてパーティ会場に入った。

 

「……かなり人がいるな」

 

 中には予想を越える人々がいたのであった。

 

 

 

 

 

 




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