『言霊使いと幻想郷』 作:零戦
「私達スカーレット家は幻想郷に幻想入りするのを決めたのは勿論私の父よ。そして幻想入りしたのだけれど、父は先に幻想入りしたわ。土地調べの意味もあるのだけれどね」
「そこら辺は私も阿求の資料を見たわ」
「そう。父は新参者として扱われたらしいけど、それが父の癪に触ったのでしょうね。この紅魔館近辺にいた妖精や妖怪を自分の陣営に組み入れたわ。そして八雲紫に霧の湖近辺で境界線を申し出たわ」
「境界線?」
「簡単に言えば、父はこの湖近辺を占領してスカーレット家の領地にしようとしたのよ。そして幻想郷を二分化しようと企んだわ」
レミリアはそう言って咲夜が用意した紅茶を一口飲んだ。
「勿論八雲紫は許さなかった。八雲紫は紅魔館の土地は提供したけど、占領して幻想郷を二分化するのは幻想郷の運営が難しくなると思ったのでしょ」
「そう言えば結構里でも騒いでいたわね」
「父は妥協しない八雲紫に先手を打って里の人間を殺して木に張り付けたわ。それが八雲紫を完全に怒らせた。父は八雲紫の虎の尾を踏んだのよ」
「……それが吸血鬼異変に発展したわけね」
「えぇ。八雲紫も父を倒そうとしたけど此処で問題が生じたのよ。霊夢なら判るわね?」
「……私が提案したスペルカードルールね?」
「そうよ。あの時はまだ霊夢が提案したばかりでしょう? 妖怪達もそのルールに乗ろうとしていた矢先だから八雲紫は躊躇した。そして思案した結果、異変は直ぐに終わったと称して父を討伐したのよ」
「……異変を葬ったの?」
「違うわ。隠したのよ、いや隠さなければならなかったわ。そうしないと霊夢が提案したスペルカードルールは消えていたわ」
「………」
レミリアの言葉に私は何も言えなかった。私が知らないところでそんな事があったなんて……。
「そして父を討伐したのは八雲紫、式神の八雲藍、そして八雲誠と悪霊の魅魔よ」
「魅魔も参加していたの?」
「えぇ。あの時の戦力としては魅魔も参加していたわ」
――回想、博麗神社――
「夜中に襲撃か」
「そうよ。吸血鬼は夜がメインだからね」
神社に来た紫さんはそう言った。
「霊夢は寝ているわね?」
「勿論だ。永琳からくれた睡眠薬をご飯に混ぜておいたからな」
流石に今回のは霊夢も参加出来ないからな。俺? 俺は必要戦力だからな。言霊使えるからな。
「それじゃあ行くわよ」
「判った」
「久しぶりに思いっきり戦えるねぇ」
魅魔が嬉しそうにウキウキしていた。あまりはしゃぎ過ぎるなよ。
そして俺達四人は吸血鬼がいる紅魔館へ向かった。
――紅魔館正門――
「ん? 何だお前らは?」
紅魔館の正門に降りると門番らしい妖怪がいた。
「紫、もうやってもいいのかい?」
「……取りあえず門番は消しなさいな」
「よし、やるよッ!!」
「しゅ、襲撃――」
魅魔がそのまま門番の首をはねた。門番ははねる前に襲撃を知らせており、直ぐに妖怪達が集まった。
「誠君、頼めるかしら?」
「任せて下さい。ショートカット『M2』ッ!!」
俺は言霊の力でブローニングM2重機関銃を三十丁を召喚した。
「俺達の力がそんなに見たいのか……撃ェッ!!」
十二.七ミリの機関銃弾が次々と発射されて集まった妖怪達の命を刈り取り、肉片に変えた。
「壊しますよ?」
「お願いするわ」
「ショートカット『アハトアハト』と『十加』ッ!!」
俺は紅魔館を砲撃するためにアハトアハトと九二式十サンチ加農砲を二十門ずつ召喚した。
「撃ェッ!!」
アハトアハトと十加はそれぞれ三発の砲弾を紅魔館に叩き込んだ。勿論、紅魔館は砲撃で全壊した。
「八雲紫ィィィーーーッ!!! よくもこの私の紅魔館をーーーッ!!」
