風邪をひいて少し遅れました……
過去篇は前後編です。
オリジナルストーリーでは結構大事な話ですね…
うまく書けてるかは微妙ですが楽しんでいただけたらと思います。
皆さんも風邪には気を付けてくださいねw
私が目を覚ますと、空はもうすっかり暗くなっていた。
「うっ…痛っー」
私は思わずお腹を押さえる。
「そりゃあ、痛いだろうよ、屈強な軍人に警棒で腹殴られて、蹴とばされたんだから」
「!!」
隣では頭に包帯を巻いた柊季が椅子に座っていた。
「やっぱり、風邪は嘘だったんだな」
「…………うん」
「ずる休みなんてお前らしくないな」
「……」
私は何となくきまりが悪くて、思わずさっきから気になっていたことを聞いた。
「それでどうなったの?鷹岡先生との勝負」
「鷹岡か?首になったよ、渚がナイフを当てたんだ」
私はちょっとほっとした態度を取る。
「そう、渚君……すごいな」
「そうだな、きっとあいつには暗殺の才能があるよ」
私は、何も言わずに下を向くと、今度は足元で寝息がたっていることに気付く。
「すぅー……」「すぅ……」
「桃花ちゃん?陽菜ちゃん?」
二人は椅子に座って、私のベットに顔を預けながら寝ている。
「あとでお礼言っとけよ、ずーっとつきっきりで看病してたんだ、その二人。あと片岡と速水も心配してたけど、今日は遅いから帰ってもらった」
「そっか…」
「ああ」
私はベットの上で寝ている二人の寝顔を見て思った。
「ねぇ柊季…」
「なんだよ」
「私、また、何もできなかったよ…」
「……」
「あの時と同じ…」
私の目には涙があふれていた。悔しい、そんな気持ちが私を苛む。
「椿季ちゃん?」「つっちゃん?」
「!!」
気付くと二人が起きていた。私は急いで涙をふく。
「大丈夫?椿季ちゃん!」
「どこか痛いの?」
「ううん、大丈夫だよ」
「でも泣いて…」
心配そうな二人を見て私は大丈夫だから、と二人を落ちつかせる。
でも、二人を何とか落ち着かせたところで、陽菜ちゃんは申し訳なさそうな顔をして私に聞いてきた。
「ねぇ、つっちゃん。よかったら話してくれない?、柊季とつっちゃんのお母さんのこと…」
「それは……」
私は少し黙り込んだ。この期に及んでもできれば話したくはない、そう思う。
そんなことを考えていると、保健室の扉を開き、殺せんせーが入ってきた。
「起きましたか、椿季さん」
「殺せんせー…」
「今回はずいぶん無茶をしましたね」
「……」
「君の過去について、せんせーが話しなさいとは言えません、でも、あなたは一人じゃない、あなたを心配してくれる弟さんやクラスのみんなが、いることを忘れてはいけませんよ」
「……」
私はそれでもなお少し悩んだけど、こうなってしまった以上は話した方がいいと思い、
「……わかりました、せんせー」
そして私はそばに座ってた二人のほうを向いて言う。
「陽菜ちゃんも桃花ちゃんも聞いてくれる?」
「うん」
「もちろんだよ」
「なあ椿季」
柊季は話を始める前に私に言った。
「なに?」
「確かに、俺らの過去のことをクラス全員に堂々と話す必要はないと思うけど、せめて知りたいって思ってる人にはこのこと伝えちゃだめか?」
「………そうだね…じゃあ、律」
椿季は携帯を取り出して律を呼ぶ。
「はい」
「皆の中で聞きたい人がいたらこの話の内容をみんなが聞けるようにしてくれない?」
「分かりました。ちょうど、クラスの皆さんが今クラスのグループで話していますので聞いてみますね」
「お願い」
そう言うと律は画面から消え、いつもの画面に戻った。
そして少しすると、律は戻ってきて言う。
「椿季さん、皆さんにお話したところ、皆さん聞きたいとのことです」
「そっか、じゃあみんなと電話をつないでくれる?」
「分かりました」
するとすぐに、SNSの電話機能がつながった。
