イトナの話ですね。
あれこれ考えながら書いててなかなか進みませんwというかストックはかなりあるんですが毎日のように手直ししてますw
まあ、気長に頑張ります。
感想や意見があったら是非是非お寄せください!!
六月も半ばに入り、梅雨も本格的になってきたころ。烏間先生は職員室でメールのやり取りをしていた。
そこにはこう書かれていた。
6月15日 2人目の「転校生」を投入予定。
満を持して投入する「本命」である。
事前の細かい打ち合わせは不要。
全て付添人の意向に従うべし。
「二人目の転校生か…この間のように大事にならなければよいが」
烏間先生は「了解」とだけ打ちメールを送信した。
そして、6月15日。その日もやはり雨だった。
「烏間先生から転校生が来ることは聞いていますね?」
「まあ、転校生名目の殺し屋だろうね」
「律の時見たいにな」
「律、何か聞いてない?」
原さんが律にそう聞くと、律は少しだけと答え話し始める。
「初期命令では私と彼の同時投入の予定でした。私が遠距離射撃、彼が肉薄攻撃をして二人で殺せんせーを追い詰める。でも、二つの理由でその命令はキャンセルされました」
「二つの理由?」
椿季が聞き返す。
「一つは彼の調整に思ったよりも時間がかかってしまったこと」
「もう一つは?」
俺がそう聞くと、律は少し言いにくそうに
「もう一つは私の性能では彼のサポートとして力不足。私が暗殺者として圧倒的に劣っているから」
先生の指を弾き飛ばした律で力不足とはどんな奴なんだ?
殺せんせーも律の話を聞いて難しい顔をしているし、クラスの雰囲気もなんだか凍り付いている。
そして、ついにクラスの扉が開いた。
白装束でまるでどっかの宗教の人のような人物がそこにはいた。
「何あの格好……」
「あれが転校生?」
片岡と岡野がそう言うと白服の人物は手を前に出して、
ポンッ!
ビクッ!
鳩を出した。
すると、白服は笑って謝る。
「いやー、ごめんごめん。驚かせてしまったね。転校生は私じゃないよ。私は保護者だ。まぁ、白いしシロとでも呼んでくれ、それで先生はどこかな?」
「あれ先生?」
先ほどまで教卓にいたはずの先生がいなくなっていた。
すると、椿季はため息をついて行った。
「先生、いくらなんでもビビり過ぎです。天井に張り付くなんて…」
「「「「「えっ!」」」」」
椿季に言われてみんなが天井を見てみると、先生はこの間の奥田の薬でできるようになった液状化を使い、天井に張り付いていた。
「ビビってんじゃねーよ、殺せんせー」
「奥の手の液化まで使いやがって」
「いや、律さんがおっかない話するもんで」
三村と岡島の言葉に言い訳をする殺せんせー
その後いつもの体に戻りシロとあいさつを済ませる。
「それで、転校生はどこに」
「ああ、それがですね、性格などがちょっと特殊なのでね。私から紹介させてもらってもよろしいですか」
「ええ、構いみゃいましぇんよ」
殺せんせーは先ほどシロからもらった芋ようかんを食べながらしゃべる。てか、ホームルーム中に芋ようかん食べんなよ。
「それでは、入っておいでイトナ」
今度こそ転校生が来る誰もがそう思って、息をのんだのだが……
ドンッ
そういって、爆発音に似たものと同時にイトナが入ってくる。なぜか俺の後ろの壁を突き破って、
「俺は勝った…今俺はこの教室の壁より強いことが証明された」
「「「「「いや、ドアからは言って来いよ」」」」」
先生もリアクションに困りすぎて、なんだかよくわからない顔になっている。
ちなみに、俺は奴が破壊した壁板の下敷きになっていた。
「柊季!」
「……ッゥ」
痛そうにしている俺に陽菜乃が駆け寄ってくる。
「痛タタッ……」
「大丈夫?」
「大丈夫だ。ありがとう」
頭は少し痛いけど、まあ大丈夫だろ。
すると、椿季がイトナの前に出て、珍しく食って掛かる。
「どういうつもり?いくらなんでも危ないと思うのだけど」
