修学旅行の前のオリジナルストーリーです。(前編)
中間テストというイベントが終わり、平穏の日々を送れると思ったのもつかの間。
「まったく、三年生の始まったばかりのこの時期に修学旅行とは、先生あまり気のりがしませんね~」
という殺せんせーは、完全に舞子だった。
「ノリノリじゃねーか」
「舞子かよ」
「しかもにあってるよ」
前原、三村、岡島がツッコむ。
修学旅行学校生活のイベントの中では最大級といっても過言ではない。大半の生徒が楽しみにし、思い出とする行事だ。
そんなイベントが迫る中、浮かない顔の生徒が一人。
「修学旅行ね…」
「なんだ、柊季、浮かないかおして」
「いや、まあ、楽しみっていえば楽しみなんだけど」
「?」
俺の曖昧な返事に学級委員の磯貝は怪訝な顔をしている。
そしてその曖昧な返事に答えたのは椿季だった。
「柊季はね、小学校の時の修学旅行には行ってないんだよ」
「え、なんで?」
「それがさ…」
「俺分かった。暴力沙汰を起こして停学になった」
「「それはお前だろ」」
カルマと一緒にするんじゃねーよ。
「普通に風邪ひいたんだよ、おかげで俺は留守番だったから、はは」
俺の目はどこか明後日の方向にいく。
「大丈夫、今回は大丈夫だから」
「俺、あと一週間したら修学旅行行くんだ」
「柊季、それ死亡フラグ」
よどんだ空気を変えるために磯貝は、
「とりあえず、班を決めようぜ、明日までに俺か片岡のところにまで計画表を提出してくれ」
「はーい」
とはいってもどこの班に入るかは悩みどころだ。
(さすがに修学旅行まで椿季と一緒はな…)
そんなことを考えていた時、
「おーい。柊季、一緒に修学旅行まわんね?」
そう誘ってきたのはカルマだった。
「面子は?」
「渚君、杉野、茅野ちゃん、神崎さん、奥田さんと俺」
「うーん。カルマ以外は問題な…ってひはひ、ひはひ(痛い、痛い」
「誘ってやってるのにその言い草はなにー」
カルマが俺のほうを引っ張ていう。
「はふはっは、はふはっは、(悪かった、悪かった)ひはひはは、ははへー(痛いから、放せ)」
カルマが手を放す。
「ふーっ。痛かった」
「で、どうするの」
「ああ、頼むよ」
「了解」
こうして、俺はカルマたちと一緒に修学旅行に回ることになった。
それでもって、修学旅行前日。今日は日曜日なので、今日を使って修学旅行の準備をする。
「とりあえず、前日に風邪をひくなんて言うべたな展開にだけはならなくってよかったよ。もしここで風邪ひいたら、明日マジで危ういからな」
結局昨日は夜遅くまでパソコンダラダラと動画を見たりゲームをしたりとしていたおかげで、今はもう午前11時をまわっていた。
「さて、荷物の準備やっちまうか、まあ、その前に昼飯をっと」
そう思い、俺は二階の自分の部屋から、リビングへと下りて行くといつもと違う光景に気付く。
「あれ?椿季がいない」
日曜日。俺が昼過ぎまで寝ているのはいつも通りなのだが、椿季はいつもならこの時間は昼飯作ってるはずである…
(部屋で修学旅行の準備でもしてるのかなぁ)
「うーん。仕方ない…腹減ったし自分で昼飯作るか、たまには」
やれやれ、と思いつつも俺は簡単な昼食を作った。
昼食を作り終え、そろそろ降りてくるかとも思ったけれど、椿季が降りてくる気配がない。
(もしかしてまだ寝てんのか?)
俺は椿季の部屋まで、行くとドアをノックし部屋に入った。
「椿季?なにしてるんだ?もう飯作って…」
ドアを開くと椿季がベッドから落ちて倒れていた。
「おい、椿季?椿季?どうした?大丈夫か」
椿季を起こそうと思って抱きかかえると妙に体が熱い。
「ひいらぎぃ…、のどいたい」
「お、おい、まさか…」
「かぜひいた…」
「なにーーーー」
俺はベッドに椿季を寝かせ体温を測らせた。
「37度8分うーん。まあ、普通に熱あるし、寝てるしかないな」
「うーっ、あしたしゅうがくりょこうなのに…」
「行きたいのなら今日は寝てることだな、ほら薬」
「ありがと…」
まさか、この時期に風邪ひくとは、うちの家系そう言う家系なのか?運がないというか、なんというか。
「さて、どうしようかな…」
やることが多すぎて困る。何から手を付けていいものやら…明日の準備、椿季の看病、家の事。普段椿季に大半は押し付けていたのでここにきてこれはきつい。
「椿季が寝ている今のうちに、とりあえず買い物行くか?…」
ピーンポーン
「?、誰だよこんな忙しい時に」
俺は、玄関のドアを開ける。
「はーい、どちら様ですか」
「さがっち、つっちゃんいる?」
そこにいたのは、倉橋、速水、そして片岡がいた。
「いるけど?どうした?」
「修学旅行に持っていく小物を買いに行く約束をしてたんだけど、嵯峨さん来ないし、電話しても出ないから心配して見に来たの」
「あー、そういうこと」
「それで、椿季は?」
「それが、えーっと・・・風邪で寝てる」
「「「えっ」」」
「だから、今日は無理だ、すまんな」
「すまんなって、大丈夫なの?」
「とりあえず、薬飲んで寝かしたから、大丈夫だと思う」
「そっか」
「わるい、俺これから買い物いなきゃならないから、また明日な」
「え、看病から何から一人で全部やるき?」
「まあ、昔っからそうだし」
「じゃあ、嵯峨君が買い物に行ってる間、嵯峨さんひとりぼっちなの?」
「・・・・・・」
三人はかわいそうだといわんばかりの目線を向けていた。
そんな非難の目線でこっちを見ないでほしい。
「まったく、鈍いなぁさがっちは」
そういって、三人は家に入っていく。
「手伝うよ。なにすればいい?」
「いや、お前らだっていろいろ忙しいんだろ?大丈b」
「そんなわけないでしょ、あんたたち二人暮らしで頼れる人他にいるの?」
速水の質問は実に的を射ていた。
「そりゃぁ、いないけど」
「じゃあ、決定だね」
「・・・・・・」
こうして、俺の忙しい一日はクラスメイト三人と共に始まるのだった。
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