『言霊使いと幻想郷』   作:零戦

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第四十五話

 

 

「……また来たのね。前にも言ったはずだわ。メリーこと、マエリベリー・ハーンは死んだとね」

 

「いいえ、メリーは生きている。八雲紫、貴女がメリーよッ!!」

 

 宇佐見はそう叫んだ。

 

「メリー? どういう事ですか紫さん?」

 

「……気にしないで誠君。あの女の妄想よ」

 

「そ、それは何気に酷いわよメリーッ!!」

 

 宇佐見がそう反論する。てか紫さん容赦ないね。

 

「私はメリーじゃないわ。あの時もそう言ったでしょ?」

 

「いいえ、その証拠はあるわ。帽子はメリーがずっと被り続けてきた物よ」

 

 多分効果音があればビシィッ!! というんだろうね。宇佐見は紫さんの帽子に指を指していた。

 

「………」

 

「黙ったって事は当たりかな?」

 

「……宇佐見さんとやら。いい加減しないと私、そろそろ怒りますわよ?」

 

 紫さんは扇子を拡げて口元を隠す。

 

「あら、どうするわけかしら?」

 

 宇佐見が挑戦的な言葉を紫さんに投げた。そして次の瞬間、宇佐見の目の前にスキマが広がり中から緑色のカラーコーンが飛び出した。

 

「うぐッ!?」

 

 カラーコーンの先端は宇佐見の腹に直撃して宇佐見は胃液を吐きながら倒れた。

 

「あらあら、どうしましたか?」

 

「ゆ、紫さん……」

 

「誠君、手出しは止めなさい。私と戦う事になるわよ」

 

 紫さんが殺気を出した。木々に泊まっていた烏達が逃げ出した。

 

「……まだよ……」

 

 宇佐見が腹を右手で押さえながら立ち上がる。

 

「此処では揉め事が起きると弾幕ごっこで勝負をつける。そうよねメリー?」

 

「……そうね。まさか貴女もスペルカードが使えるのかしら?」

 

「その通りよッ!!」

 

 紫さんの言葉に宇佐見はニヤリと笑って懐から一枚のスペルカードぽいのを出した。

 

「私が全身全霊を込めて作ったこのスペルカード……貴女は避けられるかしらねメリーッ!!」

 

「……受けて立ちましょう」

 

 紫さんは扇子を納して宇佐見に殺気を放つ。宇佐見は少し汗を流しつつも紫さんにスペルカードを見せた。

 

「スペルカードッ!!」

 

 宇佐見がスペルカード宣言をした。さてさて、どんなスペルカードなのか気になるな……。

 

「……ってあれ?」

 

 宇佐見が変な声をあげた。宇佐見が持つスペルカードの周りに黒い輪が現れた。

 

 ここまでは良いと思う。だが、次の瞬間、黒い輪が徐々に大きくなりだしていった。

 

「あれ? こんな計算じゃないはず……」

 

「蓮子ォッ!!」

 

 慌てている宇佐見に紫さんが突然、叫びだして宇佐見を抱き締めて押し倒した。

 

 そして宇佐見が持っていたスペルカードはスキマの中に入り、スキマが閉じられて今度は神社上空でスキマが開いて中から宇佐見のスペルカードが出てきた。

 

 その瞬間、スペルカードは爆発した。俺は咄嗟に地面に伏せた。爆風が神社を襲うが小規模な爆風だったため被害はそれほど無いみたいだな。

 

「……皆無事か?」

 

「何とか。小町はひっくり返っていますが」

 

「何の爆発よッ!! 五月蝿くて眠れやしないわよッ!!」

 

 皆からそんな言葉が返ってきた。さて、問題はと……。

 

「……ねぇメリー。もう爆発は無いわよ?」

 

「………」

 

 紫さんは宇佐見を抱き締めていた。

 

「……メリー……よね」

 

「………」

 

 宇佐見の言葉に紫さんは無言で頷いた。う~ん……この間はどうしたらいいんだ……。

 

「ちょっと紫。どういう事か説明してもらうわよ」

 

「霊夢」

 

 いつの間にか眠りから覚めた霊夢が御幣を装備していた。

 

「それとあんた、神社の瓦とかが少し飛び散っているのよね。責任、取ってもらうわよ?」

 

「は、はい……」

 

 霊夢が宇佐見を睨み付けていた。そして皆は神社の中に入ったが……狭いな。

 

「粗茶です」

 

「ありがとうございます」

 

 俺は皆にお茶を配った。ちなみに部屋にいるのは神社組と映姫、小町、ルーミア、霧雨、紫さん、そして宇佐見だ。

 

「簡単に説明すると、私と蓮子は未来の人間というわけよ」

 

『はぁ?』

 

 紫さんの言葉に俺以外の人間は首を傾げた。

 

「成る程。で、その未来の人間がどうやって過去の神社に? まさかタイムスリップでもしたのですか?」

 

「似たような事よ。未来の日本……首都が京都になっている時に私と蓮子は会っていたわ」

 

 ほぅ、京都が日本の首都か。歴史好きの人間にはかなり興味がある事だな。

 

「私と蓮子は大学……寺子屋の拡大版に通っていたわ。私と蓮子は怪しそうな場所に繰り返して行って、超常現象をこの目で確かめようとしていたわ。そしてあの日が起きた」

 

 紫さんは一息をつけるようにお茶を飲んだ。お茶を飲んだ紫さんはゆっくりと息を吐いた。

 

「あの日の前日、蓮子が古ぼけた神社を見つけた。そしてあの日の夜、神社へと向かっていた時、私は一つの境界を見つけたわ」

 

「境界?」

 

「えぇ。私は以前、「結界の境目が見える程度の能力」を持っていた。そしてその境界に吸い込まれてしまい……気が付けば私は千二百年以上前……平安時代の初期にいたのよ」

 

 平安時代の始まりは794年(鳴くよウグイス平安京)だ。てことは……。

 

「千二百年以上前からBB……じゃなくて少女だったのか……」

 

「聞こえてるわよ誠君?」

 

「あたッ!?」

 

 上からスキマが開いてタライを落とされた。

 

 

 




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