『言霊使いと幻想郷』   作:零戦

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閑話

 

「なぁ誠ぉ。誠は誰が好きなんだ?」

 

「何だいきなり?」

 

 季節は第120季の弥生。今日は珍しく、霊夢は紅魔館へ、魅魔は霧雨の様子を見に行っており神社にいるのは俺と萃香、そしてゆっくりしかいなかった。

 

「そのままの意味だよ誠。お前、霊夢達がお前に好意を持っている事に気付いていないのかい?」

 

 ……そうなのか?

 

「たぁ~これは駄目だね。それでも誠は男かい?」

 

「……考えた事無かったな」

 

「鈍感かい?」

 

「鈍感というより……俺に好意を持っている女性がいた事に驚きだな。これでも俺はおっぱい好きだし」

 

「……貧乳の私に向かって言う言葉かい?」

 

「それに関しては済まん」

 

 俺は萃香に見事な土下座をした。多分審査員がいたら十点満点をくれるだろうな。

 

「話は戻すけど……身近に霊夢がいたのに気付かなかったのかい?」

 

「……正直に言うと霊夢には妹のように接していたからな。外の世界でも幼馴染みにことは……妹のような女の子がいたからな」

 

 今はどうなっているか知らんけど。

 

「じゃあそのままで過ごすのかい? 霊夢は誠に好意を持っているのに?」

 

「霊夢の好意は多分家族としてじゃあ……」

 

「いいや違う。霊夢は心から誠を好きなんだよ」

 

 萃香はそう言って酒を飲む。霊夢が俺に好意をね……。

 

「何となく、家族のスキンシップとしては過ぎているとは思ってた。でもそれは家族がいない霊夢の甘えかと……」

 

「言い訳は聞きたくないね」

 

 萃香は俺の反論をピシャリと押さえた。

 

「もう霊夢や他の奴等の気持ちは判っただろ?」

 

「まぁ……あまり実感がないけどな」

 

「ん? 実感が沸くようにしようか? 誠に好意を持っているのは霊夢を筆頭に紅魔館の門番、図書館、メイド長(?)、白玉楼の幽霊、人食い妖怪、悪霊、花の妖怪、月の姫様、鴉天狗……そんくらいだねぇ。まぁメイド長と鴉天狗はよく分かんないけどね」

 

 ……そんなにいたのか。

 

「てかよく判ったな?」

 

「私の能力を舐めないでほしいね」

 

「そういや密と疎を操る程度の能力だったな」

 

 霧状にもなれるみたいだしな。

 

「そういう事だ。それにさっさと決断しないといけないよ」

 

「何でだ?」

 

「……はぁ、これだから人間は」

 

 萃香に溜め息を吐かれた。

 

「いいかい? 霊夢とメイド長以外は妖怪や悪霊だよ? 誠より寿命が長いんだ」

 

 ……そうだったな。

 

「でも俺も半妖だから寿命は少し……」

 

「少しだけ長いだけだ。そんなの妖怪にしてみれば気に止める程度だよ」

 

 萃香はそう言って瓢箪の酒を飲む。

 

「ま、早めに決断する事だね。誠の決断が遅ければ後悔する事があるよ」

 

「……よく判った。流石多大な人生を送っている萃香だ」

 

「ンフフフ、誉め称えよ誉め称えよ。それとついでに里で肴でも買ってきてほしいよ」

 

 受講料取るのかよ……まぁ教えてもらったしいいか。

 

「仕方ない、適当に見繕ってくるよ」

 

「期待してるよ誠~」

 

 俺は原チャをショートカットで出して人里まで向かった。

 

 

 

「萃香の肴は何にするかな……」

 

 俺は人里の市場で酒の肴になる食べ物を探していた。ビーフジャーキーやチーズがあれば文句は無いけどな。

 

「お、神主じゃないか。今日はどうした?」

 

「だから俺は神主じゃない……って太助か」

 

 幻想郷に来た時からの顔見知りである真田太助が声をかけてきた。

 

「畑は大丈夫なのか?」

 

「あぁ、椛さんが見回りをしているよ」

 

 太助の畑は妖怪の山の麓にある。そのためかよく妖怪が出没している。

 

 襲われそうになったのが一回や二回だけではない。(命からがら逃げてきており、一部の人からは幸運男とか呼ばれている)そのため白狼天狗の犬走椛が見回りをしている。

 

 見回りの見返りとして太助は畑で採れる収穫量の四割は妖怪の山へ納めている。

 

「そうだ誠。これを見てくれ。この間、文さんが撮ってくれたんだ」

 

 太助はそう言って俺に一枚の写真を見せてくれたが……犬走の寝顔だった。

 

 しかも大きく口を開け、涎を垂らして寝ているが……俺にどうしろと?

 

「可愛いだろ?」

 

「まぁ……な」

 

「俺さ、今度椛さんに結婚を申し込んでみようと思うんだよ」

 

「結婚って……太助、まさか……」

 

「あぁ、椛さんが好きなんだ。一目惚れと言ってもいい」

 

 マジかよ……。

 

「人里の連中は良いとは思わないと思うけど、俺は自分自身の気持ちを貫きたい」

 

 ……そうか。

 

 

「誠はどうするんだ?」

 

「どうするって?」

 

「霊夢ちゃんや他の妖怪達だよ。人里だと誰とくっつくか賭けが行われているんだよ」

 

「何ッ!?」

 

「ちなみに胴元はもこたんだ」

 

 もこたんめ……。

 

「……なぁ、太助。お前は何で犬走が好きなんだ?」

 

「ん? まぁ簡単に言えば健気に尽くしてくれるところかな」

 

 口の中が甘いなぁ。そのうち砂糖が溢れてきそうだな。

 

「お前はどうなんだ?」

 

「俺は……」

 

 俺は言葉が出なかった。俺はどうしたいんだろうか?

 

「まぁ、それを決めるのは誠自身だからな。後悔はしない方がいいぞ」

 

「あぁ……分かっている」

 

 俺も……答えを出さないといけないよな。

 

 幻想郷のそんな日であった。

 

 




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