『言霊使いと幻想郷』   作:零戦

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第一話

 

 

 俺達は近所では仲良し三人組と呼ばれていた。真ん中に俺こと八雲誠、左に敷島孝之、そして右に六歳下の五十音ことはがいていつも遊んでいた。

 

 それに槍桜ヒメや比泉秋名、岸恭介等もと遊んでいたりする。

 

 そう、あの日までは……。

 

 

 

 あの日、俺と孝之はことはの家に遊びに来ていた。そして庭で遊んでいるといつの間にか『ソレ』は堕ちてきた。

 

 俺は気付けば、孝之と共に地面に倒れていてことはの家は地震でもあったかのように潰れていた。

 

 その光景は近所でもあり、俺の家でもあり、孝之の家でもあった。

 

 父さんと母さんは家の下敷きになり、既に息をしていなかった。

 

 大通りを負傷した孝之と歩いていると、そこには堕ちたことはと戦っている比泉槇春、秋名達がいた。

 

「雪風ッ!?」

 

 負傷した俺達に気付いた秋名が駆け寄るが俺は堕ちたことはを見ていた。

 

「……何でだことはァァァーーーッ!!」

 

 そして気付けば俺はことはと戦っていた。ことはに堕ちた時、近くにいた俺にも堕ちていたようであり、ことはと同じ言霊使いとなっていた。

 

「『凍』ッ!!」

 

「『炎』ッ!!」

 

 俺とことはがぶつかり合うがそれもやがては均衡が崩れた。肩から血を流していた俺は出血のし過ぎで膝から崩れたのだ。

 

「『雷』ッ!!」

 

 ことはは雷を具現化する。俺の上から雷が落ちてくる。

 

 そして雷が俺に直撃する直前、俺の目の前は白くなって意識はそこで途絶えた。

 

 

「……ぅ……」

 

 身体の痛みで目がうっすらと開ける。

 

「……知らない……天井だ……」

 

 この間、アニメで某主人公が言っていたのをつい呟いてみた。

 

 だって知らない天井なのは確かなんだよ。

 

ガラッ。

 

「あ、ゆかり~お兄ちゃん起きたわよ~」

 

 襖が引き、頭の後ろに赤いリボンをした少女が俺を見て誰かに叫んでいる。

 

 誰だゆかりって?

 

「あら? 目が覚めたのね」

 

 その時、廊下から一人の女性が現れた。ふむ……胸はでかいな。

 

「あら? 何処を見ているの?」

 

「おっとすいません。中々の持ち主だったもので」

 

「あらありがと」

 

 女性はそう言って笑う。あ、お礼を言わないとな。

 

「見知らぬ自分を助けてくれてありがとうございます。此処は何処ですか?」

 

「此処は幻想郷よ」

 

「幻想郷……ですか?」

 

「そうよ。此処は外の世界から忘れ去られた妖怪や人が住む世界よ」

 

 ……マジで?

 

「残念ながらマジよ」

 

 あ、心読まれた。アオみたいなさとりか?

 

「表情で分かるわよ」

 

 ……そうすか。

 

「それと私はこの幻想郷を作った八雲紫よ」

 

 幻想郷を作った……ということは。

 

「八雲さんは妖怪ですか?」

 

「えぇそうよ。スキマ妖怪よ」

 

 そう言って八雲さんは何も無いところからスキマを展開した。何か目がいっぱいだな。

 

「意外と便利そうですね」

 

「そうよ」

 

 八雲さんは笑う。

 

「あ、自分は八雲誠です。奇しくも八雲さんと名字は一緒です」

 

「あら奇遇ね」

 

「私ははくれいれいむだよ」

 

 れいむちゃんはニパァっと笑う。ものすごいっ可愛いです。

 

「宜しくね霊夢ちゃん」

 

「うん♪」

 

 ぁ~ことはみたいに可愛いな。

 

「ところで、外の世界に戻る? 貴方は人間だし、この幻想郷だと人里にくらいにしか住めないわね」

 

 あ……そういや俺、ことはと一緒に堕とされたはずなのに暴れてない?

 

「八雲さん」

 

「紫ではいいわ」

 

「そうですか。では紫さん、自分がこの幻想郷に来た時、自分は暴れていましたか?」

 

「どうなの霊夢?」

 

「ううん。普通に境内に倒れていたよ」

 

 どうやら最初に俺を見つけたのは霊夢ちゃんのようだな。

 

「暴れているってどういう事なの?」

 

 ……まぁ紫さんも妖怪だし大丈夫か。

 

「実は自分、堕とされた人間なんです」

 

 そして俺は紫さんに説明する。堕とされた経緯、そして自分は堕とされたせいで半妖となった事を……。

 

 

 

 

「……成る程ね。その堕とされた力が貴方にあると」

 

「まぁそうですね。普通は比泉家の調律とかで祓われますけど」

 

 何で堕とされたままの暴れなかったんだ? まぁ考えても仕方ないかもな。

 

「なら一つ案はあるわ」

 

 紫さんは思い付いたようにぽんと手を叩いた。

 

「誠君は外の世界に帰りたいと思う?」

 

 外の世界……元の世界だよな。

 

「帰りたい……とは思わないですね」

 

 父さんと母さんは死に、孝之は生きているかもしれないが多分生きているだらう。でもことはが怖い。

 

 あの戦っている時、ことはの睨む視線が怖かった。冬に冷たい水を身体にかけられるような感じだ。

 

 例え、桜新町に戻っても俺達はぎくしゃくする関係になるだろうな。それならこの幻想郷にいる方がいいかもしれない。

 

「……分かった。でも寂しくなったら何時でも呼んでね。スキマで日帰りで届けるわ」

 

「ありがとうございます紫さん」

 

 俺は紫さんに頭を下げる。

 

「それでね誠君、霊夢と此処で暮らしてほしいのよ」

 

 ………は?

 

 




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