『言霊使いと幻想郷』 作:零戦
「……てことは俺は半人半神なのか?」
「まぁ……そうなるが、半妖が神の力を得るのは例を見ない。少し調べる必要はあるな」
俺の言葉に八坂はそう言った。確かに半妖なのに神の力を持つなんてな……。
「誠兄が半人半神……ねぇ」
「実感が無いか霊夢?」
「まぁね。誠兄が神だなんて何だか信じられないわ」
「まぁな……てか竹林にいるだろ超とし……じゃなくて月人達が」
「ぁ~確かにね」
あの人達はほんとに年齢は幾つなんだよ……。
まぁ聞いたら俺は実験体になるだろな。だから聞かん事にしよ。
「そう言えば博麗神社の神は誰だ? 万が一、八雲が神になれば神社の神に挨拶をしなければならんぞ」
「神社の神……魅魔だな」
「あれは悪霊でしょ」
「形式上は魅魔は神になるんだよ」
前に紫さんが言っていたからな。
「何故そうなっかは分からないが、兎に角めでたい事だ。てなわけで飲もうじゃないか」
八坂はそう言って蛇と書かれた日本酒をドンと出した。飲む気満々だな。
「はぁ、なら博麗神社で飲もうか。俺は今から帰るよ」
「あぁ、判ったよ」
俺は霊夢を残して神社に帰った。
「……ねぇ八坂」
「神奈子で良いわよ」
「じゃあ神奈子、本当に誠兄は神力を持っているのかしら?」
「あぁ、神である私が言うんだ。まず間違いない」
「それに私もいるからまず誠は神力を持っているよ」
私の言葉に神奈子と諏訪子がそう言った。
「でも半妖が神力を持つなんて……」
「確かにね……だが、土地神の中にも普通の人間だった者が人々から信仰心を得て神になった奴がいるんだ。不思議じゃないね。まぁ半妖だったというのは前例が無いけどね」
「……このまま誠兄が信仰心を得れれば……」
「神、恐らくは土地神や神社の神になるのは間違いないね」
神奈子の言葉に私は黙ってしまう。だってそうなると誠兄は……。
「……八雲が心配なのか?」
「………」
「ま、それはそうだろうね。いきなり人間……半妖が実は神力を持ってますなんて言えば……驚くに決まっているよ」
「……神奈子」
「それでも霊夢がすべき事は自ずと判るさ」
「……うん」
私はそう頷いた。今は悲しむより、誠兄のお祝いをしなけりゃね。
「成る程ね、半人半神ね」
「詳しくなれば半妖半神かもな」
神社に戻って台所で宴会の準備を魅魔としている。
「そうなると誠は私の神社に居候という事になるわけだね」
「まぁな」
魅魔がニヤリと笑う。どうも嫌な予感しかしないな。
「一つ条件があるよ」
「……何だ?」
「私と番いになるのはどうだい?」
「……あのなぁ」
「ハッハッハ、でもね誠。私は誠といるだけでも幸せなんだよ」
魅魔がそう言って俺の肩に頭を載せる。むぅ……。
「クク、顔が真っ赤だよ誠」
「うるせぇ」
どうも魅魔には勝てん俺だった。
そして夜、神社には妖怪の山の守矢、文、輝夜に永琳、幽香、紅魔組、幽々子、妖夢、あの世の二人組、霧雨にアリス等が集まっていた。
「……何でこんなに集まった?」
「勿論、私が誠さんに関係がある人物を人選して呼びました」
隣で文がドヤ顔でそう言った。
「他には言うなよ?」
「判ってますよ~」
……本当だろうか……。
「ぁ~今日は何か俺のために集まってくれてありがとう。皆も飲みたいだろうから……乾杯ッ!!」
『乾杯ッ!!』
そして宴会が始まった。
「半神ねぇ」
「まぁあまり気にする事は無いわよ誠君。私達は貴方より長生きしているからね」
「はぁ、超とし……長生きしてますもんね」
「何か言ったかしら?」
「いえ、何も」
口が滑りそうだったが危ない危ない。
「ねぇ誠」
「どうした輝夜?」
「その……何でもないわ」
輝夜は何故かそう言って場を離れた。
「御免なさいね誠君。最近、誠君が永遠亭に来ないから姫様も寂しがっているのよ」
「へぇ、輝夜がねぇ……今度遊びに行きますよ」
「ありがとうね誠君」
輝夜にもそういう一面があるんだな。
「今晩わ誠」
「やっほ誠」
「お、映姫に小町」
そこへあの世組がやってきた。
「もし、神になるのであればあの世に就職しませんか? 仕事が捗りそうです」
「アハハハ……ちょっと遠慮しときます」
「まぁあたいの代わりでも良いよ」
「貴女は少しサボり癖を直す事ですよ」
「きゃんッ!?」
そして小町は映姫の説教コースへ突入させられた。
「そのうち神になれば私と存分に戦えるわね?」
「……出来れば遠慮願いたいんだが幽香……」
「拒否権は無いわ」
「ですよねー」
「私も神になった誠さんと戦いたいですッ!!」
「いや、信仰心を得られたらの話しだぞ美鈴」
戦う気満々の美鈴と幽香にそう釘を指した。そして宴会はいつも通りにドンチャン騒ぎとなった。
「どうした霊夢?」
何故か霊夢の酒の飲み具合は悪かった。何か考え事をしているみたいだ。
「私……誠兄が神になるのは嫌よ」
「霊夢?」
「だって……誠兄が神になれば私は老いて死ぬのよ。誠兄を残して死ぬなんて私は嫌よ」
「……馬鹿だなぁ霊夢は」
俺はそう言って霊夢の頭をグシャグシャにする。
「ちょ、ちょっと何するのよ誠兄ッ!!」
「心配するな霊夢。確かに俺に神力があるらしいが、完全な神になるにはまだ神力がいるらしいんだ。神奈子に聞けば六、七十年は大丈夫だとよ。だからな霊夢、安心しとけ」
「……誠兄……」
霊夢は涙目になりながらも俺の胸に頭を預けた。
「……ところで誠兄。何で神奈子と言ったのかしら?」
「え、いやそれは……」
「説明してもらうわよ誠兄?」
いつの間にか封魔針を装備していた霊夢だった。ぴちゅられたのは言うまでもない。
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