双子の姉弟が送る!暗殺教室   作:コミ6目半

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第41課 エースの時間

その日の本校舎はいつもと少し違った。

 

 

「悪い浅野、くだらんかけだと思ったが、生意気にも奴らが突っかかってきたんで、つい…」

 

「いいんじゃないか?その方がA組にも緊張感が出るし、勉強もはかどるだろ」

 

 

浅野のその言葉に安堵の表情を浮かべる五英傑の面々。

 

「ただ、後でごねられるのも面倒だから、ルールは明白にしておこう、下せる命令は一個だけ、内容は試験終了後に発表すると、クラス委員の磯貝にでも伝えといてくれ」

 

「わかった」

 

そう言うと、クラスの一人が磯貝に対してメールを打ち始めた。

 

 

「それで浅野、こちらの命令はどうするんだ?」

 

「心配するな、考えてある」

 

そういうと浅野はノートパソコンを使いものすごい勢いで、文字を打ち始めた。

 

 

「この協定書に同意する、その一つだけ」

 

 

浅野が見せた文章にはE組がA組に従属を誓う50項にわたる誓約書だった。

 

 

「これを今一瞬で思いついたのかい君は、恐ろしい人だね」

 

「恐ろしい?とんでもない……民法はこれでもあらかた押さえてあるんだ、いざとなったら人を壊す契約だって、容易さ」

 

浅野のその言葉に五英傑もぞっとした顔をする。これまでに恐ろしい男は顔が広いと言われる彼らでさえ、多分この先一生会うことはないだろう。

 

そして、浅野はクラス全体に対して言う。

 

 

「みんな、僕が言いたいのは何事も全力でやることが大切だということだ、E組だからといって舐めてかかっていいわけじゃない、やるからには精一杯やる、そんな姿がこの学校を照らす僕らの使命なんじゃないかな」

 

「「「「「おー!!」」」」」

 

士気を高める浅野に対して、このとき瀬尾は思った。

 

 

(こいつの言うことは綺麗事だ、それはみんなわかっているのにこいつについていく。圧倒的エースの素質、この学校でやつにかなうやつなんているわけがない)

 

 

 

A組が浅野によって士気を高められていた頃E組でもA組との対戦の話で持ちきりだった。

 

 

「勝ったらなんでも一つかぁ、学食の使用権とか欲しいな」

 

「学食か、俺はA組の予算でエアコン買って欲しいわぁ、これ冬場は寒いってオチだろ」

 

倉橋と柊季がそんな話をしていると、カルマが指摘する。

 

「のんきだね柊季は、向こうは絶対なんか企んでるっていうのに」

 

「俺もそうは思うけど、それを今考えてもしょうがねーからな」

 

「柊季くんのいうことはもっともです、それより賭けの件ですが、これを寄越せというのはどうでしょう」

 

「それって…」

 

殺せんせーが持っていたのは学校案内だった。しかし、その中身に書かれていたのは…

 

 

「「「「「うわぁー!」」」」」

「へーそんなものあったんだ、いいね」

 

「ヌルフフフ、せんせーの触手にこれ、ご褒美は全て揃いました。後は、皆さんがトップを取るだけですよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、数日が経ち、ついに試験の日がやってくる。

 

「陽菜ちゃん、調子はどう?」

 

「うん、2人にいっぱい教えてもらったし、頑張るよ、そういえば柊季は」

 

「ああ、忘れ物したって一回家に帰った…」

 

「はは、しょうがないなぁ」

 

 

今頃走って学校に向かってるだろう柊季が二人の目には浮かぶ。

 

 

「さて、少し早めに来たし、私達が一番かな」

 

 

そういって椿季は引き戸を引いたが、教室にはすでに一人の生徒がいた。

 

 

「え、ここで合ってるよね?」

 

「う、うん」

 

 

椿季は確認し直すがやっぱり試験会場はあっている。

 

 

「だれだろ、あれ」

 

 「律役だ」

 

