双子の姉弟が送る!暗殺教室   作:コミ6目半

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第51課 潜入の時間

 柊季達はホテルに潜入し、治療薬を強奪するために断崖絶壁を、命綱なしで登っていた。

 

 

 「おーい。みんな早く!置いてくよ!」

 

 「身軽だなぁ、岡野は」

 

 「ああ、こういうことやらせたらクラス1だ」

 

 

 木村と磯貝が岡野の身軽さに感心している一方で…

 

 

 「ちょっと!腕疲れて来たじゃない!早く登んなさいよ!烏間!」

 

 「烏間先生!しっかり持っててくれないと私落ちちゃいますからね!しっかり持ってくださいよ!」

 

 「………」

 

 

 なんだかイライラしている烏間の様子が上のほうで登っている生徒の目に映る。

 

 

 「殺せんせーは交換条件だし一応来るのはともかく、ビッチ先生なんで来てるんだ?」

 

 

 千葉の質問に片岡が答える。

 

 

 「なんかのけ者にされるのは嫌なんだってさ」

 

 「足手まといのならなきゃいいけどな」

 

 「まったくだ」

 

 

 寺坂の意見に柊季もうなずく。

 

 

 

 とりあえず、山頂のホテルまでは転落死することなく全員がたどり着いた。

 

 

 「さて、問題はここからだな……」

 

 「律、侵入ルートの最終確認だ」

 

 「了解しました」

 

 

 律は烏間の携帯電話に内部マップを表示させ、律は説明を始める。

 

 

 「私たちはエレベーターを使用できません、従って階段を上るしかないのですか……その階段もバラバラに配置されており、最上階までは長い距離を歩かなくてはなりません」

 

 「テレビ局みたいな構造だな…」

 

 「どういうこと?」

 

 

 千葉の言葉に茅野は疑問を投げる。

 

 

 「テロリストなんかに占拠されないように複雑な構造になっているらしい」

 

 「へー……詳しいんだね」

 

 「テレビ局が題材になるサスペンスとかだと結構出てくるネタだよ」

 

 「おしゃべりはそこまでだ。潜入するぞ」

 

 「「「「「はい」」」」」

 

 

 烏間の合図とともにホテルの裏口から潜入を開始した。

 

 

 烏間を先頭に裏口からまっすぐ通路を進むと一番最初の関門であるロビーが見えた。

 

 そこには予想より多くの黒服達が辺りをきょろきょろ見回しながら警備を行っていた。

 

 

 「予想以上に警備が多くないですか、烏間先生」

 

 「うん……人数を絞って潜入すべきか」

 

 「それだと上で何かあった時が困りませんか?」

 

 

 烏間や作戦立案が得意な片岡や椿季があれこれ頭を悩ませている中、ビッチ先生は唐突に言う。

 

 

 「なによ、普通に堂々と通ればいいじゃない」

 

 「状況判断もできないのかよビッチ先生!あんなに警備がいるのにさ」

 

 

 キョトンとした顔を明いて言うビッチ先生に菅谷が思わず言った。

 

 しかし、椿季はビッチ先生の格好と近くにあったワインをみて思いつく。

 

 

 「先生、ワイン一杯いかがですか?」

 

 「嵯峨さん!?」

 

 「ありがと、頂くわ」

 

 

 ビッチ先生はそう言うと、椿季に注いでもらったワイングラスを持ちながらフラフラと、黒服達のほうへと歩いて行く。

 

 そしてそのうちの1人とぶつかった

 

 「あっ・・・ごめんなさい。部屋のお酒で悪酔いしちゃったみたいで・・・」

 

 「お・・お気になさらずお客様・・」

 

 

 警備のその顔を見て、ビッチは笑みを浮かべてピアノを指差していった。

 

 

 「私、来週そこのピアノを使って演奏する予定なの・・・酔い覚ましついでに弾かせてもらえる?」

 

 「で・・ではフロントに確認を・・」

 

 

 しかし、ビッチ先生は警備の腕を掴み、その目を見据えて続ける。

 

 

 「あなたたちにも聞いて欲しいの・・・駄目なところがあったら困るから、よーく見てちゃんと審査してくださらない?」

 

 

 

 そしてビッチ先生はピアノの前に座ると妖艶な魅力を音色に変えて、ピアノを奏でていった…

 

 

 その魅力に思わず、みんなも驚く。

 

 「ねえ、そんな遠いところじゃなくてもっと近くで見て」

 

 そう言われて、遠くのほうでうっとり聞いていた警備がピアノの周りに集まっていく。

 

 

 (20分稼いで上げる・・・行きなさい)

 

 

 ビッチ先生がそうハンドサインを出すと、生徒たちは次々に階段を駆け上がっていく。

 

 そして登り切った時に柊季が言った。

 

 「さっきの曲って確か……幻想即興曲じゃなかったか」

 

 「うん。有名な曲だよね、それにすごく難しいし…」

 

 「二人ともすごい詳しいんだね」

 

 

 矢田がそう言うと椿季はにっこりして答える。

 

 

 「前の学校にいた友達で、ピアノがものすごいうまい子がいたんだよ」

 

 「そいつが引くのを俺も椿季に付き合わされて時々聞いてたって言う訳」

 

 「へぇー」

 

 「それにしても、すげーな、ビッチ先生・・・よくやるぜあの爪で」

 

 「普段の彼女から甘く見ないことだ。優れた殺し屋ほど、万に通じる……彼女クラスになれば潜入暗殺に役立つスキルはいくらでも身につけている。キミらに会話術を教えてるのは世界で1,2を争うハニートラップの達人なのだ」

 

 「ヌルフフフ、せんせーがいなくても何も問題はないようですね」

 

 

 この時誰もが改めて知ったプロの大人の技術の威力。

 

 殺せんせーがいなくてもプロ揃いのE組の先生は頼もしいと思っていた。

 

 

 

 

 

 

 しかし、それは相手も同じ………

 

 

 同時刻8階コンサートホール

 

 

 其処には何人かの人がイスに座っていた。

 

 其々の人達が異様な雰囲気を放ってるなか、1人の男が銃を口に加えながら指示を出した。

 

 

 「おいスモッグ、階段ルートの侵入が無いか見回って来い。カメラでは異常は無いが一応な。見つけたら即殺りでいいってよボスが」

 

 「スモッグといったか、こいつは残しといてくれよ。俺のお楽しみなんだから……」

 

 

 そう言いながら男は一枚の写真を投げる。

 

 

 「あんた、何者だ?」

 

 「ははは、まあ、このショーのゲストってとこだ」

 

 「かまうなスモッグ、こいつには好きにさせろって言うボスからの命令だ」

 

 「へいへい」

 

 

 

 スモッグと呼ばれた男は返事をするとコンサートホールを後にした。

 

 

 

 そう柊季達が3階へと歩みを進めていた頃、雇われた殺し屋達もまた動き始めていたのだった。

 

 

 

 

 

 


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