『言霊使いと幻想郷』   作:零戦

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妖々夢は満腹神社の春雪異変をモチーフにしています。


第二十三話

 

 

「待て橙ッ!!」

 

「にゃははははは♪」

 

 追いかける霧雨を橙が笑いながら逃げていく。

 

 文からの情報で妖怪の山にあるマヨヒガの里にいる橙が何らかの情報を持っているらしいとの事なので霧雨と二人で妖怪の山にあるマヨヒガの里に訪れていた。

 

「てか猫多いな……」

 

「だって猫の里ですから」

 

 ひょこっと橙が障子から顔を出した。

 

「霧雨は?」

 

「あそこですよ」

 

「はぁ……はぁ……」

 

 走り疲れたのか霧雨が肩から息を吐いていた。まぁあれだけ走れりゃなぁ……。

 

「私よりアリスさんが異変を知ってるかもしれませんよ。あの人、魔界から来ているんですよね?」

 

「アリスか?」

 

 アリスが知っているかぁ?

 

「アリスが情報を持っているのか?」

 

「多分な」

 

「ならアリスのところに行くぜッ!! 邪魔したな橙ッ!!」

 

「別に良いですよ~」

 

 橙はそう言って俺達を見送った。ところで……。

 

「隠し撮りは止めておけよ文」

 

「あややや。バレてましたか」

 

「たまに撮影の音が聞こえていたからな」

 

 家の死角からカメラを持っている文がひょっこりと出てきた。

 

「まだ来るのか?」

 

「えぇ、来ますよ」

 

「まぁ良いけどな。隠し撮りは止めておけよ」

 

「分かりましたよ」

 

 そして三人で魔法の森にある洋館へ向かった。そこにアリスが住んでいるからな。

 

 

 

 

「お、アリス発見~」

 

「おいおい……」

 

 霧雨がそっと窓から見ている。ちなみに俺は門のところに文といる。

 

 嫌な予感がするから近づかないんだよ……ん? あれは……。

 

「霧雨ッ!!」

 

「え、いッ!?」

 

 いつの間にか霧雨の周りにランスを装備した人形が複数いた。

 

「誰かしら……って魔理沙?」

 

「ぁ~アリスさんよ、悪いけど解放してやってくんねぇか?」

 

「あら誠さん」

 

 取りあえず霧雨は解放して家の中に入れてくれた。

 

「この異変の元凶? 私が知るわけないでしょ」

 

「まぁそうだよな」

 

 霧雨からの説明にアリスはそう答えた。

 

「それじゃあ此処で手詰まりってか?」

 

 霧雨が残念そうに言う。

 

「貴女ねぇ。そういうのに詳しそうなのがいるでしょ紅魔館に……」

 

 紅魔館……あぁ。

 

「パチュリーか」

 

「何でパチュリーなんだ?」

 

「パチュリーは図書館を持っているからな。探せば資料が出てくる可能性はあるな」

 

「そういう事よ」

 

 俺の言葉にアリスが頷いた。

 

「そっかッ!! そうと決めれば早速行くぜッ!! 紅魔館にッ!!」

 

「それじゃあな~」

 

「えぇ、またね」

 

 俺達はアリスと別れて紅魔館に向かった。

 

 

 

――紅魔館――

 

「くか~くか~」

 

「……よう雪が降る中、寝ていられるな……」

 

「ま、美鈴だからな」

 

 そういう問題じゃないと思うぞ霧雨。

 

「先に行ってくぜ」

 

 そう言って霧雨が館の中に向かった。

 

「……仕方ない。ほら起きろ美鈴」

 

「ん……んが……ふぇ?」

 

 美鈴の肩を揺さぶると美鈴が漸く眼を開けた。

 

「……誠さん?」

 

「そうだが」

 

「ッ!? こ、これは失礼しましたッ!!」

 

 美鈴が慌てて俺と向き合う。

 

「ま、誠さん。今のは咲夜さんには……」

 

「大丈夫だ、言わんよ。それと美鈴、ヨダレヨダレ」

 

「へ? ……あ……」

 

 俺の指摘に気付いた美鈴が顔を赤くしながら口元を拭いた。

 

「きょ、今日は何の御用ですか?」

 

「あぁ、ちょっとパチュリーに用があってな」

 

「……そうですか」

 

 ん? 何か残念な顔に……。

 

「そ、それじゃあどうぞ」

 

「お、おう」

 

 何か変な雰囲気の中、俺は紅魔館の中に入った。

 

「さて、図書館はっと……」

 

 俺は図書館へ向かう。たまに妖精メイドに会うが、何故かじゃんけんで通してくれた。

 

 たまにあっちむいてほいをしたけどな。

 

「やっほぅい」

 

「あ、誠さん」

 

 扉を開けて中に入ると本を持った小悪魔がいた。

 

「霧雨がお邪魔してるだろ?」

 

「はい、あそこでパチュリー様と調べてほしいと相談しています」

 

 小悪魔の指差す先には机に座って本を読むパチュリーに懇願する霧雨がいた。

 

「分かった、ありがとうな」

 

「いえいえ」

 

 小悪魔にそう礼を言って二人に近付いた。

 

「ようパチュリー」

 

「あ、霊夢の兄ちゃんからも言ってやってくれよ」

 

「………」

 

 パチュリーはじっと俺を見ている。多分、めんどくさいのがきたと思ってるんだろうな。

 

「パチュリー」

 

 俺はパチュリーの両肩に手を添えた。

 

「……悪いけど、調べてやってくれないか? 俺もそろそろパチュリー達と花見をしたいからさ」

 

「……はぁ、分かったわ」

 

 パチュリーが深い溜め息を吐いて漸く了承してくれた。

 

「私の時は嫌だって言ってたのに……」

 

「魔理沙、貴女は強引過ぎるのよ。ちゃんとしてくれたら私もやるわ」

 

 ぶつくさたれる霧雨にパチュリーはまた溜め息を吐いてそう言うのであった。

 

 そしてパチュリーが調べて二時間が経過した。俺はその間、図書館の本を見たりしていた。

 

 たまに咲夜さんが来たりしていたりする。

 

「確信は無いけど、原因は冥界ね」

 

「何で冥界なんだ?」

 

「最近、冥界に住む者が幻想郷の春度を盗んでいると妖精メイド達が話していたはメイド達は直ぐに忘れたけどね」

 

 冥界……か。

 

「兎に角、ありがとうなパチュリー」

 

「見返りは何かしらね?」

 

「日本酒三本だ」

 

 俺はそう言って笑う。そして俺と霧雨は紅魔館を後にして冥界へと向かうのであった。

 

 




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