パラオの曙   作:瑞穂国

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こっちの投稿ペースが速いな・・・

他のも併せて書かないと・・・

米艦実装だって、楽しみだね!ミズーリと国際交流(意味深)したいです

おや?何か音がすr(弾着)


結成、パラオ泊地艦隊!

太平洋に浮かぶ小島。そこに建てられたこの施設の廊下からは、真昼の太陽が港湾施設を照らすさまが、よく見えた。一年のうちで気温変化がほとんどなく、温かいこの島では、燦々と降り注ぐ太陽の下でも、特に冷房をつける必要性は感じられなかった。証拠に、冷房等が利いていないこの廊下も、特に暑さは感じなかった。

 

曙の手に着いたペンキを落としていた結果、十分ほど遅れての庁舎入りとなった。木曾曰く、庁舎の外観は立派にできているが、中身にはまだまだ手を入れているところも多く、散らかっている場所もあるとのことだ。確かに、廊下の奥の方、工廠へと通じているであろう通路からは、工事業者の出す工具の甲高い音が聞こえてきた。

 

「そういや、お前」

 

前を歩く木曾が、榊原を振り返って尋ねた。

 

「艦隊に昇格したわけだし、秘書艦を置くんだろ。誰にするんだ?」

 

艦隊に必ず置かれる秘書艦は、提督と共に作戦等を立案、遂行する役目を負う。二重チェックの意味と、作戦に艦娘側の意見も反映させるためだ。

 

秘書艦には、これといって制限はない。よって、鎮守府や基地ごとの特色がよく現れる。横須賀のように、一人で固定するところもあれば、作戦ごと、さらには曜日ごとに変えるところもあった。

 

「秘書艦か。まだ考えていなかったな」

 

「早めに決めた方がいいぞ。当分は、初期の山のような書類が待ってる」

 

「・・・心得ておこう」

 

そんな他愛もない会話の間も、曙は終始黙っていた。先ほど、二人して大笑いしたのを未だに根に持っているらしい。腕組みをして、いかにも不機嫌そうな顔で着いて来ている。

 

「さて、と。ここだ」

 

木曾に案内されたのは、手書きで『警備執務室』と書かれた部屋の前だ。奇妙な名前の部屋だ。ドアの横には、辛うじて整理されていることがわかる段ボールが積まれており、開いたままの一番上のものを覗くと、書類やら本やら訳のわからない小物やら雲やらペンギンやらが入っていた。

 

中からは人の気配がする。そのドアを、木曾は遠慮なく叩いて次の瞬間には開けた。そのまま中に通される。

 

「だから、返事してから開けろよ。―――って、なんだ、提督着いたのか」

 

部屋の中央、首を振る扇風機の前に置かれた机で書類を覗き込んでいた少女が言った。そしてもう一人、ソファに腰掛ける少女は、扇風機の風が当たらないのか、団扇で自分を扇いでいる。

 

「いや、予定時刻だから迎えに行くって言っただろ・・・陽炎?」

 

木曾が半目でソファを見遣る。そこに腰掛けた少女が、何かを思い出したように柏手を打った。

 

「あ、そういえば、そんなこと言ってたっけ」

 

「おい」

 

テヘッと可愛らしく舌を出す少女―――陽炎に、机に腰掛ける少女が嘆息した。

 

「たくよー。忘れんなよ。―――よっこいせ、っと」

 

少女は立ち上がり、こちらの前に立った。

 

肩口で揃えられたショートカット。勝気な目元に、挑戦的な表情。セーラー服のようなデザインの服は体にピタリと密着しており、彼女のプロポーションを引き立てる。年の頃は二十歳前後といったところか、いかにも健康的な、運動系の少女だ。

 

彼女はまっすぐにこちらを見据え、悪戯っぽい笑顔で名乗った。

 

「あたしは、パラオ警備隊旗艦の摩耶様だ。よろしくな、提督」

 

その声音も勇ましい。軽やかな親しみやすさを感じさせる口調だ。

 

「新しく、パラオ泊地を任された、榊原広人だ。君が―――摩耶が、警備隊の指揮を?」

 

