双子の姉弟が送る!暗殺教室   作:コミ6目半

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 今回は椿季のお話です。

 オリジナルですが楽しんでいただけたら幸いです。


第45課 優しさの時間

夏休みのとある1日。夏休みといえばダラダラする人も多いが嵯峨椿季の朝は基本いつもと変わらない。

 

朝6時前に起きて、朝食の用意をし決まった時間に弟の柊季を起こす。

 

 

「ほら、起きて、柊季。早く起きてご飯食べないと陽菜ちゃん来ちゃうよ」

 

「ん……どうして陽菜乃がこんな朝早く来るんだよ…」

 

「昨日虫取りに行く約束したでしょ、なんのために夕方の裏山まで行って私まで、トラップ仕掛けたと思ってんの?」

 

「あーそうだった」

 

 

椿季には案外苦手なものが多い。その一つが虫である。椿季自身、多分虫取りに行ってもカブトムシやクワガタに触れる気がしないと思ったので、今回は柊季だけが倉橋と一緒に虫取りに行く。

 

 

すると、柊季はだるそうに起きて洗面所に向かった。

 

その後2人で朝食を食べ、9時半頃に倉橋が家に来て、柊季は出かけて行った。

 

 

「さて、私はなにしようかな」

 

 

普段学校に行っているこの時間、普段の土日休日なら平日にできない家事に追われることも多いし、夏休みでも、前の学校ではソフトボール部の練習に行ったりもしていたのだけれど、部活禁止のE組で夏休みともなると椿季にとっては案外暇を持て余すだけであった。

 

 

「しょうがない、とりあえず宿題でもしよう」

 

 

そう言って椿季は宿題に手をつけ始める。夏休みの宿題は殺せんせーが一人一人のレベルに合わせて作ってあるので期末テスト学年2位の椿季と言ってもそう易々とは終わらない。

 

 

「うーん…ここはこうかな」

 

 

椿季は数学の問題に苦戦し、かれこれ2時間近く考えていた。

 

するとその時携帯からポンと電子音が鳴った。

 

 

「うん?柊季からかな?」

 

 携帯を開いてみるとL〇NEには倉橋と柊季それからなぜか渚と杉野がたくさん昆虫を捕まえている写真と「昼はみんなと食べてくる」という短い一文が添えられていた。

 

 

 「え!?お昼?」

 

 

 椿季は慌てて時計を見ると時計の針は正午をとっくに回っていた。

 

 

 「ふぅ、もうこんな時間、柊季が食べてくるんじゃあ、私も簡単に何か済ませようかな」

 

 

 そう言って、階段を下りキッチンで何かを作ろうと冷蔵庫を開けて気づく。

 

 

 「あれ?何にもない?」

 

 

 そこで椿季は初めて買い物だけには行ってなかったことを思い出し、買い物ついでにどこかで食べてくることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ニンジン、シイタケ、キャベツ、…」

 

 

 椿季はメモを見ながら買い忘れがないか調べていた。

 

 

 「ねえ、ママ!今晩はオムライスがいいな」

 

 

 その一言に思わず椿季はその声のほうを向いた。小学校中学年くらいの女の子がお母さんと仲良く買い物をしている光景が椿季の目に映る。

 

 

 「オムライス?そうねぇ、じゃあそうしようかしら」

 

 「本当?やった!」

 

 「あなた、本当オムライス好きね」

 

 「うん」

 

 

 そんな親子の光景を見た椿季はどこか懐かしくまた寂しい気持ちになっていた。

 

 

 「いけない、いけない。まだ買い忘れたものがあったんだった」

 

 

 椿季は左右に軽く首を振り、買い忘れたものを探してスーパーを出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「結構たくさん買ったな…」

 

 

 重いトートバックを持ちながら椿季はどこかでお昼を済ませようと考えていた。

 

 するといつもは気にも留めなていなかったにとある喫茶店に目が留まった。

 

 レトロで落ち着いた雰囲気の喫茶店だったが椿季の目に留まったのは…

 

 

 「特製のハニートーストか…そう言えば最近食べてないな……」

 

 

 ハニートーストがご飯になるかは微妙なところであったが、時間が3時をまわっていたこともあり椿季はご飯代わりにおやつとしてハニートーストを食べることにした。

 

 

 「いらっしゃいませ、おひとり様ですか?」

 

 「……あ、はい」

 

 「窓際の席にどうぞ」

 

 

 そう言われて椿季は窓際の席に座りぼーっとさっきの光景を思い出していた。

 

 鷹岡の事件があって以来、彼女の母親を思い出すことがなんとなく増えた。それでも前よりも自分自身に憤りを感じたり、責任感に押しつぶされそうになったりすることは少なくなったが、それでもまだ、寂しさだけはさっきのような光景を見るとこみ上げてしまう。

 

 

 

 「いらっしゃいませ、ご注文は何にしますか?」

 

 

 ウエイターにそう言われ椿季はふと我に返り、慌ててさっき店先で見たハニートーストを注文しようとしたが、

 

 

 (あれ、今の声どっかで…)

 

 

 そう思いウエイターの顔を見てみると、そこにいたのは...

