『言霊使いと幻想郷』 作:零戦
「はい誠。あ~ん」
「あ、あ~ん」
俺は何故か病室で輝夜から介護を受けていた。手は大丈夫だから使えるんだが……。
「誠は病人でしょ。良いじゃない」
「いやまぁ……そうだが……」
俺はリンゴを食べながらそう言ったが……まぁ良いか。
「誠、ゲームしよっか」
「良いぞ。何のゲームだ?」
「ニィ、パワ〇ロよ。今度こそリベンジしてあげるわ」
輝夜がパワ〇ロのソフトを見せる。ほぅ、輝夜も今回は自信があるみたいだな。
「それならゲーム開始だな」
「ふむ、腕をあげたな輝夜。だが……」
「うそッ!? 今の入っているのッ!?」
「此処でェ……ッ!!」
「甘いな輝夜」
「ガ、ガッツに打たれたァッ!? ……てよく見たら打者の打法が全員神主打法ッ!!」
「思い出しました」
「また負けたぁ……」
「腕はあげたがまだまだだな輝夜」
ゲーム後の一息。俺は饅頭を食べて輝夜はお茶を飲んでいた。
「ところで輝夜。永琳から聞いたが最近元気が無いとか……」
「え、別に元気無いとかじゃ……」
「まぁ必死に「ホームラン入らないでッ!!」って叫んでたからな」
「それは言わないでよッ!!」
輝夜が怒りながら反論をする。
「で、何で元気が無いんだ?」
「………」
俺の言葉に輝夜が黙るが、少し経って口を開いた。
「その……誠ってもしかすれば神になるかもしれないでしょ?」
「まぁな」
「だから……寂しくないかなと思って……」
……成る程な。
「そうだな。けど輝夜達は不老不死だから何時でも俺と会えるだろ?」
「そうだけど……べ、別に私がそっちに行っても……」
「ん? 何か言ったか?」
「な、何でも無いわよッ!!」
「お、おい叩くなよ……」
輝夜が急に立ち上がって俺をぽかぽかと叩いてくる。
「おい、あんまり叩くなよ。そのうち転けるぞ……」
「きゃッ!?」
「おい……って……」
輝夜が足に着物を踏んで転けた。転けたのはいいが俺に乗り掛かるのだが、何故か輝夜は俺を押し倒した。
「輝夜……?」
「……あのね誠。着物って下着の線が見えるから大抵は着ないんだよね」
「……それで?」
「私……今は着物だけ着ているんだよ」
それは……。
「……ん……」
すると、輝夜は何故か目を瞑りだした。おい、これはもしかして……。
「………」
輝夜は目を瞑り、唇を差し出すようにしていた。
「………」
……知らんぞ。俺はどうなっても知らんぞ輝夜。そして俺はゆっくりと輝夜に近づいて、もう少しで両人の唇が合わさろうとしていた。
「姫様ぁ。お茶の御代わりを御持ちしま……」
そこへ鈴仙がお茶の御代わりを持ってきたが、俺達の状況を見て唖然とした。
そして急激に顔を赤らめて襖を勢いよく閉めた。
「し、失礼しましたッ!!」
鈴仙はそう言ってパタパタと走って行った。
「し、師匠ォッ!! ひ、姫様の就職が決まりましたァッ!!」
「ちょ、待ちなさいよ鈴仙ッ!!」
輝夜も顔を赤らめて鈴仙の後を追った。
「……文、新聞に載せたら妖怪の山を無くすぞ」
「あややや、それは私も困りますね。それに誠さんも死にそうですから封印しておきますね」
文がひょこっと窓から顔を出してきた。
「でもですね誠さん。私に口止め料をくれたらなぁ……と」
「口止め料?」
「えぇそうです」
「まぁ……大丈夫だな」
「ありがとうございます。では……」
文はそう言って俺に近づいて……え?
「ん……頂きました」
「文……」
文は俺の右頬にキスをしたのだ。
「口止め料頂きました。ではこれで」
文は顔を赤らめつつ去って行った。
「……本当にどうしようか……」
そう呟く俺だった。
何処かのとある海。八雲紫と宇佐見蓮子がいた。八雲は二匹の式神を呼び寄せた。
「さぁ行きなさい、私の可愛い式神達よ。神酒を手に晴れを越え雨を越え嵐を越え、そして賢者を探しなさい」
紫はそう言って式神の烏を放った。
「ねぇ……メリー。何を始める気なの?」
「フフ、そうねぇ……」
蓮子の呟きに紫は笑った。
「蓮子にとって面白い事をするのよ」
紫は蓮子にそう言った。
「じゃあ御世話になりました」
「えぇ」
「………」
「御大事に」
「元気でねウサ」
一週間後、俺は永遠亭を退院して輝夜達から見送られていた。まぁ輝夜とは……ギクシャクした関係が続いたな。
輝夜と視線が絡むと途端に二人して顔を赤らめてしまったしな。
永琳には「いつ頃生むのかしら?」と笑いながら言われたな……。
まぁ……兎に角神社に帰るか。
「それでは」
俺は輝夜達に手を振りながら神社に帰った。
「何だこれは?」
「お、霊夢の兄ちゃん。退院したのか」
神社に帰ると霊夢と紫さんが戦っていた。取りあえず近くにいた霧雨に聞くか。
「何がどうなっているんだ霧雨?」
「それが私にもよく分からないんだぜ。今さっき神社に来てこの状況だぜ?」
霧雨は肩を竦めてそう言った。ふむ、霧雨も知らないか。
「取りあえず戦いを見守るか」
俺はそう呟いて二人の戦いに視線を向けた。
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