双子の姉弟が送る!暗殺教室   作:コミ6目半

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 鷹岡編後編…


 椿季はどうなっちゃうんでしょうか…



第32課 才能の時間

 「なあ、あれって」

 

 「ああ、多分」 

 

 「椿季ちゃん?」

 

 

 クラス皆が一瞬だが誰かわからなかった。それもそのはずで、椿季がまとっている殺気は普段の椿季の面影を完全に包んでしまっていた。

 

 

 「なんだ、お前。今までどこにいた」 

 

 「そんなことはどっちでもいいよ、貴方は今何をしているの?」

 

 

 椿季の声はいつものものとは違いずっと低く怖かった。

 

 

 「あ?、教育だよ、父親に反抗したらどうなるかっていうなぁ」

 

 「私には、貴方が、私の大切な弟と私の友達をいじめているようにしか見えないのだけど」

 

 

 椿季はそっと手を下ろし、家から持ってきたであろう木刀に手をかける。

 

 

 「ほぉ、こいつはお前の弟だったのか、弟が弟なら、姉も姉だな」

 

 「貴方に私の何がわかるのよ!」

 

 

 すると椿季はカッと前を向き一心に飛び出した。

 

 

 「絶対に許さない!私の大切な人達によくも!!」

 

 

 椿季は開幕早々走り込み刀を振る。鷹岡はそれを簡単にかわした……

 

 

 つもりだった。

 

 

 椿季は左手で太めの警棒を素早く抜き、それをみぞおちに叩き込む。

 

 

 「ッ!!」

 

 「舐めてかかないで、私も本気で行く」

 

 

 椿季は冷酷な口調でそいうと木刀を真一文字に振る。

 

 鷹岡は今度はかわすことをせず持っていたナイフで木刀を受け止める。

 

 

 「調子に乗るなよ、女の力で俺にかなうと思ってんのか!」

 

 

 右手のナイフで無理やり木刀を振り払うとノーガードになった椿季に向かって思いっきり左手で殴る。

 

 しかし、椿季は地面を強く蹴り、バク天の要領でそれを交わす。そして空中でナイフを投げる。

 

 鷹岡がそれを何とか交わした。

 

 

 「当たれば速攻で、体が動かなくなったのだけど。同じ手に二度引っかかるほど馬鹿ではないのね」

 

 「くそっ」

 

 

 「それと力でねじ伏せられるほど、私は軟弱じゃない」

 

 

 椿季はそう言うと焦る鷹岡を嘲笑うこともせず、ただじっと前を向いていた。

 

 

 

 

 

 その後も椿季の攻撃は鷹岡を圧倒していた。

 

 さっきまで余裕の表情だった鷹岡は今は防ぐだけで手いっぱいの様子だった。

 

 

 「すげー…」

 

 「強いとは思っていたけど、ここまでとは」

 

 「でも、なんだか…」

 

 「うん。あんなのいつものつっちゃんじゃないよ」

 

 

 クラスのみんなは呆然とその様子を見ていた。

 

 

 

 その時柊季は思った。このままではまずいと、

 

 

 (やばいな、何とかして、椿季止めないと)

 

 

 柊季は動こうとするが、まだ体がいうことを聞かない。

 

 

 「椿季、落ち着け!それ以上やったらやばい、このクラスにいられなくなるかもしれないぞ!」

 

 

 柊季のその言葉に椿季は低い口調のままで言った。

 

 

 「柊季はだまってて!私は今度こそ、助けて見せる!」

 

 「椿季!!」 

 

 

 (やばい完全に声が届いてない、何か注意をそらさないと)

 

 

 柊季がそんなことをまわらない頭で考えをめぐらせている、そんな時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「警視庁特殊捜査班 警部補 嵯峨 碧」

 

 「!!」

 

 

 

 その言葉を聞いて俺は耳を疑った。

 

 椿季の表情も明らかに変わっている。

 

 

 「なんで…」

 

 「そうか、嵯峨の子供か…」

 

 

