『言霊使いと幻想郷』   作:零戦

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第三十三話

 

 

「という事よ鴉天狗。今回の異変は分からなかった事にしておくのよ」

 

「あややや。それは困りますねぇ、此方も記事にする義務がありますもので……」

 

「異変解決には博麗の巫女の権威が必要なのよ。貴女も分かるでしょう?」

 

「それとこれとは別ですよ八雲さん」

 

 そう言って文が手帳に文章を書き込んでいる。

 

「あらそう。なら翌朝、妖怪の山が無くなっているのはどうかしら?」

 

「……無くなる?」

 

「えぇそうよ」

 

 紫さんが笑っているが何となく怖い。

 

「……脅しですか?」

 

「それ以外に何に思うのかしら? 鴉天狗のせいで妖怪の山が無くなり、天狗達は全て地底へ行くのも手よ。あぁ、可哀想ね」

 

「………」

 

 紫さんの地底という言葉に文がかなりの冷や汗をかいている。

 

「……分かりました。今回の異変は記事にしません。それで宜しいですか?」

 

「あらそう。助かるわ」

 

 紫さんがニコニコと笑っているが対照的に文の表情は暗かった。

 

「念のために貴女の上司にも相談しておきましょう」

 

「げ」

 

 ……多分、文は色々と詰んだと思うな。

 

「……そういう事だったわけね。徹夜したのが損したわ」

 

 霊夢はそう呟くと包丁で林檎の皮を剥いでいる。ちなみに俺達は永遠亭の病室にいる。

 

 勿論、病人は霊夢の夢想封印に二度に渡って受けた俺だ。

 

「はい、誠兄。ウサギの林檎よ」

 

「……私はどう反応したらいいの?」

 

 霊夢の言葉にうどんげはそう呟いた。

 

「まぁ……気にするな」

 

 俺はうどんげにそう言っておいた。そして宴会は博麗神社で行われる事になった。

 

「宴会するのはいいけど紫さん。今回の支払いは誰がするんだ?」

 

 神社に戻った俺は紫さんにそう聞いた。一応は歩けるので問題はなかった。

 

「そうねぇ……今回は私が酒を用意しましょ」

 

 珍しいな。

 

「明日の天気は雨ね」

 

「酷いわ霊夢」

 

 霊夢の言葉に拗ねる紫さんである。紫さんはスキマを使って大量に酒を持ってきたがこれは……。

 

「ウイスキー? それにチューハイにビール……」

 

 スキマから出てきたのは外の世界でお馴染みの酒類だった。まさか紫さん……。

 

「スキマを使ってスーパーや酒屋から盗んできたんじゃないでしょうね?」

 

「……ゆかりん知らなぁ~い」

 

 俺の言葉に紫さんはそう言って視線を剃らした。

 

「やっぱり盗んだのかッ!? 通りであっさりと言うなぁとは思ってたんだよッ!!」

 

「ま、まぁいいじゃない誠君。タダでこんなに酒が飲めるのよ?」

 

「あのですねぇ、外の世界で酒が大量消失なんてニュースが出たら怪奇現象ですよッ!!」

 

 絶対にテレビで放送されるよな。まぁバレはしないけどさ……。

 

「もういいじゃない誠。終わってしまった事は忘れるべきよ」

 

 輝夜がそう言って俺に金〇の缶ビールを渡してきた。

 

「……まぁそれもそうだけどな」

 

 俺は缶ビールを開けて液体を口に含んで飲み干す。

 

「かあぁ~。久しぶりのビールだな」

 

「あら? 誠は飲んだ事あるの?」

 

「外の世界で親父に一回飲まされてな」

 

 酒は二十歳からだぞ読者の皆?

 

「美味そうね」

 

 そう言って霊夢が飲み出した。他の皆も缶ビールを開けて飲んでいく。

 

「私達はワインで良いわ」

 

 紅魔館勢はワインをグラスに注いで飲んでいた。

 

「それじゃあ誠君。音頭を頼むわね」

 

「……何か納得がいかんけど……まぁ良いか。それじゃあ異変解決を祝して乾杯ッ!!」

 

『乾杯ッ!!』

 

 そして宴会が始まった。皆が和気あいあいと飲み始めている。

 

「ねぇねぇ誠ぉ」

 

「ん? どうしたルーミア?」

 

 ラ〇ーの缶ビールを持ったルーミアが俺を呼んでいた。

 

「今日はもこたんとおっケーネの物語はしないの?」

 

「ぁ~それはな……」

 

 俺が上白沢に視線を向けると満面の笑顔で頭突きの練習をしていた。

 

「……今回はな、台本を書く人が間に合わなくてな。今回は無いんだ」

 

「そーなのかー」

 

 ルーミアがわはーとにこやかに笑う。ルーミアは今日も可愛いなぁ……ってこれじゃあ孝之みたいじゃないか。

 

「ヘックションッ!!」

 

「あら孝之。風邪かしら?」

 

「大丈夫御兄ちゃん?」

 

「………(御嬢様にくっつくなんて……)」

 

 紅魔館勢のところで孝之が吸血鬼の二人に心配してもらえてるその後ろで咲夜が嫉妬の炎を出していた。

 

「お、ルーミア。そのリボン汚れてないか?」

 

「ふぇ? リボン?」

 

 ルーミアのリボンが汚れていたのが目に入った。後で洗ってやるか。

 

「ほどいてやるよ。後で洗ってやるから」

 

「そーなのかー」

 

 ルーミアはそう言って俺に頭を向けた。ほどいてほしいのか。

 

 俺はスルスルとルーミアのリボンをほどいた。

 

「あッ!? 誠兄、そのリボンは取っちゃ駄目ッ!!」

 

「へ?」

 

 何か霊夢が叫んだが……。

 

「………」

 

「ルーミア?」

 

 リボンを取るとルーミアが動かなくなり、次の瞬間、ルーミアの周りに黒い霧が現れた。

 

「これは……」

 

 黒い霧はルーミアを包み込んだ。

 

「何でリボンを取るのよ誠兄ッ!!」

 

「いやリボンが汚れてたから……」

 

 霊夢に怒られるがそれどころじゃない。ルーミアは……。

 

 そして直ぐに黒い霧が発散した。

 

「……ルーミア?」

 

 そこにいたのは小さいルーミアじゃなく、背も高く胸もでかく金髪のロングだったが服装からしてルーミアだ。

 

「あ、誠~」

 

 仮称ルーミアが俺に抱きついてきた。

 

「……どちらさんですか?」

 

「私よ、ルーミアだよ」

 

 仮称ルーミアはそう言って笑った。

 

『エエエェェェェェェェェーーーッ!!!』

 

 博麗神社に皆の叫び声が響いたのであった。

 

 




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