双子の姉弟が送る!暗殺教室   作:コミ6目半

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第50課 奇襲の時間

 

 

 

 

 

 

 柊季が倒れた倉橋を背負ってホテルに飛びこむと、そこのはぐったりした前原、杉野、岡島、三村、村松、原、狭間、神崎、中村が苦しそうに横になっていた。

 

 

 「柊季!陽菜ちゃん!」

 

 

 そういって、椿季は柊季達に駆け寄る。

 

 

 「おい、椿季どうなってんだ」

 

 「わかんないよ!それより陽菜ちゃんを早く安静に」

 

 

 そういって、椿季が倉橋の介抱をしていると烏間先生の携帯電話に非通知設定の着信が入る。

 

 

 そして烏間はその電話に出た。

 

 

 「……やぁ先生 可愛い生徒がずいぶん苦しそうだねぇ」

 

 

 変成器を使って声を変えている声がかすかに聞こえたかと思うと律がその電話をスピーカーに切り替える。

 

 

 「何者だ?」

 

 「俺が何者かなどどうでもいいだろ」

 

 「それならこれは貴様の仕業だな…」

 

 「フフッ、最近の先生は察しがいいな、人工的に作り出したウイルスだ。感染力は弱いが、一度感染したら最後、一週間もすれば全身の細胞がグズグズになって死に至る代物さ。生憎治療薬も一種しかもオリジナルのものしかなくってね。こちらに手持ちがあるから取りに来てくれないか」

 

 「目的はなんだ?」

 

 「山頂のホテルの最上階まで、1時間以内でそこにいる賞金首をもってこい。そいつと交換だ。だが、先生よ、お前は腕が立つそうだな。だから今動ける中の生徒から最も背が低い男女を2人で持ってこさせろ」

 

 

 烏間は、反射的に渚と茅野の2人を見ると2人は烏間の焦った顔に気がつく。

 

 

「フロントにはすでに話は通ってる。言えばすぐだが・・・外部と連絡を取ったり、一時間を少しでも遅れたら即座に治療薬は爆発する。礼を言うよ、よくぞそいつを行動不能までに追い詰めた・・・天は我々の味方のようだ」

 

 

 電話の相手はそう言うと電話をさっさと切ってしまった。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「さて、これからどうしたもんか」

 

 

 柊季がそうつぶやくと、フロントで電話をかけていた烏間の部下の園川が走って駆け寄ってきた。

 

 

 「駄目です、政府として問いかけてもあのホテルはプライバシーを繰り返して・・・」

 

 「やはりか・・・」

 

 「やはりとは?」

 

 

 殺せんせーが問いかけると、烏間は答えた。

 

 

 「この島は別名「伏魔島」とよばれていて、ここにあるほとんどのホテルはまっとうだが、あの山頂にある普久間殿上ホテルだけは違う。国内外のマフィアやそれらと繋がる財界人が出入りしていて、違法取引やドラッグパーティーを連日としているらしい、かといって政府のお偉いさんともパイプがあり、うかつに手はだせない」

 

 

 「なるほど、そんなホテルがこっちに協力するわけないね」

 

 「そうだね…」

 

 

 カルマの意見に椿季も肯定する。

 

 しかし、寺坂はいらだちを隠せない口調で渚と茅野をたたきながら言った。

 

 「いう事聞くのも危険だぜ。このちんちくりん2人だぞ!!逆に人質増やすもんだろうが!!」

 

 

 茅野は若干キレ気味だが、寺坂はさらに言う。

 

 「第一よ、こんなやり方する奴らがムカつく、人のダチにまで手ぇ掛けやがって……要求なんぞ全シカトしてとっとと都会の病院に運んじまおうぜ!!」

 

 

 しかしその言葉に、竹林が反対した。

 

 

 「もし仮に、人工的に作られたウイルスならそれに対抗できる抗ウイルス薬がどの大病院にもない。いざ運んで、なかったですなんてことになれば患者のリスクを増やすだけだ。対症療法で応急処置はしておくから急いで取引した方が良い」

 

 

 氷を袋に入れつつ言う竹林に寺坂は竹林のいう事を理解して、黙ってしまう。

 

 

 烏間は完全防御形態になった殺せんせーを見て言う。

 

 

 「奴らの狙いはこいつだが」

 

 「渡しに言った生徒を無事に返してくれるかしら」

 

 「渚や茅野を人質にとって何かする可能性のほうが高いですよね」

 

 

 柊季がそう言うと烏間は更に難しい顔をした。

 

 

 そして、みんながあれこれかんがえているそのときだった。

 

 

 「それなら良い提案がありますよ」

 