 鷹岡は不敵な笑みを浮かべながら言う。

 

 

 「お前が何を知っている」

 

 「知っているさ、若くしてもてはやされた哀れな女の末路はな!」

 

 「ッ!!」

 

 「お前、さっき助けて見せるって言ったな、あいつもそうだったよ、何かを守る、何かを助ける、そんな安いプライドのせいで逝っちまったんだからなぁ」

 

 

 その言葉に椿季は完全に冷静さを失った。

 

 椿季はもう一度木刀を構えると言う。

 

 

 「・・・・・・・・・・・ぁ」

 

 

 「あ?なんて言ったか聞こえねーな、嵯峨」

 

 

 

 「私の……私の尊敬する、大切な人のことをそんなふうにいうなぁあ!!!」

 

 

 

 「バカ、椿季!危ない!!」

 

 

 俺はそう叫んだが椿季には届かなった。

 

 椿季は木刀を大きく振りかぶって襲ったがその下から、鷹岡は俺から奪った警棒で、椿季の腹をめがけて思いっきり振った。

 

 椿季はそれをもろに喰らい倒れた。

 

 その後嗚咽を漏らしながらもなんとか立ったがそこに鷹岡は蹴りを入れた。

 

 

 椿季の体は簡単に吹き飛ぶ。

 

 

 「ゲホッ、ゲホッ、」

 

 「まだ意識があるとは驚きだ」

 

 

 椿季はむせて、何もしゃべることは無かったが、彼女の目はまだ反抗の色を失ってはなかった。

 

 

 「まだやる気か、そんな体で、しょうがない子だな!」

 

 

 おそらく、鷹岡は椿季がボコボコになるまでやるつもりだったんだろう。しかし、振り下ろそうとしていた鷹岡の腕は烏間が片手で抑えていた。

 

 

 「もう十分だろ、鷹岡」

 

 「ようやく首を突っ込んできたか、烏間…」

 

 「神崎さん、前原君、柊季君。大丈夫か?」

 

 「はい」「へーきっす」「なんとか」

 

 「椿季さんは?」

 

 

 椿季は何も言わずうんと頷くだけっだった。

 

 

 すると、鷹岡が烏間に向かって言った。

 

 「俺の教えがいやだというならここはひとつ教育で勝負してみないか烏間、お前らも俺を認めたくはないんだろう?このままじゃあ父ちゃんも不本意だ。烏間、この中から一押しの生徒を一人選べ、そいつが一度でもナイフを俺に当てられたら、お前の教育は正しかったということにし、ここを出て行ってやろう」

 

 

 クラスの大半がその言葉を聞き、安堵の表情を浮かべる。

 

 

 「ただし、使うのは本物のナイフだ。今回の暗殺のターゲットはあいつじゃない。俺なんだ。使うナイフも本物じゃなくちゃな」

 

 

 鷹岡はそう言うと烏間先生の足元にナイフを放り投げる。本物ナイフだ暗殺の訓練を受けているとはいえ、普通のナイフをみんなが思いっきり振れるわけがない。

 

 

 「やめろ、鷹岡。彼らは人を殺す訓練も覚悟もしていない」

 

 「おいおい、つまらないこと言うなよ。寸止めでもあたったことにしてやるし、それにさっきそこの二人は警棒やら木刀やらを自在に使って見せてじゃねーか、まあ、両方ともダメージが大きくて。ろくにナイフを振ることすらできないだろうけどな」 

 

 

 鷹岡はニヤニヤしながら椿季を見た。

 

 

 「烏間先生、やらせてください、私に……」

 

 「そんな体で、無理に決まっているだろう」

 

 「そんなことありません!私は…」

 

 

 椿季はそう言い立とうとしたが、

 

 

 バタン

 

 

 そこで気を失い、倒れた。

 

 

 それを見てクラスの誰もが驚きの表情を浮かべる。

 

 

 「つっちゃん!つっちゃん!」」

 

 「椿季ちゃん!」 「嵯峨さん!」

 

 

