『言霊使いと幻想郷』   作:零戦

13 / 86
第十一話

 

 

「くそ寒いなおい……」

 

 俺は障子を開けて外の景色を見ていた。外は一面雪景色である。

 

 うん、寒いけど綺麗だな……。

 

「誠兄、早く障子を閉めてよ。寒いったらありゃしないわ」

 

「それについては同感だねぇ。寒すぎるね」

 

 隣にいる魅魔が炬燵の中に潜り込む。ちなみにこの炬燵は河童が製作した物らしい。

 

 ……頭に皿を載せてる河童が物を作ってるのは俺も不思議に思うよ。まだ会った事ないからな。

 

「はいはい」

 

 二人の言葉に俺は頷いて障子を閉めた。障子の付近には開けていたせいか、雪が少し落ちてた。

 

「寒いわね」

 

「寒いね」

 

「寒いな」

 

『………』

 

 無言だな。てかそれしか言わないのかよ……。

 

「……あ、蜜柑が無いわ」

 

 蜜柑を食べていた霊夢がそう呟いた。ちなみに霊夢と魅魔の周辺には皮となった蜜柑の残骸があったりする。

 

「もう無いのかい?」

 

「そうね、誠兄。人里に行って買ってきて頂戴」

 

「……お前らが食い過ぎるからだろ……ってうわッ!!」

 

 俺が文句を言ったら二人から蜜柑の皮を投げつけられた。理不尽だぞ……。

 

「仕方ねぇ。行くか」

 

 俺は厚着して裏口から出た。おぉ寒……。

 

 俺は石段を降りていく。雪の深さは二、三センチくらいだな。

 

 都会だと二、三センチの雪でも交通機能が麻痺するな。スリップ事故とか起きやすいもんな。

 

「原チャでも出すか」

 

 俺はショートカットで原チャとヘルメを出した。ちなみに無免許だが? 幻想郷には試験場なんか無いんでな。

 

 最初に運転する時はドキドキして緊張したけどな。まぁ今は慣れたな。

 

「さて行くか」

 

 俺はキーを入れてエンジンに付ける。そのままゆっくりと徐行で人里へと向かった。

 

 

 

「到着っと」

 

 ただいま人里の入口です。徐行で運転していたのに二回滑った。

 

「おや、博麗の居候じゃないか」

 

「お、どうした居候?」

 

「居候なのは確かだけどよ……」

 

 原チャのエンジン音に気付いた人里のオッサン達が俺に声をかけてきた。

 

「悪い悪い。ところでよ八雲、仕事……してくれないか?」

 

 オッサンが俺にそう言って拝んでくる。……またか。

 

「冬は作業しないんじゃないのか?」

 

「いやぁ八雲が冬になる前に来なかったからだよ」

 

「……そういやそうだったな。仕方ねぇな、やったるよ」

 

「おぉ有りがたいぜ。ほらこれが紙だ」

 

 オッサンはそう言って俺に紙を渡す。紙には鍬や包丁が何本とか書かれていた。けどよく持ってたな?

 

「八雲が来る日は分からないから里全員が紙を持っているんだ」

 

「なるへそ。んじゃまぁ、ショートカット『鍬』」

 

 俺は舌を出してショートカットで書かれている鍬や包丁を出していく。そして瞬く間に紙で指定された分量が出された。

 

「毎回毎回済まないな」

 

「なに、農作業をするんだから農具が壊れるのは当たり前の事だ」

 

「それもそうだな。ほら、五十文だ」

 

「毎度」

 

 俺はオッサンから銭を受け取る。ちなみに寛永通宝だ。

 

 俺は定期的に人里に来て人里で壊れた鍬や包丁等の道具を言霊で出してその御礼に銭か食糧を受け取っている。言霊で出した道具は消えないようにはしているが壊れる事は壊れるので仕方ない。

 

「これからどうするんだい?」

 

「あぁ、蜜柑を買いに来たからな」

 

「ならこの包丁を八百屋に渡しておいてくれ。紙に書いてあったからな」

 

 オッサンはそう言って俺に二本の包丁を渡してくる。まぁ八百屋に行くから問題はないけどな。

 

「また頼むぜ」

 

「あいよ」

 

 俺はオッサンと別れて八百屋に向かった。

 

 

 

「おっちゃん、ほら包丁だ」

 

「お、八雲かい。てことは包丁を出してくれたのか。有りがたい、これで白菜も切りやすくなるぜ」

 

 俺は八百屋のおっちゃんに包丁(といっても薄刃包丁だが)を渡す。

 

「何か買うのかい?」

 

「あぁ、蜜柑を三袋ぐらいくれ」

 

「よっしゃ、包丁を出してくれたからな。一袋はタダにしてやるよ。八文貰うぜ」

 

「それは有りがたいな」

 

 俺はおっちゃんに八文を渡す。そして俺はおっちゃんから蜜柑を受け取る。

 

「毎度ありぃ。また来いよ」

 

「おぅ」

 

 俺はおっちゃんに手を振って八百屋を後にする。さぁてどうするかなっと……。

 

「ん? 誠じゃないか」

 

 ん? この声は……。

 

「なんだ、上白沢か」

 

 声をかけてきたのは人里で寺子屋を開いている上白沢慧音だった。上白沢は俺と同じ半妖でもあるが、此方では半人半獣と呼ぶらしい。

 

「もこたんはどうした?」

 

「もこたんは言うてやるな。いつも通り迷いの竹林にいるよ」

 

 俺の言葉に上白沢はそう言った。もこたんとは藤原妹紅の事である。

 

 詳しくは知らないが永遠亭の輝夜とは少なからずの因縁みたいなのがあるらしい。

 

「そうそう、誠のおかげで歴史の授業は捗っているぞ。特に近代史はな」

 

「まぁ江戸時代のままの人里に近代史を教える上白沢も上白沢だけどな」

 

「それはどういう意味だ」

 

 上白沢の言葉に苦笑する俺達である。

 

「授業はもうないのか?」

 

「あぁ。雪も降っているし遊びたい奴等もいるだろう」

 

 確かに遊んでいる子どもがいるからな。

 

「そろそろ行くわ。霊夢が蜜柑無いからキレそうだ」

 

「フフ、大変だな。また外の歴史を教えてくれ」

 

「あぁ、任せろ」

 

 俺は上白沢と別れて再び原チャを出して神社に帰った。

 

 




御意見や御感想等お待ちしていますm(__)m

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。