『言霊使いと幻想郷』 作:零戦
「誠兄ッ!!」
誠兄が左脇腹から血を流しながらゆっくりと倒れた。
「あれ? もう死んだの? つまんなぁい」
……誠兄に駆け寄ろうとした時、金髪の少女――フランとか言うのがそんな事を呟いた。
「……今……何て言った?」
「うん?」
「今、何て言ったって言ってるのよ」
「つまんないと言ったのよ」
「……死にたいようねッ!!」
駄目ね、怒りの感情を押さえきれないわ。
「フランッ!! 何故此処にいるッ!!」
「あらお姉様。私が此処にいちゃ駄目なの?」
レミリアがそう叫び、フランはそう言い返した。ちなみに誠兄には隣にいた執事が看護している。
「地下室に戻りなさい」
「嫌よ。もう地下室にいるのはこりごりなのよ」
「地下室に戻りなさいッ!!」
レミリアがそう叫ぶ。ところでもう夢想封印していいかしら?
「それともお姉様、私と遊んで『圧』ッ!?」
その瞬間、フランは両腕を交差して地面に倒れた。
『ッ!?』
「ガ……」
だんだんとフランが地面にめり込んでいくけど……これはまさかッ!!
「誠兄……?」
誠兄のところに振り返ると、そこには確かに誠兄が立っていた。
……立っていたけど、誠兄の周囲に黒い霧みたいなのが漂っている。
「誠……お前……祓えてないのか?」
「祓えてない?」
誠兄を看護していた執事がそう呟いていた。
「ちょ、ちょっと、祓えてないって一体……「アアアァァァァァッ!!」ッ!?」
その時、地面にめり込んでいたフランが自力で立ち上がった。
「なんだ……死んでないじゃない。なら……今度こそ死なせてあげるッ!!」
「誠兄ッ!!」
フランが飛行して誠兄に向かう。誠兄は何時ものように舌を出した。
「『凍』」
『ッ!?』
一瞬で紅魔館が凍り、それに驚いたフランが止まる。
「『氷柱』」
「くッ!?」
誠兄はそれを見逃さずに氷柱でフランを攻撃する。フランが両腕で頭と心臓に当たらないよう防御してるけど、誠兄は一気にフランの目の前まで走って……フランを殴った。
「ぐぅッ!!」
倒れたフランに誠兄が乗っかってそのままフランを殴り続ける……ってそれは駄目よッ!!
「止めろ誠ッ!! もう妹様は戦意を失っているッ!!」
「止めなさいッ!! 私が謝るからもう止めてッ!!」
「『縄』」
『ッ!?』
誠兄が縄を出して私達を縛った。てか私もなの?
そしてそのまま誠兄はフランを殴り続ける。
「恋符『マスタースパーク』ッ!!」
「魔理沙ッ!!」
その時、私達と同じように縄で縛られていたはずの魔理沙がいつの間にか『マスタースパーク』を放った。
「魔理沙も縄で縛られていたはずなのに……」
「縄抜けの方法が書かれた本を前に香霖の店で見つけて読んでいたんだぜ」
私の指摘に魔理沙がドヤ顔で言った。霖之助さんの店にはそんなのまであるのね。
「……でも、奇襲は失敗したわ魔理沙」
「……マジかよ……」
魔理沙の『マスタースパーク』を直撃したはずなのに誠兄は無傷だった。
そして誠兄が舌を出して臨戦態勢に入る。
「……これはヤバいぜ」
「誠兄ッ!!」
誠兄が何かを出そうとした時だった。
「よく粘ったな小娘達」
『ッ!?』
いつの間にか誠兄の後ろに一人の少年がいた。
「ゆ、雄飛さんッ!?」
「おぅ孝之。久しぶりだな」
少年はマントを羽織っていたわ。
「ったく、スキマ妖怪がいきなりスキマを開くから何事だと思えば……」
少年はそう呟きながら棒のようなのに火を付けた。(霊夢はタバコを知りません)
「仕方ない、今日は比泉の奴がいなぇから特別に祓ってやるか」
そう言って少年の右手が輝き出して、誠兄が一瞬光に包まれた。
「誠兄ッ!?」
「心配すんな博麗の巫女。ただ祓っただけさ」
光が晴れるとそこには気絶している誠兄がいた。
「一件落着……になるのか?」
「ありがとうございますわ」
「紫ッ!?」
スキマから紫が現れた。何でいるのよ?
「たまたまスキマを覗いて見たら危険な場面だったから此方の守り神に来て誠君のを祓ってもらったわけよ」
「……展開が急すぎて訳が分からないわ」
それは私もそう思うわレミリア。
「兎に角、この異変は終了よ。それでいいかしら吸血鬼さん?」
「えぇ……構わないわ。元々博麗の巫女に負けた時点で終了するつもりだったわ。あそこでフランが乱入したのは計算外だったけど」
レミリアはあっけらかんとした表情で言う。
まぁこれで異変は終わりね、問題は……。
「紫、誠兄は一体どうしたの? 何があったの?」
「そうだぜ。流石の私も焦ったぜ」
魔理沙が援護射撃をしてくる。
「……仕方ないわね。吸血鬼さん? 悪いけれど一室貸してもらうわよ」
「いいわ。私もフランを一応ながら倒した男の話を聞きたいわ。それと……孝之」
「はいッ!!」
「貴方……知り合いだったの?」
「外の世界の時に友人でした」
「確か……桜新町だったわね」
「ッ!? 何でそれを……」
孝之という執事が驚いたように紫を見ている。
「私が誠を幻想郷に、貴方を紅魔館に移した原因よ」
「え?」
「フフフ、それじゃあ行きましょう」
紫は扇子で笑いを隠すようにして館内へと入った。私も行くとするかな。
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