Fairy tale for illustrations   作:テオ_ドラ

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【カテゴリ】
近未来SF×ロボ
【コラボしたイラスト】
マクーナ

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DZ3-05

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ピクシブで知り合った
akinoさんの作品にショートストーリーをつけさせてもらいました。
http://www.pixiv.net/member.php?id=6162674
マクーナという近未来の工業都市、
そこで繰り広げられる人と同じサイズの
人型ロボットの物語を妄想しています。
勝手に設定をつけて謎の登場人物も出て行きますが
私も大分に妄想が過ぎたかなと反省しています。
ロボットいいですよねロボット。
SF好きな人はぜひakinoさんのホームページ ↓ にも遊びにいってください。
まだ作品数は少ないですけど
凄く頑張ってる方なので、私も更新を楽しみにしています。
http://311akinori.wix.com/core


01.機械仕掛けの狐と姫の物語(近未来SF×ロボ)

 

【挿絵表示】

 

 

――マクーナ。

 

多くの企業の研究上や工場が集まる工業地区である。

立ち入り厳しくも制限されており、

また警備も過剰なほど敷かれているため、

関係者以外は近付こうともしないエリアだった。

星も見えない淀んだ空に、

まるで光の階段のように伸びるサーチライトの筋。

人が寝静まるこんな深夜でも、

稼動する工場の音がまるで地響きのように大気を震わす。

決して大気が汚染されているわけではないが、

無機質な光景はどこか息苦しさを感じさせた。

例えるならば薄暗く濁った池の中……

水底は太陽の光も届かぬ暗闇の世界。

 

「よっと、無事に潜入できたな」

 

しかし、企業の機密が集まる場所だけに

産業スパイなどにとっては宝島のようなもの。

危険な場所であればあるほど美味い話はある……

だからこそ「彼ら」も仕事もなくならないというものだ。

 

「しかし、ケージ。

 こないや胡散臭い仕事、ホンマにやる気なん?」

 

「もう前金受け取ってしまったしな、

 引き返せないっての」

 

工業地区の片隅に停められたトレーラー。

二人はそれに寄りかかって暗闇の世界を眺めていた。

一人はケージと呼ばれたキザったらしい眼鏡の

ひょろりとした長身の男。

歳は二十歳を少し過ぎたくらいだろうか。

見えてるのか怪しいくらいの細い目、

狐目が特徴的な青年だ。

 

「それによ、

 コードネーム『PRINCESS』なんて、

 夢のある話じゃないか。

 アキも気になるだろ?」

 

彼は懐からタバコの形をしたチョコを食べる。

本物のタバコはさすがに

この暗がりの中では目立つので自重した。

彼らが立っているのは既に立ち入り禁止区域の中。

見つかればただでは済まない。

 

「せやかて、依頼主も不明なんやろ?

 罠ってことはないやろうけど、

 怪しい話やと思うで」

 

怪しい方言を話すもう一人は

小柄なボサボサ頭の女性。

だらしないシャツにくたびれたジーンズ。

こんなナリではあるけれど

アキという名前でまだ16歳だったはずだ。

きちんとした身なりをしていれば見栄えが良いのに

いつもスボラな恰好のために

勿体ないとよくケージはぼやいている。

 

『レッドフォックス』というコンビ名の二人は

イリーガルな依頼を生業とするコソ泥。

本人たちは「トレジャーハンター」などと自称しているが、

まあ名乗るのは自由ではある。

日頃はもっと細々とした仕事をして生計を立てていた。

ある日、そんな二人に突然張った依頼。

内容はとある企業が秘密裏に開発している

「兵器」を奪取して欲しいというモノ。

研究所の場所と内部の見取図、

また警備の状況まで事細かく記載されており、

恐らく内通者による依頼だと思うが……

 

「なに、最近は退屈な依頼ばかりだったしな。

 たまには危ない橋を渡らないと体が鈍っちまう」

 

「そいで、本音は?」

 

「前金を『狐火』の修理で請求されていた

 借金返済に全部当てちまった」

 

「……ホンマ、

 ケージは行き当たりばったりやなぁ」

 

異様に高い報酬金額……

その依頼が求める奪取目標の

コードネームが「PRINCESS」。

こんなご時世に「姫」だなんて、

冗談にしてもセンスがないと言わざる得ない。

一体どういうものなのか想像もできないシロモノ、

本来ならば避けるべき依頼だろう。

 

「アキ、そろそろ出る。

 『狐火』をスタンバイしてくれ」

 

「はいな、任せとき」

 

トレーナーのハッチをあけると、

そこにあったのは身長180ちょっとの

人型をしたロボット。

宇宙服、というよりは

パワードスーツを着た人という表現が近い。

派手な赤色にカラーリングされたそれは、

DZ3-XX『狐火』。

メタルアリーナ用に開発されたDZ3-05を

改修して作られた機体だ。

 

 

【挿絵表示】

 ←ベースとなったDZ3-05

 

オリジナルはパワースタイルのロボットなのだが、

『レッドフォックス』の運用に合わせて、

機動力を最優先する機体となっている。

元々が強奪したモノで

無理くり整備や補修を繰り返した結果、

今のようなフォルムになってしまった。

アキはまだ若いながらも

大人顔負けの腕利きのロボットの整備士だ。

狐火の整備とオペレーター、

それが彼女の仕事である。

 

「へへっ。

 久々に完全修理した狐火を

 使うことができるぜ」

 

そしてそれを扱うパイロットがケージ。

彼は伊達眼鏡を外し、

トレーラーの中にある

複雑な装置に繋がれた椅子に座る。

ロボットを操作するのだが、

本人が乗り込むわけではない。

この椅子の装置で意識を狐火とシンクロさせ、

遠隔操作をするのだ。

生身では難しい潜入任務も、

ロボットでは可能というわけである。

 

「ケージ、情報屋のエドから連絡や。

 忍び込む場所の警備に

 メタルアリーナのランカーがついたんやって」

 

「マジかよ、どいつだ?」

 

「47位『オーバーナイト』って書いとるわ。

 パイロットはアリシア=セラスティ」

 

「姫様を守る女騎士ってか?

 そいつは少々、出来過ぎな演出だろう」

 

アリシアとくればまさに絵に描いたような

融通が利かなく生真面目な役人のような女性。

美人ではあるがその性格のきつさから、

メタルアリーナのランクの昇格と反比例で

婚期が遠のいているとは皮肉な話だ。

何度か「職場」で顔をあわせたことがあり

知らない仲ではないが……

見ての通りのケージとはまさに水と油。

しかも腕前も一流とくれば

正直、正面からやり合いたくない相手の筆頭格。

 

「まっ、危なくなったら逃げるさ」

 

起動をさせながらケージは依頼のメールを思いだす。

依頼内容が詳細に書かれた本文の一番下に、

一言だけついたメッセージ。

 

――私を連れ出して

 

意味はわからない。

だけれど、何故か気になってしまった。

だからこそ、こんな依頼を受けてしまったのだ。

 

(プリンセス、ね)

 

彼の意思に従い、後方でロボットが立ち上がる。

一度、体を深く屈めてから

 

「DZ3-XX『狐火』、出るぜ」

 

人間離れした脚力で思い切り跳び出た。

人型のロボットはすぐに、

工業地帯の暗闇へと姿を消して

トレーラーから見えなくなった。

 

 

これは「狐」と「姫」の物語。

加速し繰り返される技術革新の世界の裏側で

人知れず繰り広げられた……

騒がしくも温かく、

そして少し切ない舞台の幕開け――


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