『言霊使いと幻想郷』   作:零戦

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緋想天はクリアしてないので一話で終わらせました。


第五十七話

 

 

 

 守矢神社の騒動からほぼ一年が過ぎた夏の葉月上旬の朝。俺は境内で掃除をしていた。

 

「……暑いなぁゆっくり」

「ゆぅ……」

 

 俺の頭に乗っているゆっくりは麦藁帽子を被っているが、汗はだらだらと流れている。

 

「ほら」

 

 俺は手拭いでゆっくりの汗を拭いた。周りの木々にはクマゼミが鳴いていた。

 相変わらず五月蝿いものだな。しかも上旬だからまだまだ活発化するな。

 

「さて、終わろ終わろ」

「ゆっ」

 

 俺は掃除を終えて中に入る。中には暑さでだらけている霊夢達がいた。

 

「暑いぃ~」

「ほらだらけるな霊夢。スイカでも切ってやるから」

「私を切るのかい?」

「何でだよ」

 

 萃香にそうツッコミを入れながら台所に向かう。台所には桶に入れて冷やしてあるスイカを取りに行く。

 

「……ん?」

 

 その時、戸棚や食器がカタカタと揺れだした。まさかこれは……。

 

「地震だ霊夢ッ!!」

 

 そう言っている間にも戸棚が倒れ、食器が落ちて割れていく。

 

「誠兄ッ!!」

「早く外に出ろッ!!」

 

 俺の言葉に霊夢達が外に出た。よし、俺も……。

 

バキバキッ!!

 

「え……?」

 

 天井が崩れ、折れた天井の板が俺の左脇腹に突き刺さった。

 

「がぁッ!?」

 

 ぐ……い、痛い……。

 

「く、くそ……」

 

 逃げようとするが、痛みで上手く歩けず天井が崩れて……俺は生き埋めになり、そこで意識が途切れた。

 

 

 

「誠兄? 誠兄は何処よッ!?」

「落ち着け霊夢ッ!! 萃香ッ!!」

「あいよッ!!」

 

 騒ぐ霊夢を落ち着かせながら私は萃香に指示を出す。萃香も私の意図が判り、能力で大きくなって倒壊した神社の天井を持ち上げて天井を退かした。

 

「誠兄ッ!! 誠兄ッ!!」

「霊夢ッ!!」

 

 霊夢が顔面蒼白になりながら瓦礫の山の神社に入り、生き埋めになった誠を探す。

 

「誠兄ッ!?」

「いたのかいッ!?」

 

 ひときわ大きい霊夢の叫び声に私は直ぐに霊夢の場所へ向かう。

 霊夢がいた場所には、折れた天井の板が左脇腹に突き刺さった誠が血の池の中で倒れていた。

 

「誠兄……イ、イヤアァァァァァァァーーーッ!!!」

「霊夢ッ!! 萃香ッ!! 急いで永遠亭に運ぶよッ!!」

「判ったッ!!」

「送るなら私に任せなさい」

「紫ッ!!」

 

 そこへ紫がスキマを開いて現れた。紫ならスキマで開けるだけだね。

 

「頼むよ紫ッ!!」

「任されたわ」

 

 私と萃香は負傷した誠と気絶した霊夢を背負ってスキマの中に潜り込むのであった。

 

 

 

 

――永遠亭――

 

「誠君なら大丈夫よ」

「ほ、本当かい?」

「えぇ。普通の人間なら出血多量で出血死していたわね。でも、彼は半神半妖……神の力も働いていたのかしらね。手術中に傷口はゆっくりと治癒を始めていたわ」

 

 永琳の言葉に私は安堵の息を吐いた。

 

「……良かったよ」

「目覚めた霊夢が付きっきりで看病しているわ。ずっと誠君の手を握っているし、此方が妬けちゃうわ」

 

 まぁそれはね……。

 

「ま、誠さんは無事ですかッ!?」

「あら、紅魔館の門番じゃないの? どうしたの?」

「あ、文さんが号外を出してたのを見て慌てて来たんですよ」

「む……むきゅう……むきゅう……」

「誠さんは無事ですかッ!?」

「誠はいるかしら?」

 

 そこへ続々と色んな奴等が到着しだした。

 

「……愛されてるわね誠君」

 

 永琳の言葉に私は無言で頷いた。

 

 

 

「今回の博麗神社倒壊は異変よ」

「それは判っているわ紫。問題は誰が神社を倒壊させて誠兄を負傷させたかよ」

 

 紫の言葉に私はそう反論した。

 

「それについては些か目星は付いてるわ」

「本当なの紫?」

「えぇ。恐らくこの異変は天人が起こした異変よ」

「天人?」

「そうよ」

 

 紫はそう頷いた。そして私達は異変を起こした首謀者を退治するために戦いに向かった。

 なお、異変には私を含めて多くの者が異変の首謀者――比那名居天子を倒した。

 

「さぁ、誠兄に謝罪してもらうわよ」

「謝罪って何でよ?」

「……あんたがあんな事したせいで誠兄が重傷を負ったのよッ!!」

「止めろ霊夢ッ!!」

 

 比那名居天子を殴ろうとした私を魔理沙が押さえる。

 

「止めなさい霊夢。殴っても意味は無いわ」

「それはそうだけど……」

「取りあえず、連れて行きましょ。私も喘息の薬貰いに行かないと……」

 

 そして私達は比那名居天子と永江依玖の二人を伴って永遠亭に戻った。

 

 

「ごめんなさい」

「……いきなり過ぎてわけわからんのだが……」

 

 目覚めると一人の少女が俺に土下座をしていた。

 

「そいつ……地震を起こした犯人よ誠兄」

「そうなのか?」

「……うん」

 

 ……成る程な。

 

「地震を起こした理由は?」

「……天界は退屈だったのよ。地上を見ていたらあの巫女が異変を解決していたし退屈しのぎに地震を起こしたのよ」

「……そうか」

「いたッ!?」

 

 俺は比那名居にデコピンをかました。

 

「ま、これくらいにしといてやるよ」

「それだけで良いの誠兄?」

「ま、俺のはな。ただし、神社側としては今から請求してやる」

 

 俺はニヤリと笑った。

 

「……ふむ、まぁこれくらいの賠償金だな」

「どれどれ……ゲッ!? こ、こんなにもッ!?」

「当たり前だのクラッカーだ。神社の他にも貯蔵していた食糧とか全てパアなんだ。そのくらいの損害だ」

「八雲さん、せめてこの具合でどうでしょうか?」

 

 そこへ永江が比那名居に助け船を出して数字を訂正した。

 

「……まぁ良いだろ。この具合にしとくよ」

「ありがとうございます」

 

 兎も角、異変は解決した。霊夢達は神社が再建するまでは皆のところで寝泊まりをする事になった。

 俺は永遠亭で入院だけどな。

 

 

 

 

 




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