球技大会(男子)中編です。
最近いろいろ忙しくて書くペースが落ちてます…
頑張らないと…
現在、椚が丘中学校球技大会は4-0で、E組の圧倒的リード。ノーアウトランナー一塁だし、普通に考えれば何の問題もないのだが。
「はぁ……勝負はここからか」
向こうのベンチに入ってきたのはここの理事長浅野学峯、あの情け容赦ない理事長にかかればこんな試合簡単にひっくり返される、そう思った。
すると、放送が流れる。
「今は言った情報によると、野球部顧問の寺井先生は試合前から重病で野球部員も先生が心配で野球どころじゃなかったとのこと。それを見かねた理事長先生が、急遽指揮を取ることになったそうです」
そのアナウンスと共に観客から大きな歓声が上がる。
すると理事長は野球部を集め何かを言っている。
そして、それが終わると試合再開………のはずだったが、
次の打者、前原も唖然としている、それもそのはずで、
「こ、これは何だー!!守備を全員内野に集めてきた。こんな極端な前進守備は見たことも聞いたこともないぞ」
E組のベンチもざわついている。
「バントしかないって見抜かれてるな」
「でも、あんな至近距離いいのか?バッターの邪魔だろ」
すると竹林が説明する。
「ルール上じゃフェアゾーンならどこ守っても自由なんだ。審判がそこら辺を普通は注意するけど」
「審判は向こう側の人間なんだから、こっち側の言い分が通るわけないよねぇ」
カルマが言う通り、そんな言い分は通らないだろう。
すると、前原は大きく振りかぶった進藤の直球を打ち上げてしまいアウトになる。
「七番、センター岡島君」
(冗談じゃねー、こんなのバントじゃ抜けねーぞ)
岡島は殺せんせーを見てサインを仰ぐ、しかし殺せんせーは一回目二回目は顔を変えず三回目はついに顔を覆ってしまった。
(打つ手なしかよ!!なら嵯峨なんかお前いい案ないのか?)
岡島がこっちを見てきたので俺は返すことにした。
(ったく、しょうがねーな)
俺は岡島にサインを送る。
(えーっと、特にないから、ダブルプレーだけは避けろって、俺見捨てられてんじゃん!!)
(しょーがねーだろ、他に何も思いつかねーんだから)
結局岡島はバットを振ることなく三振に倒れ、続く千葉も対策を考えている間に三振を取られ、あっという間にチェンジとなった。
「まぁ、こうなるわな」
俺がベンチに戻るとそこには椿季と陽菜乃がいた。
「どんな感じ?」
「一応勝ってるけどあれがねぇ」
「まあ、ここからかもね」
「そっちは?」
「負けちゃったけど、楽しかったし、いい試合だったよ」
二人は笑顔で楽しそうに話しているから本当なのだろう。
「あ、そうだ。柊季の作戦役に立ったよ。ありがとう」
「ははは、さすがの運動神経だな、椿季」
俺は思わず苦笑する。
「ほら早く行きなよ、ライトがら空きだよ」
「へいへい」
そういって、俺はライトに走っていった。
一回裏は杉野が練習したという変化球が功をそうし三者連続三振に打ち取り、二回表の攻撃へと移るのだが、
「進藤のやつはさっき理事長が手塩をかけて何かしてたし、相変わらずの前進守備だし、これからどうすんのかな」
すると次のバッターであるカルマが中々バッターボックスに入らない。
「おい、なにしてる、早くバッターボックスに入りなさい」
しかし、カルマは理事長のほうを見ていちゃもんをつけ始めた。
「ねー理事長先生。これずるくない?こんな邪魔な位置で守ってるのに審判の先生は何も言わないし、お前らもおかしいと思わないの?………あ、そっかお前らバカだから守備位置とか理解しないで野球見てんだね」
カルマがそう観客を煽ると観客からはブーイングの嵐だった。
「ガタガタ言ってんじゃねーぞE組のくせに」
「たかが、エキシビジョンで守備にクレームつけてんじゃねーよ」
「文句があるならバットで結果出してみろや」
その様子を見て俺は思わず言う。
「うわ、さすがカルマ煽りをやらせたら右に出るものはいないな」
そして当のカルマは殺せんせーのほうを見て舌を出すと殺せんせーは満足そうにうなずいたのだった。
結局、カルマ、木村、渚と三振に倒れ、二回裏。ここからが問題だった。
四番のエース進藤が二塁打を放ち五番六番七番と連続ヒット、まあ、こっちはほとんどが野球初心者なのでエラーが出たりするのは仕方ないんだが…
結局二回裏に一挙四失点し、未だツーアウトランナーなし。
「悪いな杉野…エラーが多くて」
「気にするなよ、俺も結構打たれちゃったし」
「取られたものは仕方ない、落ち込まずアウトを取ることを考えようぜ」
「よし、この回は後アウト一つだ。しまっていこう!!」
「「「「「おー!」」」」」
試合が再開する。杉野は例の変化球で攻める。
「ストライク」
先ほどはこの変化球で攻め続けてアウトを取ったので杉野も考えたのだろう、杉野は二球目は変化球でなく、遅めのストレートを投げた。
しかし、結果的にこれが裏目に出てしまった。
カキーン
金属バットの非常にいい音がする。
(やばい!!)
杉野は思わず、そう言う顔をした。白い球はぐんぐんと伸びライトの方向に伸びる。このままでは、ホームランというところまでボールは外野席へと迫る。
「させるかー!!」
俺は全力でボールを負いスタンドの壁を蹴って飛び、ボールを何とか取ろうとする。
「届けーー!!」
俺は空中で何とかボールを取ったものの、体はそのまま自由落下を始める。
ドンッ
俺は顔面からグラウンドに落っこちたが、ボールを放すことだけはしなかった。
一塁審が俺に近づいてくると俺は顔をあげ、捕球したことを見せる。
「ア、アウト」
「3年E組。まさかのファインプレーで逆転を阻止。しぶといプレーが続きます」
「しぶといプレーで、悪かったな…」
俺のもとにみんなが駆け寄ってきた。
「おい、大丈夫か柊季」
「とりあえず、生きてるし、手首の捻挫とかもないから大丈夫だろ」
「でも結構擦り傷出来てんぞ」
確かに腕にはいくつか擦り傷ができていて血がにじんでいた。
「お前この後打順まわってくるけど大丈夫か」
心配する磯貝に俺は答える。
「ああ、ただ口の中泥だらけだから一回口を濯ぎに外に出て行ってもいいか?俺の打順までには戻ってくるから」
「あ、ああ」
「付き添うか?」
「いや、大丈夫」
そう言って俺は出口へと向かう
(ここは何とか防いだが、これで同点。少なくともあと一点稼がないと勝つことはできないからな…)
「さて、ここからどうするべきか」
そんなことを考えながら俺は球場をいったん出て行くのだった。