サイタマはとある病人のベット上で、負傷した傷を治癒していた。アクビをしながら、退屈そうに外ではしゃぎ回る子ども達を眺めている。
コンコン、というノックと共に、ジェノスが室内へと入ってきた。
「先生、遅くなってすいません。少し体の修理に手こずってしまいました」
「いいっていいって。別に気にすんな」
ジェノスはお見舞いようのフルーツバスケットを机の上の置き、そこからリンゴを取り出して器用に皮むきを始めた。
「先生をそこまで追い詰める怪人がいたとは……。もし先生がいなかったら人類は絶滅していたかもしれませんね。あ、遅れながらS級にランクアップ、おめでとうございます」
「順位はお前より下だけどな」
サイタマは多くの幻を打ち倒したとのと、アマイマスクの強い推薦をキッカケにS級ヒーローになっていた。
ガロウ騒動時の出来事から、アマイマスクはサイタマがA級の椅子に居座っていることを気にかけていた為、これを機に彼が相応しいと思う席を用意したのである。
幻影の王との戦いは違い世界でおきていたので、周囲に知る人物がいない為に手柄にはならなかったが、本人はいつも通り全く気にしていない様子だった。
ブーブー!
ジェノスの電話が鳴り響く音が、静かな病室に響き渡る。
「……はい。いま一緒にいます……了解です」
「病院なんだから電源くらい切っとけよ」
ピッと通話ボタンを切り、ポケットに携帯電話を戻す。
「ヒーロー協会からの緊急の収集命令です。先生はお怪我をされているようなので、出席は……」
「そうか」
サイタマはジェノスの言葉を遮り、自身の包帯を外し始めた。
全治数ヶ月と診断された傷が、僅か3日で跡形もなく治癒していた。
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「流石はS級ヒーロー、1人も欠けることなく再び集まってくれたことに、感謝するぞ」
「世辞はいいからとっとと始めやがれ、こちとら妹の看病を途中で抜け出してるんだぞコラ」
ヒーロー協会の重鎮、シッチの言葉を金属バットはイライラした様子で一蹴する。
出席状況は以前のようにブラストとボフォイ博士が欠席していて、新たに加わったサイタマが正式に居座っていた。
プリプリプリズナーやタンクトップマスターなどは包帯に身を纏った状態で出席していたが、それとは逆にタツマキやシルバーファングは無傷だった。順位ごとに負傷の度合いも差がついている。
「怪人の同時多発的な出没に消滅、先の事件は謎が多かったが、とりあえず解決したと考えていいだろう。しかし、どうやら我々に安息する時間はないようだ……」
シッチは躊躇いながらも、懐から1枚の紙を震えるように取り出した。
モニターにその手紙が拡大された巨像が映し出される。
「「「地球がマジでヤバイ!?」」」
「これはシババワ様の妹、ジババ様が予言されたものだ!ジババ様は半年先の予言した同時に、恐怖でガムを喉に詰まらせて死んでしまった!」
会場全体にどよめきが走る。
「おいアンタ。あの婆さんに妹いるって知ってたか?」
サイタマは小声でプリプリプリズナーに問いかける。
「ええ、予言の頻度はシババワに遠く及ばないけど、成功率は同じく100%らしい」
「そして、過去最大の被害の出た今回より、ヤバイ『何か』が地球を襲おうとしている! 」
サイタマはニヤリと浮かべながら呟いた。
「……来てよかった」
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ギシシシ。
沢山のチューブに繋がれた人形の機械が、緑色の液体の詰まったポットのような入れ物の中に浮いていた。それをキーボードを叩きながらボフォイは調節していく。
「先の事件で大方戦闘データはとれた」
いまの彼の持つ兵器は、軍隊と言っても過言ではないほど、最新鋭かつ大量に抱えていた。
「もうヒーローなどという立場に頼るのも、あと少し、といったところか」
意味深な言葉を呟き、再び作業へとボフォイは戻った。
一応完結です。何か続きそうなオーラは出していますが、今の所は五分五分です。
サイタマの敵ってモブ以外はテーマがあるんですよね。ボロスの生命力、ガロウの武術、タツマキの超能力、なので今回は『魔法』をテーマに怪人を描きました。
後書きを書きながら、『科学』っていうテーマもありかなとは思ったんですが、内容がまだ固まっていません。
ネタバレすると、察していると思いますが続きを書くとしたらボフォイ博士は敵となります。
というか、S級9位の機動騎士の「メタルナイトはお前の敵だ」ってジェノスに向けた発言から推察するに、彼の街を襲った暴走サイボーグってボフォイだと思うんですよね。
視聴者を騙す為のトラップかも知れませんが。
とりあえず、今まで御付き合い頂きありがとうございました。気が向いたら続きを書きます。