『言霊使いと幻想郷』 作:零戦
主に漫画を主体にしています。
霊夢と紫さんの戦いは唐突に終わった。
「天岩門別命(あまのいわとわけのみこと)」
霊夢がそう言うと地面に大きな穴が開いた。俺と霧雨は咄嗟に飛翔して難を逃れた。
「そうそう、良い感じ。でも……この穴は――」
紫さんはそう言って穴の中に入り込んだ。入り込んだと同時に穴が閉じた。
「弱い幻覚」
地中から紫さんがそう言うと、それ以降は何も言わなくなった。
「何なんだよ?」
それは俺もおなか気持ちだ霧雨。
「何かね、紫が急に稽古をつけるって言ってきたの」
「……今のは稽古だったのか?」
取りあえずお茶を飲む事にした。
「何で妖怪が人間に稽古をつけるんだ? 力をつけたって自分達が退治されるだけなのに……」
「紫が「折角巫女なんだから将来に備えて神様の力を借りる方法を身につけなさい」って突然襲ってきたのよ」
「はぁ?」
「ま、気紛れでしょ。妖怪も暇なのよきっと」
霧雨の呆れた言葉に霊夢はそう言ってお茶を飲む。
「……でも、さっきのを含めて最近、紫の様子がおかしいのよねぇ。何か悪い事を企んでないといいけど……」
「企んでいたとしても霊夢に稽古をつけさせる意味が分からんな。ワクワクするぜッ!!」
「企んでいた方が良いみたいないいぶりね?」
「企んでいた方が良いに決まっているじゃないか。ちなみにさっきの穴は神様の力か? あんな技が使える神が八百万もいるんだろ? 凄いじゃないかッ!! 私も巫女になろうかな」
霧雨が目を輝かせながらそう言った。
「はぁ……私の周りの八割は厄介で出来ているなぁ……」
「諦めろ霊夢。それが幻想郷だ」
溜め息を吐く霊夢に俺はそう言っておいた。
そして翌朝も霊夢は修行をしていた。ちなみに俺はゆっくりを頭に乗せて境内を掃除中だ。
「……誠兄、何か良くない感じがするわ。近いうちに面倒な事が起こりそうよ」
「霊夢の感は当たるからな。ま、準備だけはしておく必要があるな」
「でも天岩門別命では駄目ね。境界を操る妖怪だっているんだしね」
「紫さんはチートだからなぁ……」
「大国主命(おおくにぬしのみこと)とかどうかしら? 美形だって言うし」
その時、草むらからガサガサと音がした。
「誰? 妖怪ッ!?」
「……兎?」
草むらから出てきたのは兎……じゃなくて妖怪兎だった。
「妖怪兎ね……罠にでも掛かったのかしら?」
「取りあえず永遠亭に連れて行こうか」
俺は妖怪兎を背負い、永遠亭に向かった。だが、この時に烏が一羽飛んで行くのは知らなかった。
何処かの海。海面には八雲紫と宇佐美蓮子、八雲紫の式神の八雲藍がいた。
「――です。次に天狗ですがスクープを独占したいとの事で天狗の棟梁と話をする事が出来ませんでした。第三の目として行動したい感じでしたので協力してくれるとは言い難いかもしれません。次にかっ――」
「もう良いわ藍。そんなに協力者は要らないわ」
藍の話を遮る紫の元へ、式神の前鬼が戻ってきた。
「偵察御苦労様前鬼。後鬼より給料三割増しにしておくわ」
そう言って式神を放つ。
「遂に宇宙人が動き始めた。予定より遅いけど誤差の範囲だわ」
「宇宙人? あぁ竹林に住むへんちくりんな奴等ですね。ですが良いんですか? あそこの人には話が漏れないようにって言ったのは紫様ですよ」
「とうとうボケが始まったのねメリー」
「漏れないようにしたから動き始めたのよ。少しずつ異変を感じ取ったのでしょう。宇宙人が動き始めないと私達も動けないわ。後、蓮子は後でお仕置きよ」
「げっ」
嫌な表情をする蓮子に紫は笑う。
「今回は上手くいくかもしれないわ。神様を従えた巫女さえ動けば敵に勝ち目は無い」
紫と蓮子はスキマの中へ入り込む。
「始めるわ。美しき幻想の闘い……第二次月面戦争を」
そして紫と蓮子はスキマに消えた。
「ところでメリー。何で赤い縄を持っているのよ?」
「あら、貴女にお仕置きと躾をするのよ。今日は蝋燭も付けるわよ」
「ちょ……」
「あら、誠さんですか。今日はどのような事で?」
「急に済まないな阿求さん。実は幻想郷縁起を見たくてな」
俺は妖怪兎を永遠亭に送り、そのついでに稗田阿求の家に来ていた。
「どの部分を見たいのですか?」
「取りあえず最初から見たい。無理か?」
「いえ、大丈夫ですが……霊夢さんには言ってますか?」
「抜かりは無いよ」
阿求から幻想郷縁起を受け取り、別室で読み始めた。
「……ふむ、やっぱ時間は掛かるわな」
俺は寝転がりながらそう呟いた。阿求からくれたお握りでも食べて一旦休憩とするか。
「過去に何かあると踏んだけど……このままだと無さそうかもなぁ」
俺はお握りを食べつつ、頁を閉じようと……うん?
「……幻想月面戦争騒動?」
月面というと……月?
「はて……?」
俺はその項目を読んだが……。
「月は元より宇宙に空気は無い筈……けど、妖怪軍は月を侵略しようとしたが、月の勢力に惨敗した……か」
……もしかして……。
「ひょっとすると紫さんは……」
けど、そう考えたら紫さんの行動にも納得するな。けど、紫さんは本当にやる気か?
「第二次月面戦争でも起こすというのか?」
俺の言葉はただ部屋に響くだけだった。
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