ワンパンマン〜オリジナルストーリー〜   作:ーカオスー

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第6話

 

 

 サイタマは大地を強く踏み込み、手始めにマグニチュード10を超える大地震を起こす。

 そのまま地面を蹴り、サイタマは幻影の王に拳を向けた。

 

「連続普通のパンチ」

 

 刹那。

 数百を超える、烈火の如く殴打が襲いかかる。1発1発がミサイルより破壊能力がある、自称普通の威力が牙を剥く。

 幻影の王はニヤリと笑みをうかべながら1歩足を踏み出し、ガロウの見せた流派の構えをとった。水のように攻撃を流し、 掌にエルルギーを圧縮させ、 隙の出来たサイタマの腹を強烈に殴る。

 視野できる衝撃波ができ、一瞬閃光が閃くと、レーザーと共に弾丸のようにサイタマは吹き飛ぶ。

 

『ガーハッハッ!!負ける気がしないな。いでよ、ファントムヒューマン』

 

 幻影の王が地面を叩き、魔法を発動させる。紫色の巨大な羅針盤が出現し、そこから探偵アニメの犯人役のような、真っ黒な人間が数え切れないほど出現した。

 影人は、各々がピストルや剣、ライフルやチェーンソーなど多種多様な獲物を持っている。その全てがサイタマに矛先向けた。

 単体で、災害レベル竜を軽く超える。

 

 ビルに突っ込んだサイタマはゆっくりと、頭をポリポリと掻きながら地面に足をつけた。

 

「どうやらマジみたいらしいな」

 

 自分の腹を撫でる。

 僅かなながらズキズキと痛み、ダメージを与えられていた。

 視線を前に向けると、影人が剣を振り下ろしていた。軽くそれを避け、回し蹴りを当てると、影人は空高く舞い上がり霧となって消えていく。

 飛来する弾丸を避け、チェーンソーを噛み砕き、ロケットランチャーをデコピンで弾き返す。

 大勢で歯向かうも、拳圧で蹴散らされていく。

 

「すげぇ数。チマチマ相手にしたらキリがないな」

 

 サイタマは低く腰を落とし、クラウンングスタートの構えをとる。

 

 ーマジシリーズー

 

「マジ走り」

 

 文明を破壊し、地形を変動させながら、光の如くスピードで突き進む。

 サイタマは3kmほど吹き飛ばされていたが、幻影の王の前に、瞬きすら許さない速さで迫った。

 道中にいた影人は、チャーハンを作る際フライパンを振るうように舞い上がっていた。

 

「マジ連続・普通のパンチ」

『神殺瞬拳』

 

 重なる言葉と重なる拳。

 けれども、それは余りにサイタマに不利であった。

 サイタマがガロウを相手に有利に運べたのは、サイタマが攻撃力、防御力、スピード等全てを何倍も上回っていたからだ。だが、いま拳を重ねている相手は、自身の長所を吸収した敵で、その話は通じない。

 基礎ステータスが同じであるために、勝敗は巧さに別れる。

 サイタマは少しずつ押され始めていることに驚き、後方に飛んで距離をとった。

 いつぶりだろうか、サイタマが怪人を相手に退いたのは。

 

 

 そこからは一進一退の攻防を繰り広げた。

 

 

 全ての生物を超越した最強の奏でる、常人が聞けば死へと巻き込むレクイエム。

 市を超え、県を超え、国を超え、大陸を超え。

 踏み込んだ大地は砕け、拳圧は人類が育んだ文明を蹂躙し、大海も灼熱に変える。

 軍隊でも、怪人でも、ヒーローでも。頂点を決める戦いに割って入れば、ゴミのように死に絶えてしまう。

 そんな圧倒的な戦いだった。

 地球を1周して、元の位置に戻ると、サイタマの外傷は目に見えて増えていた。頭からは血を流し、服装もボロボロになっていた。

 それに対して幻影の王は無傷……ではなかった。数発ほど攻撃を貰い、鎧に損失を負っていた。

 

