『言霊使いと幻想郷』   作:零戦

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第十八話

 

 

「てて……あのスキマめ、いきなり送りやがって……冗談に決まっているだろう」

 

 スキマで桜新町に近い小高い丘に強制送還された雄飛はそう愚痴っていた。まぁそれは仕方ないだろう。

 

「しかし……」

 

 雄飛は丘から桜新町を眺める。桜新町には普通では有り得ない物が存在する。それが七郷(ななごう)である。

 

「幻想郷は幻想郷で大変だが……此方は此方で大変だな」

 

 雄飛はポケットから薬タバコの箱を出して一本を取り出してライターを付けた。

 

「七郷が咲く時、あの世とこの世が完全に融合してあの世の妖怪がこの世に溢れ出す……か」

 

 雄飛はそう呟く。

 

「俺に出来る事はない。俺はただの土地神でありマリアベルの守り神だ」

 

 吸い終わった吸殻を近くにあった灰皿に捨て、その場を去る。

 

「頑張れ若者達……か。俺も爺になった事か……」

 

 雄飛の言葉に答える者はいなかった。

 

 

 

 

 その頃、異変を解決した幻想郷では博麗神社で宴会が開かれていた。

 

「それでこれは一体何なのよッ!!」

 

「ん? メイド服だけど……」

 

「それは知っているわよッ!! 何で私がメイドをしないといけないのよッ!!」

 

「お前が罰をしろと言ったからだろ?」

 

「う~」

 

 睨むな睨むな。今のレミリアは咲夜さんと同じメイド服を着ている。

 

 そしてその咲夜さんはというと……。

 

「はぁ……はぁ……御嬢様のメイド服……ご飯五杯はいけるわ……」

 

 レミリアのメイド服姿を見て悶えていた。

 

「此処に先程盗撮……写真を撮りましたがどうですか?」

 

「一枚何文かしら?」

 

「五文です」

 

「十枚は貰うわ」

 

 そして文が咲夜さんに盗撮した写真を売り渡していた。此処でも仕事するなよ……。

 

「ねぇねぇ孝之お兄ちゃん。似合う?」

 

「うん、よく似合うよ妹様」

 

「エヘヘ~♪」

 

 そして違うところでは同じくメイド服を着たフランが孝之に似合うかどうか聞いていた。

 

 ちなみにあの後、フランが謝りに来ていた。久しぶりに外に出てはしゃいでいたとか。

 

 ……よく生きていたな俺。それよりもだ。

 

「孝之……お前、ロリコンか?」

 

「ち、違うわいッ!! 俺は素直に正直な感想を……」

 

「此方にスカーレット姉妹のメイド服姿の写真を一枚五文で販売しています」

 

「三枚貰おう。パンチらは?」

 

「此方に」

 

「……五枚貰う」

 

「……やっぱりロリコンじゃねぇか……」

 

 孝之にルーミアを近づけないようにしておくか。この幻想郷には警官はいないのか?

 

 そういや小兎姫がいたな……。

 

「小兎姫、出番ですッ!!」

 

「最近、檻には罪袋しかいないからやりがいがあるわね」

 

「あるんすね……」

 

 手錠を振り回しながらニヤニヤ笑う小兎姫さんでした。

 

「どうだパチュリーに美鈴? 飲んでるか?」

 

「飲んでるわ」

 

「飲んでますよ。後、みすずじゃなくてめいりんですからね」

 

 ……メタな発言すんなよ……。

 

『作者はみすずで漢字変換してます。だってめいりんだと明倫しか無理なんだよ』

 

「日本酒は初めて飲むけど……ワインよりかは美味いかもね」

 

 パチュリーはそう言って盃に注がれた日本酒を飲んでいる。ちなみに品名は黒霧島だったりする。

 

「ぷはぁ、やっぱり日本酒は美味いですね~」

 

 大きめの盃に注がれた日本酒を美鈴がぐいっと飲んで親父臭い発言をしている。

 

 少し飲み過ぎのせいか、美鈴の頬はほんのりと赤く胸元も一、二個のボタンを外してその大きな果実が少し見えていた。

 

 ムフフフ、絶景かな絶景かな。

 

「むぅ~助平な視線を感じます……」

 

 美鈴が視線の気付いたのか俺に視線を向けるが、俺はその直前で視線を変えて日本酒を飲んでいた。

 

 ふぅ危ない危ない……。お前のは大きすぎるんだよ。

 

「……ふぅ、少し身体が熱いわね」

 

 パチュリーがそう言って胸元を開けて手をパタパタと降って空気を送っている……此方も絶景かな絶景かな。

 

 パチュリーは着痩せするタイプなんですね、分かります。今度試験に出るからね。

 

「霊夢ぅ~私と一緒に吸血鬼になりなさいよ~」

 

「五月蝿いわねッ!! 何で私が吸血鬼にならないといけないのよッ!!」

 

 違うところではレミリアにせがまれている霊夢が怒っている。

 

「あら、霊夢の吸血鬼かなんてゆ、許さないわよ」

 

「……そう言いつつも何を悶えているんすか紫さん?」

 

 何故か頬を赤くして悶えている紫さんである。多分、霊夢の吸血鬼姿を想像していたな。

 

「ハハハ、霊夢は吸血鬼より悪霊の方が似合いそうだよ」

 

 酔った魅魔がゲラゲラと笑いながらそう言う。てかエビフライ食べ過ぎだ。

 

「何ですって魅魔ァ~ッ!!」

 

「げ、霊夢の夢想封印が来るぞッ!!」

 

 顔を真っ赤にした霊夢が夢想封印のスペルカードを出して魅魔に襲い掛かる。

 

「ハハハッ!! 私にかかればこんなもん避けられるよッ!!」

 

 魅魔は右手にエビフライを持ちながら夢想封印の攻撃を避けていく。何気に凄いなおい。

 

「あややや、これは号外の新聞が出せますよッ!!」

 

「おいおい文……ん?」

 

 写真を撮りまくる文に溜め息を吐いた時、ふと視界の隅に一人の女性が目に入った。

 

 その女性は頭に帽子を被り、三角巾のような物を付け髪はショートヘアで色はピンク、全体的に水色の服を着ていた。

 

「………」

 

 女性は此方を見て微笑むと神社から降りて行くのであった。

 

「……あれが博麗神社に住む言霊使い……ね」

 

 石段を降りていた女性がそう呟くのであった。

 

 




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