『言霊使いと幻想郷』   作:零戦

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第五十五話

 

 

「ほら霊夢。御年玉だ」

「ありがとう誠兄」

「うちらには無いのかい誠?」

「魅魔達には酒で十分だろうよ」

「ハハハ、それもそうだね」

 

 季節は正月。皆で炬燵に入りながら朝から御雑煮と餅を食べていた。

 外の方では人里から参拝客が時折来ていた。霊夢は賽銭に喜んでいたがな。

 

「けど餅は美味いわね」

「食い過ぎるなよ霊夢? 作者みたいに正月に餅五個食って三キロ太るぞ」

 

 朝から餅五個って……馬鹿だろ?

『俺ってほんと馬鹿by作者』

 

「ぅ、判ったわ誠兄」

「それでも四個食べてるけどねぇ」

 

 煽るな萃香。

 

「よぅ霊夢。遊びに来たぜ」

「荒々しく入らないの魔理沙、お邪魔します」

 

 そこへ霧雨とアリスがやってきた。

 

「魔理沙、賽銭は?」

「賽銭の代わりにこれがあるぜ」

 

 霧雨が霊夢に日本酒を渡す。霊夢もニヤリと笑って二人の盃を出した。

 

「今年の正月は飲み正月だな」

「それは毎年だけどね。そうそう、紅魔館から正月祝いをしないかという御誘いが来ているわよ」

 

 アリスはそう言って一枚の招待カードを出して俺に渡した。

 

「神社には来てないな」

「美鈴が送ったはずなんだけど……」

「………」

 

 アリスが霊夢に視線を向けるとさっと視線を反らした。

 

「……隠してたわね霊夢?」

「……何の事かしら?」

 

 アリスの言葉に霊夢は口笛を吹いて誤魔化した。犯人は霊夢かよ。

 

「それでその祝いはいつ何だ?」

「今日の昼よ。どうせ霊夢が握り潰していると思ったから寄らせてもらったのよ。それと御詣りも兼ねてね」

「そうか、霊夢は今日の晩御飯は沢庵のみな」

「そ、それはないわよ誠兄」

「隠すのは良くないぞ」

「うぅ……」

 

 最近、霊夢がヤンになりそうで怖いなおい。

 

「それじゃあまた後でね。ほら行くわよ魔理沙」

「後でな霊夢」

 

 二人はそう言って飛んでいった。

 

「……昼前に行くか」

「……判ったわ」

 

 霊夢は溜め息を吐いた。全く……。

 

「今度、二人でみちすー屋台に飲みに行こうか」

「……そうね」

 

 俺の言葉に霊夢は多少嬉しそうだった。紅魔館に行くのは俺と霊夢で、魅魔と萃香は留守番となった。

 

 

 

――紅魔館正門――

 

「くかぁ~」

「……今日も盛大に寝てるな」

「ま、門番だしね」

 

 雪が周りに積もっている正門には美鈴が相変わらず寝ていた。

 風邪は……妖怪だから引かないと思うが寒いだろ。

 

「ショートカット『マフラー』」

 

 俺は言霊でマフラーを出して美鈴の首に巻いてあげた。

 

「……誠兄、私も寒いなぁ……」

「はいはい」

 

 不貞腐れている霊夢にもマフラーを出して巻いてあげた。

 

「門のところで何してるのかしら?」

「お、P……十六夜か」

 

 メイド長の十六夜が溜め息を吐きながらそう言ってきた。

 

「誰が来ているんだ?」

「守矢神社一行に魔法使い二人くらいね。正月だから少ないわね。ところで八雲、さっき何を言おうとしていたのかしら?」

「いや……別に」

 

 十六夜が睨んできたが俺は知らない振りをした。

 

「ほら起きなさい美鈴。今日は門の守衛も良いわよ」

「ふが……あぁ咲夜さんッ!? わ、私寝てませんよ……って誠さんッ!?」

「明けましておめでとう美鈴」

「あ、明けましておめでとうございます。て、このマフラーは……」

「俺が言霊で出しておいた。流石に寒そうだったからな」

「……ありがとうございます」

 

 美鈴が顔を赤らめてマフラーで顔を埋めた。やば……美鈴可愛いな。

 

「ふんッ!!」

「あたッ!?」

 

 れ、霊夢に足を踏まれた。踏んだ霊夢はそのままズカズカと館の中へ入って行った。

 俺も足の痛みを気にしながら十六夜達と共に館の中へ入った。

 

 

「お、来たか誠」

「おぅ孝之」

 

 大広間の入口に執事の孝之が作業をしていた。中を見ると宴会状態だな。

 

「あら、時間通りね」

「よぅアリス。まぁいつもの二人は留守番だけどな」

「そのようね」

 

 俺はアリスと喋りながら日本酒を飲む。

 

「いらっしゃい誠」

「お、パチュリー。たまには外にも出ろよ」

「出ているわよ」

 

 ワインを片手にうっすらと頬に赤みを増したパチュリーがそう言ってきた。

 

「ほぅ、何処にだ?」

「湖で本を片手に釣りをしているわ。まぁよくフナが釣れるわね」

「……ブラックバスじゃないだけマシか」

 

 本を片手に釣りをするパチュリー……脳内に浮かばないな。

 

「一回一緒にしてみましょ」

「あぁそうだな」

 

 パチュリーは小さくガッツポーズをしており、それを見た小悪魔が良かったですと喜んでいた。

 

「久しぶりね誠」

「久しぶりだなレミリア」

 

 椅子に座って優雅にワインを飲んでいるレミリアに俺は声をかけた。

 

「貴方と会ったのは……あの時ね」

「……吸血鬼異変か。あの時はめんどかったなぁ」

「あれに関しては父が迷惑をかけたわね」

「まぁちゃんと始末はしたからな」

 

 あの時はなぁ……。

 

「ま、今日は楽しんでいってね」

「そうさせてもらうよ」

 

 そして紅魔館での宴会は結局、どんちゃん騒ぎとなるのであった。

 

「……吸血鬼異変って誠兄は関係してたかしら?」

 

 

 

 

 




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