(おかしい……確かに俺様は奴の力を吸収した上に、ボロスやガロウの力まで奪った)

 

 なら、勝負は一方的なものになるはずだ。吸収した力の差を考えて、1発たりとも拳を受けない自信があった。

 手を抜いたわけでも、油断していたわけでもない。

 完封できるだけの実力差があるはずなのに。

 

「やはり、戦いってのはこうでなくちゃな」

 

 何気ないサイタマの一言。

 

『まさか……』

 

 額に嫌な汗を流す。

 普通、絶対的な力を得たら、それと同時に安心を得るはずだ。

 それなのに。

 

 

 なぜ、いま不安を感じたのだろうか。

 

 

『遊んでいる暇はないな』

 

 力を開放させる。

 周囲に紫色の閃光が閃き、大地を揺るがせ、雷が鳴り響き、竜巻が巻き起こる。余波だけで、人より勝ると呼ばれた自然界のパワーバランスが崩壊する。

 

『演舞』

 

 幻影の王は高速で歩より、サイタマの胸元を右手で殴る。サイタマはそれを両手でカードするが、その部位に熱が襲った。

 

『火』

 

 殴った同時に、大爆発が巻き起こる。核爆弾並のエネルギーの発火、火柱が天空を貫く。それをまともに浴びたサイタマは宙を舞っていた。

 

『氷』

 

 状況の天変地異。

 全てが炎に包みこまれたと思うと、幻影の王が振り下ろした手を合図に、サイタマを中心とした1000mの氷山が出来上がる。

 絶対零度。生き物が許されない過酷な環境。

 

『雷』

 

 雲から雷鳴が轟く。

 正しく、神の怒りを具現化したような破壊の鉄槌。氷を砕き、身動きの取れないサイタマを襲った。

 空中で多大なダメージを受けたサイタマはピクリとも動かず、重力に引き寄せられていく。

 

『ファイナルメテオリックバースト!!!』

 

 幻が編み出した技を、我が者ように扱う。

 ガロウの呼吸法、ボロスのエネルギー活用。 それに加え、身体能力の向上させる魔法を付与する。本物と大差ないほど完璧に使えこなせる幻影の王だからこそ、絶大なダメージを与えることができる。

 足し算ではなく、かけ算で威力は上昇していく。

 

『ウォォォォ!!!』

 

 無抵抗のサイタマに、四方八方から蹴りや打撃を急所に狙ってダメージを与え続け、その度に血噴が舞い上がらせる。

 サイタマを1度上から叩きつけ、地面に落ちていく中を、先回りして高く蹴り上がる。

 爆風が巻き起こり、ロケットのように打ち上げられた。

 

『消し去ってやる! 幻影武装、ロンギヌス槍!』

 

 手元に、神話を元にした、紅の螺旋の形を描いた1本の槍が出現する。

 神殺しの槍と呼ばれた、聖なる武器。

 それを掴むと、吹き飛ばしたサイタマの元へ投影する。ボロスのエネルギーを付与し、スピードは正に光の如く。

 槍はサイタマに突き刺さると、そのまま直進しながら月を破壊し、それでもスピードは止まることはなく……。

 

「ん?」

 

 吹き飛ばされた先からは、地球が米粒ほどの大きさまで小さく見えるほど、かなり遠い位置にいた。

 突き刺ささった槍を引き抜く。神を殺す槍を持ってしても、僅かに穴を開ける程度だった。

 サイタマは立ち上がり、地球を目指して跳躍する。

 降り立った小惑星が、足場にしただけで半壊した。

 

『やったか……?』

 

 そんな思想も、爆撃のような着地音と共に消し飛ぶ。

 無傷ではないが、致命傷にまでは到達していない。

 未だにピンピンしており、戦闘続行、と瞳が訴えている。

 

『……なぜだ』

 

 全力を尽くした。

 

『なぜだ』

 