 「え・・・」

 

 「敵に従いたくないなら、こうするほかありません。ということで、元気な人は汚れても良い服装できて下さい」

 

 

 

 

 そして俺は殺せんせーに言われた通り着替えて再びテラスまで出てきた。どうやら俺は一番乗りらしい。

 

 

 「あの…嵯峨君」

 

 「ああ、奥田か。どうした?」

 

 「そ、その、倉橋さんが呼んでます」

 

 

 奥田にそう言われて辛そうに横たわっている倉橋に柊季は近寄った。

 

 すると倉橋は重い体を何とか起こそうとする。

 

 

 「おい、陽菜乃。だめだろ、安静にしてなきゃ」

 

 「ひ、柊季……」

 

 

 倉橋のさっきより力のない声に柊季は思わず拳を強く握った。

 

 

 「ねぇ、柊季……お願いだから無茶だけはしないで……」

 

 「お前、今は人の心配している場合じゃ……」

 

 

 柊季はそう言いかけたが、倉橋は割り込んでしゃべる。

 

 

 「さっき、柊季もつっちゃんもすごい怖い顔してた。私、二人にそんな顔してほしくないよ……」

 

 「陽菜乃……」

 

 「だからお願い……二人とも無茶だけはしないで……私のわがまま聞いてくれない?」

 

 

 倉橋はそういって笑顔を作る。柊季の言うように高熱で人の心配ができるような時ではないのにもかかわらず…

 

 そんな痛々しい倉橋を見て、柊季は倉橋の頭を撫でて言う。

 

 

 「わかった。椿季も俺も薬を持って無事に帰ってくる。だから陽菜乃ももう少し頑張っててくれ」

 

 「うん…分かった……」

 

 

 倉橋はそう言うと目をつぶって眠りに落ちた。

 

 

 倉橋が寝るのを確認すると柊季も立ち上がりみんなのほうに向かう。倉橋を助けたいと一心に思いながら…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 柊季達は三台ほどの車に分かれて乗車すると例のホテルの真下の道でにおろされた。

 

 

 

 「あのホテルのコンピュータに浸入して内部の図面を入手しました。警備の配置図も」

 

 

 そう言うと皆のスマホにホテルの図面が表示されていて更に警備の配置も事細かに載っていた。

 

 

 「正面玄関と敷地一帯には大量の警備が置かれています。フロントを通らずホテルに入るのはまず不可能。ただ1つ、この崖を登った所に通用口が1つあります。まず侵入不可能な地形ゆえ……警備も配置されていないようです」

 

 

 「敵の意のままになりたくないなら手段は1つ。患者10人と看病に残した2人を除き、動ける生徒全員でここから侵入し最上階を奇襲して治療薬を奪い取るのです」

 

 「なるほどな」

 

 

 柊季は殺せんせーの案を聞いて苦笑いしながら、高い高い崖を見つめていた。

 

 そして烏間もそれを見たうえで言う。

 

 

 「危険すぎる。この手慣れた脅迫の手口、敵は明らかにプロの者だ」

 

 

 「ええ、確かに素直に私を渡した方が賢明かもしれません。しかし全ては君達と、指揮官の烏間先生次第ではないですか?」

 

 

 烏間は少し考え込んだがビッチ先生も言う。

 

 「そんなこと言ったってこの崖よ。たどり着く前に転落死よ」

 

 「転落死?問題はそこじゃないでしょ…ビッチ先生」

 

 「?」

 

 

 柊季の言葉を聞いてもう一度崖を見ると生徒が次々に楽々と崖を登っていく。

 

 ビッチ先生や烏間はそれを見てただただ驚いていた。

 

 

 「授業でクライミングはやったんでこの崖だけならどうとでもなる」

 

 「でも、道の敵との戦闘やそれを指揮するのは私たちだけでは無理があります」

 

 「だから、烏間先生。指揮お願いできますよね」

 

 

 柊季、椿季、磯貝がそう言うと殺せんせーも言う。

 

 

 「ここにいるのはただのひ弱な中学生ではない。あなたには今17人の精鋭部隊がいるんですよ」

 

 

 すると烏間は目を一回閉じ、今度は決心したように言う。

 

 

  

 「注目!!目標、山頂ホテル最上階!!隠密潜入から奇襲への連続ミッションだ!!ハンドサインや連携については訓練のものをそのまま使う!!いつもと違うのはターゲットのみ!!3分でマップを叩き込め!!19時50分に作戦開始!!」

 

 

 「「「「「おう!」」」」」

 

 

 

 こうして柊季達の潜入ミッションはスタートした。

 

 


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