『言霊使いと幻想郷』   作:零戦

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第五十話

 

 

 

――元老院屋上――

 

「ヘックシッ!! ヘックシッ!!」

「あら風邪かしら兄貴?」

「いや……誰か俺の噂でもしてんだろ」

 

 雄飛はそう言ってティッシュで鼻チンをする。周りには元老院の盛岡枝垂、貴舟雲珠、士夏彦八重、秘書のマリアベルがいた。

 彼等は七郷の周りで行われているヒメ達の戦いを見ながら宴会をしていた。

 

「となると神奈子さん辺りね」

「ふん」

「神奈子さんとは?」

 

 枝垂が八重に尋ねた。

 

「守矢神社と言えば判るかしら?」

「あぁ……先日に幻想郷入りした神社ですね。確か祟り神と大和の軍神でしたね」

「そうよ。後は守矢の巫女の三人ね」

「……あれだけ信仰が多かった祟り神と大和の軍神も科学の発展に堪えきれなかったわけですね」

「そうね……守矢を知っているのは極一部となったからね。幻想入りは妥当よ」

 

 八重はそう言って缶ビールを飲む。

 

「やはり……昔から馴染みがある神々が幻想入りするのは耐えられませんか?」

 

 雲珠が八重にそう尋ねた。

 

「それは仕方ないわね。他の町でも桜新町のように人間と妖怪の共存が出来れば良いけど……それは叶いそうにないわ。だから幻想入りなのよ」

「……難しいものですね」

 

 枝垂は七郷を見ながらそう呟くのであった。

 

「……八雲と敷島の事は何時五十音に言うのですか?」

「あぁん? 当分言わねえぞ」

 

 雲珠の言葉に雄飛はそう言った。

 

「ですが、五十音の行動を見ていると此方も……」

 

 枝垂は言いにくそうに言った。五十音ことはに墜ちてから幾年、ことはは誠と孝之の事を調べていた。

 普通に七海アオ達と暮らしていたが、時間があれば事務所の地下室で本を読み漁っていた。

 秋名達も気付いており、時折休ませるようにしていた。

 

「博麗大結界は妖怪を守るために外との交流を絶った。外から幻想郷入りするのは外に忘れられるか冬眠中の紫が無造作によるスキマでの幻想郷入りしかない」

「では五十音は……」

「物事には諦めというのが肝心だ。外で幻想郷の事を調べるのは限度がある」

 

 雄飛はそう言って薬煙草に火を付けて吸い出した。

 

「ことはが二人に会うには皆から忘れられるかことは自身が外を捨てて幻想入りするしかない」

「……五十音にしてみれば苦渋の選択ですね」

「今を取るか、昔を取るかだな。ま、神が手出しするまでもない。決めるのはことは自身だ」

 

 雄飛はそう言うのであった。

 

 

 

「撃ェッ!!」

 

 俺がそう叫ぶとボフォース四十ミリ機関砲が射撃を始めた。

 相手にも判るように弾丸は全て曳光弾で構成されている。

 だが、八坂はそれらを全て避けていた。

 

「ちぃ、すばしっこい神様だな」

「ハハハ、これでも私は軍神と詠われた神だ。そう易々と当たるものではない」

 

 両者は互いに妖力と神力を使って弾幕を撃ち合っていたが、決定的な打撃は与えられなかった。

 

「ならば……弾府「散弾」ッ!!」

「ぬ……」

 

 俺はスペカで散弾を出した。散弾は十発ずつが八坂の元へ向かい、八坂が避ける道を開けておきながら爆発して小型の妖力弾を吐き出した。

 

「くッ!? 中々やるなッ!!」

 

 八坂は迫り来る散弾を避けていくが、次第に追い込まれて逃げ場が無くなってしまいそして……。

 

「我が……我が半妖の類いに負けるなど……」

 

 八坂に弾幕が命中して遂に八坂はぴちゅられたのであった。

 

「……俺の勝ち……だな八坂」

「く……」

 

 俺は悔しがる八坂にそう言った。そういや霊夢は……。

 

「まだいたのねッ!!」

「あーうーッ!! 一体何なのさッ!!」

 

 霊夢は新たにもう一人の少女とも弾幕ごっこをしていた。

 

「八坂、あの子は……?」

「……あれが守矢神社の本当の祭神、洩矢諏訪子だ」

「本当の祭神? 八坂じゃないのか?」

「……我の力を持っても当時の民を従える事が出来なかった。其ほどまでに諏訪子は恐ろしい存在……ミシャグジは民の中では恐れられていた」

「……成る程、祟り神か」

 

 俺は納得した。そうしているうちに霊夢は洩矢を追い詰めてきた。

 

「何と……諏訪子を押しているな」

「信じられませんね神奈子様」

「流石は霊夢だな。てかやっぱりチートだな」

「チート?」

 

 俺が呟くと守矢の巫女さんが反応した。

 

「あの……今、チートと……」

「あぁそうだけど。あ、俺は外来人に当たるから」

「とすると……何処に住んでましたかッ!!」

「え、一応桜新町だけど……」

「な、何とッ!? あの桜新町なんですかッ!!」

 

 急に巫女さんが元気に俺と話始めた。

 

「いやぁ、同じ外来人だと少しホッとしますね。あ、ロケットパンチ判ります?」

「えと……光子力ビームと返した方が良いのか?」

「おぉ、ロボットを知ってるんですねッ!! 私、ロボット物のアニメが大好きなんですよッ!!」

「そ、そうか」

 

 何か凄く元気になっているなおい。

 

「そう言えば名前を聞いてませんでしたね。私、東風谷早苗と言います」

「俺は八雲誠だ」

 

 俺は東風谷と挨拶をするが、何故か後ろから視線があった。

 

「……何をしてるのよ誠兄……」

「れ、霊夢?」

 

 いつの間にか洩矢との弾幕ごっこも終わっていた。ちなみに霊夢が勝ったみたいだ。

 

「……人が弾幕ごっこをしている時にイチャイチャするなッ!!」

「ちょ、おま――」

 

 霊夢が夢想封印のスペカを出して俺達にぶつけるのであった。

 

「……それは助けられないよ早苗」

 

 洩矢が溜め息を吐くのであった。

 

 

 




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