 

 

 「あれ、磯貝君?」

 

 「やあ、嵯峨さん。こんにちは」

 

 

 磯貝はいつも学校で交わすようにあいさつした。

 

 椿季はいろいろ聞きたいことがあったが、とりあえずハニートーストとカフェラテを頼み、数分すると磯貝はそれらを持ってまたやってきた。

 

 

 「お待たせました。ハニートーストとカフェラテです」

 

 「ありがとう」

 

 

 そう言いつつも椿季は質問する。

 

 

 「磯貝君ここでバイトしてるの?」

 

 「うん」

 

 「でも、この学校バイト禁止なんじゃ…」

 

 

 椿季がそう言うと磯貝は若干苦い顔をしていた。

 

 

 「まあ、そうなんだけど、うち母子家庭でさ。少しでも家計の助けになればと思って…」

 

 「なるほど…」

 

 「だから嵯峨さんこのことは…」

 

 「あ、うん。大丈夫だよ言いふらしたりしないから」

 

 

 

 そう言うと椿季はハニートーストに手を付ける。

 

 

 「うーん!美味しい!!甘さもちょうどいいし、パンもふわふわ!」

 

 

 椿季の甘いものを食べている時のしあを見て磯貝が思わず笑う。

 

 

 「おいしそうに食べるね、嵯峨さん」

 

 「私甘いものには目がないんだ」

 

 

 そういって椿季は目をキラキラ輝かせて、またハニートーストを一口食べカフェラテを飲み、頷いてまたハニートーストを一口食べる。

 

 甘いものを食べているこの時間は椿季にとって、とても幸せなものであった。

 

 

 「ふぅ…ごちそうさま」

 

 「嵯峨さん、出がらしだけど、紅茶一杯どう?」

 

 「うん」

 

 

 磯貝がそう言うと椿季は「じゃあお願い」と言い、紅茶を入れてもらい、一口飲む。

 

 

 「うん。紅茶もおいしい」

 

 「嵯峨さん。もしよかったら、俺あと少しで上がるから一緒に帰らない?」

 

 「うん、分かった。待ってるね」

 

 

 そう言って椿季は紅茶を飲みながら、20分ほど磯貝のバイトが終わるまで待っていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ごめん、嵯峨さん。お待たせ」

 

 

 そういって、奥の方から普段着を来た磯貝が出てきた。

 

 

 「よしじゃあ、帰ろっか」 

 

 

 そう言って椿季はトートバックを持つ。

 

 

 「トートバック重そうだね、俺持つよ」

 

 「え、いいよ、磯貝君バイト上がりで疲れているだろうし」

 

 「ううん、大丈夫だよ」

 

 

 そう言うと磯貝はトートバックを持ち二人は店を出て行く。

 

 

 

 喫茶店を出て少しすると磯貝は椿季に尋ねた。

 

 

 「ねえ、嵯峨さん」

 

 「ん?何?」

 

 「いや、さっき何考えてたのかなって」

 

 「さっき?」

 

 「嵯峨さん、最初は俺に気付いてなかったし、窓の外をぼーっと見てたから何か悩み事でもあるのかなって思ってさ」

 

 「はは…磯貝君は鋭いね」

 

 

 椿季はそう言って笑いながら話す。

 

 

 「さっき、スーパーで買い物をしてた時にね仲のいい親子を見たんだ。そしたらなんだか昔のことを思い出しちゃってさ」

 

 「嵯峨さんのお母さんのこと?」

 

 「うん。普段はそんなことないんだけど、今日みたいな光景みると思いだしちゃうんだ」

 

 

 椿季がどこか遠いところを見ながらそう言うと磯貝は聞いた。

 

 

 「嵯峨さん、やっぱり柊季と二人の生活は寂しい?」

 

 「……」

 

 

 椿季は何も言わなかった。いつもなら、そんなことないよという言葉が出てくるはずなのにどうしてもこの時はその言葉が出てこなかった。

 

 そんな椿季を磯貝がみてまた言う。

 

 

 「俺の父さんもさ、2年前に交通事故で死んだんだ」

 

 「えっ…」

 

 

 そう言われて椿季はさっき磯貝が母子家庭だといっていたことを思い出す。

 

 

 「いい父さんだったから、死んだ時とすごい悲しかったし、うち貧乏だったから明日からどうしたらいいかすげー困った。母さんも働いてたけど昔から体が弱くってさ」

 

 「磯貝君も色々大変だったんだね…」

 

 「俺はそれでも嵯峨さん達に比べたら全然だと思うけどね。俺も結構母さんに頼っちゃうこともあるし」

 

 

 椿季はここで磯貝にふと聞いた。

 

 

 「ねえ、磯貝君。磯貝君はお父さんのこと思い出したりしない?」

 

 

 すると、磯貝はちょっと考えてこう言った。

 

 

 「思い出さないって言ったら、嘘になるかな。でも、父さんが死んだ後もいろんな人が俺を支えてくれたし、前原とかも変に同情せずに普通に付き合ってくれたし、相談とかもできたから…」

 

 

 そう言って磯貝は椿季を見てこう言った。

 

 

 「だから前に倉橋も言ってたけど、なんか困ったことがあったら俺らに言ってよ、俺もみんなが俺にやってくれたように嵯峨さんの力になるからさ」

 

 

 磯貝ももちろんだが3年E組のみんなは弱さというものを知っている分優しい人たちばかりだ、だからこそ椿季は彼らが好きだし、彼らの優しさが嬉しい。

 

だからこの時、椿季も笑顔で言う。

 

 

「ありがとう」

 

 

そういう椿季の顔はどこか安心したような優しいものだった。

 

 

 

 

 

 






 アニメのほうはいよいよ佳境ですね。

 最近は本当亀更新ですが楽しんでいただけたら幸いです。

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