 「「烏間先生」」

「さすがに人工知能参加は許されなくてな。律が教えた替え玉で手を打った。君たちに分かるか?交渉の時理事長に「ああ、こいつも大変だなぁ…」 という目で見られた俺の気持ちが」

 

 「「ホント頭が下がります!!」」

 

烏間先生は一回ため息をついて、言直す。

 

 「律と合わせて俺からも。頑張れよ」

 

 「はい」

 

 「やってきます!」

 

 

 

 

 

本来1人で受けるはずの試験、でも今はいろんな人が同じ舞台にいるのを感じる。

 

会場となっている教室、見るからに難しそうな問題、真剣な顔をするクラスメイト、

 

様々な思惑の交錯した今回の期末試験。いろんな思いを乗せ試験が今…

 

 

「それでは始めなさい」

 

 

始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1科目目、英語。

 

 

 

 

ミノタウルスのような問スターは中間試験より確実に早く、強かった。

 

 

「前より、強いし、早くなってない?」

 

「まあ、それだけ先生たちも凝って作ったってことでしょ!」

 

 

椿季はハンマーを降り、問スターを倒すと、花丸が浮かび上がってくる、

 

 

「さすが、つっちゃん」

「陽菜ちゃんも頑張って!」

 

「うん」

 

 

一方で、

 

 

「よっと、ほっと、あ、あぶねぇ」

 

「おい、柊季!遊んでねーではやくそれ倒せよ!」

 

「はあ?そういうお前が早くやれ!岡島!」

 

「二人とも…なにやってんの?」

 

「ああ、ちょうどいい、片岡こいつ頼む」

 

「真面目にやりなさい!」

 

片岡はそういって、岡島と柊季にハンマーを振る。

 

「うわっ、そんな危ないもんを俺らに振り回すな!」

 

 

 

その頃、五英傑の瀬尾は最終問題に取り組んでいた。

 

 

 「これが最終問題か」

 

 

周りの一般生徒たちは他の問題と比べものにならない最終問題の強さに、太刀打ちできていない。

 

 

「ふっ、雑魚どもが、俺は一年親の都合でLAにいた、今更中学レベルでつまずくかよ!」

 

 

  瀬尾の答えにモンスターは苦しそうに声を上げるが、倒れることは無かった。

 

  

  「うそだろ、満点解答の見本だぞ」

 

 

  すると瀬尾の横をすっと飛び出す生徒が一人。

 

 

  「お堅いねぇ、力抜こうぜ優等生!!」

 

  

  そう言って中村は問スターの眉間のあたりに軽い一撃を叩き込むと、モンスターは爆散し、花丸が浮かびあがる。

 

 

  「満点解答だと、E組ごときが?」

 

  

 その後、渚、椿季も問スターを倒していく。

 

 

  「よし」

 

  「ふぅ…これで最後か…」

 

  「な、なんで」

 

 

 唖然とする瀬尾に中村は言った。

 

 

  「多分読んでないっしょ、サリンジャーのライ麦畑で捕まえて」

 

  「!!」

 

 その時、瀬尾は思い出す。その本が英語の教師さりげなく勧めていた本であったことを。

 

 

  「なんでお前らが…」

 

  「瀬尾くんにはいなかったからじゃない?熱心に本を進めてくれるタコとかさ」

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

  2科目目 理科

 

 

  

 柊季はSF風の甲冑を着たモンスターを次々に倒していく。

 

 

 「今回の範囲は化学と生物だったから、色々と助かったな」

 

 

 化学は奥田や椿季の、生物は倉橋に今回教わった。

 

 

 「えーっと、メンデルの遺伝の法則を発見するきっかけの植物は…エンドウか」

 

 「キシシシシ、何をちまちまやってんだ、これだからE組は…」

 

 

 小山はそう言うと一気に装甲をはがしにかかった。

 

 しかし、ほとんどが丸となって消えていくが、頭の装甲が剥がれ落ちていない。

 

 

 「何?ちゃんと暗記したはずなのに」

 

 「あーあ、一番大事なとこ残しちゃって、これはっと」

 

 

