双子の姉弟が送る!暗殺教室   作:コミ6目半

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第52課 引率の時間

 

 柊季達はこの時まだ知らなかったが、柊季達が3階の階段を上っているころ、その1個上の階である4階でも動きがあった。

 

 

 「はあ……リゾートホテルまで来て俺は何やってんだろ……」

 

 「しょうがないよ、これもお仕事」

 

 「世間は夏休みに浮かれているころだろうよ」

 

 「夏休みとこれは関係ないでしょ…」

 

 

 女がそう言うと、男はぶつぶつ文句を言いながらも言う。

 

 

 「そういやあいつはどうした?」

 

 「部屋にいるよ」

 

 「……はっ?なんで?」

 

 

 女はフフッと笑いながら男に向かって言った。

 

 

 「荒事はあなたに任せておけばいいって」

 

 「相変わらず、人使いの荒い奴だ」

 

 「そんなこと無いわよ」

 

 

 すると思い出したように男はどこかに電話をかけたが、相手は出なかったようだ。

 

 

 「こっちも電話に出ない、この人は人使い以前の問題だし」

 

 

 なんとなくイライラしている男を見て女はつぶやく。

 

 

 「まあまあ、いざとなったら私も手伝うから」

 

 「いざとなったらじゃなくて、最初から手伝ってくれ、むしろお前主導でやってくれ」

 

 「私、今回のことにできれば関わりたくはないの……」

 

 「俺だってできるものなら、面倒くさいことはごめんだぜ」

 

 「いや、そうじゃなくて……」

 

 

 女は一回憂鬱な顔をした後、にっこり笑って言った。

 

 

 「私、キレると何するかわからないから……」

 

 「………おいおい」

 

 「さて、仕事までまだ少しあるから飲み物でも飲みに行く?」

 

 「バーフロアは……6階か」

 

 「じゃあ、行きましょ」

 

 

 そう言って2人はエレベーターへと乗った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 柊季達が3階に上ったところで、烏間は言う。

 

 

 

 「入り口の厳しい監視を超えれば、ここから客のフリをする事ができる」

 

 「客って、こんなホテルに中学生の団体客なんているんすか?」

 

 

 菅谷の質問に烏間はすぐに答えた。

 

 

「聞いた限りではけっこういる。いわゆる有名人や金持ち連中のボンボンたちだ。そういう子らはあどけない顔で悪い遊びに手を染めている……」

 

 「なんか想像できるな」

 

 

 柊季は苦笑いして言う。

 

 

 「そう、だから皆さんも世の中を舐めた感じで歩きましょう」

 

 

 せんせーの言葉に、寺坂や吉田が凄みを利かせて歩くと、矢田や木村も精一杯悪ぶった顔を作った。

 

 

 「殺せんせーここまでする必要あります?」

 

 「いえいえ、椿季さん念には念を入れなくてはだめですよ」

 

 

 椿季も苦笑いするだけでそれ以上何も言わなかった。

 

 

 「ただし、我々も敵の顔を知りません。くれぐれも注意するように」

 

 

 「「「「「はーい」」」」」

 

 

 その後も客の何人かと接触したが、別に特にこれといって何もなくすれ違うだけだった。

 

 そして3階の中広間に差し掛かった時

 

 寺坂が吉田を率いて烏間より先行していこうと走る。

 

 

 「へっ……余裕じゃねえか。さっさと先行こうぜ」

 

 

 中広間を抜けようとする2人の前には口笛を吹く陽気なおじさんが1人いるだけ……

 

 

 しかし、そいつを後ろのほうから見ていた、柊季と不破が同時に叫ぶ」

 

 

 「「寺坂(寺坂君)!!! そいつ危ない!!!」」

 

 「は?」

 

 

 その叫び声と共に先ほどまで陽気な顔をしていたおじさんの表情は一瞬にして変わりスカーフを口に巻き、噴出式ガスを放った。

 

 烏間がその2人を引っ張り込んだものの、自分はそのガスを浴びてしまう。

 

 

 (っ・・・ガスか)

 

 

 烏間が右足でガスの容器を蹴り飛ばすと、スモッグは舌打ちし、すぐに距離を取った。

 

 

「何故分かった・・・殺気を見せずにすれ違いざまに殺すのがおれの十八番なんだがな? おかっぱちゃん達」

 

 

「ボブヘアーっていうのよ……まあいいわ、だっておじさん、最初にドリンク配ってたホテルの従業員でしょ?」

 

 

 不破の指摘にみんなは、スモッグの顔を見て気付いた。

 

 

 「ほんとだ・・・」

 

 「じゃあ、みんなに毒を持ったのも……」

 

 「おいおい、証拠もなしに断定されちゃあかなわないぜ」

 

 

 スモッグがそう言うと茅野は悔しそうな顔をし黙る。

 

 しかし、柊季が続けていった。 

 

 

 

 「竹林の話じゃあ、皆が感染したのは何かしらの飲食物に入ってたウイルスが原因っていってたからな、そしてみんなが同じの物を口にしたのはあの昼間のドリンクと船上ディナーだけ、でも、映像編集をしていた岡島と三村と岡島は夕食を食べていないということは…」

 

 

 すると柊季と不破は背中合わせにスモッグに向かってビシッと人差し指を立てる。

 

 

 「「犯人はお前だオッサン!(犯人はあなたよおオジサン君!)」」

 

 

 その推理に渚と茅野がすごい!!と感心していると、不破が言う。

 

 

 「やっぱり探偵物はサ〇デーとマガ〇ンの2つが粒ぞろいね!!」

 

 「ジャン〇は!?」

 

 

 渚が突っ込むと、柊季は急にすっとぼけたように言う。

 

 

 「え?ジャン〇の探偵ものってなんかあったか?」

 

 「ああ、この物語の本当の作者のやつで……」

 

 「不破さんそれ以上は色々やばいよ!」

 

 

 いつもなら柊季がツッコムところなのだが、今日は椿季がツッコム。

 

 

 そんなこんなしているうちに烏間が苦しそうに膝間づいた。

 

 

「毒物使いですか、しかもかなり実用的な……貴方がウイルス発明者ですね」

 

「まあな。そいつが今、嗅いだのは俺特製の麻酔ガス。嗅げば象すら一瞬で落とすし、空気に触れるとすぐ分解して証拠も残らねぇ……さて、とりあえずお前らに交渉の意思がないってことは分かった。ボスにとっとと報して……」

 

 

 スモッグがその場を去ろうとした時・・・E組のみんなが退路をすぐにふさいだ。

 

 

 「早い……退路をふさぎやがったか……」

 

 「敵と遭遇した時は退路を断ち連絡を塞ぐのは基本だぜ、オッサン」

 

 

 そう言う柊季に続いて烏間もよろけながら立ち上がり言う。

 

 

「……お前は、我々を見たときにすぐに退散するべきだった」

 

 

 そいうと烏間はすっとスモッグの懐に飛び込み軽く小突いた後、膝蹴りを打ち込み、一瞬でスモッグを吹き飛ばした。

 

 

 あまりにも一瞬の出来事であったが、薄れゆく意識の中で自らの敗北を悟ったスモッグはこう思っていた……

 

 

 

(おっそろしい先生よ・・・だがお前の引率はここまでだ・・・)

 

 

 

 そして、スモッグは意識の糸が切れたように倒れこみ、同時に烏間も力なくその場に座り込んでしまった。

 

 

 「烏間先生!」

 

 

 みんなは駆け付けて烏間を心配するのと同時に、これからのことに不安をよぎらせていた。

 


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