 倉橋、矢田、片岡が駆け寄る。

 

 柊季もなんとか近くまで行き、椿季の様子を確認した。

 

 

 「大丈夫、気を失ってるだけだ。悪いが誰か椿季を急いで保健室に運んでくれないか?」

 

 「わかった」「うん」 

 

 

 すると殺せんせーが駆け寄ってきた。

 

 

 「せんせーが保健室まで運びます」

 

 「すいません、お願いします」

 

 

 そういって、殺せんせーは椿季を保健室へ運んでいった。

 

 

 鷹岡はそれを見て笑い、続けた。

 

 「さて、厄介なのも去ったし、早く選べよ烏間、生徒を見捨てるか、生贄にするか、どっちにしても最低な教師だなお前はよ!!」

 

 

 烏間は落ちているナイフを見つめながら何かを考えていた。

 

 

 (俺はまだ迷っている。地球を救う暗殺者を育てるためには奴のように容赦ない暗殺が必要ではないかと、ここに来て、教師という職についてから俺は迷ってばかりだ……)

 

 

 烏間は悩みながらも決心しナイフをとる。

 

 

 そして烏間はそのナイフを渚に渡した。

 

 

 「渚君。やってくれるか」

 

 

 ナイフを差し出す烏間に渚は驚いていた。

 

 

「俺はキミ達とは、地球を救うために依頼した側として対等なプロであると考えている。プロとして、キミ達には必要最低限の中学校生活を保障する事だと思っている、だから、このナイフを無理に受け取らなくてもいい。その時は俺が鷹岡に頼んで最低限の報酬を維持してもらえるようにする」

 

 

 そして渚はこの時思った。

 

 

 (僕はこの人の目が好きだ、立場上僕らにも秘密がたくさんあると思うけど、それでもまっすぐ僕たちを見てくれる、なんで僕を選んだのかはわからないけど、この人の渡すナイフなら、出来る気がする)

 

 

 いろいろ考え、渚の出した結論は。

 

 

 「やります。烏間先生」

 

 

 

 

 その様子を見ていた磯貝が柊季のそばに来て聞く。

 

 

 「なあ、渚のナイフ当たると思うか?」

 

 「どうだろうな、渚のナイフ術の成績は普通。普通なら絶対無理だけど…」

 

 「けど?」

 

 「あいつなら何となく、殺れそうな気がする」

 

 

 柊季のこの考えには根拠はなかったが彼なりに自信があった。

 

 

 

 渚を見た鷹岡は烏間に言う。

 

 

 「烏間、お前の目も曇ったな。よりにもよってそんなやつを選ぶなんて、まあいい」

 

 

 鷹岡は上着を脱ぎ棄て、構えた。

 

 

 すると、しばらく考えていた顔をしていた渚は急に顔をあげ、鷹岡のもとに歩いて行く、その顔はいつもの渚以上に明るく、警戒心を微塵に感じさせないものだった。

 

 そして、鷹岡も特に警戒心を覚えることなくそれを見ている。

 

 二人の距離はどんどん縮まっていき渚の体は鷹岡に当たった。

 

 

 

 「来る!!」

 

 

 柊季がそう感じた瞬間だった。

 

 

 見ると、渚のナイフが鷹岡に襲い掛かっている。そして、そこにはもうさっきの渚はおらず、通常の何倍もの殺気を持った渚がいた。

 

 

 これには、鷹岡も驚いたのだろう、顔を今までに見せなかったぎょっとした顔をして後ろにのけぞる。

 

 

 それを渚は見逃さずに後に回り込み、確実に仕留めていた。その動きはしなやかに無駄がなく完璧すぎるものだった。

 

 

  そして渚は鷹岡先生ののど元にナイフを当てながら言うのだ。

 

 

 

 「捕まえた」

 

  

 

 

 「……………やっぱり」

 

 

 

 

  この時、柊季は確信した、渚には暗殺の才能があることに。

 

 





 次回はオリジナルストリー前編。

 椿季と碧(お母さん)の話です。

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