Fairy tale for illustrations   作:テオ_ドラ

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【カテゴリ】
現代×青春
【コラボしたイラスト】
※タイトルなし

【挿絵表示】


PSO2小説「スノーフレーク」の表紙を描いてくれた
RimiQwiさんが描いていた練習用のラフ絵が気に入り
無理いってショートショートをつけさせてもらいました。
http://www.pixiv.net/member.php?id=10995711

公開されたモノではなく完成品でもないラフ絵ではありますが
こう、話を思いついてちょろりと書いてしまいました次第です。
RimiQwiさんとしては「あくまで練習中の一枚」とのことですが
私がお願いして今回は掲載させて頂きました。
ショートストーリーなので連続した話ではありませんが、
イラストを見て物語を読み、楽しんでもらえたら幸いです。
青春モノの一ページを連想してもらえればなぁと。

こんな形で一緒に創作を楽しんでいける方を探しています。


03.私の、初めての一歩(現代×青春)

 

【挿絵表示】

 

 

タッタッタッ……

 

走っている時に余計なことを考えると、

酸素を余分に消費してしまうといいます。

 

けれど私はその「余計なこと」への

思考を止めることができませんでした。

家族のこと、友達のこと、学校のこと……

鳥のさえずりさえ聞こえない、

寒くて静かな朝焼けの世界に、

私の走る音だけが響いていきます。

 

タッタッタッ……

 

アスファルトの地面を蹴る軽快な音。

こうして走っている時だけが、

私は止まることなく、前へ前へと進めるのです。

 

――将来のことをよく考えて進路を決めろ。

 

最近は毎日そんなことを言われていいますけれど……

でも、私には返す言葉が思い浮かびません。

 

だってそうでしょう?

 

明日の予定すら決められない私に、

将来のことなんて想像できるはずがないのです。

人生はマラソンだ、なんて言われることもありますが、

ゴールがどこかもわからずに走ること……

そんなの、どこがマラソンなんでしょうか。

私の前には決められたコースもないし、

ゴールテープが張られた「終わり」だって、

用意されてもいないというのに。

 

タッタッタッ……

 

私の吐く白い息が

取り留めもない思考と一緒に空気に霧散していく。

代わりに肺に吸いこんだ冷たい空気が、

私の思考をクリアにしていきます。

 

こうして朝、

たった一人で走っている間だけは、私は自由。

 

コースも私が好きに選べますし、

ペースだって私が決めることができる。

限られた時間ではあるけれど、

私が私でいられる……そんな時間。

 

ああ、この時間が終わらないでほしい。

ずっと、ただこうして走っていたい。

いつもそう思っています。

 

コースは選べてもゴールはいつも同じ。

少し傾いた赤いポストのある、

あの交差点を左へ曲がってしまうと、

今日の「私の時間」が終わりを告げる。

 

――嫌だ。

 

私の中の「本当の私」の呟き。

いつもはそれを押し殺して、

望まぬ日常に戻ります。

 

――帰りたくない。

 

いつもいつもその切実な呟きを無視して、

振り切るように交差点を曲がります。

 

だけれど、

 

タッタッタッ……

 

今日の私は、そのまま進んでいました。

赤いポストが私を咎めるような気がしましたが

でも私は気付かぬ振りをして走り去る。

 

ああ……

たった一つ、ただそれだけ。

ただ一つの曲がるべき道を

真っ直ぐに走るだけで、

こんなにも自由な気持ちになれるなんて。

 

私は我知らず笑っていました。

 

後から思えば、

この選択が分岐点だったのかもしれません。

私の退屈でつまらない同じ繰り返しの日常。

そこから飛び出した私に待っていたのは

辛く険しいけれど、

でも、それでも毎日が輝いているそんな日々。

 

「彼」が紡ぎ始めていた物語の舞台へと、

新しい登場人物として

私は飛びこむことになるだなんて……

この時の私は想像もしてなかったのです。

 

 

いつもより軽快なリズムを刻む私の足が、

新しい世界へと踏み入れた瞬間でした。

 




【イラスト書いてくれた人のプロフィール】
名前: RimiQwi
紹介: http://www.pixiv.net/member.php?id=10995711
HP :
作品:
※私が書いてるPSO2小説「スノーフレーク」の表紙を描いてくれた人です。

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