そこへ異変の首謀者であるブラッド・スカーレットが多数の吸血鬼と共に姿を現した。
「誠君」
「了解。弾種銀弾装填、撃ェッ!!」
まだ残しておいたM2に銀弾を装填させて再び射撃を開始した。
咄嗟の判断でブラッド・スカーレットは避けたが、逃げ遅れた吸血鬼は肉片と化した。
「おのれ八雲紫ッ!!」
「恨むなら自分の行為を恨みなさい。幻想郷には貴方のような輩はいりませんわ」
そして紫さんとブラッド・スカーレットの戦いが始まったわけだが……。
「紫さん、圧倒的だな……」
「紫様も本気を出しているな。この分だと冬眠の時期が早くなるな」
横で藍がそう呟いている。ちなみに魅魔は他の生き残りの雑魚妖怪相手に無双化していた。
そして紫さんとブラッド・スカーレットの戦いだが、いやほんとに紫さんが圧倒的だわ。
ブラッド・スカーレットの攻撃をスキマで防いでスキマで返している。
あ、スキマでブラッドの右腕をもぎ取った。
「八雲紫ィィィーーーッ!!!」
「聞き飽きたわ吸血鬼。潔く散りなさい」
紫さんは扇子を仕舞い、スキマでブラッドの頭をもぎ取った。
「誠君、悪いけどお願いするわ」
「分かりました。ショートカット『MG42』」
俺は銀弾を装填したMG42を出してまだピクピクと痙攣をしてブラッドの身体に目掛けて引き金を引いた。
大量の銀弾はブラッドの身体中に突き刺さってそのままブラッドは事切れた。
「……終わったようですね」
「そのようね……と言いたいけど、そこに隠れている者、出てきなさい」
紫さんがそう言うと、瓦礫の影から一人の吸血鬼と二人の妖精メイドが出てきた。
「それが私なのよ」
「レミリア? 先に幻想入りしたのはレミリアの父親でしょう?」
「父に呼ばれていたのよ。大方、八雲紫と戦うからその戦力の一人で数えていたのかしらね」
「それよりレミリアの能力で父親を助けなかったの?」
「フランを見捨てた奴など父ではない。表面上は父と呼んでいたけどね」
「……私も殺すつもり? それならメイドだけは助けてほしいわ」
「あらあら。私の狙いはブラッド・スカーレットの討伐のみよ。貴女は含まれてませんわ。それより取引をしません事?」
「取引?」
「えぇそう。貴女はブラッド・スカーレットの身内でしょう? なら貴女に紅魔館の当主になってもらうわ」
「……どういう事かしら?」
「そのままの意味ですわ。私からのお願いを聞いて下されば、貴女方の命は保証しますわ」
「………」
目の前の吸血鬼(後にレミリアと判明)は幾分か悩んだがやがては納得した。
「……判ったわ」
「ありがとうございますわ。それから早速お願いがあります」
「……それは何かしら?」
「簡単な事ですわ。幻想郷にスペルカードルールを広めてもらいたいのですわ」
「……紫がレミリアにスペルカードを広めるのをお願いしたの?」
「ま、そうなるわね。つまりあの紅霧異変はスペルカードルールを徹底的に広めるための異変でもあるのよ」
紫ったら……。
「それに……」
「何かあるの?」
「な、何でもないわッ!! 何でも……」
レミリアは顔を赤くしながらそう言っていた。
――――おまけーね――――
「それでは交渉成立ですわね。それと吸血鬼さん、早く着替えた方が宜しいですわ」
「ッ!? わ、判っているわよッ!!」
レミリアが急に顔を赤くしだした。
「何をだ藍?」
「……少しは空気を読め誠。つまり……」
……あぁ、漏らしたのか。(何かは言わないぞ)
後に聞けば俺が放った銀弾がレミリアの目の前を通った事で……らしい。読者の皆は察しがつくだろうな。
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