『言霊使いと幻想郷』   作:零戦

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第二十話

 

 

 季節は夏が過ぎて紅葉が美しい秋になっていた。

 

「……落ち葉が多すぎるわ」

 

「そうボヤくな霊夢。秋はそうなんだ」

 

 俺と霊夢は境内で掃除をしていた。なにせ、二日も境内の掃除をほっといたら大量に落ち葉がいていたからな。

 

 多分今日は落ち葉の掃除で一日が潰れると思うな。それと魅魔は裏山で栗拾いをしている。

 

 今日の晩ごはんは栗ごはんで決まりだな。

 

「よう霊夢」

 

「あ、魔理沙」

 

 霧雨が今日も箒に乗って神社にやってきた。相変わらずの暇人だな。

 

「そうでもないぜ。パチュリーの図書館から本を借りてるしな」

 

「パチュリーがよく貸したな」

 

「貸してないわよ誠兄。魔理沙は勝手に借りているのよ」

 

「……おいおい」

 

「そりゃないぜ霊夢と兄ちゃん。私は死ぬまでの間借りているだけだぜ」

 

 霧雨はそう言ってウインクした。こりゃパチュリーが可哀想だな。

 

「てなわけで師匠の魅魔はどう思う?」

 

「いくらなんでも借りパクは駄目だねぇ」

 

「み、魅魔様ッ!?」

 

 裏山での栗拾いを終えた魅魔が霧雨の後ろにいた。流石の魅魔も溜め息を吐いている。

 

「返してきなよ魔理沙」

 

「……分かりました」

 

 流石の霧雨も師匠の言葉には逆らえなかった。兎も角良かったなパチュリー。

 

「ついでだ魔理沙。境内の掃除をしておくんだね」

 

「え? 私もするんですか魅魔様?」

 

「何言ってるんだい。あんたにも立派な箒があるだろ。それを使いな」

 

 ……流石魅魔だな。その後は霧雨も掃除に加わって落ち葉を集めていた。

 

「ま、こんなものでいいだろ」

 

 落ち葉はある程度集めた。

 

「しんどいぜ……」

 

 霧雨が疲れたように言うけど、お前は半分遊んでただろうが。

 

「「こんにちわ~」」

 

「ん? あぁ秋姉妹か」

 

 上から八百万の神の一柱である秋静葉と秋穣子の姉妹が降りてきた。

 

 ふむ……両方とも橙か。何が橙かは聞くなよ? 皆は紳士だからな。

 

「み、見ないで下さいッ!!」

 

「げ、バレた……」

 

「そりゃ鼻の下を伸ばしてたらバレてるよ」

 

 説明ありがとう魅魔。

 

「それでどうしたんだ?」

 

「そうそう、人里の人が今年も豊作だったから御礼に収穫物を貰ったんだけど量が多いからお裾分けに来たのよ」

 

 妹の穣子がそう言う。確かに二人は大きめの篭を背負っていた。

 

「ほんとにッ!?」

 

 穣子の言葉を聞いた霊夢が目をキラキラと光らしている。

 

「取りあえずまた後でコメを持ってくるわ。今渡すのは野菜とさつま芋よ」

 

 二人がドサッと篭を下ろす。確かに篭の中身は野菜とさつま芋だな。

 

 というよりさつま芋多いな……。

 

「さつま芋多くないか?」

 

「あら、さつま芋は冬の必需品よ」

 

 姉の静葉がそう言ってきた。成る程、確か桜新町でもじゅりや八重が秋にはよくさつま芋は食べていたからなぁ。

 

「今年はどの畑でもさつま芋は豊作なのよ。人里でも食べるのに困ってるらしいからね」

 

「……誠兄、後で人里に行くわよ」

 

「霊夢、私も同行するぜ」

 

 霊夢と霧雨が意気投合をしていた。

 

「私の分もよろしくね」

 

「お前もかよ魅魔」

 

 こいつらは……。

 

「まぁ兎も角だ。さつま芋焼くぞ」

 

『オォッ!!』

 

「……気合い入っているなぁ」

 

 そう思う俺である。さて、アルミホイルでも出しとくか。

 

「アルミに巻くぞ」

 

 俺は静葉からさつま芋を貰ってアルミホイルにさつま芋を巻いていく。霊夢達も同様の事をしている。

 

 巻き終えると、落ち葉の中に入れていく。

 

「そういや火が無かったな。仕方ない、ショートカット『チャッカマン』」

 

 こんな事もあろうかとインストールしておいたチャッカマンを出す。

 

「芋入れたか?」

 

「入れたわよ誠兄」

 

「んじゃぁ点火」

 

 シュポっとチャッカマンから火が出て落ち葉を燃やしていく。

 

「燃えろ燃えろ。皆燃えてしまえッ!!」

 

「どうしたの誠兄?」

 

「変な電波を受信した」

 

「はぁ?」

 

 まぁそれはさておき、落ち葉が燃えていく。多分時間が掛かると思うな。

 

 

 

~~少女焚き火中~~

 

 さつま芋を入れてから一時間が経った。鉄の細い棒で焚き火の中をまさぐって焼けたさつま芋を取り出していく。

 

「熱いから気を付けろ霊夢」

 

「うん……あちッ!!」

 

 さつま芋の皮を剥いてかぶりついた霊夢だったが熱さで叫んだ。

 

 秋姉妹は毎年しているせいか皮の剥き方は上手かった。

 

「だぁッ!! ちまちま剥いてられないぜッ!!」

 

 さつま芋の皮を剥いていた霧雨がそう雄叫びをあげる。それを見た見ていた魅魔が溜め息を吐きながら自分が剥いたさつま芋を差し出した。

 

「ほら食べな魔理沙。私は此方を貰うよ」

 

「魅魔様……」

 

「全く、さつま芋の皮くらい自分で剥きな」

 

 何だかんだ言いつつも弟子の事をよく見ている魅魔である。

 

 その後、俺はさつま芋を二つ食べたが他の皆は三個から五個は食べていた。

 

 よく入るよな。

 

「ありがとうな秋姉妹」

 

「いいわよ誠君」

 

「誠君には感謝しているからね」

 

 二人はそう言って笑う。まぁ俺は人里に豊作祈願として秋姉妹の分社を作れば? と言っただけなんだけどな。

 

「それじゃあまた来年の春ね」

 

「また後でコメを持って来るからね~」

 

 二人はそう言って飛んで行った。

 

「まぁ、焼き芋を食べられたのはあの二人のおかげだからね。感謝しておくわ」

 

 霊夢が六個目の焼き芋を口に含みながらそう言うのであった。

 

 

 

~~オマケ~~

 

「……うそ……」

 

「どうした霊夢?」

 

 数日後、風呂から上がった霊夢が腹回りを触っていた。

 

 腹回り? 腹回り……成る程。

 

「霊夢……」

 

「……誠兄」

 

「霧雨と弾幕ごっこしてこい」

 

「早速してくるわッ!!」

 

 勢いよく飛んで行く霊夢であった。

 

「お前は太らないんだな魅魔」

 

「私は悪霊だからねぇ」

 

 そりゃぁそうか。

 

 後に霊夢と霧雨は弾幕ごっこで無事に痩せる事が出来たそうな。

 

 




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