月曜日。遂に結果がわかる日がやってくる。
「みなさん、すべての科目の試験問題が帰ってきました、それでは発表します」
殺せんせーのその言葉にE組のだれもが息を飲む。
「まずは英語から、E組1位!そして学年でも1位!……中村莉桜‼︎」
「へっへー、どうよ!」
クラスの中からはおーという声が漏れ、1位の中村は得意げであった。
「君のやる気はムラっ気があるので心配しました」
「そりゃあ、なんせ100億かかってから、触手一本忘れないでよ」
「もちろんです」
そういうと、殺せんせーは他の生徒にも返していく、
「今回の英語2位は浅野君の99点ですが、椿季さんも同点で2位タイです。他のみなさんもよくできていましたよ、椿季さん英作文はもう少し簡単な構文を中心に書くことを心がけるべきですね」
「ははは、すいません」
他にも渚が学年6位、意外なところだと英語の苦手な柊季が学年12位だった。
殺せんせーは触手一本に破壊予約済みと書かれた旗を立てて話を続ける。
「さて、続いて国語、国語のE組1位は神崎有希子!……だがしかし、学年1位はA組浅野学秀!」
「うーん、やられたか…」
「さすが、全国模試1位、その肩書きは伊達じゃないってことか」
「そうですねぇ、でも神崎さんも大躍進です。十分ですよ」
そういって、国語の試験もマッハで配られる。一位は取れなかったもののクラス全体としては平均点も上がっていた。
「さて、1勝1敗で迎える次の科目は数学です。今回の科目の中では一番難しかったですねぇ、そして学年一位は浅野君、なんと満点でした…」
「うわ、あれが満点……」
柊季は思わず声を漏らす。
「これで1勝2敗か…」
「うー…負けちゃう…」
クラスの中が重い空気になる中、殺せんせーは触手を振りながら言う。
「いえ、せんせーの話はまだ終わってません、E組1位は嵯峨椿季さん、そして彼女もなんと!満点です!」
「ということは…」
「ええ、数学は引き分けですね」
「「「「「紛らわしい言い方するな!!」」」」」
クラスの全員が大声でそうツッコむ。
「だって、その方が盛り上がるし、いいと思って」
「今この緊張状態でそれやれば批判の的でしょ、そりゃぁ」
柊季の言葉にクラスの全員が頷く。
「まあ、いいです。次の科目に行きましょう。理科です。理科のE組1位は奥田愛美さん、そして学年1位は………………………素晴らしい!学年1位も奥田愛美!」
「よっしゃ!これで触手三本!しかも負けはなくなった!」
「やった!!」
倉橋がそう喜んでいる中柊季がふと思いついたように言う。
「そういえば、A組との勝負は引き分けの場合どういう話になってるの?」
「そういえば…」
「その時はお流れってことでいいんじゃね?」
「そんな適当な」
柊季の適当な意見にツッコミを入れる椿季。
「それでは最後の科目社会です。マニアックな問題が多かった社会。E組1位は嵯峨柊季君、そして、学年1位は……素晴らしい!浅野君を抑えて学年トップです」
「ということは」
「3勝1敗1分で、E組の勝利です!皆さん!よく頑張りました」
「「「よっしゃ!!」」」
クラスみんなが立ち上がり、ガッツポーズをしたり、ハイタッチをして喜ぶ。
しかし、柊季は気付いていたその輪の中には赤羽カルマはいなったことに。
E組みんなが勝利の余韻に浸っているころ、カルマは木陰で自分の成績を見て歯ぎしりしていた。
「さすがにA組は強い、総合1位は浅野君、2位に椿季さん、7位片岡さん、竹林君。9位に柊季君。トップ10には4人入りましたがまだまだA組が多いですね」
「……何が言いたいわけ?」
「余裕で勝つ俺かっこいいと思ってたでしょ?恥ずかしいですね~」
殺せんせーの言葉にカルマは図星をつかれ、顔をしかめる。
「先生の触手を破壊する権利を今回得たのは、中村さん、奥田さん、椿季さん、柊季君の4名暗殺においてもかけにおいても今回君は何の役に立たなかったんです。これで分かったでしょう」
殺せんせーは顔色を縞々に変えてカルマの頭を触手でつつきながら言う。
「やるべき時にやるべきことをできなかった者はこの教室では存在感を失う、刃を研ぐことを怠った君は暗殺者ではない、さびた刃を自慢げに掲げたただのガキです」
「チッ!」
カルマは触手を手で払いのけまたどっかに行ってしまった。
「盗み聞きはあまりいい趣味とは言えませんね、柊季君」
「やっぱり、気付いてたのか」
柊季はカルマが寄りかかっていた木より少しと遠くの木の上に身を潜めていた。
「ヌルフフフ、君は気配を消すのがこのクラスの中で誰よりもうまいですが、先生を騙すにはまだまだですねぇ」
「それより先生、あそこまで言っちゃっていいの?」
「ええ、立ち直りの早い方に挫折させましたから……」
「立ち直りの早い方?」
柊季は殺せんせーの言葉を復唱する。
「柊季君、君の学校はここの学校には負けない超有名私立でしたね」
「ええ、まあ、そう言われてるらしいね」
「なら君も見てきたはずです。才能がある人間とはどんな人物かを」
「……」
柊季は黙っていたが、殺せんせーは続けた。
「才能というものは確かにあるとせんせーは思います。しかし、才能ある人間はえてして未熟者です。本気にならなくても勝負に勝ってしまうがために、本当の勝負を知らずに育ってしまう、大きな才能は「負ける悔しさ」を早く知れば大きく育つのです」
「ふーん」
「柊季君、君もですよ」
「ん?どういうことですか?」
「誰にだって才能はありますし、向き不向きがあります。君のお姉さん椿季さんもまた大きな才能を持っている。彼女の性格からしてすべてのことに真面目にコツコツやるし、驕ることなく努力できる。そしてそれが結果につながるのは大きな才能といえるでしょう」
殺せんせーはそういうと、柊季のほうを向いて行く。
「君も同じです、今回のテストも君はよく頑張っていました。お姉さんに勝つべくいろいろやっていたのもせんせーは知っています」
「……」
「君ももし、お姉さんに勝ちたいと思うならその悔しさを是非覚えていてください。今までのようにだめだからといって投げだすのではなく、次こそと食らいつく力こそ君を成長させてくれますよ」
「でも、せんせー、俺には…」
柊季が言いかけるのを殺せんせーは止め、首を横に振った。
「君とせんせーの関係はここにきて数か月ですがそれでもわかることがあります。そして、今せんせーが君に言えることは、今まで周りが君たちを比較してきた時、周りの人が君に向けてきた冷ややかな目線を力に変える才能が君にはある。ただそれだけです」
殺せんせーはそういうとその場から立ち去った。
「俺の才能か…」
柊季はただそう言い、殺せんせーの言葉を一人考えるのだった。