  柊季は奥田が言っていた理屈に当てはめて考える。

 

 

 「ボルタ電池が充電できないのは電圧をかけただけでは、正極反応で、水素ガスが散ってしまうからかな」

 

 

 すると、SF風の甲冑はすべて剥がれ落ち問スターは消える。

 

 

「何⁉︎」

 

 

 「よしよし、次は…」

 

 

 柊季は次の生物の論述問題も満点の解答を重ねていった。

 

 

 

 

 

 

 

  

 

3科目目  社会

 

 

 

 「しまった、アフリカ開発会議の首相の会談の回数なんて覚えてねーよ」

 

 

 社会の問スターである多脚型の戦車はランダムな砲撃をしていた。社会はマニアックな問題が多い分、問題によっては社会が得意な人でもできないということは多い。

 

 けれども…

 

 

 「ふぅ…一応覚えておいて正解だった」

 

 「まあ、教科書に書いてあったし」

 

 

 柊季と磯貝は正解だった。

 

 

 「磯貝、嵯峨、貴様ら……」

 

 「あ、荒木が死んでる」

 

 「死んでない!!」

 

 

 問スターの砲撃を受けて地面に伏せっている荒木に柊季が言う。

 

 

 「まあいいけど、そこで瀕死状態の情けないA組の荒木君にぴったりの問題があそこで待ってるから早く行ってあげなよ」

 

 

 柊季がニヤニヤして指差す先にいたのは今回の社会で最難問である論述問題。

 

 

 問50 18世紀以降、江戸幕府における農村、農民政策の展開を順に論ぜよ

 

 

 「大切なのは物事のもたらした変化の大きさだっけ?じゃあ、この問題わかるよね?だって、ほら」

 

 

 そう言うと、椿季が日本刀で問50のモンスターを真っ二つに切り裂いていた。

 

 

 「君がバカにした7番は楽々解いちゃってるよ」

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

  4科目 国語

 

 

 

 国語の鎧武者は日本刀を振り回して襲い掛かっている。

 

 

 「玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば忍ることの弱りもぞする」

 

 「恋すてふ我が名はまだき立にけり人知れずこそ思いそめしか」

 

 

 矢田と倉橋が和歌の問題で満点を取っていく。

 

 

 「やった」

 

 

 「まさか、こんなところで役に立つとはね」

 

 

 椿季は二人を見ながら感心をする。

 

 実は椿季の班は修学旅行で時雨殿という百人一首の博物館に行っていたのだ。

 

 

 

 「うん。修学旅行でやったことが生きてくるとは思わなかった」

 

 「あっちでは神崎ちゃんがやってるね」

 

 

 神崎も和歌の問題をかたずけ、一安堵していた。

 

 

 

 

 「ふふ、顔だけでなく言葉も美しいね君は」

 

 「おいおい、お前に女口説いてる暇はねーだろ、榊原」

 

 「何?」

 

 

 柊季は持っている槍をぐるぐる振り回して花吹雪を起こし、周りにいる鎧武者を次々倒してく。

 

 

 「五英傑ならこれくらいやんないと」

 

 「くっ。しかし、ただ一片の会心の回答では試験の勝負は決まらないよ」

 

 

 そうA組には総合力の怪物がいるのだから…

 

 

 

  

 

 

5科目目 数学

 

 

 実は今回の期末試験、この数学が一番の問題だった。進学校ということもあり、英数理はすでに高校範囲を履修しているのだが、

 

 「うーん、この問題どうしようかな」

 

 椿季は考える。

 

 「まあ、やるしかないか…」

 

 そう言って、椿季はペンを走らせた。

 

 

 

 

 そしてみんなが真剣に問題と戦っている中、カルマはその様子を見て思う。

 

 

 (あーあ、みんな真剣になっちゃって、勝つってそう言うんじゃないんだよね。通常運転でサラっと勝ってこその完全勝利。正しい勝ち方、皆に教えてやるよ)

 

 

 

 

 

 

  こうして試験が終わり、土日を挟んで月曜日遂に試験が帰ってきた

 

 


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