「おう。つっても、やれることは限られてっから、哨戒と報告書ぐらいしかやってねえけどな。後で、溜まった書類の確認も頼むわ」

 

そう言って摩耶は、机の横に置かれた段ボールを指差した。半分ほどの高さまで書類が積まれており、仕切りを隔てて「済」と「未済」に分かれている。

 

「でもって、そっちが・・・?」

 

摩耶は榊原の後ろを覗き込み、そこに立つ駆逐艦娘に尋ねた。

 

「・・・曙。よろしく」

 

明らかに不機嫌な様子で、曙が答える。

 

「おう・・・よろしく。なんで不機嫌なんだ?」

 

「やめろ摩耶、思い出して笑いそうだから、イッテエ!?」

 

クックッと思い出し笑いを滲ませた木曾の膝裏に、曙の無言のツッコミが決まった。予告なしのクリティカルヒットに、木曾が被弾箇所をさする。摩耶の溜息はより一層深くなった。

 

「お前、まーたなんかやったのか」

 

「いやいや、濡れ衣だって」

 

なあ。木曾は榊原に同意を求めたが、背後から伝わる黒いオーラを感じ取った彼は、

 

「まあ、木曾のせいと言えなくはないな」

 

内心謝りつつ、自らの本能に従ったのだった。まあ実際、曙の機嫌が急降下中なのは、木曾が堪えきれずに吹き出したためでもあるのだから、あながち間違いとは言えない。

 

「お前、俺を身代りにしたな!?」

 

木曾の方も、笑い半分で驚いてみせた。

 

「ま、それはとりあえず置いとくか。そっちは陽炎な」

 

「なんか、あたしの紹介おざなりじゃない?」

 

「んじゃ、ちゃんと自分で挨拶しろよな」

 

「はーい」

 

陽炎と呼ばれた少女は、勢いをつけてソファから起き上がり、タッタッと摩耶の横に立った。高い位置で二つに結ばれた、朝焼けを思わせるオレンジの髪が元気よく跳ねる。

 

「陽炎よ。よろしくね、司令」

 

「ああ、よろしく」

 

極めて自然に出された手を、榊原もしっかりと握り返す。太陽のような笑みが返ってきた。

 

「とまあ、これで一通り挨拶は終わりだな。満潮と霞は、哨戒が終わってからだから・・・昼飯の時かな。ちゃんとした挨拶は、そんときに頼むわ」

 

摩耶はそう言って、もう一度机へと戻った。それから、引き出しから書類をいくらか引っ張り出して、机の上へと出す。それから申し訳なさそうに、榊原に頼み込んだ。

 

「わりい、提督。早速なんだけど、こいつだけ確認してくれねえか?」

 

「・・・わかった」

 

それから昼食まで、しばらく書類仕事が続いた。

 

 

 

「それではっ!パラオ泊地艦隊の正式発足を祝しまして!乾杯!」

 

摩耶の音頭で、ジュースの入ったグラスが打ち鳴らされた。パラオ泊地所属の全艦娘が一堂に会した食卓に、ジュースを飲み干した溜息が重なる。榊原もその一人だった。

 

正午の太陽は、優しく食堂に差し込む。食卓に並ぶのは、木曾が腕によりをかけた料理の数々だ。摩耶によると、今泊地にいるのは、港湾部などの最小限の人員だけで、食堂部と工廠部の着任は、一週間後の船団になるとのことだった。

 

毎日、ご飯は自炊だったらしい。

 

「なんかよくわかんねえんだけど。港湾部は泊地所属だから、連合艦隊司令部が独断で送れるらしい。逆に、食堂部と工廠部は、泊地の艦隊、つまり提督の指揮下だから、着任には提督の承認がいるんだと」

 

木曾が焼いたピザトーストのチーズを伸ばして、摩耶が言った。

 

「面倒な仕様になってるんだな・・・」

 

「ほんとだよな」

 

同じようにしている榊原も、摩耶に同意する。摩耶は殊更感慨深げに、ピザトーストにかじりついた。

 

「うっうっ、これでようやく、自炊生活ともおさらばだぜ・・・」

 