するとイトナはジッと椿季を見ていた。
「な、何よ」
「お前はこのクラスで強い方だ。だが安心しろ、俺より弱い。俺より明らかに弱い奴には手を出さない、そこのお前と、そこのお前もだ」
そう言ってイトナが指差したのは俺とカルマだった。
イトナは椿季のわきを通って殺せんせーの前へと出る。
「俺が殺したいと思うのがは俺より強いかもしれないと思う奴だけだ。そしてこの教室の中ではあんただけだ殺せんせー」
すると殺せんせーは、いつもの緑と黄色の縞々になってこう言った。
「ヌルフフフ、単純な強さだけでは先生と同じ次元には立てませんよ、イトナ君」
「立てるさ、だって俺ら血を分けた兄弟なんだから」
その瞬間時間が止まった。
「はっ?」
そして、クラスの全員が次々に状況を飲み込み、そして
「「「「「き、き、き、兄弟ィーーーーー!?」」」」」
おい、マジかよ。
「兄弟同士、妙な小細工はいらないおまえを倒し俺の強さを証明する。勝負は今日の放課後、負けた方は死刑。この教室でだ」
そう言うと、イトナはシロと共に教室を出て行こうとする。
「今日で最後だ、せいぜい別れの挨拶でもしとけ」
そう言って、イトナは教室の扉を閉めた。
「どういうこと殺せんせー?」
「イトナ君は本当に弟なの?」
この後、殺せんせーが質問攻めにあったのは言うまでもない。
「ふー、マジで死ぬかと思った」
「柊季、本当大丈夫?」
「ああ」
「災難だったね…」
三人は職員室に提出物を出しに行く。
「ねぇ、二人は、本当に殺せんせーとイトナ君が兄弟だと思う?」
「うーん…血縁関係はないと思うけど」
「まあ、生みの親より育ての親ともいうし、育った場所がぁとかそう言うオチなんじゃね?」
「本気で言ってる?」
「いや、だけど他に思いつかないからさ」
俺達はあれこれ意見を出し合ってみるがこれといったものは思い浮かばない。
「じゃあ、二人はあの子がせんせーを殺せると思う?」
「うーん。普通に考えたら無理だろうけど…」
「けど?」
口ごもる俺に椿季が付け足す。
「手の内が見えないからね…何が起こるかはやってみないとわからない、そういうことでしょ」
「まぁ、そういうことだ」
「そうかぁ」
「ただ何が起こるかはわからないから、今日の放課後気をつけろよ、陽菜乃。巻き込まれたらケガじゃすまない……ような気がする」
「う、うん」
陽菜乃の頬は少しだけだが朱色に染まっていた。
「だったら、ついててあげれば柊季が」
「なっ、椿季!」
「ふふふ」
そう笑いながら先に行こうとする椿季を柊季と倉橋は追いかけるのだった。
そして、放課後。クラスの机を長方形に囲む。まるで格闘技のリングのように。
「これでいいのか?シロさん」
「ああ」
シロはそっけない返事を取る。
「机のリングですか…」
「ええ、ただの暗殺はもう飽きたでしょう、殺せんせー。だからここはひとつルールを決めてみないかい?」
「ルール?」
俺はシロに聞く。
「リングの外に足がついたらその場で死刑」
それを聞いた杉野が言う。
「なんだそりゃ、負けても誰が守るんだそんなルール」
しかし、カルマはそれに異を唱える。
「いや、みんなの前で決めたルールを破れば先生としての信用が落ちる。この手の挑発は案外効くもんだよ」
「そうだな」
俺はカルマに同調した。
そして、殺せんせーは少し考えてこう言った。
「いいでしょう、ただし、観客に危害を加えた場合も負けですよ」
イトナは何も言わずにコクリと頷く。
「それでは始めようか」
シロはそうはいって手をあげた。
「暗殺………開始」
ことが起こったのはその手が降りた瞬間だった。まず一つに殺せんせーの触手がイトナから放たれた何かによって切られて宙を舞った。
しかし、クラスのみんなを驚かせたのはそこではない。
クラスのみんなが見たものそれは…
「え?」
「うそ!?」
「これは…」
イトナの頭には彼の髪の色に合わせた白い触手が動いていたのだった。