「みんな、聞こえる?」
「聞こえるよ、嵯峨さん」
片岡の声がした。すると椿季は徐に話し出す。
5年前、私のお母さんは、警視庁特殊捜査班の刑事だった。お母さんも誘拐事件や立てこもり事件の交渉に何度となく取り組んでいたし、仕事も真面目で若くして警部補にまでなっていた。
お父さんは普段から海外に行っていることも多くって、お母さんも仕事で急にいなくなることも多かったから、家で柊季と二人っきりでいることは多かったけど、思い出せる限りそんなに私は寂しいと感じることは少なかった。
なぜなら…
「ヤー、ヤー、メン」
「椿季!剣先がまた下がってる!もう一度!」
「もう疲れたよ…お母さん…」
「何言ってんの!まだ始まって三十分しかたってないよ!もう少し頑張る!」
「はい」
「柊季も休んでないでやる!」
「はいはい」
「はいは一回!」
「はーい」
警察学校で剣道部だったお母さんから、剣道や簡単な武術も習った。練習の時はとっても厳しかったけれど…
「よし、今日はここまで」
「「つ、つかれた…」」
私と柊季はその場に座り込む。
「もー、二人ともだらしないぞ」
「お母さんの特訓がハードすぎるんだよ…」
「母さんそんなに厳しいと部下の人に嫌われない?」
「なんかいった?柊季?」
「うわー、鬼教官が怒った!!」
「あ、こら!待ちなさい!柊季!」
「待てといわれて待つ奴はいない!」
そう言って逃げる柊季と追いかけるお母さん。
そんな二人の光景を私はよく笑ってみていた。
「そうだ、椿季、今日何食べたい?」
「うーん、オムライスがいいな」
「お前はいつもそればっかだな」
柊季は呆れたように言った。
「いいでしょ、好きなんだもん。お母さんのオムライス」
「柊季はそれでいい?」
「まあ、いいけど」
「よし、じゃあ椿季手伝って」
「うん」
そう言われて私はお母さんと一緒に夕食を作る。
「ねえ、お母さん?」
「ん?何?」
「お母さんの仕事はあんなに大変なのに、どうしてそんなにつらい仕事をやってるの?」
「椿季、世の中につらくない仕事なんてないのよ」
「それはそうだろうけど。警察でしかも刑事って言ったら、命にも関わる危険な職業じゃない?」
「あはは、大げさね椿季は」
「そうかな?」
「でも、お母さんが警察官になった理由ね…」
お母さんは、スープを味見しながら、「うーん」と考えている。
「お母さんは小さい頃から自分の好きなことを自分が好きなようにやってきた、でもねそれは自分一人でやってできることじゃないの、椿季のおばあちゃんやおじいちゃん、お父さんや、お母さんの友達、色んな人の支えがあってからこそ、今のお母さんがあるんだよ」
「……みんなのおかげか」
私はそんなことを考えたことがなかったのでお母さんが言っていることの実感はわかなかった。
「だからね、今までみんなのおかげで学べたことを今度はみんなのために生かしたい、そう思って、お母さんは警察官になったの」
「なんかかっこいい」
「そうでしょ?みんなを守るヒーローなんだから」
「フフフ、お母さんも大げさだよ」
私たちはそんな話をしたのが可笑しくって、お互い笑った。
「二人ともご飯まだ?」
自分の部屋にいた柊季が降りてきた。
「もうできるよ」
「柊季も遊んでないで手伝ってよ」
私は、柊季に布巾を投げると、柊季はそれをキャッチした。
「ほらテーブルふいてきてよ」
「はいはい」
「はいは一回」
「椿季最近、母さんに似て口うるさくなったよな」
柊季はブーブー文句を言いながら言う。
「いいから早く!口じゃなくて手を動かす!」
「はーい」
こんなどこにでもある毎日が私はとても楽しかったし、警察官として誇りを持っていながら、私たちのことをいろいろ考えているお母さんは私の憧れだった。
でも、そんなお母さんと私達の別れは突然だった。