「・・・摩耶の料理、まずいもんな」

 

本日のシェフ、木曾は、容赦のない言葉を投げかけた。

 

「うぐぐ・・・」

 

「ていうか、この艦隊でまともにご飯が作れるの、あたしと木曾だけじゃない」

 

木曾に同調したのは、サイドテールを気にしながらピザトーストを頬張る霞だった。哨戒任務から帰った彼女と満潮は、すり減らしたエネルギーをきっちりと補っている。

 

霞の言葉に陽炎が反論する。

 

「あたしもできたじゃない」

 

「あんたのは、料理じゃなくてぶつ切りっていうのよ」

 

陽炎の主張は、霞によって文字通りぶつ切りにされてしまった。

 

「・・・意外ね。霞に料理の才能があったなんて」

 

容赦なく撃沈された陽炎に変わって口を開いたのは、意外にも曙だった。ピザトーストのピーマンに顔をしかめながら、彼女もパンをかじっている。

 

―――そういえば、霞は横須賀にいた頃の知り合いだって言ってたな。

 

パラオ所属艦娘の名前を聞いた曙の言っていたことを、今更のように思い出す。霞は呉鎮守府からの派遣だが、その前は横須賀にいたらしい。

 

「どっかの世話の焼ける後輩が、ぴーちくぱーちく餌を求めてくるからよ」

 

ちらっと、霞は陽炎を見遣る。その目線に、陽炎は投げやり気味に鳥の雛のまねをした。

 

「ていうか曙、あんたも料理できたでしょ」

 

「まあ・・・人並みには。普通できるでしょ」

 

こともなげに言った駆逐艦娘の言に、若干二名の艦娘の周囲がズーンと重くなった。

 

「満潮はどうなんだ?」

 

榊原は、先ほどから黙々とピザトーストを食べている、もう一人の駆逐艦娘にも話題を振ろうとした。瞬間、満潮の口元がウッと詰まった。

 

「き、急に何よっ」

 

なんとかパンを嚥下した満潮は、顔を赤くしてまくし立てる。その様子を、摩耶がニヨニヨと眺めていた。

 

「わ、わたしは別に、料理とか・・・」

 

「パンを焼くと黒焦げになるもんな」

 

「あ、あれはっ!たまたま目を離してただけでっ!」

 

「・・・つまり、まともに料理ができるのは、あたしと霞、木曾だけってわけね」

 

満潮の反応から全てを察したらしい曙が呟く。お皿に並べられていたトーストとサラダは、すでになくなっていた。手に付いたパンの粉を、パラパラと振り落とす。

 

摩耶も最後の一切れを口に入れ、モグモグと咀嚼する。

 

「ま、てことであと一週間、食事の方は頼むわ」

 

「・・・わかったわ」

 

ひらひらと手を振る“元”警備隊旗艦に、マダム・ボーノ、キャプテン・キッソ、霞ママが嘆息するのであった。

 

「俺もやろうか?」

 

同じく昼食を平らげた榊原も、食事当番に名乗り出る。こう見えて、料理はできる方だ。それに、誰かに作って喜んでもらえることほど、料理をやっていて嬉しいこともない。パラオに来る途中の食事も、曙に認められている。

 

「何、提督料理できんのか?」

 

摩耶が驚いたように言った。

 

「ああ。人並みには・・・。妹が二人いたってのが大きいな」

 

それを聞いた、妹持ちの二人の艦娘が、再び大きく肩を落としたことは、最早言うまでもない。

 

そしてそこへ、トドメを刺すようなこの会話。

 

「曙は、提督の料理食べたわけ?」

 

「まあ・・・一応。ここに来る途中で」

 

「どうなの?」

 

「悪くはないんじゃない。ていうか、むしろいい腕してると思う」

 

榊原の着任初日、早速パラオ泊地艦隊からは、轟沈艦が出ることとなった。




さて、ここまで書いて・・・

三作目はどのタイミングで投稿するべきか・・・

あっちはあっちで大事な話になりそうだし・・・

しばらくは、こっちとタウイタウイの二本柱でやっていきます

それでは、また

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