『言霊使いと幻想郷』   作:零戦

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第五十一話

 

 

「粗茶ですが……」

「ありがとう」

 

 東風谷達との弾幕ごっこには俺と霊夢が勝利した。なお、霧雨は弾幕ごっこに負けて少々不機嫌でもある。

 

「ふむ、美味しいな」

「うちのより美味い……だと……」

 

 そこで驚くなよ霊夢。何だか寂しくなるだろ……。

 

「それで、博麗神社の廃社をさせるのは止めるよ」

「そうよ。此方は博麗大結界の役目があるのよ」

 

 八坂の言葉に霊夢がそう言い返す。まぁ例え霊夢が八坂達に負けて廃社の危機になったとしても紫さんがそうはさせないと弾幕ごっこになるからな。

 それよりも幻想郷の殆どが紫さんに味方するだろうな。おぉ怖い怖い。

 

「その代わり、博麗神社に我々の分社を建てさせてほしい。信仰が無ければ我々は消えてしまうからな」

「それくらいなら構わないわ。私もそこまで薄情じゃないわ」

 

 霊夢も流石に薄情ではないからね。

 

「それより八坂、あんたは桜新町を知っているのか?」

「桜新町?」

「……そうよ。昔に桜新町の使者が神社に来てね。あのエロガキにはムカついたよ」

「……何でいきなりフランクになりだしたんだ?」

「ん? こうした方が神様も親しみやすいと思ってね」

「……そうすか」

 

 ……よく分からない神様だな。

 

「そういや八坂は何の神様だ?」

「簡単に言えば大和の軍神だな」

「成る程ね、隣の……」

「私は洩矢諏訪子だよ」

「これは失礼、洩矢は祟り神だろ? 乙事主みたいなのか?」

「あれはどうだろうね~、私は始めから祟り神だったしね」

「成る程なぁ」

 

 てっきりそういうのかと思ってたな……まぁ似たようなのいたな。鍵山とか……あれは厄神か。

 

「あら、終わったみたいね霊夢」

「……今頃何しに来たのよ紫?」

 

 そこへスキマが開いて中から紫さんが現れた。

 

「廃社にならなくて良かったわね霊夢」

「どうせ私が負けた時は介入するつもりだったでしょ紫?」

「あらあら、何の事かしらね」

 

 紫さんは可笑しそうに笑うが、不意に目を細めた。

 

「けど霊夢、貴女は守矢の巫女と戦う時に弾幕ごっこではなく素手でやったわね。これはスペルカードルール違反としますわ」

「私は悪を成敗しただけよ」

「それでもルール違反はルール違反よ」

「悪って私ですか……」

 

 東風谷がアハハハと苦笑している。まぁ実際にはそうだったよな。

 

「罰として一週間、私の家で修行よ」

「ぇ~」

「嫌とは言わせないわ。今から修行よ」

「どういう事……」

 

 霊夢はそのままスキマで送られた。南無三……。

 

「……そうなると神社には巫女がいないけど……」

「あら、私の家にいるのだから結界が剥がれる事は無いわ。別にそこの巫女が出向すればいい話よ」

「……そんな簡単で良いんですか?」

「問題が無いから大丈夫よ。守矢の神様もそれで構いませんか?」

「ふむ、今回は私らに落ち度があるからな。早苗も良いか?」

「はぁ、神奈子様や諏訪子様がそれで良いなら……」

 

 てなわけで昼間だけ東風谷が博麗神社へ来る事になった。良いのだろうか……。

 

 

 

「それで霊夢はいないのか」

「ぅ~霊夢がいないと酒を飲む相手が一人いないじゃないかぁ~」

 

 夜、魅魔と萃香の三人で少し遅めの晩御飯を食べていた。ちなみにオムライスだったりする。

 

「ま、霊夢の代わりにその巫女をからかうのもいいかもね」

「そいつ酒飲むかなぁ」

「……程々に頼むよ」

 

 まぁ大丈夫だろ。度が過ぎたら止めればいいか……。

 

 

 

「御早うございま~す」

「お、東風谷じゃないか。まだ九時過ぎだぞ」

 

 翌朝、境内を掃除していると東風谷がやってきた。

 

「エヘヘ、守矢神社以外の神社の巫女になるとは思ってませんでしたから緊張して早く来ちゃいました」

「そう緊張する事じゃないけどな」

「いえ、ところで誠さんだけで切り盛りしているんですか?」

「まぁ……そうなのかもな。住んでるのは四人だけど」

「四人……ですか? 霊夢さんと誠さんを入れて後の二人は……」

「呼ぼうか。魅魔ぁ、萃香ぁ」

 

 俺は二人を呼ぶ。すると、中から二人が出てきた。

 

「どうした誠ぉ~ってそいつが妖怪の山に神社を構えた巫女かい?」

「へぇ、弄りがいがありそうな巫女だねぇ」

「弄りがい?」

「気にしない方が良いから」

 

 魅魔がニヤニヤしながら東風谷を見定めている。助平根性だぞそれ。

 

「……もしかして鬼と幽霊ですか?」

「幽霊と言うより神社に取りついた悪霊だな」

「否定はしないね」

 

 否定したら可笑しいがな。

 

「まぁ折角来たんだ。お茶でも飲もうか」

 

 俺は軒下に置いてあるお茶のところまで向かった。三人も俺の後を追うように来ている。

 俺は軒下の廊下に座ってお茶を用意した。

 

「粗茶ですが……」

「御丁寧にありがとうございます」

 

 東風谷が俺に礼を言ってくる。俺はバームクーヘン等の御菓子を用意した。

 たまに紫さんが外から持ってくるが……明らかにスキマで盗んでるな。

 まぁ気付かない振りでもしておこう。

 

「そう言えば誠さんは桜新町にいたらしいですね?」

「ん? まぁそうだな。そういや八坂も桜新町と聞いて怒っていたな」

「……神奈子様から以前聞いたのですが、桜新町の区長と仲が悪いみたいで……」

「……全て判った。雄飛さんのセクハラか」

 

 ……あの人は昔からだな。

 

 

 

 




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