『言霊使いと幻想郷』   作:零戦

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第二十八話

 

 

「フフフフフフフッ!! いいわよ貴方ッ!! 避けてばかりじゃないのッ!!」

 

「ちょ、おま、ひゅっとらすッ!!」

 

 俺は風見さんが繰り出す植物の蔓の攻撃を何とか避けている。

 

 ちなみにチルノは巻き添えでぴちゅられている。大ちゃんは退避済みという。

 

 チルノは見捨てたのか?

 

「無我夢中なんですよッ!!」

 

 そうなのかー。

 

「……貴方、やる気があるのかしら?」

 

 風見さんは少しイラついているような表情をしている。

 

「いやだから俺は別に戦う気は……」

 

 風見さんにそう言うが風見さんは聞く気無しというオチだ。

 

「ほらほら反撃しなさい。全て叩き落としてあげるわッ!!」

 

「……仕方ない。やるとするか」

 

 俺は蔓を避けながら舌を出した。

 

「『氷柱×三十本』」

 

「……へぇ」

 

 俺が氷柱を出すと風見さんは嬉しそうにニヤリと笑う。

 

「それが貴方の能力かしら?」

 

「それだけじゃない。全弾発射ァッ!!」

 

 一斉に氷柱を発射させる。複数の氷柱が風見さんを狙うが、風見さんは日傘で氷柱を破壊した。

 

「……ただの日傘じゃないな」

 

「そうよ。フラワースパークを全力で耐えれる日傘でもあるわ」

 

 フラワースパーク?

 

「霧雨のマスパか?」

 

「あら? あの魔法使いを知っているのかしら?」

 

「一応な」

 

「あの魔法使い、私のフラワースパークを真似てマスタースパークとか似たような技を持っているわ」

 

 成る程な。

 

「それで似ているのか……」

 

「まぁそれはどうでもいいわ。ほら、撃つわよ」

 

「おっと」

 

 風見さんが再びフラワースパークを放つがギリギリで避ける。

 

 ……こうなっていると埒があかんな。ならば……。

 

「『氷柱×三十本』」

 

「また同じ攻撃かしら? それは見切ったわよ」

 

「発射ァッ!!」

 

 氷柱を発射させ、風見さんは蔓で氷柱を破壊するが鋭利では氷柱が上なので蔓も切り裂かれていく。

 

「ちょこざいな……」

 

「『圧』」

 

「ッ!?」

 

 圧力を受けた風見さんは腕を交差するがその刹那、鈍い音がした。

 

「くぅッ!!」

 

 恐らく何処かの骨が折れたのだろう。そのまま風見さんを地面に圧力の力で倒した。

 

「く……」

 

「終わりだ」

 

 俺は右足で風見さんの顔を踏みつける。こんぐらいしないと彼女の戦意を喪失させないとな……逆上しそうで怖いが。

 

「……フフ、舐められたものねェッ!!」

 

「うわっと……て思うかよッ!!」

 

 風見さんが圧力から耐えて、何とか立ち上がった瞬間を狙って風見さんの鳩尾を思いっきり殴った。

 

「ガッ!?」

 

 風見さんは膝から地面についた。取りあえず縄……いや鎖で縛っておこう。

 

 言っておくが趣味ではない。

 

 ……いや待てよ……やっぱり縄で縛ろう。そしてと……。

 

「はい、捕縛と……」

 

「……ちょっと、何よこれ」

 

「何って……亀甲縛りですが何か?」

 

 ちなみに乳房縛りと股縄の兼用だ。何か質問ある?

 

「いやだって、また襲ってきそうなので……」

 

「……やるわよ?」

 

「そう自信満々の表情を直ぐに青白くさせますよ」

 

 俺はそう言ってショートカットでカメラを出して亀甲縛りの風見さんを撮った。

 

「さぁ、これを鴉天狗に渡そうかな?」

 

「……ゲスが……」

 

「いや、最初に仕掛けてきたの風見さんですよ」

 

 俺の指摘に風見さんは視線を反らした。おいこら……。

 

「……分かったわ。襲わないわ」

 

「……本当ですね?」

 

「本当よ」

 

 取りあえず大丈夫みたいだから縄を消しといた。

 

 ちなみに後ろでは大ちゃんが頬を赤らめながら手で顔を隠していたが指の隙間がかなり開いていたので結果的に見ている。チルノは戦いの巻き添えをくらっては気絶中。

 

「ふぅ……跡が付いたらどうしようかしら?」

 

「………」

 

 霊夢に殺されるね、分かります。俺の無言に風見さんは笑うのであった。

 

「はい、紅茶よ。ダージリンのだけどね」

 

 その後、風見さんに招かれて紅茶を飲んでいた。

 

「へぇ、クッキーも作れるんですか」

 

「えぇ。それより敬語はいいわ」

 

「ん? そうか。ならタメで」

 

 俺は皿に盛りつけられた星形のクッキーを食べる。

 

 うん、美味い。

 

「クッキーといえば焼く前の生も美味いけどな」

 

「……まぁそれも美味いわね」

 

「あたいも大好きッ!!」

 

 意外と仲間がいた。生でも美味いんだよな。よく母さんに怒られたな。

 

「それでチルノ。どうして誠を連れて来たのかしら?」

 

「何か誠兄ちゃんが暇だったから」

 

「まぁ神社にいても暑いだけだからな。散歩で来たんだよ。てか呼び捨てかよ……」

 

「あのスキマ妖怪を思い浮かべるからよ」

 

 さいですか……。

 

 その後、俺は幽香(風見と名字で呼ばれるのはあんまり好きではないらしいので名前で呼ぶ事になった)達と日暮れになるまで談笑した。

 

「じゃあね幽香ッ!!」

 

「御茶御馳走様でした」

 

「えぇ、また来なさい」

 

 チルノと大ちゃんは幽香に手を振って飛んでいった。

 

「さて、俺も帰るよ」

 

「あら、じゃあもう一度やるかしら?」

 

「遠慮しておくよ。今度は負けそうだ。それに腹を空かした巫女や鬼、悪霊が待っているからな」

 

「そぅ、また来なさい。何時でも歓迎するわ」

 

「おぅ、それじゃあな」

 

 俺はそう言って幽香と分かれて神社に帰るのであった。

 

 

 

「フフ、面白い半獣ね」

 

 飛びさっていく誠を見ながらは私はそう微笑んだ。

 

 久しぶりに負けたわね。色んな意味でね。霊夢以来かしらね。

 

「八雲誠……ね」

 

 あの男は私は楽しませてくれそうね。

 

 




ゆうかりんの亀甲縛りでした。
御意見や御感想等お待ちしていますm(__)m
おや?誰か来たようだ……。

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