『言霊使いと幻想郷』   作:零戦

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第五十二話

 

「邪魔するよ」

「ん? 八坂か」

 

 昼飯を食べて軒下でお茶の一服をしていると、何やら木やトンカチを持った八坂がやってきた。

 

「何だその道具や材料類は?」

「なに、神社の分社を建てておこうと思ってね」

「分社? どういう事だ?」

「もしもの場合、私らの神力を使えるように小さいながらの分社を建てるんだよ。まぁ私らの信仰のおこぼれを貰える事もあるよ」

「ふむ……」

「心配しないでくれ。別に神社を乗っ取るつもりは更々無いよ。此処にもメリットがあるように守矢神社の方にも博麗神社の分社を建てておいたよ」

「……まぁ霊夢がいないけど良いか。別に構わないよ」

「ありがとうね。それじゃあやろうか」

「作れるのか八坂?」

 

 八坂は準備万端で分社を作ろうとしていた。

 

「なに、私はこういうのが得意だからねッ!?」

 

 八坂がそう言ってトンカチで釘を打とうとしたが間違えて親指を打った。

 ……あれは痛いぞ……。

 

「……大丈夫か八坂?」

「だ、大丈夫だッ!! 問題はッ!?」

 

 気を取り直して八坂がもう一回打とうとしたがまた親指を打った。

 

「……代わるよ八坂」

「……済まないね」

 

 結局、俺が分社を建てる事にした。ちなみに、親指を打った八坂の表情が涙目で意外と可愛かったのは内緒だ。

 なお、魅魔と萃香は八坂の行動にゲラゲラと笑っていた。

 

「よし、出来たな」

「……私より上手いな」

「……後で守矢神社の分社も建て直すよ」

「……すみません誠さん」

 

 分社を建てた俺は一服する事にした。お茶も入れ直して東風谷と八坂、小町の分も……小町?

 

「何で小町が此処にいるんだ?」

「お、気付いた? いやぁ映姫様からお休みをくれてね」

「嘘つけ、どうせサボりだろ?」

「サボりじゃないよッ!! ちゃんとした休暇だよッ!!」

「じゃあ映姫に聞こうか?」

「すみませんサボりです。だから言わないでくれないかい?」

 

 小町が土下座をした。だから最初からそう言えばいいのによ。

 

「魅魔、戸棚に醤油煎餅あっただろ? あれ取ってくれ」

「あ、それ御摘まみで私が食べたよ」

「よし、萃香の晩飯は今日無しな」

「酷くないかいッ!?」

「……誠さんって凄いですね」

 

 俺達のやり取りを見ていた東風谷がそう言ってきた。

 

「何でだ東風谷?」

「悪霊や鬼がいるのに誠さんは保護者のような振る舞いですね」

「まぁ……あいつら子どもみたいなもんだからな。萃香は丸っきり子ども体型だしな」

「成る程……この幻想郷では常識に囚われてはいけないのですねッ!!  \ /

                                  ● ●

                                  " ▽ "」

「……何だその顔は?」

「何か電波を受信しましたので」

 

 そういや東風谷はオタクだったな。まぁそれは俺も同類だけどな。

 

「醤油煎餅美味いねぇ。ずっと此処にいたいよ」

「成る程、小町は仕事をやらずに此処にいると?」

「………」

 

 うん、小町の後ろに映姫がいました。てか映姫の表情が無表情で怖い……。

 

「え、映姫様……」

「あの……誠さん。あの人は?」

「四季映姫・ヤマザナドゥ。所謂閻魔様だな」

「え、閻魔様ですか?」

「あぁ、ちなみに怒られているのは死神の小野塚小町だ」

「死神って……」

「全身が骸骨で黒のローブ着て鎌を振り回してるのと違うが小町は死神だよ」

「はぁ……やっぱりこの幻想郷では常識に囚われてはいけないのですね」

「大部分が妖怪だからな。まぁ常識は捨てるなよ」

 

 常識は一応持っといた方がいいしな。

 

「さて、帰りますよ小町」

「は~い」

「映姫、醤油煎餅とバームクーヘンだ。一服する時に小町と一緒に食べてくれ」

「すみません誠さん」

「誠、あたいには……」

「ほら、小町の分のバームクーヘンだ」

 

 俺は小町と映姫に御菓子を渡した。そして小町は渋々といった感じで帰るのであった。

 あ、映姫に殴られた。

 

 

「それじゃあ私達は帰りますね」

「あぁ、気を付けてな」

「明日くらいにでも分社の建て直し頼むよ」

「はいはい」

「あ、それと……」

「ん? どうした八坂?」

「……いや、何でもない。また後日な」

 

 夕方、東風谷と八坂は神社に帰った。まぁ晩飯食っていけばと言ったが、諏訪子様が留守番してますのでと断られた。何故か八坂は何か言いたそうな表情をしていたがな。

 お土産に裏の畑で採れた大根を数本と沢庵を渡しておいた。

 

 

「どうしたんですか神奈子様? 何か気になる事でもあるんですか?」

 

 博麗神社から帰る飛行途中、早苗に話し掛けられた。

 

「いや……何でもない」

「? 変な神奈子様ですね」

 

 早苗は不思議そうな表情をしていた。まぁ確かに気になる点はある。

 

「……元は人間だからなのか? だが、半妖であのような力が何故あるんだ……」

 

 まぁ八雲が後日神社に来るからその時に聞けばいい。

 何故、あの力を身につけたかをな。

 

 

 それから六日後、俺は朝飯を食べると守矢神社へ行く準備をしていた。

 

「さて、後は東風谷が来れば……」

「誠さ~ん」

「お、来たな」

 

 東風谷が軒下までやってきた。

 

「悪いが東風谷。今日は守矢の方に行くからな。恐らく今日に霊夢が帰ってくるから説明しといてくれ」

「はい、判りました」

 

 俺は東風谷に神社を任せて、妖怪の山の守矢神社に向かうのであった。

 

 

 




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