『言霊使いと幻想郷』 作:零戦
「遅かったわね誠兄」
「あぁ、小野塚が樽を落としたからそれを拾っていたんだ」
「ふ~ん……」
俺は霊夢にそう言いつつ樽を地面に置いた。後ろでは小野塚がおずおずとしている。
「まぁ良いわ。早く飲みましょう」
「飲むぞ~♪」
「こら萃香ッ!!」
既に酔っぱらっている萃香が樽に口をつけてそのまま一気飲みを始めた。
「んぐっんぐっんぐっ……ぷはぁ~」
萃香の奴、完全にべろんべろんだな……。
「樽で飲むのは止めなさいよ萃香ッ!!」
「ンフフフ~、止められない止められない~ってか?」
駄目だ、萃香はもう無理だな。
「この……少しは寝てろッ!!」
「あべしッ!?」
「……女の子が踵落としをするなよ……」
霊夢が萃香を踵落としで沈めた。まぁこれで少しは静かになるだろうな。
「え~一部が暴走したが、宴会を始める。今回は異変じゃないが解決を祝って……乾杯ッ!!」
『乾杯ッ!!』
そして神社組と閻魔、死神との宴会が始まった。
「お、この卵焼きは塩だな」
「そうだよ。誠が塩のが好きだって前に言っていたからね」
卵焼きは砂糖より塩派なのだよ俺は。まぁ砂糖でも食べれるけどな。
「さっきは済まなかったね」
「小野塚」
そこへ酒杯に酒を入れた小野塚がやってきた。
「いや、いいんだよ小野塚。まぁ落ちた樽を拾いに行こうとするのは当たり前の行動だよ」
「もう少しで木にぶつかりそうだったけどね。ところで八雲は半獣なのかい?」
「誠で良いよ。まぁ半妖だな、妖怪の力だけこの身体に宿っているからな」
「成る程ねぇ。外の世界からの霊でも似たようなのは来るからね。あ、あたいも小町で良いよ」
「へぇ、やっぱ三途の川はあるのか?」
「あるよ。まぁあたいが三途の川に入れば沈むけどね。霊な生身の人間も三途の川に入れば太古の魚に食われるよ」
「……そんなのがいるのか。それと、死神だと子どもの霊が載せた石を破壊したりするのか?」
「それは多分違うのだと思うね」
小野塚……小町は笑いながら否定した。てことはいるのか。名前は忘れたけど。
「小町、何を話しているのです? 貴女は博麗の巫女の相手でもしてきなさい」
「あたいが死にますよッ!!」
「死神でしょう」
ちなみに霊夢は酔っぱらって暴走している。しまいには気絶から起きた萃香と飲み比べの戦いをしている。
魅魔はいつの間にか神社に来て宴会に参加している霧雨に説教をしている。
「………」
「……何すか?」
映姫がさっきから此方に視線を向けていた。
「……外の世界に後悔があると思うのですか?」
「……まぁ多少は……」
紫さんと同じ展開になりそうだな。
「閻魔様、それは前に私が聞いたので大丈夫ですわ」
そこへスキマが開いて紫さんが現れた。
「珍しいですね。私がいる時は出てこないのでは?」
「たまには宜しいですわ」
紫さんは扇子を開いて口を隠し、目を細める。
「閻魔様は余程博麗神社に妖怪がいるのは嫌なようですわね」
「嫌というより正論だと思うよ紫さん」
紫さんの言葉に俺はそう呟いた。まぁ普通は神社に妖怪はいないよな。
此処だけが特殊なのかもしれんしな。
「……まぁ良いでしょう。八雲誠がいれば多少は大丈夫でしょう」
「あら、随分と誠を信用してなさるのね?」
「貴女よりかはマシです」
二人の間で火花が散りそうな光景だった。てかこの二人怖いです……。
「誠ぉ~」
「ん? ルーミアじゃないか。どうした?」
そこへルーミアがふよふよと神社にやってきた。
「私も飲みたいのかー」
「ん? ルーミアもか?」
確か今回のにルーミアは出番すら無かったよな? 宴会に参加していいのか?
「宴会に参加させてくれないとあの事を言っちゃうのかー」
「あの事?」
そう言った時、ルーミアが大人モードに変身して俺に耳打ちをした。
「樽が森の中に落ちた時、そこの死神を抱き締めていたでしょ?」
「んなッ!?」
ま、まさかルーミアの奴……。
「見てた……のか?」
「………(ニヤリ)」
俺の問いにルーミアはニヤリと笑って答えた。マジでかよ……。
「霊夢に知られたくないでしょ?」
「そりゃあ……まぁ……」
「だったら……一人くらい良いでしょ?」
「……はい」
俺はルーミアの要求に屈服した。駄目です……勝てません……。
「ありがとう誠~。流石よ、これは私からの御礼よ♪」
ルーミアはそう言って俺の右頬にキスをした。
「ちょ、おいルーミア……」
「流石に口だと霊夢が怒るからねぇ~」
ルーミアはニシシと笑い、子どもモードに戻って酒杯に酒を注いで口に付けて酒を飲み干した。
「美味いのかー」
「そうか、良かったら摘まみも食べてみたらどうだ?」
俺はルーミアに摘まみの蒲鉾を渡す。そして宴会は終盤となっていた。
時刻も子の刻となり、宴会に参加している者は大分寝ていた。
「さて、そろそろ御開きだな」
俺は立ち上がろうとした時、鳥居のところに気配を感じた。
「……君は誰だ?」
鳥居のところには白いリボンの巻かれた、黒い中折れ帽を被り、白と黒のツートンカ ラーの服を着た女性がいた。髪と瞳は濃いめのブラウンだ。
腰から下は長めのスカートで肩からショールのような黒い布を掛けていて、そして手に黒い表紙の本を携えていた。
「私は宇佐見蓮子。友人のマエリベリー・ハーンを探しに来たのよ」
「はぁ、そのマエリベリーとは何処に?」
「そこにいるじゃない」
宇佐見が指指したのは俺の後方で此方を見ていた紫さんだった。
「……また来たのね。前にも言ったはずだわ。メリーこと、マエリベリー・ハーンは死んだとね」
「いいえ、メリーは生きている。八雲紫、貴女がメリーよッ!!」
宇佐見はそう叫んだ。急すぎる展開だなおい。
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