『言霊使いと幻想郷』   作:零戦

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第三話

 

 

「能力……ですか?」

 

「えぇ。どのような能力かは知っているけど実際に見てはいないからね」

 

 そういや説明しかしてなかったな。紫さんがそう言うのも頷けるな。

 

「分かりました。朝食を食べた後にしましょう」

 

「えぇ」

 

 そして朝食を食べた後、俺達三人は外にいた。

 

「じゃあ目標はあの木で」

 

 俺は一本の木を定めて、舌を出す。

 

「『水』ッ!!」

 

 俺の左右から水が現れて木に発射する。勿論、水は木に当たって木自体には何ら損傷は無い。

 

「『氷』ッ!!」

 

 今度は氷を出して木に攻撃する。今度は氷が木に突き刺さる。

 

「『圧』ッ!!」

 

 最後に圧力を加えて木を締め付ける。

 

「ま、こんなところですね」

 

「ふぅん、誠君がいたところでは『言霊』ね。私達で言い直すと『言葉を具現化する程度の能力』ね」

 

 紫さんは感心したように頷く。

 

「ただ、これも問題はあります」

 

「問題?」

 

「自然な物は出せますが、『人の手』で作られた物はインストールするか製法を言わないと無理なんですよ」

 

 あの戦いの時、ことはも鉄骨を舐めてインストールをしていたからな。

 

「作った人の『思い』ですかね。その思いを口づてで後世に伝える……口伝師の役目も担っているかもしれませんね」

 

「成る程ねぇ」

 

 紫さんは扇子を口元に当てて頷いている。

 

「誠兄凄い凄いッ!!」

 

 霊夢ちゃんは目をキラキラさせながら俺に言ってくる。

 

「ありがとう霊夢ちゃん。そうだ紫さん、大根やトマトなどの野菜の種が欲しいんですけど」

 

「あら? 何故かしら?」

 

「食料とかって紫さんが提供してくれるんでしょ? 何か自分には餌付けされてる感じがするので家庭菜園とか作って紫さんの負担を減らそうと」

 

 俺は紫さんに説明する。というよりそうしないとな……。

 

「あら嬉しいわね」

 

「それに提供したままだと、成長した霊夢ちゃんが紫さん=食料になりそうなので」

 

「……その盲点は無かったわ」

 

 紫さんは溜め息を吐いた。

 

「分かったわ。暫くは食料を提供してあげるけど自活出来そうなのは貴方達でしてね」

 

「はい、後家庭菜園とかに関する本とかくれたら……」

 

「分かったわ、任せて」

 

 紫さんはそう言って欠伸をする。

 

「ふわぁ、そろそろ眠たいから家に戻るわ。明日には届けるから」

 

「……眠たいんですか?」

 

「一日十二時間以上は寝るから」

 

 ……それはそれは。

 

「それじゃあね」

 

「バイバイゆかり~」

 

 霊夢ちゃんが手を振る中、紫さんはスキマを出して家に帰った。

 

 そして俺と霊夢ちゃんはというと……。

 

「はぁ~お茶が美味いなぁ」

 

「そうだねぇ」

 

 賽銭箱の近くでのんびりとお茶を飲んでいた。そんな簡単に家庭菜園とか出来ねぇよ。

 

 取りあえず神社から一分ちょい離れた(というか裏の森)ところを使う事を決めていた。

 

「というか賽銭箱……何もないよな……」

 

 俺は賽銭箱を覗くけど、何にもない。いやマジで。

 

「人里から此処へ来る道に人食い妖怪が出る噂が出たら来なくなっちゃったよ」

 

 ……よし、今度その人食い妖怪とやらをシバく。

 

「というより今何月だろうか? 春が過ぎたくらいかな?」

 

「今は皐月だよ」

 

 皐月……確か五月だったな。

 

「卯月に咲いていた桜は綺麗かったよ」

 

「そうか……なら来年は俺も見ないとな」

 

 それこそ霊夢ちゃんが言うような綺麗な桜なんだろうな。

 

「そういや霊夢ちゃん。霊夢ちゃんは神社に住んでいるけど巫女なのか?」

 

「うん、巫女だよ。悪い妖怪が悪さをしていれば解決するんだ」

 

「成る程ねぇ」

 

「誠兄はゆかりが妖怪とか驚かなかったけど何で?」

 

「ん? まぁ俺が住んでいた町はな、妖怪と人間が共存して暮らしていた町なんだよ」

 

「へぇ、そんな町があるんだ~」

 

 霊夢ちゃんは幾分か驚いている。

 

「まぁね、それに町長も妖怪なんだよ」

 

「ふぅん。何で共存しているの?」

 

 難しい質問だな。

 

「俺も詳しくは知らないんだけど、元々俺が住んでいた町は妖怪の終焉の町だったんだ」

 

「終焉の町?」

 

「そう。人間で妖怪を調律する役目の人がいてな。その人を頼りに妖怪は町に集まってきたんだけど、いつの間にか住み着いて天寿を全うしているんだ」

 

「ふぅん、私みたいな人が居たって事なんだね」

 

「簡単に言えばそうだな。ま、お子ちゃまの霊夢ちゃんには難しいかな」

 

「む~私はお子ちゃまじゃないよ」

 

 霊夢ちゃんがプンプンと怒る。その様子だとまだお子ちゃまなんだかなぁ。

 

『クゥ~』

 

「………」

 

 その時、霊夢ちゃんのお腹が可愛らしく鳴いた。そろそろ昼飯かな。

 

 話と俺の半妖の話で午前が終わったな。

 

「さて、霊夢ちゃんのお腹が空いたみたいだし昼ごはんにしようか」

 

「……うん」

 

 意外と悔しいらしい霊夢ちゃんである。

 

「よし、今日の昼ごはんは目玉焼きとウィンナーにしようか」

 

「目玉焼きとウィンナーッ!! 食べる食べる♪」

 

「じゃあ、一緒に作ろうか」

 

「うんッ!!」

 

 俺と霊夢ちゃんは台所へ向かった。一応、カレーや目玉焼きとか簡単なのは作れるからな。

 

 

 




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