 俺様の方が強いはず。

 

『なぜだ』

 

 震えが止まらない。

 

『なぜだ』

 

 頭に敗北の文字がよぎる。

 

「どうした、戦いはもう終わりか? ならこっちから行くぞ」

 

 サイタマが駆け寄り、拳を振り下ろす。それを軽く受け流して、再び宇宙空間まで蹴りあげた。

 素人丸出しの、大したことのない一撃。何度こようと、全てカウンターで返せるはず。

 幻影の王とサイタマは、名も無き惑星に降り立ち、再び拳を交える。

 

『神殺・雷神拳』

 

 幻影の王は自身に雷をまとい、イナズマのようにステップを踏んでサイタマに襲いかかる。

 サイタマはそれを迎撃しようと殴りかがるが、手応えはなく、ガロウの特殊な技法で生み出した虚像を貫いただけだった。

 刹那。背後から数十発に及ぶ攻撃を雨のように浴びて、痺れながらも吹き飛ぶ。

 

『幻影武装・エクスカリバー』

 

 幻影の王の手元に、再び神話を元にした剣が現れる。

 剣を握りしめ、ガロウの記憶を掘り起こしながら、サイタマの横を斬撃を加えて通り過ぎる。

 視界に無数の糸のような切れ目が走る。

 

『アトミック斬』

 

 コンマ数秒後、切れ目にほぼ同時に斬撃のダメージが走る。

 怪人を細切れにする、驚異のスピードの剣激。

 サイタマは苦痛に顔を歪めながら、体中から血を吹き出して地面に顔をつける。

 

『やっと終わったか、手間をかけさせやがる』

 

 手元にある聖剣が、霧となって消えていく。

 ……ピクリ。

 サイタマの指先が動き、再び立ち上がる。

 

『まだ分からないのか? 馬鹿でも理解できるはずだ。貴様の力を吸収した時点で、俺様に敗北はない』

 

 幻影の王の問を無視して、無言のまま拳を握りしめる。

 

 ーマジシリーズー

 

「マジモード」

 

 サイタマが全力を出す。

 

(速い!)

 

 警戒していたのに、一瞬で懐まで潜りこまれる。

 幻影の王の体全体に、星を砕く威力を持った連続攻撃が幾つも突き刺さる。

 

『ぐはぁ!!!』

 

 サイタマが吹き飛ばした先は地球。

 幻影の王が突っ込んだ衝撃で、地図を1から作り直す必要が出るほどの地殻変動が巻き起こる。

 サイタマは後を追い、そこから烈火の如く追撃を与える。

 

「マジ連続・マジ殴り」

 

 全てをワンパンで葬りさる、暴力の嵐。

 球体状の地球が歪な形となっていき、原型を保てなく、ついには無残に崩壊してしまう。

 

『舐めるなぁぁぁぁぉ!!!!』

 

 余波だけで惑星砕く一撃を、武術の力を借りてなんと凌ぐ。

 次第に足場が無くなり、遂には星そのものが消えていった。

 

(コイツ……1発1発の威力がどんどん強くなっていきやがる!)

 

 何とか隙を狙い突いて、サイタマの腹を殴り飛ばし、今度は全エネルギーを込めた、絶大な一撃を放つ。

 幻影の王の拳に、光と闇がまとわりつく。

 

『神殺・崩星突き』

 

 耳元で爆弾が爆発したような音ともに、ビックバンような衝撃波が広がり。

 その余波だけで、周囲の惑星を粉々に砕いていく。

 サイタマは宇宙空間の中を高速で突き進んでいき、数え切れない星を貫き、推し量れない距離を移動する。

 

「ぐっ!」

 

 吐血。

 口の中に鉄の味が広がり、体の骨がバキバキと折れた音がする。

 だが、何故だろうか。

 不思議と痛みより、懐かしいという感情の方が強い。

 

 サイタマはそのまま目を閉じて、意識を闇の中へと落とした。

 

 


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